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再掲載:祝ザ・キンクス 活動再開記念 全オリジナル・アルバム From ワースト To ベスト (第7回)ザ・キンクス その2 10-1位(2017.5.12掲載)

どうも。

 

 

では、昨日の続き、行きましょう。

 

 

 

From ワーストTo ベスト、第7回のザ・キンクスです。今日はいよいよトップ10の発表です。

 

 

早速、10位から行きましょう。

 

 

10.Lola Vs Powerman Moneygoround Part One(1970 US#35)

 

 10位は、キンクスのパイ・レコード時代の後期の代表作ですね。「ローラ対パワーマン マネーゴーラウンド第1回戦」。どうしても、この邦題で覚えてしまっています。

 

 このアルバムは、タイトルにもあるように「ローラ」の、初期ブリティッシュ・ビート期以来となる久々の世界的ヒット(全英2位、全米9位)に押される形でアルバムも注目されたんですけど、アルバムを通して言えることは、70年代にさしかかるとレイ・デイヴィスのアメリカ本格進出の野望が強くなっていて、ここで聴かれるのも南部を意識したアーシーなサウンドが目立って来ています。そういうサウンドでありながら、イギリスの音楽業界を皮肉ったコンセプト・アルバムというのも面白いし、「ローラ」はおそらくロック史上最初のトランスヴェスタイトについての歌ったヒット曲(ヒットはしてないけどヴェルヴェット・アンダーグラウンドにもあったかな?ゲイ・テーマはあるけど)とも言われていて、そこも注目すべき点ですね。

 

 

9.Low Budget(1979 US#11) 

 

 パンク・ムーヴメントやヴァン・ヘイレンのカバーによる「再発見」の効果を活かして作った、アリスタ・レコード期では最大となるロックンロール・アルバムですね。徹頭徹尾、ほとんどがアップテンポのロックンロールで、「パンクのゴッドファーザーらしいこと、やってくれよ」と願うファンの期待にようやく応えたアルバムとなりましたね。

 

 実際、このときの全米ツアーはかなりウケていて、その模様は「ワン・フォー・ザ・ロード」という、キンクスを代表するライブ・アルバムにもなって、これも全米で12位まで上がる大ヒットになりました。これゆえに、この時期を「アリーナ・ロック・キンクス」と呼ぶ人も少なくないほどです。

 

 全編、パンキッシュでスピーディなロックンロールが目立つアルバムではありますが、タイトル曲にも見られるように、アメリカン・ロック期を通過していないと表現出来ないブルージーなロックンロールが目立っているところがやはり老獪なベテランゆえのことになっていて、その意味でも興味深い1作です。

 

 

8.Something Else By The Kinks(1967 UK#35,US#153)

 

 1967年、世がサイケ期の頃に発表したアルバムで、人気の高い作品ですね。

 

 たしかに名曲多いんです。エンドを飾る、イギリス観光にもピッタリな名バラード「ウォータールー・サンセット」をはじめ、冒頭はザ・ジャムもカバーした「デヴィッド・ワッツ」、そして、このアルバムで頭角を現したレイ・デイヴィスの弟デイヴによる「デス・オブ・ア・クラウン」。デイヴはこのアルバムで3曲で貢献していますが、このときがやっぱ一番冴えてたかな。

 

 これ、キンクスにとっての、ビートルズで言うとことの「ラバー・ソウル」みたいなアルバムですね。いわゆる、得意の3コードのロックンロールというフォーマットから脱皮して、より凝ったアレンジで曲調の幅を広げる時期と言うか。キンクスの場合、スタジオ機材を駆使したエフェクトはこの当時の他のアーティストほどには使ってはいないんですけど、そのかわり、ハープシコードをはじめとした楽器類の使い方でそれを表現してますね。クレジット見ると、ハープシコードを弾いてるのはレイ本人で、彼が他にハープやマラカス、チューバまでを担当していますね。

 

 

7.Give The People What They Want(1981 US#15)

 

 アリスタ期の“復活キンクス”の中のアルバムの中では、これが一番ですね。前作「Low Budget」でのパンク路線を基本的に継承している上に、ここではときおりソフトめな曲で変化をつけ、単調に陥っていないところが良いです。初期のキンクスのアルバムにあった良い部分を、80年代初頭の空気に合わせて蘇らせたような良さがあります。

 

 中でも、自身の代表曲「オール・デイ・アンド・オール・オブ・ザ・ナイト」を、今で言うセルフ・サンプリングして新たに作ったロックンロール・ナンバーの「デストロイヤー」と、軽快さは残しながらもさわやかな「ベター・デイズ」の2曲がひときわ光りますね。

 

 ちなみに、僕がキンクスの存在を知ったのもこのアルバムでした。音は聴いてなかったんですけど、ちょうどこのアルバムの日本でのリリースの際にツアーで来日したんですけど、このときにレイがつきあって、このアルバムにも参加しているクリッシー・ハインドのプリテンダーズも一緒に来日してるんですよね。まさにこのアルバムが、プリテンダーズの持つストレートな軽快さと、胸キュンなメロウさを表現したアルバムでもあるので、相乗効果になったのかな。そして、来日公演後に2人は結婚もしますが、すぐに離婚もしてしまったところが、またレイのトホホたるゆえんでもあります。

 

 

6.Maswell Hillbillies(1971 US#100)

 

 これもいろんなところで名盤とされている作品ですね。キンクスが拠点をアメリカに移しRCAに移籍しての第1弾です。

 

 このアルバムでキンクスは本格的にアメリカの南部サウンドに接近しています。ただ、レイドバックした雰囲気も感じさせつつも、肉感的な力強さも同時にあるんですよね。このあたりの感覚は、ザ・バンドの良さをしっかりわかってる感じがするなと思って、聴いてて感心しましたね。この当時、ほかにもイギリスから南部サウンドに接近したものが少なくなかったんですけど、僕の中ではこれとストーンズの「メインストリートのならずもの」が双璧ですね。レイ・デイヴィスって、「きわめてイギリスの庶民っぽい」という言われ方をされる人ですけど、もともとはアメリカの音楽やカルチャーにすごく造詣の深い人で、その良さが出ていると思います。

 

 60年代のキンキー・ビートとはまた違う、ロックンロールの別の側面でのカッコ良さを聴かせている作品なので、実はもう少し上位も考えていたんですけど、ちょうどいい手の打ち方があったのでそれに準じました。

 

 

5.Arthur(Or The Decline Or Fall Of The British Empire)(1969 US#105)

 

 これもキンクスを語る際に外せない作品ですね。「アーサー、もしくは大英帝国の衰退並びに滅亡」。これも、ややこしい邦題ゆえに覚えたタイトルでもあります。

 

 これはキンクスの数あるコンセプト・アルバムのうち、筆頭クラスに大切なものですよね。やっぱ、「イギリス人らしさ」をテーマに据えさせるとレイは強いと言うか。いざ、話を組み立てさせたら、安っぽく終わることも少なくない彼なんですが(笑)、これに関しては、大英帝国黄金期から世界大戦、そして現在と、歴史軸もすっかりしてますしね。第2次大戦後に多く、現地で多くのアーティストも生んでいる英国人のオーストラリア移住の話なんかも「ああ、こういう感じで起こってたのね」と思えたりもして。

 

 もちろんシアトリカルではあるのだけれど、そこで彼ら持ち前のロックンロールが崩れることなく「ヴィクトリア」や「シャングリラ」といった見事なロックンロール・チューンがあるのも良いです。

 

 

4.Everybody's In Show-Biz(1972 US#70)

 

 これも「この世はすべてショー・ビジネス」のタイトルの方がしっくり来ますね。RCA移籍の第2弾で、彼らにとって初の2枚組です。

 

 これが僕、というか多くのキンクス・ファンに必要な理由。その1は「セルロイドの英雄」の存在ですね。レイが子供の頃から描いている、ショウビジネスやアメリカへの憧憬を、この時点でも既に十分美しきノスタルジアに包まれていたグレタ・ガルボなどの1920〜30年代のハリウッド・スターの話を物語ることで語るこの曲はレイのリリックの中でも最高傑作のうちのひとつですね。ライブでも欠かせない定番になっています。

 

 そしてふたつめは、やっぱりディスク2のライヴ盤ですね。すっごく骨太でシャープなライブでの彼らの真骨頂が出たものなんですけど、その中核をなしてる楽曲こそ「Maswell Hillbilies」からの曲なんですよね。こっちでのアレンジの方が良いんです。だから、こっちの方をあえて上位に選んだんですよね。

 

 

3.Face To Face(1966 UK#12 US#135) 

 

 

 ここからはジャケ写つきで行きましょう。僕はシングル・ヒットをイギリス国内で連発させていた60年代半ばのキンクスに目がないのですが、これはその後半の時期に出された重要なアルバムです。

 

 シングルとしては、ちょうど直情的なキンキー・ビートから一歩踏み出して、「A Well Respected Man」とか「Dedicated Follower Of Fashion」とか、ディランに代表されるフォークロックからの影響が感じられる曲が出はじめて、それによってレイのアイロニーたっぷりの詩人ぶりが開花しはじめた時期です。

 

 そんなときに出されたこのアルバムは、「ロック史上最初のコンセプト。アルバム」とも言われている作品ですね。まあ、コンセプトといっても大掛かりな物では決してないんですが、それでも、「ロックスターとしての喧噪」が最初で描かれ、「田舎でのスロー・ライフに憧れる」というくだりは、後のキンクスのキャリアで何度もくり返し出てくるものであり、ここにひとつの大きなアイデンティティの形成が見て取れます。そして、その話のオチが、シングルで全英1位にもなった超名曲「サニー・アフタヌーン」で、「日光浴の日差しまで税金で持って行かれる」と、優雅な暮らしだって世知辛い、というとこまで含めて完璧です。

 

 ここからがキンクスらしくなってくるのに、ここから人気が落ちてしまうのも、またキンクスらしいとこです(笑)。

 

 

2.The Kink Kontoroversy(1965 UK#9 US#95)

 

 

 2位に選んだのは1965年発表のこのサード・アルバムです。

 

 よくこういう企画だと、いわゆる1967年以前の作品って、「いわゆるアルバムの時代の前で、シングルの寄せ集め的な時期だった」として上位に選ばれない傾向があるんですけど、僕はそれに真っ向から反対です。たとえ、アルバムが優先されていなかった時期でも、収録曲が普遍的に物語る力もちゃんとあるわけで、僕はそういうのを無視したくはありません。このことは今後、60年代から活躍するアーティストを語る際にもしっかり適用していくつもりです。

 

 このアルバムは、「ユー・リアリー・ガット・ミー」からのキンキー・ビートがひとつのピークを迎えたときの作品ですね。「Everybody's Gonna Be Happy」「Set Me Free」「See My Friend」と、このアルバムには入らなかったけれど傑作シングルが連発されていた時期のレコーディング作だし、加えて本作にも入っている「Till The End Of The Day」こそ、キンキー・ビートの最高傑作だと僕は思ってます。

 

 それ以外にも、キンクスのアイロニーがキンキー・ビートと一体となった「Where Have All The Good Times Gone」や、スリーピー・ジョン・エステスのブルース・カバーながらも、そのパンキッシュなアレンジで、後にエアロスミスが子のヴァージョンを元にしてカバーした「ミルク・カウ・ブルース」など聴き所満載です。パンクやガレージを愛する人たちにこそ、50年経っても色褪せないプリミティヴなロックンロールを聴いて欲しいものです。

 

 

1.The Kinks Are Village Green Preservation Society(1968)

 

 

 そして1位に選んだのはこれです。「ヴィレッジ・グリーン・プリザヴェーション・ソサイエティ」。

 

 これを1位にしたのは、これほどキンクスらしさが1枚に凝縮された作品はないから。サイケデリック大全盛の時期に「田舎が最高だ!」と叫び、結局,その後、ヒッピー的な多くのアーティストが結果的に追随するというひねくれぶりと先進ぶり。また、そうであれいながらも、ややレイドバックした感じも垣間見せつつも、キンクスらしい豪快なロックンロールは失われていないところといい、コンセプト・メイカーとしてのレイの手腕といい。ここにはみんなひとつになって入っています。

 

 特にミック・エイヴォリーのふりかぶりと手数の多くなったドラムと、シャープなアコギのギター・リフがカッコいいんですよね。「Do You Remember Walter」や「Picture Book」「Johnny Thunder」といった前半部はソレで持って行くし、後半になれば「Starstruck」「Village Green」みたいなメロで聴かせる曲が光ってくる。惜しむらくは、この時期にシングルでリリースされた名バラード「デイズ」を入れてくれれば言うことなかったんですけど、仮にそれがなかったにしても本作はアルバムとして完璧です。

 

 ただ、そんな、キャリア史上最高のアルバム(僕がそういってるだけじゃなく、多くの人がそう指摘している)にもかかわらず、これがチャートインさえされていなかったところがキンクスらしいし、その作品をベースにして壮大な続編的ロックオペラ作ったら、ファンにさえ不評の大失敗作になってしまった、というとこのオチまでキンクスらしいです(笑)。僕が「プリザヴェーション」をワーストに選んだのも、ベストのこの作品との対をなしたいと思ったからでした。

 

 

 ・・といった感じですね。

author:沢田太陽, category:FromワーストTo ベスト, 13:24
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再掲載:祝ザ・キンクス 活動再開記念 全オリジナル・アルバム From ワースト To ベスト (第7回)ザ・キンクス その1 24-11位(2017.5.11掲載)

どうも。

 

 

いや〜、信じられない!

 

 

ザ・キンクス、約25年ぶりに活動再開ですよ!信じられません。

 

キンクスに関しては、ブリティッシュ・ビートの先駆のバンドとして心から尊敬しているし、活動休止直前の渋谷公会堂でのライブも見ていたりするので思い入れがあります。

 

たんに活動w再開するだけでなく、ニュー・アルバムも作っているとのことで、本当に楽しみです。

 

そこで今回は、昨年の5月11日、12日に掲載した、ザ・キンクスの全オリジナル・アルバムのFrom ベストToワースト、これを再掲載したいと思います。僕の場合、キンクスという存在は、「全アルバム・レヴューできるぐらいでないと音楽ジャーナリストは務まらない」くらいに本当に思っていた時期があるので、ひときわ思い入れがあるんですよね。

 

では、その時の掲載を再びあげて改めてキンクスの偉大さを感じていただこうと思います。

 

 

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どうも。

 

 

今日はFrom ワースト To ベスト、行きましょう。なんか、早いペースでいろいろ聴けて自分でも驚いているんですが、早くも7回目。今日のお題はこれです!

 

 

 

 

この企画、初の60年代からのアーティストですね。その記念すべき最初のアーティストはザ・キンクスです。キンクスといえば、つい先日、リーダーのレイ・デイヴィスがサーの称号を得たり、彼の久々の最新ソロ・アルバムがイギリスで15位という、一体何10年ぶりなんだろうという成功を70代にして記録している最中です。そんな再評価モードにある中、「最も過小評価されたロックバンド」と言われ続けて来た彼らの計24枚のアルバムに順位をつけてみました。

 

 

 いや〜、これは長いことやってみたかった企画ですね。僕みたいな職の人間にとって、ビートルズ、ストーンズ、ディラン、ツェッペリンあたりは「全部聴いてて当たり前」みたいなところがあったりするし、日常でもよく耳にするし、名盤選でも若いうちから聴き続けてきたものであるんですけど、キンクスとなると、かなり意識的に注意して聴かないと覚えない物ですからね。僕もフリーのジャーナリストになりたてくらいのときに「キンクスのディスコグラフィを全作レヴューできるくらいが理想」みたいなこと考えたことあったくらいですからね。なので思い入れはあります。

 

では、今回は24位から11位まで。まずは24位から。

 

 

24.Preservation Act 2(1974 US#114)

 

 最下位は、キンクスのロック・オペラ路線の混迷期として語られがちな「プリザベーション」の第2幕です。ただ、これ、一方で「駄盤」、一方で「カルト名作」と言われてもいますが、「名作」という評価はあまりに盲目的なので信用しなくていいです(笑)。僕は愛情を込めて「大いなる大失敗作」として「名誉の最下位」にしましたね。

 

 

 作品の善し悪しで言えば・・良くないですよ(笑)!だって、コンセプトがあんまりにも漫画ちっくで、70年代に入ってレイが入れ込んでいたアメリカ南部接近路線も明らかにレイの飽きが感じられる曲調(大編成が似合わないくらいハードなんだもん)が感じ取れるし。女性コーラスの声のセンスなんてかなり悪趣味です。そしてこれが一番タチ悪いんですけど、2枚組で曲多過ぎだし。さすがにどんな好きなアーティストでも、自己満足の、しかも、曲の印象そのものが強く残らない作品を、2枚組で聴かされたらさすがにツラいですよね。「いや、そこを受け入れてこそのファンだ」という意見はあるのかもしれませんが、僕はそこまで着いて行こうとは思いません(笑)。

 

 でもね、これを全作と2部作、計3枚組のヴォリュームにまでして作り上げようとした、その心意気はいとおしいです。なので、これ、僕は「最低1回は聴くべき作品」だと思っています。これ、ロック好きな人ならやってみてほしいです。2回目以上は一切保証しませんが(笑)。

 

 

23.Think Visual(1986)

 

 「プリザヴェーション」は最下位にしたけど愛着はあるアルバムなんですが、「個人的に本当に嫌い」という意味で実はワーストはこのアルバムです。

 

 これは1986年、キンクスが遅ればせながらもアメリカ再進出に成功していた、アリスタ・レコードとの契約が終わったあと、MCAに移籍して発表した最初のアルバムなんですけど、ここからはチャートにかすらないバンドになったんですよね。ただ、このアルバム、キンクスらしからぬ「ザ・エイティーズ」な大仰なプロデュースが目立つ、すごくガッカリな作品です。加えて、ジャケ写のセンスがひどいんだ、このアルバム!「え〜、なんでこんなの作っちゃったの??」って感じのアルバムです。これと、この次のアルバムだけ、ストリーミング・サービスに入ってないんですけど、オススメはあまりしません。

 

22.Preservation Act 1(US#177)

 

 その「プリザベーション」の第1幕にあたるのがこれです。こっちは1枚組なので、疲れないので順位が上です(笑)。なんでも、この第1幕を作っている最中に、没入し過ぎて他のことが目に入らなくなったレイに愛想を尽かした奥さんが小さな娘を抱えて出て行ったという、なんかいかにもレイらしいトホホな話も裏エピソードにある作品です。人生で賭けたものは大きかったんですが、結果が良かったとは正直思えないですね。

 

 

21.Soap Opera(US#51)

 

 「プリザベーション」のあとに発表した、これもロックオペラ路線。ただ、これは、「架空の村の戦争物語」という、なんだかなあなストーリーから一転、今度は、妻もいるサラリーマンの男が、自分がロックスターだという妄想に陥る、という現実的な現代劇。これは1974年にイギリスの第2の局、ITVで放送された「スターメイカー」というミニ・ドラマが元になってて、レイ自身が主演もつとめていました。ただ、このドラマっていうのが、観覧が可能なテレビ局のスタジオでこじんまりとしたセットを組んで演じているもので、超格安でスケール小さいんですよね。まあ、その安っぽさがキンクスっぽさではあるんですけどね。サウンド的には「プリザベーション」の延長ですけど、「もう、ホーンも女性ヴォーカルもいらなくなるね」という曲調にさらに傾いて行きます。

 

 

20.Percy(1971)

 

 これは1971年、キンクスが60年代の黄金期を過ごした、イギリスのパイ・レコードの最後のアルバムなんですが、「パーシー」というイギリスのコメディ映画のサントラです。インストが多めでヴォーカル曲もすごく尺が短いんですけど、ただ、「ローラVSパワーマン」の直後の雰囲気はあるし、やっぱ古き良きパイを惜しみたい意味もあって、そこまで順位を下げたくもない作品ではあります。

 

 

19.Phobia(1993)

 

 現時点でキンクスとしてのラスト・アルバムです。キンクスは最後の2枚はかなりギターはハードなサウンドになっていたりするのですが、このアルバムに関しては時期がちょうどグランジの時期でしたね。どこまで意識してるかは知りませんが。キンクスの場合、元が「ユー・リアリー・ガット・ミー」のバンドだったりするから、そういう路線はすごく歓迎なんですけど、ただ、このアルバム、1曲あたりの尺が長過ぎです。5、6分の曲がザラで、それが17曲もあるという。ある意味でCD時代の悪いとこが出た作品かな。ただ、レイとしては表現したいことが多かったのかな。アルバムのテーマが、「嫌悪感(フォビア)が社会を悪くしているのではないか」という重いテーマでもありましたしね。

 

 そして、このアルバムを伴ってのツアーの際、僕は彼らのライブを渋谷公会堂で体験しています。このときのライブがすごくエネルギッシュで爽快だったから、まさか、このあとに彼らのライブが見れなくなるとは夢にも思ってなかったんですけどね。

 

 

18.Sleepwalker(1977 US#21)

 

 アメリカ再進出をかけた、アリスタ・レコードへの移籍第1弾ですね。このアルバムから、直前までいたRCAでのロックオペラ路線はやめて、コンセプトなしのロックンロール路線になっていて、アリスタの後押しもあって、在籍期間中はアメリカでかなりの成功も実際に収めていますね。このアルバムも、第1弾にして最高位21位という、かなりのヒットになっていますからね。

 

 ただ、「キンクスで1977年」というから、ややもすると「”パンクの元祖”がパンク・ムーヴメントを利用した」かのように思われがちでもあるんですが、このアルバムの発表は1977年の初頭。この時期だと、まだパンクでアルバムが出てるアーティストっていないんですよね。クラッシュやジャムでさえ数ヶ月後ですから。

 

 そういうこともあって、このアルバム、「ロック」には原則的に戻ってはいるんですけど、「どういうロックをやっていきたいのか」が曖昧模糊として見えにくいアルバムなんですよね。なんか、ブルース・スプリングスティーンみたいな曲調の方がむしろ目立つし。キンクスがパンクや、ヴァン・ヘイレンによる「ユー・リアリー・ガット・ミー」のハードロックのカヴァー・ヴァージョンをもって「パンクやメタルの元祖」として自身を売り込みに走るのはもう少し後になります。

 

 

17.UK Jive(1989)

 

 キンクスの最後から2番目のアルバムですね。「シンク・ヴィジュアル」とこのアルバムがストリーミングで聴けません。

 

 このアルバムですが、前作でのオーヴァー・プロデュースが是正された、ソリッドなロックンロール・アルバムになっていますね。この当時だと、イギリスだとマッドチェスターとかシューゲイザーみたいな、サイケデリックなモードが大流行りな時期で、こういうソリッドでストレートなロックンロールをやっている人があまりいなかったものですが、不思議なことに、この4年くらい後から、UKロックバンドのトラディショナルなロック回帰路線がはじまりブリットポップにつながって行ったりするから不思議です。そういう意味で、やっぱ無意識のうちのカンの良さはあるんですよね、キンクスって。このアルバムは、ブリットポップにはやや重くはあるんですけどね。

 

 

16.Misfits(1978 US#40)

 

 アリスタ移籍後の2枚目のアルバムですね。このくらいから、パンク・ムーヴメントに気がつきはじめたか、シングルのB面でも「プリンス・オブ・ザ・パンクス」という曲を作ったのもこの時期ですけど、よりストレートな3コード・ロックンロールの方に足が向きはじめた、といった感じのアルバムですね。そこまでロックンロールロックンロールはしてないアルバムですけどね。

 

 ただ、そうでありながら、このアルバムの最大の聴かせどころは全米シングル・チャートで30位まであがったバラード「ロックンロール・ファンタジー」の存在ですね。これはこのアルバムのレコーディング中に脱退した2人のメンバーにあてたものであり、レイとデイヴのデイヴィス兄弟の分裂の危機にも触れた曲でもあるんですが、「ロックの幻想の中に生きないで、真人間に戻りたい」という、ちょっとその後のレイの人生を考えるに「こんなことを思っていた時期もあったんだな」と思える曲です。ただ、それだけこの人というのは、すごく庶民的な感情を常に持ち合わせていた人でもあるのかな、と思わされますけどね。

 

 

15.Kinda Kinks(1965 UK#3,US#60 )

 

 1965年の初頭に出た、キンクスのセカンド・アルバムです。これは、「ユー・リアリー・ガット・ミー」「オール・デイ・アンド・オール・オブ・ザ・ナイト」のビッグヒットの次を受けたシングル  「タイアード・オブ・ウェイティング・フォー・ユー」とほぼ同時にリリースされたアルバムですね。この3曲が立て続けてヒットしていたときの彼らはブリティッシュ・インヴェージョンの中でも、ストーンズやアニマルズと並んで、「ビートルズにつぐヒットメイカー」の評価を受けてたときで、遅れてデビューし後に比較の対象となるザ・フーよりも全然勢いがあった頃です。

 

 僕はキンクスのパイ時代の60年代のシングルは無類に好きなんですけど、ただ、いい時期に発売されたわりには、このアルバム、ちょっとメロウな曲が多いですよね。やっぱり欲を言えば、「ユー・リアリー〜」みたいな曲をファンとしてはたくさん聴きたいじゃないですか。なのでちょっと順位が抑えめです。

 

 

14.State Of Confusion(1983 US#12)

 

 これは僕に近い世代が思い入れのあるキンクスのアルバムです。というのは、ここからの「カム・ダンシング」という、ちょっとスカというかカリプソというか、ちょっとカリブのビートを入れた陽気な曲が、アリスタ時代のキンクスでの最大のシングル・ヒットになって全米6位まで上がるヒットになりましたから。僕と同世代の人の中には「キンクスといえばカム・ダンシング」という人も少なくありません。その効果もあり、次のバラード「Don't Forget To Dance」も全米29位のヒットになっています。

 

 ただ、これ、アルバム全体として見た場合、この前後の時期のキンクスではちょっと落ちるんだよな、というのが僕の率直な感情です。このアルバムは、パンキッシュなロックンロールと、シングル曲に象徴されるソフトなポップナンバーとの幅で聴かせるタイプのアルバムなんですが、ポップな曲がちょっとオーヴァー・プロデュースなんですよね。シングルになった曲はまだいいんだけど、それ以外の曲でエイティーズの悪いとこが感じられるというか。この直前までの上昇気流がシングル・ヒットとして結実したのはめでたいことなんですけど、それがここで止まってしまうことにもなります。

 

 

13.Schoolboys In Disgrace(1975 US#45)

 

 これがそのRCAの最後のアルバム、ロックオペラ路線の最後のアルバムです。ただ、コンセプトはあるとは言え、もうホーンや女性ヴォーカルはほとんど用がなくなり、アリスタ期につながるロックンロール・アルバムにもうこの時点でなってますね。まだパンクが起こっていた時期ではないんですけど、レイの中でなんとなく虫が知らせたということなのかな。中でも「The Hard Way」はライブの定番にもなる、パンクを先駆けた傑作チューンですね。

 

 ただ、これ、悲しいことジャケ写のセンスが悪いんですよね(苦笑)。AC/DCのアンガスみたいなカッコした少年が叩かれた尻を出してる漫画なんですけど。これ、書いたの、Tレックスのミッキー・フィンだったりするんですけど、しばしば、「ワースト・ジャケ写」の常連作になってますね。

 

 

12.Word Of Mouth(1984 US#57)

 

 アリスタ時代のキンクスの最後のアルバムですね。前作が「カム・ダンシング」の大ヒットが出た作品だったのに、それを受けてのこのアルバムはランクが下がってしまいました。

 

 ただ、「内容が悪かったから」ではなく、単にレーベルからプッシュされなかっただけだったような気がします。実際、このアルバムを聴いてみると、前作でややポップかつオーヴァー・プロデュースになりつつあった部分を修正して、その数作前までにあったような豪快なロックンロール路線に転じています。特に「Do It Again」は、これ以降のキンクスのライブの定番曲にもなります。

 

 あと、しばらく歌ってなかったレイの犬猿の中の弟デイヴが、80年代はじめに出したソロ作の成功の影響もあってか、このアルバムから、ストーンズにおけるキース・リチャーズ枠みたいな感じで、常時歌いはじめるようにもなります。それから、悲しい話題としては、デイヴィス兄弟以外のオリジナル・メンバーだったドラムのミック・エイヴォリーがこのアルバムを最後に脱退してしまいます。

 

 

11.The Kinks(1964 UK#3,UK#29)

 

 記念すべきデビュー作で、全てのロックンロールの原点とでもいうべき「ユー・リアリー・ガット・ミー」が入っていることで価値が永遠に高いアルバムです。

 

 気持ちとしてはトップ10に入れたかったんですけど、ただ、このアルバム、オリジナル曲が少なく、カバー中心なのが残念なんですよねえ。「ユー・リアリー〜」の元ネタになったロックンロールの起源の代表曲、キングスメンの「ルイ・ルイ」のカバーがあったりするんですけど、キンクスの考案したキンキー・ビートの方が勝っているので、そこもあんまり魅力的に響かないと言うか。せめて「オール・デイ・アンド・オール・オブ・ザ・ナイト」が収録されていたらもう少し違った気がする(後にCDのボーナス・トラックで収録)んですけどね。60年代という時代は、特にイギリスでですけど、シングル曲をアルバムに入れない習慣があって、それゆえに損してるアルバムが多いんですよね。

 

 

番外編;レイ・デイヴィス・ソロ

 

 90年代半ばからソロになったレイは、それ以降、セルフ・カバーの3枚も含め、6枚(キンクス時代にも1枚)ソロを出しています。デイヴとの確執でキンクスとして活動出来なくなったオリジナル曲の3枚もランクの対象にしようかなとも思いましたが、デイヴを尊重して今回はやめておきました。ただ、その3枚のソロ、「Other People's Lives」(2006)、「Working Man's Cafe」(2007)、そして「Americana」(2017)はいずれも力作で、仮にランクをつけたらトップ10には入らなかったものの、12位くらいの位置にはつけれたような気がしてます。

 

 

author:沢田太陽, category:FromワーストTo ベスト, 13:21
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全オリジナル・アルバム FromワーストToベスト(第14回)チープ・トリック その2 10ー1位

どうも。

 

では

 

 

昨日に引き続き、fromワーストtoベスト、チープ・トリック、行きましょう。今日はいよいよトップ10です。

 

 

10.Bang,Zoom,Crazy,Hello(2016 US#36)

 

10位は、前作に当たりますね。「Bang Zoom Crazy Hello」。このアルバムは、彼らがロックの殿堂に入ったタイミングで出た作品でもあるので、非常に覚えやすい、印象に残りやすいリリースでしたね。その甲斐もあって、ビルボードでの最高位もかなり高いものになってもいました。

 

 これは、その前のアルバムから7年の時間をかけた作品で、その間に残念なこともありました。それはドラムのバーニー・カルロスが脱退したことですね。タイトなリズム刻むいいドラマーで、リック・ニールセンと共に「ブザイク担当」としてジャケ写上でも楽しませてくれた彼だけにすごく残念でした。後任にはリックの息子のダックス・ニールセンが入って、現在も彼です。

 

 

9.The Latest(2009 US#78)

 

 そして9位が、その「前作」というのにあたります「The Latest」。これがバーニーも含めたオリジナルの4人による、現状での最後のアルバムです。

 

 虫が知らせたというわけじゃないのかもしれませんが、このアルバムは「ポップ職人」としてのチープ・トリックの才覚が存分に発覚されたアルバムだったと思います。彼らって「ガレージ、ミディアム、ビートルズ・フレイヴァー」のバランスでアルバムができてる感じがあるんですけど、このアルバムではその「ビ_トルズ・フレイヴァー」、とりわけ中期のカラフルなポップ・テイストを強く感じさせる作風になっていますね。こう言う感覚は60sブリティッシュ・ロック・フリークのリックだから出して欲しい味というか、こう言うのアメリカのアーティストだと、とりわけ若いとなかなか出せませんからね。だから貴重かと。

 

 そうでありながらも、この中の「Sick Man Of Europe」という、彼らの昔のバンド名つけたガレージなロックンロールがステージでの定番になったり、「When The Lights Are Out」がグラムロックの雄、スレイドのカバーだったりと、ここでも”らしい”味を存分に出してもいます。

 

 

8.All Shook Up(1980 US#24)

 

 続いては遡って、1980年の「All Shook Up」。

 

これはいわゆる、彼らが70年代に築いた人気が崩れた作品として知られていて、そのせいで一部で「悪いアルバム」として解釈もされている作品でもあるんですけど、それは僕は誤解だと思います。

 

 だって、これ、本人たち的には、ビートルズのプロデューサーであるジョージ・マーティン、同じくエンジニアのジェフ・エメリックとできた仕事だったわけですから。とりわけ「ストップ・ディス・ゲーム」のオーケストレーションなんて、絶対やってみたかったでしょうからね。あれ、ロビンのシャウトの仕方で、ウィングスになるところがザ・フーになっちゃってますけど(笑)。後、「ワールズ・グレイテスト・ラヴァー」も「アボー・ロード」の頃のポールっぽいニュアンスだったりね。

 

 ここから先、数作は、作品ごとに大物プロデューサーで、そこで彼らが本来好きだった60sのブリティッシュ・ビートに沿ったロックンロールを好きに演奏してるのが爽快でいいんです。そしたら売れなくなっちゃって、エピックに目をつけられて、その後がたいへんでもあったんですけどね。ただ、このアルバム、残念なことに、ベースのトム・ピーターソンが疲労を理由に脱退し、それも彼らの勢いを落とすことにもなりました。トムは1988年に戻ってきて、今でもすごくオシャレさんな感じでカッコいいですけどね。

 

 

7.One On One(1982 US#39)

 

 そして、それがその次に出たアルバムです。こちらでは、クイーンとカーズをプロデュースしたロイ・トーマス・ベイカーのプロデュースです。

 

 ただ、メンバー、ベイカーのプロデュースはかなりスケジュールがギチギチだったダメに、すごく嫌だったと言ってますね。あと、2作続けて結構ラウドになってるアルバムなんですけど、バーニー・カルロスが言うには「うるさすぎ」とのこと。

 

 ただ、そうとはいえ、ロイ・トーマス・ベイカーです。彼らしい、タイトで、しかもしっかりとフックのあるポップで重厚なロックにしてあるところはさすがです。実際、ここから、甘美なバラードの「If You Want My Love」、シンセのフレーズ使ったロックの中でも屈指の名曲の「She;s Tight」の2曲はライブの定番にもなっていますからね。

 

 ただ、運の悪いことに、この頃って、チープ・トリックだけじゃなく、エアロスミスも、KISSも低迷期なんですよね。いわば「受難期」で、彼ら自身の音楽が必ずしも悪いわけではなかったのに、誤解を受けやすいサイクルに入ってしまったのは気の毒でしたけどね。

 

 

6.Next Position Please(1983 US#61)

 

 6位はその次の作品ですね。こちらはトッド・ラングレンのプロデュース。

 

トッドというと、プロデューサーとしては難しい人との印象も持たれがちですが、同年代のチープ・トリックとは非常にウマがあったそうです。同じ、ブリティッシュ・ビート・マニアでもありますからね。例えばギターの音もここでは、パワー・コードじゃなくて、ちょっとアコースティックな響きもあるエフェクターを使っているんですが、ここの趣味でもトッドとリックは非常にあったみたいですよ。

 

 僕的に聴いても今でも人気のシングル曲「I Can't Take It」を始め、彼らの最もルーツへの憧憬が出たアルバムだと思うし、実際、レコーディング中にはヤードバーズ・メドレーなるものもやったらしです。でも、あまりに楽しみすぎたがためにレコード会社の目について、それが理由で2曲を削られ、トッドが関与を拒否したカバー曲をつけたされるという悲劇を味わいました。そして、この後が昨日も言った「最悪の4枚」なんですけどね。でも、このアルバムに関しては、そうした憂き目にあってもなおも良い作品です。

 

 

5.Cheap Trick(1997 US#99)

 

別名「セルフ・タイトル・アゲイン」とも言います。そして、これこそが本当の「カムバック・アルバム」です!

 

 これはチープ・トリックが、80s半ばから失われ昔からの感覚をセルフ・プロデュースを行うことでやっと取り戻した作品ですね。11位に選んだこの前作も良いんですけど、あれがやはりどこか気張った作品でちょっと必要以上に重かったとの比べると、こちらの方が本来の軽快さが戻ってるし、曲調にも緩急のバラエティがあるし、加えて、この当時の90sのオルタナ系ギター・ロックのの現在進行形にも合致してますね。正直、このアルバムの中の曲の方が、あの当時売れてたジン・ブロッサムズとかよりもむしろいいくらいです。

 

 彼らはここから現在に至るまで、音楽の方向性の基本形が変わりません。その意味で「軸がはっきり固定されたアルバム」こそここだし、その再定義ができた意味で、非常に外せないアルバムになっていると思います。

 

 

4.Dream Police(1979 US#6)

 

 アメリカでの「アット・ブドーカン」逆輸入ヒットの余波を出された、スタジオ・アルバム最大のヒットですね。

 

 キャリア的にはホクホクのはずなんですが、アーティストとして置かれた状況は必ずしも良くなかったようです。というのも、プロデュースを担当したトム・ワーマンとの仲がここで悪化してるんですね。このアルバム、それを証明するように実はかなりとっちらかっています。キーボード加えた70sのザ・フー路線のタイトル曲をはじめ、彼らのバラードの最高傑作、本当に名曲です、「ヴォイシズ」、トム・ピーターソンの歌うパンキッシュな「I Know What I Want」、そしてこのアルバムの中でしばし目立つロング・ジャムの一つの「Gonna Raise Hell」。バラバラなんですけどね。

 

 でも、今言った曲はいずれも代表曲になっているし、混乱の中でさえ良い曲が出せているのがこの当時の彼らの調子を物語っています。

 

 

3.In Color(1977 US#73)

 

俗に言う「蒼ざめたハイウェイ」というヤツですね。セカンド・アルバムです。

 

ただ、ここからの曲があの「ライブ・アット・ブドーカン」に収められているので、今となっては、あのアルバムの方がうまく代用してるかもしれません。それは当の本人たちも同じような気持ちなのか、曰く「かなりポップに録音された」というこのアルバムを長きにわたり嫌っていたことでも知られています。

 

でも、代表曲でシングル・ヒットもした「甘い罠」を始め日本でヒットした「今夜は帰さない」を始め、70s後半の洋楽ロック・クラシックがギッシリ詰まっている意味で絶対外せないんですけどね、これ。

 

 ちなみにこのアルバム、90年代末に、スティーヴ・アルビニを迎え、再録してるんですね。ただ、これがオクラになって世に出なかったんですが、ネットで出回った温源聞くに、実はあんまり変わっていなかった、というオチもあります(笑)。

 

 

2.Cheap Trick(1977)

 

 当時より、後年評価の方が高いファーストですね。

 

 チープ・トリックって、「元祖グランジ」的な言われ方もしますけど、その理由が実はこのアルバムなんですね。ここでのギターのギシギシな音、これは同郷シカゴの後輩、スマッシング・パンプキンズの初期にも受け継がれていたりします。この感覚、プロデュースを務めたジャック・ダグラスが「ライブハウスで聴いた音」をかなり忠実に再現したらしいんですけど、こうしたアプローチはまだ早すぎたのか、この当時は売れず、ポップになったセカンド以降が、まず日本でウケて、アメリカに逆輸入されて大物になった、ということですね。

 

 でも、名曲目白押しですよ。特にA面からB面の頭にかけて。これと、1位のアルバムのA面を足せば完璧なアルバムですね。

 

 

1.Heaven Tonight(1978 US#48)

 

 俗に言う「天国の罠」。やっぱりこれが1位ですね。

 

 これは、あの「ブドーカン」の公演のタイミングで出たアルバムで、のちにロック・アンセムとして幾多のカバーが生まれた名曲「サレンダー」が新曲として紹介されています。

 

 このアルバムはファーストの勢いと、セカンドのポップさかげんで最高のブレンドを見せていて、そこに彼らが敬愛する60sのイギリスのカルトバンドでのちのELOの前身でもありますザ・ムーヴの「カリフォルニアマン」のカバーもあるというマニア性を見せている意味で、彼らがどういうバンドかを語る際に、最も説得力のあるアルバムなんですよね。それゆえに1位にせずにはいられない作品です。

 

 

裏1位 Live At Budokan(1978 US#4)

 

 

 やっぱり、オリジナル・アルバムで選んだところで、彼らの場合、これがないと始まりません。名作ライブ盤です。

 

 これはなんか、奇跡の上に成り立った名作ですね。この当時の日本の洋楽界の「世界に先駆けたスターを作ろう」という気概と、それを迎えるファンのライブでの熱気、まだライヴ盤がロックにとって、時に最高傑作にもなりうる存在だったもの、そして、のちにレジェンドにもなるチープ・トリック本人の音楽的成長期の最中。こうした要素が1点に集まった結果に生まれたものです。

 

 それにしてもすごいよなあ。今の常識だったら、2枚目の時点で、いくら日本でも人気が出かかっていた頃と言っても、78年の5月の時点で武道館なんて、まだありえないポジションだったんですよ、彼ら。かなり強引に実現したコンサートだったのに、それが伝説の一夜になったわけだからなあ。

 

author:沢田太陽, category:FromワーストTo ベスト, 12:16
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全オリジナル・アルバム FromワーストToベスト(第14回)チープ・トリック その1 18ー11位

どうも。

 

 

先週に続いて、FromワーストToベスト、行きましょう。今回はこれです!

 

 

アメリカの愛すべきバンドにして、日本でも大事に愛されたバンドです。チープ・トリック、彼らで行きましょう。

 

チープ・トリックといえば最近

 

 

シンコー・ミュージックから、こういう本が出たばかりです。デビュー40周年本。実は僕も執筆に参加させていただいたりもしています。これ、今日出たんじゃなかったかな。

 

 

そんなチープ・トリックのアルバムを2回に分けて、あえていつものように順位をつけて紹介して行きましょう。まず、ワーストの18位はこちら!

 

 

18.Busted(1990 US#48)

 

チープ・トリックというバンドの場合、僕は特定期間だけがどうにも好きになれないんですが、それ以外はどれも好きです。ただ、「ワースト4」はいつも決まっているし、その中で1番嫌いなのがこのアルバムです。

 

これは、この前のアルバムがいわゆる「カムバック作」と言われているヤツなんですが、カムバックの仕方が今ひとつ悪かった上に、それよりひどいものになってしまったのがこれですね。もうね、なんか、いかにも周囲から「もう、君たちも40歳に成るんだから、音なのアルバムを作りなさい」と一方的に押し付けられた作品ですね。趣味の悪いアダルト・コンテンポラリーになっていて、「Whereever Would I Be」という、キャリア史上最悪のバラードまで歌わされています。あと、アレンジもいかにもエイティーズの悪いとこ、貼り付けたみたいで聴いてられません。これで彼らは、デビューから在籍したエピック・レコーズを去りますが、これではしょうがないですよね。よく我慢したと思います。

 

 

17.The Doctor(1986 US#115)

 

 1986年作のこれもひどいですね。デフ・レパードとの仕事で一般的に有名な、ロバート・ジョン・マット・ラング、ではなく、彼の弟子のトニー・プラットなる人がプロデュースしたアルバムですけど、「エイティーズ」という言葉で想像されうる悪趣味なズシーン、バシーン、ドラムにシンセがとにかく今聴くと違和感しかありません。曲はそんなに悪くないのですが、とにかくアレンジがひどすぎて。

 

 なお、この頃に彼らは映画「トップ・ガン」に「Mighty Wings」という曲を提供していて、これが実は今日に至るまでダウンロード人気が高かったりするんですが、せめて、あの曲だけでも入っていたらね。本人たちは「自分で作った曲でもないし」と言って、相手にしてないっぽいですけどね。

 

 

16.Standing On The Edge(1985 US#35)

 

 チープ・トリックにとって、これがよくない時代の始まりでしたね。彼らって、80年代前半は、周りの人たちがシンセとか、オーバーダブに走る中、彼らだけ昔ながらのシンプルなレコーディング・スタイルを続けていたのですが、レコード会社側からメスを入れられて、当時で言うところの「ナウでヤングな」音を押し付けられてしまいます。

 

 これは表面上は、彼らの発掘人でもあるジャック・ダグラス(エアロスミスの70sも彼です)のプロデュースなんですが、ダグラスにほとんど権限がなく、エンジニアのトニー・プラットが実権を握って、変なドラム・サウンドが始まってます。あと、ソングライティング・パートナーを外部からつけられ始めてもいます。

 

 せいぜい、「Tonight It's You」というミディアム曲がトップ40ヒット(MTVのチャートではトップ20入り)になったのだけが救いだったかな。

 

 

15.Lap Of Luxury(1988 US#16)

 

 これが世間で言うところのカムバック・アルバム。この中に入っていた「永遠の愛の炎(The Flame)」というパワー・バラードが全米1位になったので再注目されました。僕が本格的に彼らを聴き始めたのもその頃です。

 

 最初は、「いいじゃん」と思ってたんですよ。これが初めて買った彼らのアルバムだし。浪人してた時だったんですけど。だけど、大学入って、過去のカタログをCDで買うじゃないですか。そしたら、「昔の方が圧倒的にいいじゃん!」とか思うわけですよ(笑)。比較的、「The Flame」自体はそんなに嫌いじゃないんですけど、外部ソングライター主体の他の曲がイマイチで、後、エルヴィスの「Don't Be Cruel」のカバーも全米トップ10ヒットになるんですけど、このアレンジがまた大仰でひどくてね。ワースト・アルバムに選んだ「Busted」共々、リッチー・ズィトーってプロデューサーは嫌いです。

 

 ただ、それでもこの中の数少ない自作曲「Never Had A Lot To Lose」は昔ながらの彼ららしいいいロックンロールで、未だにライブの定番。これがあるから、最悪期のトップに選んだようなものです。

 

 

14.Special One(2003 US#128)

 

 以上の4枚を除くと、あとはもう嫌いなアルバムのない、僕の好きなチープ・トリックです(笑)、ここからは正直、嫌いなアルバムは1枚もありません。

 

 とりわけ、ワースト・アルバムより先は、彼らは何気に、頑固一徹の同じようなサウンドの職人ロックバンドになりますね。その不返ぶりと言ったら、実は何気にラモーンズとかAC/DCとタメ張るくらいに変わらないんじゃないかとさえ思うくらい。なので、とりわけ90年代後半以降、極めてランク付けにくいんです。

 

 その中で、あえて一番下にしたのが2003年のこのアルバム。別に悪くないんです。ただ、一連の「ガレージ、ミディアム、ビートルズ・フレイヴァー」の彼らの3拍子の中で、これが一番まったりしてるんですね。もうちょっと元気あってもいいかなと。まあ、「Busted」みたいな押し付けられた大人っぽさじゃなく、自分自身で選択した大人なロックのアルバムですけどね。

 

 

13.We're All Alright(2017 US#63)

 

 目下のところの最新作ですね。数ヶ月前に出たばかりです。

 

 この前のアルバムは7年ぶりのアルバムだったんですけど、これは僅か1年のインターバルで出されました。そういうこともあって、元気のあるところをアピールしたかったのか、過去にないくらいうるさいいロックンロール・アルバムになっています。でも、ちょっと行き過ぎ(笑)。もうちょっとバランス取っても良かったんじゃないかな、これ。ファースト・アルバムの時のような、ガレージ・ロック・アルバムですね。ロビンが高い声、出なくなってますけど、そのぶん、前からその傾向強かったんですけど、ザ・フーのロジャー・ダルトリーに歌い方、接近してきてます。

 

 あと、チープ・トリック・ファンにはおなじみの、60sのカルト・バンド、ザ・ムーヴのカバーを久しぶりにやってます。しかも最大ヒットの「Blackberry Way」。これが今回、ボーナス・トラック扱いなんですが、僕としてはメインで入れて欲しかったな。

 

 

12.Rockford(2006 US#101)

 

 2006年のアルバムですね。この頃、彼らは自主レーベルになって長くなってはいましたけど、このアルバム・タイトルは、彼らの地元、イリノイ州の中での拠点を指しています。

 

 これは終始一貫、彼らが良く呼ばれるところの「パワー・ポップ」を実践したアルバムで、そのジャンルにすごく思い入れのある人なら、もっと上位に入れたんじゃないかな。実際、ファン人気は高いですからね。もちろん僕も嫌いじゃないですが、もっと他に好きなアルバムがあるんでね。

 

 僕は中でも、先行シングルになったリンダ・ペリーとの共作曲の「Perfect Stranger」は好きですけどね。かつて4ノン・ブロンズ、そのあとは売れっ子ソングライターになった彼女との相性は良いと僕は思ったんですけど、特に進展はなかったですね。¥¥

 

 

 ただ、ここでロビンの変声期が本格的に始まっていて、声の調子が聴いてて辛くなるアルバムでもあります。

 

 

11.Woke Up With A Monster(1994 US#123)

 

 そして11位は、94年作の「Woke Up With A Monster」。

 

 このアルバムは、ワーナーに移籍しての第1弾で、メジャーでの最後のアルバムです。だからといってチャート順位がその後に悪くなったという話がないのは、アルバム名の横の最高位を見たらわかることなんですけどね。

 

 これはもう、エピック後期の「最悪の4枚」のフラストレ−ションを爆発させたというか、この当時のグランジ・ブームでの再評価も相まって、あの当時「グランジになった」とも紹介された、非常にアグレッシブでハードなアルバムでしたね。僕もあの当時、その気持ちが痛いほどよくわかって、すごく同情したものです。

 

 ただ、今聴くと、ちょっと過剰だったり、かったるかったりするんですけどね。あと、プロデューサーはベテランのテッド・テンプルマンじゃなくて、あの当時のオルタナな人脈でやったほうが良かったと思うんですけどね。でも、いいんです。内容以上に、あの当時の本人たちのスーッと晴れた気分は今でもストレートに伝わるアルバムなのでね。

 

 

 

 

 

 

author:沢田太陽, category:FromワーストTo ベスト, 11:41
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全オリジナル・アルバム From ワースト To ベスト (第13回)アリス・クーパー 何でもやった約50年 その2 10−1位 

どうも。

 

では、昨日の続きで

 

 

FromワーストToベスト、アリス・クーパーの第2回、いきましょう。いよいよトップ10です。

 

 

10.Trash(1989US#20UK#2)

 

From10位は1989年作の「Trash」。一般にアリスのカムバック作と見られている作品ですね。ボン・ジョヴィの制作チームがポップなメタルで復活させた作品です。今の30、40代にとってはこのアルバムからすごくヒットした「ポイズン」って曲のイメージが強いものです。

 

 あの当時、正直言って嫌いだったんですよ。なんで、あんなポップ・メタルに、こんなダミ声の男が熱唱しなきゃならないんだ、と過去を知らない僕は思ったものでした。ただ、今回聴き直してですね、実は曲もプロデュースもかなりしっかり作ってあったことに気がついて、それで順位を予定よりだいぶあげたんですよね。やっぱり、楽曲とプロデュースのクオリティでこれは評価されるだけのものはあったなと。昨日、最下位に選んだ、最悪のメタルの例を知っただけになおさらでした。

 

でも、やっぱりこれが彼の本筋ではないですよ。

 

9.From The Inside(1978 US#68 UK#60)

 

でも、70年代後半の、AOR期のアリスならこれが最高です。上の9分割の左下です。プロデュースになんと、デヴィッド・フォスターですよ!あのアリス・クーパーが、フォスターの奏でるメジャー・セヴンスのキーボードのコードに乗って歌うなんて想像出来ますか(笑)?でも、これはそれを実際にやりきった作品で、ものすごく違和感あるんですけど、それがなんか心地よく聞こえるすごく良い意味で変なアルバムです。

 

ここからは「How You Gonna See Me Now」という、これまたバラードがヒットしまして、アルバム4枚連続でバラードがヒットするという、珍しい記録を彼は作りました。

 

 

8.Flush The Fashion(1980 US#44UK#56)

 

 そのAOR期最高のアルバムの直後は、ニュー・ウェイヴ期最高のアルバムです。本当に振れ幅すごいよなあ。まあ、それが1980年代直前という時代でもありますけどね。

 

 このアルバムは、シンセを大胆に使った、エレ・ポップといえばそうなんですけど、まだハードロックのギターは効果的に生かした折衷作だったんですけど、このくらいの軽いエレクトロの使用くらいの方が彼には合います。この中での出色の出来は、アタックのシンセ大活躍の「(We Are All Cones)」。これ、プロデュースがロイ・トーマス・ベイカーなんですよね。一般にクイーンで有名な人ではありますが、カーズでも当てた人です。ここでのプロデュースも、もう思いっきりカーズです。

 

 これは今でもステージでやってほしいな。

 

 

7.Eyes Of Alice Cooper(2003 IS#184UK#112)

 

アリス・クーパーの復活撃は世にも知られたことですが、こと音楽に関して言うと、やっぱり僕としてはメタルブームに便乗しての復活よりも、70年代の黄金期のようなサウンドでこそ復活して欲しかったです。

 

 で、それが実現したのが2003年のこのアルバムですね。もう、この頃のアリスはインディだし、注目は同時代でほとんどされていなかったのですが、どうやらその間に、70s的なソリッドな音作りのギターにいつの間にか回帰してたんですね!そしたら、これが良くて、彼がどんどん復活しはじめるんです!

 

 昨日も言ったように、ミレニアムにさしかかった頃のアリスはちょっと借り物っぽい感じがして不自然だったんですけど、ここでの余計な贅沢を落とした小気味よいロックンロールこそ、本来彼が必要としていたものなんじゃないかとおもいます。これ、音を聴いた感じ、この当時すごく流行ってたポップ・パンクと、ストロークス世代のガレージ・ロック・リバイバル。この2つの両方に影響を受けてたのではないか。そう思える作品です。

 

 

6.Dirty Diamonds(2005 US#169 UK#89)

 

 2000年代以降の作品で最高傑作はこれですね。というか、1976年以降でもこれが最高だと思います。サウンドは完全に70sの全盛期のガレージ〜ハードロック・スタイルで、ほとんどリフという構成もいいですね。その意味では7位の作品の延長線上にはあるんですけど、ここで光るのはアリスがジョニー・キャッシュみたいな、ダークで枯れたカントリー・テイストの曲をやってるんですね。これはさすがに、50代以降になったからこそ出来る曲です。これ以降にこういう曲がないんですけど、もっと生かせば良いのにね。

 

 最高位こそ高くないアルバムですが、これ以降にチャート実績がグンと上がっていることを考えると、ここがやはり起爆にはなっていると思いますね。このアルバムは、上の写真の右下です。

 

 

5.School's Out(1972 US#2 UK#5)

 

 いろんなことを長きに渡ってやってきたアリスですが、上位5枚はやっぱり70s前半の全盛期からですね。

 

 まず5位は、タイトル曲の知名度ならナンバーワンのアルバムですね。上のジャケ写真で1段目の中央です。でも、なんで5位なのかというと、実はタイトル曲以外が強くないアルバムだからです(笑)。いろいろバラエティに富んで作ってはあるんですが、多様性に頭が行き過ぎちゃったか、曲そのものの力が強くないんですよね。

 

 でも、それでもタイトル曲の力強さとオーラはやっぱりキャリア史上屈指ですけどね。キッズたちの心の暗部にあるものを呼び起こす感じとかね。これは永遠のロックンロールのキッズ・アンセムになり続けています。

 

 

4.Love It To Death(1971 US#35)

 

 3枚目のアルバムにして、記念すべき初ブレイク作ですね。2段めの左。

 

最初の2枚がアヴァンギャルドなサイケ・アルバムで商業的にさっぱりだったところを、このアルバムではストレートなリフ主体のロックンロールになっていて、それが功を奏しました。そして、「ティーンのアンセムを書く」という、全盛期の時代のコンセプトが芽生えはじめた頃で「I'm Eighteen」といった名曲も生まれます。

 

 ただ、思うにこの頃のアリス、まだ脳裏にはグラムだの、ハードロックだのの意識、なかったんじゃないかとも思うんですよね。彼は出身はミシガン州デトロイトですが、そこで彼が駆け出しの頃に話題と言えばMC5にストゥージズですよ。ちょっと遅れてそうした地元のガレージ・ロックに続いたかな。あと、まだこの頃はブラック・サバスはもう世に出て来てますけど、1年遅れで悪魔はやったんですけど、これはどっちかというとストーンズのスタイルだったから、ハードロックでが分類できない難しさはありますね。グラミの方でイギリスのファンが共鳴したのはわかる気がします。

 

 

3.Welcome To My Nightmare(1975)US#27 UK#23)

 

 これもまぎれもなく代表作ですね。写真の2段めの右です。

 

 1975年というと、グラム・ロックはもう終わっていますが、もともとそうしたシーンとは関係ないとかから出て来たアリスは、「悪夢」をテーマとしたコンセプト・アルバムを作ることによって、世界観をよりトータルに広げ、音楽的にも多様な実りを見せます。これがむしろ、「アメリカン・ハードロック/ヘヴィ・メタルの初期のパイオニア」になったのも非常によくわかります。ちょうどこの頃はもう、キッスやエアロスミスがアメリカの次の有望なハードロック・バンドとして出て来ている頃ですが、このグレードのものはまだ当時の彼らには作れていなかった。そうしたことで先輩としての意地は見せた作品にもなってると思います。

 

 あと、ここから「パワー・バラードのアリス」というか、今後、必ず1曲入るようになるスローな楽曲がここから生まれてますね。「Only Women Bleed」。ここからしばらく、彼はバラード・キングにもなります。

 

 

2.Killer(1971 US#21)

 

 これも傑作ですね。1段目の右上の蛇のジャケ写。このコブラが彼のトレードマークにもなっていきます。

 

 これは、こと、ロックンロール的な観点でいくと抜群に一番ですね。ここからボブ・エズリンの単独プロデュースになるわけですけど、彼自身がここで培った能力がこのあとキッスにも生かされていくことにもなります。

 

 ここはとにかく代表曲が多い。「Be My Lover」「Under The Wheel」「Desperado」。いずれもこの当時のアメリカン・ロックンロール・アンセムです。このあたりの曲だと、ハードロックだけじゃなく、パンクの人でもルーツにしうる明快なストレートさがあります。

 

 

1.Billion Dollar Babies(1973 US#1UK#4)

 

 

1位はやっぱり、これでしょう!アリス自身の最盛と、時代のニーズが合致した最高傑作ですね。

 

 このアルバムは前作「スクールズ・アウト」が1曲に集中して表現していたものをアルバム全体にちゃんと拡大することが出来たことで非常に完成度の高いものになっていますね。ロックンロールとして最高級のものを作りつつ、サウンドにも多様性と奥行きがあり、歌詞も「Elected」「No More Mr Nice Guy」に見られるような諧謔精神とアイロニーが見えるものになっているし。これが、ロンドンからボウイの「ジギー・スターダスト」が鳴ってる中、アメリカから出て来たというのは非常に興味深いです。ボウイみたいな神秘性やアート性には及ばないものの、その分、こちらにはアメリカンらしいエンタメ性と、ウイットにとんだひらめきがあるというかね。

 

 あと、アメリカの事情で見ても、イギリスものじゃない国産のハードロックがしっかりと根を下ろすようになったのも、やっぱりこのアルバムぐらいからじゃないのかな、とは思いますね。 

 

 

 ・・といった感じでしょうか。

 

 次回は、来週、早速やります。ちょっと、ロックっぽいヤツが続きますけどね。既にオクラにしたヤツが昨日も言ったサバスも含め、実は3つあるんですけどね。

 

 

author:沢田太陽, category:FromワーストTo ベスト, 08:07
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全オリジナル・アルバム From ワースト To ベスト (第13回)アリス・クーパー 何でもやった約50年 その1 27−11位 

どうも。

 

あいだがかなり空いてしまいましたが、今日はこれ行きましょう。

 

今回が一番マニアックです。これです!

 

 

元祖ショック・ロッカーこと、アリス・クーパーで行きます。

 

実は一昨日のポストが伏線だったんですね(笑)。7月以降、僕は世界でヒットした主要なアルバムの順位をエクセルに記録して補完する妙な習慣をはじめたんですけど(笑)、そこでですね、アリス・クーパーの新作がですね、イギリス、オーストラリア、ドイツ、スウェーデンでトップ10入りした姿を見て、驚いたんですね。で、その新作そのものも僕は、特に新しさがあったわけではなかったものの、「こういう素朴なハードロックいいなあ」と素直に感動したんですね。

 

 

 で、13回目でしょ?本当は予定、ブラック・サバスだったんです。やっぱ悪魔の数字なんで(笑)。ただ、とはいえ、今、サバスであんまり話題性がないし、僕がこれまでやってきたこの企画の中では群抜いてメタルでしょ?僕自身はサバス大好きなので問題はなかったんですけど、でも、やったところでオジー礼賛だけにしかならないしなあ・・とおもって、二の足踏んでたら、出来なくなっていたんです(苦笑)。

 

 で、勢いでアリス・クーパーのファーストから最新作までを全部聴いてみたところ

 

なんか、いろいろやり過ぎで、面白いなこのオッサン!

 

 とおもって、「紹介するの、今回アリだな」とおもってやることにしました。

 

 

 とはいえ、27枚もあって大変なんですが、なるべく奇蹟をわかりやすく紹介したいかなとおもいます。

 

 

ではワーストから。

 

 

26.Constrictor(1986US#59UK#41)&Raise Your Fist &Yell(1987 US#72UK#48)

 

ワーストは2枚あります。1986年の「Constrictor」と翌年の「Raise Your Fist&Yell」です。

 

これは70年代のアメリカでのグラムロックスターだったアリスが80年代の空前のメタル・ブームに乗って復活しようとしたアルバムですけど、いかんせん、これがひどいのなんの!音が今聴いても、いや、当時の耳でもすっごく安っぽくてですね。さらにひどいのはギタリストね。アリスが歌ってる最中から、これ見よがしの「ピュー!」「グォオオン」みたいなオカズをやたら入れたがって、曲を聴かせるのを邪魔するんですよね。これ、ホント無惨です。このあとアリスはメタル復活第2弾を別のプロダクション・チームと行ないますが、そうなっても仕方がない内容です。

 

 

24Lace&Whisky(1977 US#42UK#33)

 

 続いては77年作の「lace&Whisky」。ここでは、70年代前半までのグラム〜ハードロックのブームが世代交代になり、キッスとかエアロスミスが出て来るのを横目に、アイディアの尽きた観もあったアリスが、アダルト・コンテンポラリーに走った一作です。ハードロックだとダミ声で歌う彼が、ここでは朗々とした美声でバラードを歌い上げています。この中の「YOU&ME」という曲は全米チャートでトップ10に入るヒットになっているんですが、実はこの時点で、アルバム3枚連続で続いたバラード・ヒットでもありました。

 

 

23.Zipper Catches Skin(1982)

 

 80年代前半はニュー・ウェイヴ期のアリスでした。その路線で彼、4枚アルバムを作っているんですが、その中の3枚目。前作まではいい感じだったんですけど、ここで疲れちゃったか、かなりテキトーな方向性の見えない作品を作ってしまいました。この頃、アリスのドラッグの状態がかなりピークに近いくらい悪かったのも事実ですけど。チャート実績を書いていないのは、ホントにヒットしなかったからです。

 

 

23.Brutal Planet(2000 US#193 UK#38 )

 

この当時で6年ぶりとなった2000年のアルバムです。この当時、彼が影響を与えたマリリン・マンソンがインダストリアル・ロックで売れていたので、それに便乗してます。この当時、インダストリアルも含めたニュー・メタルの全盛だったので、その選択は一見正しいようにも見えました。ただ、当のアリス先生がどうも楽しそうじゃないんですね、このアルバム。たしかに、アレンジから何から完全に外部の人が持ち込んだものでしたからね。その「借り物感」が本人的にもイヤだったんじゃないかな。

 

 

22.Hey Stupid(1991 US#47 UK#4)

 

1991年、前作のメタル復活計画第2弾が大成功した後に出されたアルバムですね。その前のアルバムでは、ボン・ジョヴィの制作チームとの共作でしたけど、今回は組むプロデューサーを超えて臨んだものです。重低音の安定感、曲を聴かせる力のあるソングライターもついて。そう考えると成功しているかのようにも見えるんですがかねてから「ボンジョヴィは甘口すぎる」との批判もあがっていたんですけど、昨今、この当時の流行りのメタルの音を聞き返してもはずかしいですか。

 

 

21.The Last Temptation(1994 US#68 UK#6)

 

その次のアルバムですね。もう、メタル・ブームも去り、次の波をどう生き残るかがカギだったんですけどね。

 

 このアルバムではサウンドガーデンのクリス・コーネルがバックシンガーをつとめるなど、グランジに対応したアルバムだったんですけど、同時にエアロスミスの「ゲット・ア・グリップ」を手がけたソングライティング・チームなどが参加しているために、なんか全体がすごくエアロスミス的というか、その2番煎じな感じが否めないんですよね。

 

 

20.Dragontown(2001 US#197 UK#87)

 

 23 位のアルバムの続編です。ただ、前作でのインダストリアル路線のウケが良くなかったこともあり、チャートはもうランクインするのでやっと、という、ちょっとその後の活動に暗雲が高まる感じですね。

 

 アリス本人、やっぱり借り物のインダストリアル(といっても、そこまでバルバリなインダストリアルでもない)にどうしても慣れないのか、みずから70年代時の黄金期にタッグを組んでプロデュースをつとめたボブ・エズリンと久々の共演がついています。やっぱり、「自分が慣れた表現のものじゃないと気持ち悪い」と言う感覚はやっぱり生きてたんですかね。

 

 

19.Pretties For You(1969 US#193)

 

 続いて紹介するのが、なんとデビュー作です!アリスは1969年にデビューしてて、その頃はしばらくは「アリスの名前を生かした5人組バンド」だったんですけどね。

 

 ただ、この当時、彼、ハードロックでもなんでもなかったんですよね。ギターのかき鳴らしは激しいんですけど、すごくアヴァンギャルドなタイプのサイケデリック・アルバムで、ハッキリ言って曲がメチャクチャ覚えにくいです。それもそのはず、これ、もともと、フランク・ザッパのレーベルからデビューしたわけですからね。その時点で、まともなことはかなり控えるはずです。

 

 60年代のサイケ盤なので、根本的に曲が一筋縄ではいかない感じなのがねえ。

 

 

18.Easy Action(1970)

 

 デビュー作よりはだいぶ聴きやすくはなったものの、まだサイケ路線ですね。ときおり、後のアリスらしいロックンロールも顔を除かせはするんですけどね。あと、このアルバムはジャケのセンスの悪さもなかなかのものがあります。

 

 このセカンドはチャート実績も全然あげられなかったことで次作に勝負がかかることになったんですけど、これの次から才能を開花させて行きます。

 

 

17.Along Came A Spider(2008 US#53UK#31)

 

 この前2作で感覚的に復活して、70sの黄金期に近い音を鳴らすようになって自信を持ったんでしょう。これは70sの頃のような、シリアル・キラーを題材にしたコンセプト・アルバム。ただ、シアトリカルに戻ったせいだったのか、前2作で鳴らしてなかったギター・ソロを戻してしまい、ソリッドな感じが後退したのはちょっと残念だったかな。ただ、前2作の評判と、彼らしいコンセプト・アルバムの制作と言う話題性で、チャート的には後押しにはなったようですね。

 

 

16.Welcome 2 My Nightmare(2011 US#22)

 

 これが前作ですね。これは70sのときのプロデューサー、ボブ・エズリンが本格的にアルバム1枚プロデュースするにあたって、1975年のアリスの代表作「ウェルカム・トゥ・マイ・ナイトメア」の続編を作ろうと言うことになって出来たアルバムです。その話題性が効いたかアメリカでは22位まで上がる久々のヒットとなりました。

 

 これ、意気込みはすごくわかるし、それゆえのディスコ・チューンやらバラード、そして驚きのケシャとのデュエット(意外といいんだ、これ)にまでつながったと思うんですが、「過去最大のバラエティ作」にいつの間にかテーマがすり替わっていて、「前作を上回る悪夢」がどこかに消えてしまったのが問題です(笑)。まあ、前向きにサービス精神見せただけ評価しますけどね。

 

 

15.Dada(1983 UK#93)

 

 ニュー・ウェイヴ期最後のアルバムはコンセプト・アルバムですね。このアルバムはですね、1990年だったかな。ワーナーが彼の過去作をCD化した際、「日本初音源化」という名のもとに売って、子供心に「おお、レアだ!」と興奮したのを覚えてます。

 

 これ、たしかにしっかりと作られてはいて、ファンのあいだでは「幻の名作」として語られ、こういうチャートでも上位に入ることが少なくないんですが、いかんせん、当時のアリスが完全にドラッグにハマってて、作ったこと覚えてない作品なんですね、これ(苦笑)。ライブでも1曲も披露されたことがありません。僕、ライブでやる頻度は重視するので、そこがマイナス点になってこの順位です。

 

 

14.Special Forces(1981 US#125UK#96)

 

 同じニュー・ウェイヴ・アルバムなら、その路線の2枚目のこっちの方が好きですね。その路線で、もっとも本格的にニュー・ウェイヴになってて、イギー・ポップの「イディオット」みたいな感じもあってカッコいいです。ただ、若干、他の彼のアルバムの中では浮いてて、そのせいで人気はないですね。もうちょっとギター・ロックがあるくらいが一番バランスは良いんでしょうね、彼の場合。

 

 

13.Paranormal(2017 US#32UK#6)

 

 目下のところの最新作。16位の前作から6年ぶりのアルバムです。基本、2003年のアルバム以降は全盛期の頃の70sスタイルの音作りなので、これも外してません。僕が「昔ながらのシンプルなハードロックでかっこいいじゃないか」と思ってはみたものの、その路線で既に5枚目だったことを考えると、マメなチェックって必要だな、過去に実績のあるアーティストの現在の作品を「余生」的な扱いには決して出来なくなったんだな、と改めて思いました。これが10年ひと昔前だったら、「今の旬なアーティスト王だけで手一杯だよ」となってたんですけど、ストリーミング・カルチャーの利点のひとつですね。そういうのがあるから、このチャート実績なんだとも思うし。

 

 トップ10に入れるまではしなかったものの、敬意を評して彼らしい”13”の順位にしておきましょう。

 

 

12.Muscle Of Love(1974 US#10UK#36)

 

これはまだアリスが、グラム〜ハードロックの頂点にいた頃の作品ですね。通常、その勢いで上位につける作品です。ただ、これ、その前2つのキャリア史上の最大ヒット作がコンセプトを持ったバラエティに富んだ作品だったのでシンプルに作ろうとしたのはわかるんですけど、シンプルすぎて味がプレインになってしまったアルバムですね(笑)。この人、振れ幅が極端な人なのが、キャリアを全編追うとわかって結構楽しいですよ。

 

 

11.Alice Cooper Goes To Hell(1976 US#27UK#23)

 

 これは先ほどの触れた代表作「Welcome To My Nightmare」の次に、同じようなコンセプトで作ったアルバムですね。通常、そうした、「前作の延長線上」というアルバムは得てして評判良くないのですが、これの場合は、彼がこの当時、ディスコ、ファンクものにも少し乗ろうとした好奇心を買って、この順位にしました。

 

 あと、ここからこの前のアルバムに続いてバラード「I Never Cry(邦題「俺は泣かない」)」が全米チャートの12位まであがるヒットになり、この頃の彼のAOR路線を築くことにもなります。

 

 

author:沢田太陽, category:FromワーストTo ベスト, 12:12
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