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全オリジナル・アルバム From ワースト To ベスト (第19回)クイーン 15-1位

どうも。

 

 

では、告知通り、今週はクイーン特集、行きたいと思います。

 

 

まずはこれから!

 

 

恒例のFromワーストToベスト、これをやってみたいと思います。

 

 

僕、クイーンのアルバム・ランキングって、だいたいどれ見ても不満なんですよね。これは洋の東西を問わず、だいたい、ハードロック期のクイーンを好む傾向が強いんですよね。でも、それって僕に言わせてもらうと、「フレディとブライアンしか評価してなくない?」と思えて、そこが嫌なんですね。

 

なので、やる前に改めて断っておきます。

 

僕の場合は

 

 

フレディ、ブライアン、ロジャー、ジョンの4人の総合力重視で評価します!

 

なので、ある特定の時期に上位が固まるようなことは、僕の場合はありません。

 

それから今回は、あくまでフレディがヴォーカルをとった時期のみに限ってもいます。そういうこともあり、対象アルバムは15枚。

 

では、早速、15位から見てみましょう!

 

 

15.Made In Heaven(1995 UK#1, US#58)

 

 まず、ワーストの15位に選んだのは95年のフレディ最後のアルバム「Made In Heaven」ですね。

 

遺作を最下位にするのは心苦しいところもあるんですけど、幾つかの点でどうしても好きになれません。一つは、死の直前すぎて、歌詞がちょっと聞くのが辛いこと。フレディのソロであまりに有名な「Born To Love You」のリミックスが入ってしまっていること。それから全体に冴えがないこと。それから、やっぱりフレディの遺作ということでどうしてもそうならざるをえないところはあるんですけど、4人のソングライティングのバランスがアルバム構成上、崩れてしまっていること。これがどうしても気になっちゃうんですよねえ。フレディ自身に「死の目前まで続けたい」という意思はあったとは思うんですけど、やはりこの一つ前のアルバムで完全燃焼とした方がよかった気がします。

 

 

14.Flash Gordon(1981 UK#10 US#23)

 

 14位は「フラッシュ・ゴードン」のサントラですね。このアルバムに関して言うと、いわゆるサントラなので、インストと劇中のシーンの音声でほとんどが構成されていて、フレディのヴォーカルという、クイーンで最も聞きたいものが聞けない欲求不満が全編にあったりするわけです。あと、映画そのものが駄作で、のちにあのテディ・ベアのコメディ「テッド」で散々ネタにされてしまったことくらいでしか思い出されなかったりもします。ただ、このアルバムでかなり積極的にシンセサイザーに向かい合ったことが、とりわけ後年のロジャー・テイラーのソングライティングへの貢献を感じさせたりもするので、その意味では興味深いです。

 

 

13.The Miracle(1989 UK#1 US#24)

 

 13位は1989年の「ザ・ミラクル」。世界的には売れたアルバムですが、ここからフレディの体調不良が始まり、ライブができなくなります。このアルバムは、この一つ前で築いたものの、サウンド的にはほぼ延長にありますね。この前のアルバムから復活したブライアンのハードロック・ギターに、ロジャーのシンセ・ポップ、そしてソングライティング・チーム化したフレディ&ジョンのソウルフルなポップ路線。ただ、そこに新しさがなかったのと、最大の代表曲が「I Want It All」で終わったというインパクトの弱さがこのアルバムをこの順位にしてしまいました。

 

 

12.Queen(1973 UK#24 US#83)

 

12位はデビュー・アルバム。邦題は「戦慄の王女」。これ、「低すぎる」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、、そうしてしまった理由としては、この時点での「未完成さ」があります。まだ、彼らの楽曲スタイルがこの時点では出来上がっていないんですね。確立されていたのはおそらくブライアンのギターのフレーズくらい。あと、のちのクイーンに顕著になる、あの「音の分離の良さ」がここではなく、レコーディングが粗い感じがするのも、あとから聞くとちょっと違和感あるんですよね。フレディのヴォーカルも、後から比べたらまだかなり未成熟だし。そういうこともあり、個人的にそこまでピンとくるアルバムでは昔からないんですけど、「Keep Yourself Alive」がある分、13位のアルバムより上にしました。

 

 

11.Jazz(1978 UK#2 US#6)

 

11位は1978年の「Jazz」。このアルバムは、とりわけ欧米での人気と評価が高いですね。おそらく「Dont Stop Me Now」の人気が高いからだと思います。欧米人、ああいう「前向きな気分にさせてくれる曲」、大好きですからね。あと「バイシクル・レース」かな。そのテのシングル・ヒット曲の影響も大きいかと思います。ただ、僕的には正直、アルバムとしてそこまで面白い作品ではないですね。よく、「クイーンの多様性」という例で引き合いには出されるんですが、それだったらその前のアルバムの方がもっとドラスティックでサウンドの幅はあります。ぶっちゃけ、この前のアルバムの延長線上にある作品で、長めのツアーに出るからライブむけによりノリの良い曲を作った。今からしたら、そういうアルバムだった気がします。実際、このアルバムのツアーでライウ盤も作られてますしね。欧米のファンは「過小評価作」というのですが、僕は「過大評価作」だと思っています。

 

 

10.Hot Space(1982 UK#4 US#22)

 

 10位は「ホット・スペース」。クイーン最大の問題作でアンチも非常に大きな作品です。僕はリアル・タイムで最初に自分で買ったアルバムがコレだったりするんですが、中学1年だった僕にも「え、ええ〜」とガッカリしたアルバムでした。ただ、それは、僕がまだこのころに、この時期の彼らはトライしたブラック・ミュージックのことを知らなかったからなんですね。とりわけ冒頭の「Staying Power」から判断するに、影響源として強いのはマイケル・ジャクソンだったと思います。アレンジがモロですもん。あとブライアン・メイ作の「Dancer」は、のちに「ロック系ヒップホップのサンプリング定番アーティスト」になるビリー・スクワイア、露骨意識してますね。同じプロデューサー(レインホルド・マック)使ってるので十分あり得る話です。これ、出たのがマイケルの「スリラー」の半年前で、プリンスのブームの1、2年前と考えると、すごく先見の明、あったと思うんですよ。ただ、彼らのこれまでに築き上げてきた「欧州白人の美学」的なイメージが邪魔したのと、プラス、「決定的なシングル・ヒット」がなかったのが実は一番痛かったのではないのかな、と思います。ボウイとの「アンダー・プレッシャー」ももとは、この半年前に出たベスト盤の新曲でしたからね。

 

 

9.The Works(1984 UK#2 US#24)

 

9位は「ザ・ワークス」。このアルバムは「ホット・スペース」で大コケした後に大復活したアルバムです。とりわけイギリス国内では93週トップ100に入る彼ら最大のロングセラーになり、ツアーの成功もあって、ヨーロッパで巨大化します。伝説化している「ライブエイド」もこのアルバムでのツアーです。ただ、日本では、このアルバムで「もうロックのクイーンは帰ってこない」と上の世代には思われ、下の世代はデュラン・デュランとカルチャー・クラブに好奇心が向かっていたため、割を食ってましたね。僕的には、このアルバム、ちょっと後ろ向きな感じがするのが抵抗あるんですよね。「ホット・スペース」に人気がなかったから、ちょっと前のアルバムの作り方に戻そう、みたいなね。実際、このころ、解散直前でもあったし、本来テンション低いはずなんですよ。ただ、それでも「Radio Ga Ga」と「I Want To Break Free」の2曲のビッグ・ヒットを出してしまうあたりに彼らの底力を感じるわけです。しかも、前者がロジャー、後者がジョンですからね、曲作ったの。ブライアンが「Hammer To Fall」、フレディが「It's A Hard Life」と「Is This The World We Create」と4人がソングライターとして対等な立場なっているのもいいことです。

 

 

8.Innuendo(1991 UK#1,US#30)

 

8位は「イニュエンド」。実質、これこそが「遺作」です。ビートルズで言う所の「アビー・ロード」かなあ。「Made In Heaven」って申し訳ないけど、やっぱり後から処理した作品にしか聞こえないし、4人がガッチリと最後に力を合わせて作った意味では、やっぱりこれがラストだと思います。このアルバムはその意気込みが伝わりますね。彼らの場合、「ビートルズ的個人主義」が非常に強いバンドで、それが後期に、悪い時にはとっちらかって聞こえもしたんですが、このアルバムはそのやり方を貫きながらも強い統一感を感じさせるアルバムです。そうなった理由は、やっぱり「歌詞」かなと思いますね。死を意識したフレディの歌詞は時に重く(「I'm Going Slightly Mad」「Bijou」が特に)、そのシリアスさとロジャー作の「Those Were The Days Of Our Lives」、そしてブライアン作のクイーン最後の名曲「The SHow Must Go On」が持つ生へのポジティヴなヴァイヴ。これが絶妙なコントラストを生み出しています。クイーンの中で、最も内面のパーソナルな部分が伝わって来るアルバムですね。フレディとしては「第2のボヘミアン・ラプソディ」を狙ったようなタイトル曲に賭けた気もするんですが、今となっては「ショー・マスト・ゴー・オン!」という彼の熱唱が最大の聞きどころになっている作品でもあります。

 

 

7.A Day At The Races(1976 UK#1, US#5)

 

7位は「華麗なるレース」。これは日本でオリコンの1位になった作品でもありますね。それだけ、予てからの日本での人気に加えて、その前作での国際的大ブレイクの影響も強かったのでしょう。ただ、このアルバム、その「前作」の延長線上に作られたアルバムとして、当時は「アイデアがない」みたいな感じで酷評されてたんですってね。確かに新しいアイディアはこのアルバムにはないんですけど、それでも全盛期なだけあって、曲のレベルは最高潮のままだったと思うんですよね。実際、「Somebody To Love」は今日でも大人気の1曲だし、「Tie Your Mother Down」はその後、アダム・ランバートがヴォーカルであろうが絶対セットリストから外れない大定番ハードロック・ソングだし、「Goold Old Fashioned Loverboy」は彼らの持ち味であるイギリス伝統のミュージック・ホール色路線の名曲だし、「You Take My Breath Away」は隠れた名バラードだし、日本人にとっては日本語詞ソングの代名詞「手を取りあって」もある。曲の印象だけでとったら、全く悪いアルバムでもなんでもないんですよね。それだけm彼らに対して求められるハードルが上がっていた、ということでしょう。さらに言えば、フレディの熱唱パフォーマンスのヴォルテージが一気に上がるのもこのアルバムからでもあります。

 

 

6.Queen II(1974 UK#5,US#49)

 

6位は「クイーンII」。古株の日本のクイーン・ファンだと、これが1位になりますね。これで日本で世界に先駆けてブレイクしたわけでもありますからね。確かにこれ、ロック史のコンテクストで見てみても、「ハードロックとグラムロックとプログレの見事なる融合」なんですよ、これ。「曲の骨格はグラムロックみたいなんだけど、でもそれにしちゃハードで、組曲なんかもあってプログレみたいだ」。そういう「足し算」的な美学がこのアルバムにはあり、確かにこの時期のイギリス産のロックをひとまとめにできている感覚はすごいと思います。ただ、このアルバムに不幸なことがあったとするならば、メンバー自身がそこにそこまで重きを置かず、こういう路線からさっさと次へ移行してしまったことなんですよね。彼らにはもっと別に目指すものがあり、そこで自身のアイデンティティを形成していった。そして時代を読む絶妙な勘も働いて長きにわたりスーパースターにもなった。もし、彼らがここに止まってしまっていたら、ハードロック方面では強く愛される存在になっていたかもしれないけど、それ以上のもっと普遍的なものにはならなかったのではないかな。今にしてみれば、そう思います。実際、一般に知られているのも「輝ける七つの海」くらいでもありますしね。

 

 

では、ここでいったん公表します!

 

 

5.The Game(1980 UK1, US#1)

 

5位は「ザ・ゲーム」。ヒットチャートのランキング上では、これが最もヒットした印象を与えるアルバムですね。実際にワールドワイドになって、このアルバムのツアーの時に大規模な南米ツアーをやったことも話題になっていますからね。このアルバムなんですが、「時代に合わせ多様性を増すクイーン」の真骨頂とも言えるアルバムですね。「4人の個人主義的な作り」はそのままなんですが、フレディ作の「愛という名の欲望」がロカビリー、そしてジョン作の「地獄へ道連れ」がよもやのファンクで、この当時のビルボードの総合1位のみならずソウル・チャートでも5位まで上がるヒットになるという快挙も成し遂げました。ロカビリーも、ストレイ・キャッツのブームに先駆けてもいたわけですからね。カンの読みがこの時、すごいんです。加えて、「プレイ・ザ・ゲーム」とか「セイヴ・ミー」みたいな従来の彼ら得意のミドルもあるし、ブライアン作の「Sail Away Sweet Sister」みたいなバラードあり、さらに「Rock It」でロジャーのニュー・ウェイヴ路線も始まっている。エンターテインメント性の高いバラエティ感覚では、このアルバムが一番かもしれませんね。なお、このアルバムで、デビューから続けていたフレディ、ブライアン、ロジャ_の「3人リード・ヴォーカル体制」が終わりを迎えてもいます。

 

 

4.Sheer Heart Attack(1974 UK#2,US#12)

 

 4位はサード・アルバムの「シアー・ハートアタック」。このアルバムは、彼らの初期と、その後の黄金期をつなぐ重要なアルバムです。前作での組曲的な構成も残しつつ、同時に、その後の彼らに続いていく、個人主義を生かした短尺楽曲で構成していくやり方と両方ありますね。後者のやり方で「キラー・クイーン」や「ナウ・アイム・ヒア」と言った、その後の彼らのライブの定番曲を作ってますが、とりわけ前者で彼らは自分たちのアイデンティティを確立してますね。一つはコーラスに、もう一つは、あのやたらにゴージャスなロジャーのドラムですね。あのドラムロールと、「パシーッ、パシーッ」っていう独特のハイハットね。あれが始まったのがこの曲だったかな。あと、80sにライブの一つのクライマックスで復活した「In The Lap OF Gods(Revisited)」、それからメタリカがカバーして随分して人気曲になってしまった「STone Cold Crazy」、映画「ベイビードライバー」の使われ方も印象てきだった「Brighton Rock」。個人的には、これもこの時期から出てくるミュージック・ホール調の「Bring Back That Leroy Brown」と、いい曲目白押しなんです。正直トップ3入れるかどうか、最後まで迷いました。

 

 

3.A Kind Of Magic(1986 UK#1,US#46)

 

3位は「カインド・オブ・マジック」。80年代の、いわゆるフレディがヒゲ・マッチョになって、世界一のライブ・バンドになっていた時期の、その時期の最高傑作は、やっぱ、これかなと思っています。このアルバム、一部では、映画「ハイランダー」に提供した6曲が元になっていることで、「中途半端な仕事になった」と言って嫌う人もいるんですが、それがハッキリ言って大きな間違いです。このアルバムは彼らの「バンド内個人主義」が最後に最高潮に達したアルバムです。前作からギターをまた激しく弾かせてもらえるようになったブライアンのハードロック路線は主に「ハイランダー」収録曲で生かされているし、ロジャーのシンセ・ポップ路線での「レディオ・ガガ」に続く大ヒット曲のタイトル曲もあるし、ここから完全に「チーム・フレディ」となったフレディとジョンの凶作によるソウル・バラードの「One Year Of Love」、モータウンの「Pain Is Close To Pleasure」といったR&Bの系統に「Friends Will Be Friends」みたいな、フレディらしいヒューマニズムに訴える優しい佳曲もあり。

 

ただ、それ以上にこのアルバムがすごいのは、フレディの超絶的な熱唱ですね。これ、こと、歌唱で言ったら歴代最高傑作ですね。ありえないくらい、高いキーをものすごい大声で歌いきってますからね。ハードルが異常に高い。特に「Who Wants To Live Forever」と「Princes Of The Universe」ね。「Gimme The Prize」もそうかな。ファルセットも使わずに、音域の出せる範囲で「これでもか」と歌いきってますからね。どうりでこの時期の「ライブ・マジック」とか、ウェンブリーのライブとか、初の東欧公演となったハンガリーのブダペストのライブ・ヴィデオとか、凄まじいわけです。この翌年に彼がクラシック企画「バルセロナ」をやるのも納得です。このアルバムですが、イギリスでは非常に人気の高いアルバムで、BBCが2006年に行った「オールタイム・アルバム」の企画で全体で42位、クイーンのアルバムでは2位を位記録しています。

 

 

2.News Of The World(1977 UK#4, US#3)

 

 2位は「News Of The World」、「世界に捧ぐ」です。これも大好きなアルバムですね。僕が思うに、クイーンがもし、このアルバムを作っていなかったら、旧世代のバンドのままで終わってしまっていたのではないか。そういう位置付けのアルバムです。というのは、この1977年というのは、ロンドンでパンクの嵐が吹き荒れた年です。セックス・ピストルズとかクラッシュとかですね。その時期にメインストリームのハードロックなんて敵視されてもいたわけで。実際、このアルバムのイギリスでの最高位が微妙に落ちるのもそのせいですね。彼らはそこにうまく対応しました。プログレ的なクラシカルなギター・トーンを抑えめにして、よりソリッドなロックにシフトして、一方ではアメリカで強かったアリーナ・ロックのマーケット、そしてもう一方ではパンク/ニュー・ウェイヴに対応します。前者の路線では、やっぱり永遠のアンセムですよね。「We Will Rock You」と「伝説のチャンピオン」。前者では「ドン、ドン、チャ!」の生の人間のリズムでオーディエンスを肉感的に煽り、後者では「自分たちが勝者だ!」と畳み掛ける。もう、アリーナでは最高の演出ですよね。しかも両方とも「We」って作ってあるのが最高にテンション上がるんですよね。この辺、上手いなと思うし、後者でのフレディの歌いっぷりも最高です。

 

 あと、パンク/ニュー・ウェイヴ路線では「Get Down Make Love」と「シアー・ハート・アタック」ですね。前者はレッド・ツェッペリンの「胸いっぱいの愛を」の彼らなりのシンセサイザー解釈ですね。そして後者は、クイーンとしては珍しい直情パンク。しかも歌い方、ジョニー・ロットン思い切り意識したり(イナー、イナー、イナー)もして。こう言う遊びもちゃんとやれてしまう。そして「Spread Your WIngs」みたいな優しい気持ちのアンセムも、ミドル・テンポの隠れ名曲の「It's Late」もある。このバラエティの幅がいいし、これをちゃんと4人のソングライティングの割り振りで作れるのが彼らの強みです。時代の変革も乗り切れるわけです。

 

 

1.A Night At The Opera(1975 UK#1,US#4)

 

 そして、やっぱり1位はこれですよね。「オペラ座の夜」。別に空気読んだわけじゃありません。どう考えても、これしかないと思うんで。

 

 これは、あの曲に関しては後述するとして、僕がさっきから何度も言ってるクイーンの「バンド内個人主義路線」が決定的に始まったアルバムでもあるんですよね。組曲見たいのがなくなって、メンバーそれぞれの一曲で完結した曲を集めた、それこそビートルズみたいな作りの路線です。そして、この時期はまだ、3人ヴォーカル体制だったから、それがなおさらですね。メインはフレディが歌うわけですけど、ロッド・スチュワートみたいな声で歌うロジャーの「I'm In Love With My Car」は会う時期までライヴでの定番曲だったし、このアルバムだとブライアンは「預言者の歌」みたいな豪快なハードロックを作りつつ、ヴォーカル曲ではフォーク、カントリー系を歌うという変化球を投げていて「39」みたいな佳曲はあるし。さらに、このアルバムからジョン・ディーコンが積極的にソングライティングに貢献し始めて、「You're My Best Friend」という、このアルバムで2番目に有名な曲も作りますしね。フレディはロマンティックなアンセム「Love Of My Life」を生み出している。

 

 で、それがあってのあの「ボヘミアン・ラプソディ」ですよ。これに関して言えば、「70年代のグッド・ヴァイブレーションズ

」ですよね。もう、それはあの映画のトレイラーからもわかります。あの曲のレコーディング秘話のシーン、ほとんどブライアン・ウィルソンの伝記映画のノリでしたからね。あのハーモニー重ね録りがいかにとりつかれたもので、当初は作者の本人以外に、「いったい何ができるんだ」と理解されなかった、あの感じ。「ああ、でも、奇跡的な曲を作ることって、こういうことなんだな」と思わされる、歴史的にも稀有な曲ですね。こういう曲を、今誰か作ってくれないものかとは、改めて思いますけどね。

 

 

 

 

author:沢田太陽, category:FromワーストTo ベスト, 09:08
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全オリジナル・アルバム From ワースト To ベスト (第18回)ポール・サイモン/サイモン&ガーファンクル その2 10-1位

どうも。

 

では、昨日の続き、行きましょう。

 

 

 

ポール・サイモン、そしてサイモン&ガーファンクルのFromワーストToベスト、行きましょう。今回はトップ10です。どのような感じになったでしょうか。10位から行きましょう。

 

 

10.Stranger To Stranger(2016 US#3 UK#1)

 

10位は、純粋なオリジナル・アルバムとしては最新作ですね。2016年の「Stranger To Stranger」。

 

 これまでもワールド・ミュージックのプリミティヴなリズムは得意としてきたポールでしたが、ここでは音を極限まで削って、ハンドクラップの音だけでも成立しうるような、究極なオーガニック・リズムのアルバムを作ってきましたね。この人が、「究極のリズム・アルバム」を作るならここに行き着くだろうなと思える、大胆なアルバムです。このアルバムが出る頃までには僕もスマホで毎週金曜に新作聴く習慣を身につけてましたが、これを聞いた時にビックリしたのをしっかり覚えてますね。

 

 ただ、一つだけ注文をつけさせてもらうなら、「曲」そのものでキラーなものが1、2曲あれば完璧でしたね。でも、70過ぎたアルバムでこの気鋭ぶりはさすがに彼らしいですね。

 

 

9.Rhythm Of The Saints(1990 US$4 UK#1)

 

 9位は1990年発表の「Rhythm Of The Saints」。

 

 これは前作「Graceland」が2年連続してグラミー賞の主要部門を受賞するなどして特大ヒットになったのを受けて製作されたアルバムですね。前作がアフリカなら、今回は南米に飛んで、大規模な打楽器隊を引き連れて、ただ単にラテン音楽をやるのではなく、そこに数百年前の、言うなれば、アフリカから黒人が連れられてきた時代から存在しているようなプリミティヴなビートをここでは展開しています。もう、このあたりは、ポールの凝り性ぶりが徹底してますね。すごいです。

 

 あと、同時にフュージョン・ジャズ的でもあるんですが、それも功を奏してると思います。とりわけブラジルの名シンガー、ミルトン・ナシメントをフィーチャーした「Spirit Voices」が光ります。

 

 

8.Still Crazy After All These Years(1976 US#1 UK#6)

 

 8位は1976年作の大ヒット・アルバムですね。

 

 このアルバムからは「50 Ways To Leave Your Lover」が全米1位のヒットになっているんですが、これに加えてアルバムのタイトル曲もそうなんですが、リリックのユ=モアのセンスがすごく冴えたアルバムです。大都会ニューヨ〜クに住む男の、神経質さとユーモアに溢れた日記みたいな感じで。ちょうど同じような時期に、彼も出演していた、ウディ・アレンの「アニー・ホール」の大ヒットもあったから、なおさらそう思えるところもあるのかもしれません。

 

 

 そしてこのアルバムからしばらく、ちょっとアーバン・テイストのアルバムが続くんですが、このアルバムがその路線ではベストのような気もします。ただ、彼の場合、その中にゴスペルの要素を奥底に込めることができたりするんですよね。だから、根っこはすごく泥臭い。そこがわかるで気になっていて良いのです。

 

 

7.Paul Simon(1972 US#4 UK#1)

 

 7位は1972年の本格的ソロ・デビュー作「Paul Simon」。

 

 このアルバムでは、サイモンとガーファンクルでのラスト・アルバムですでにやろうとしていたラテン・ビートへの接近がかなり本格的に実践に移された作品ですね。ここでの最大の代表曲「Mother And Child Reunion」はいきなりレゲエですしね。1972年でレゲエって言ったら、ボブ・マーリーがアイランド・レコーズから本格的に世界デビューしたばかりの年ですよ。そのタイミングでレゲエというのがいかに早いか。この2年後にスティーヴィー・ワンダーが「Boogie On Reggae Woman」って曲を出した時にタイトルが「レゲ・ウーマン」だったくらいに、レゲエ、世界的に知られてなかったですからね。

 

 あと、サイモンとガーファンクルでの、美しい風景描写や世代意識みたいなところから離れて、よりパーソナルに自分の過去に向かい合って語られるストーリー・テリングもすごく光るアルバムです。

 

 

6.So Beautiful Or So What(2011 US#4 UK#6)

 

 6位は2011年のアルバム「So Beautiful Or So What」ですね。

 

 僕はこれ、彼のキャリアの終盤での最高傑作だと思ってますね。いわゆる「グレースランド」でのワールド・ミュージック・ブームがひと段落してあとの作品だと、間違いなくこれだと思います。

 

 手法としては、この一つ前のアルバム「Surprise」での、ちょっとインディ・ロックみたいな路線が続いてはいるんですが、ここで彼は、削ぎ落としたリズミックなロック・アプローチに加えて、実はなかりのギター名手の彼らしく、すごくキレのいい音色で、西アフリカのブルースを基調にしたリフをこのアルバムでは多用してて、彼の鋭い弾きっぷりとともにすごく新鮮な感覚を与えています。

 

 それに加えて、このアルバム、ここ20年くらいのアルバムではキラー・チューン目白押しのアルバムでもあるんですよね。ハイライトは、この当時、テレビでのパフォーマンスで頻繁に演奏された「Rewrite」ですね。この曲のイントロアコースティックのリフは、この新たな黄金時代を象徴するものですね。彼のサヨナラ公演でも、このアルバムからは「Rewrite」「Dazzling Blue」「Questions For The Angeles」の3曲が選ばれるほど、彼自身の思い入れの強いアルバムでもあります。

 

 

5.Parsley Sage Rosemary And Tyme(Simon&Garfunkle)(1967US#4 UK#13 )

 

 トップ5、第5位はサイモンとガーファンクルでの「パセリ・セージ・ローズマリー&タイム」です。

 

 このアルバム・タイトルは彼らの代表曲の一つ、「スカーボロー・フェア」の中の有名な一節です。これだけ聞くと、「すごく香ばしい森にでも行くのかな」と思うんですけど、大人になった時に「えっ、これってドラッグのこと?」などとも思うようにもなりましたね。「あの頃ペニー・レインと」で、フランシス・マクドーマントが「こんなクスリの歌、汚らわしい」と言って、娘役だったゾーイー・デシャネルが「これはポエムよ!」と言い返すのも、確かこの曲だったはずです。

 

 ということからも想像できるように、このアルバム、かなりサイケデリックなアルバムです。他にこの時期、ハーパーズ・バザールにもカバーされた「59番街の歌」もこのアルバムに入ってますしね。どうしても、「1967年のサイケ」というと、サンフランシスやロサンゼルスみたいな西海岸は思い出されがちですが、これは見事な東海岸からの回答であり、セールス的にも、実はこちらの方が売れていたりもします。

 

 

4.There Goes Rhymin Simon(1973 US#2 UK#4)

 

 4位は本格ソロ第2弾の「There Goes Rhymin Simon」。1973年のヒット作です。

 

 このアルバム、一般的に印象が地味なんですけど、実は70sの彼のソロではこれがベストです。実際、「僕のコダクローム」や「Loves Me Like A Rock」のビッグなシングル・ヒットも2曲ありますしね。

 

 それに加えて、このアルバム、80年代を待たずして、彼がいかにブラック・ミュージックの造詣が深いかがしっかり証明した、すごくグルーヴィーでソウルフルなアルバムになっているんですよね。とりわけゴスペル、ブルース、そしてニューオーリンズ周辺のグルーヴも。実際、「Take Me To Mardi Gras」という曲もここにはありますしね。これの前作にあたる、本格ソロ・デビュー作でも、そういうリズミックな実験は行われていましたけど、これがさらに徹底されたのがこのアルバムで、なおかつ、楽曲そのもののクオリティが高い。文句なしです。

 

 なんでしょうね。どうしてこれが、これまで、特に日本ですけど、「70年代のアメリカン・ロックの名作」として語られていなかったのかが不思議です。絶対、「ウェストコースト・ロック偏重」だったのだと思います。

 

 

3.Bridge Over Troubled Water(Simon&Garfunkle)(1970 US#1 UK#1)

 

3位は、このタイトルでもう言うまでもないですね。「明日にかける橋」。S&Gでのラスト・アルバムです。日本でも、この当時、できたばかりのオリコン・チャートで長期にわたって1位になったくらいにブームにもなっている作品です。

 

 そういう「一般的現象世界ヒット」を記録してしまったが故に、なんかイメージが大衆的な感じになっている彼らと、このアルバムなんですが、内容そのものはそんな感じでは全然ないです。タイトル曲は「傷ついたときには僕がついてる」という、6sのヒッピー幻想の終焉を先取ったタイプの曲ですが、やたらとその例でジェイムス・テイラーの「君の友達」がよく言われるんですけど、出たの、こっちの方が先です。そういう意味でこれ、しっかり、60sの挽歌なんですよね。

 

 加えて、もう、このアルバムから、もうポールの方は、この先に開花する、「グルーヴ」「南米」への意識が芽生え始めている作品でもあります。「コンドルは飛んでいく」と「セシリア」に顕著ですけどね。僕がこのアルバムを「S&Gとしての最高傑作」にしないのは、もう、素手のポールの気持ちが別のとこに向かっちゃってる感じがするからなのですが、それでも、ポール自身のキャリアで言えば、しっかり、この位置の作品ではあります。

 

 

2.Bookends(Simon&Garfunkle)(1968 US#1 UK#1)

 

 そして2位、並びにS&Gの作品としては1位なのが、この「Bookends」ですね。

 

 このアルバムは、モノクロで2人並んでる写真が有名で、よくパロディにもされていたりもしますが、これ、フォークロックとしてのサイモンとガーファンクルの傑作、というだけでなく、この時期、1968年の「ポスト・サイケデリック」、コンセプト・アルバムとしての完成度が見事です。なぜ、その観点でもっと語られてきていなかったのかが不思議です。

 

 コンセプト・アルバムとしては冒頭のオーヴァーチュアみたいな感じから、スケールの大きな名曲「アメリカ」までの展開が壮大ですね。これだけで、まず引き込まれるんですが、そこに彼らのロックンロールでの名曲の「Fakin It」やバングルズのカバーでもおなじみの「冬の散歩道」みたいなロックンロール・ナンバーが効果的に挿入され、映画「卒業」であまりに有名になったアッパーなフォークチューン「ミセス・ロビンソン」で一つの高まりを迎える。彼らとしては精一杯、攻めたアルバムで、もしかしたらポールとしては、ここでS&Gをやりきった気持ちがあったかもしれません。それくらいの名作だと思います。

 

 

1.Graceland(1986 US#3 UK#1)

 

 

 そして1位はやっぱり、これですよね。「Graceland」。1986年の、ワールドミュージック・ブームの火付け役です。

 

 このアルバム、リアルタイムだと、「難しい」と思って、しばらく手をつけなかったアルバムなんですよね。なんか、わかったふりしてスノッブがるのも抵抗あったし。でも、いざ聞いてみるとですね、このアフリカのビートというものを、ポール、かなりわかりやすく咀嚼して、「黒人起源なんだから、ロックンロールと変わらないよ」とばかりに、すごくグルーヴィーに、敷居低くプレイしてくれているのがわかって、それですごく「カッコいい」と後から思えるようになりましたね。やはり、「理屈」ではなく「体」で感じるべきものなんだと思います。そこのところは、もう、お手上げですね。

 

 加えて、これ、リリックも秀逸ですね。彼らしいセンス・オブ・ユーモアで現地のアフリカ人とコミュニケートするおかしさもある一方、アフリカに生きる人たちの、過酷で苦しい生活の様もしっかり描写もできていて。ちょうど時代は、「ドゥ・ゼイ・ノウ・イッツ・クリスマス」やアパルトヘイトへの反対運動が盛り上がっている頃ではありましたが、そのアフリカの生の生態をここまで見事に描写できていたアルバムもないんじゃないかな。その意味でこのアルバム、この時代の世界のジャーナル作としてもかなり秀逸です。

 

 彼としては、若き日のS&Gでの大成功がありながらも、もっと成就させたかった音楽と詩の一つの到達点がここにあるような気がしますね。

 

 

 

author:沢田太陽, category:FromワーストTo ベスト, 11:08
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全オリジナル・アルバム+α From ワースト To ベスト (第18回)ポール・サイモン/サイモン&ガーファンクル その1 19-11位

どうも。

 

 

 予告も何もしていませんでしたが、今日と明日はFromワーストToベスト、行きましょう。

 

今回のお題は、この人です!

 

 

 

先日、地元ニューヨークで最後のライブ・パフォーマンスを行ったポール・サイモン。彼のキャリア総括及び、サイモンとガーファンクル時代のオリジナル・アルバム、こちらのランキングをつけたいと思います。

 

 

 僕はポール・サイモンに関しては、ちょっと奥手でしたね。なぜ、そうだったのかは解説の中で語ろうと思うのですが、今となっては大好きなんですよね。ワーストとかベストとか言ってますけど、今回取り扱うものは、実はそこまで嫌いな作品って実はありません。それくらい、キャリアを通じて、常にクオリティの高いものを築き上げてきた人だと思います。

 

 

 では、今回はその第1回目。

 

 

19Wednesday Morning 3AM(Simon&Garfunkle)(1964 US#30 UK#24)

 

 19位はサイモンとガーファンクルのファースト・アルバム。「水曜の朝、午前3時」。

 

 まあ、これ、結果的にワーストにしてしまいましたけれど、これ、何かが悪いわけではなく、ポール・サイモンの場合、これが一番青かったというか、アーティストっとしてまだ未成熟の時にこれが出ちゃったのかな、という感じですね。まだ、「ディランに憧れている2人のフォーク青年」の域を出ていないというか。まだ、曲にアイデンティティが生まれてない気がするんですよね。

 

 ただ、「ポール・サイモンの作品」として考えずに、「60sのフォークのアルバム」として考えると、決して悪い作品ではありません。運悪く、ポールの他のアルバムが良すぎた、それだけのことだと思います。

 

 

18.Songs From The Capeman(1997 US#42 UK#83)

 

 18位は1997年発表のアルバム、「Songs From The Capeman」。

 

 これは「駄作」というよりは「失敗作」ですね。これはミュージカルの作品でして、50年代の虐げられたプエルトリコで生きるサルバドール・アグロンなる青年を描いた作品で、カリブ海のリズムとドゥワップ、ロックンロールが主なサウンドになっています。ただ、誰もが「ニューヨークのジューイッシュ」だと知っているポールが「僕はプエルトリコで生まれて」なんて歌う歌詞にはあまりbにも無理があるし、その前のアルバムまでの「アフリカ 、南米」ときてカリブ海という流れも図式的すぎるし、それまでの2作と比べてサウンド的にもあまり新鮮味がなかった。その意味ではちょっと辛いですかね。

 

 

17.Paul Simon Songbook(1965)

 

 17位は「Paul Simon Songbook」。これはサイモンとガーファンクルがデビューして間もなく、一回、解散状態になっていた時にポールが出したソロ作ですね。

 

 これ、僕、お恥ずかしい話、かなり長いこと、「後に出た未発表作」だと勘違いしていた作品です(苦笑)。その理油は、「サウンド・オブ・サイレンス」「アイム・ア・ロック」「4月になれば彼女は」と言った、後にサイモンとガーファンクルで有名になる曲の前段階の曲が入っているからなんですね。そして、これ、レコーディング自体も粗くて、それが未発表作だと思わせてしまう理由にもなっています。

 

 ただ、一回解散の危機を迎え、「ソロで、やっていく」と腹くくってたこともあってか、ソングライターとしてのモチベーションが高まっていたことはすごく感じる作品でもあります。

 

 

16.In The Blue Light(2018 US#70 UK#10)

 

 16位は、目下のところの最新作、出たばかりの「In The Blue Light」。

 

 これは、彼がソロになって以降の、比較的知られていない曲を、アレンジを変えてセルフカバーしたアルバムです。試みとしては面白いんですけど、正直な話、アレンジが面白くないんですね、これ、クラシックの現代音楽風とかジャズ風がほとんどで。彼のサウンドの持ち味でもある、プリミティヴなリズムはここでは全くなし。そういう意味ではちょっと肩透かしだったかな。このアレンジでも、もう少し何か決定的なオリジナリティがあれば面白かったんですけどね。

 

 せっかく、ニューヨ〜クでのサヨナラ公演の直前のアルバムだったのですが、このアルバムがそのクオリティゆえに話題になり損ねてしまったのは、ちょっと残念です。

 

 

15.You Are The One(2000 US#19 UK#20)

 

 15位は2000年発表の「You Are The One」。

 

 これは前作「Songs From The Capeman」の反省があったのか、久々にコンセプト優先ではなく、主題は特に置かずに自分の中から自然に湧き出た曲を集めた作品ですね。それがゆえに、やや楽曲的には地味な印象も受けるんですが、ただ、「グレイスランDド」以降に培ったワールドビートが随所に光る、なかなかのフォーク・アルバムです。「Old」「ダーリン・ロレイン」といったあたりはなかなかの佳曲です。

 

 

14.One Trick Pony(1980 US#12 UK#17)

 

14位は1980年発表の「One-Trick Pony」。これは、同名の彼が主演を務めた映画のサントラでもあります。

 

 映画でのポールは、昔、一発だけヒット曲のある落ち目のフォーク歌手で、今ではライブの前座しか仕事のない生活を送っていましたが、レコード会社が、なんとルー・リード(!)ふんする売れっ子プロデューサーをあてがってカムバックをはからされる・・と言った感じの映画です。

 

 映画そのものは僕は見てないんですけど、ただ、肝腎なアルバムそのものはそんなに面白くないですね。彼、この前のアルバムでちょっとソフィスティケイトされた方向に行って、それ自体は悪くはなかったんですけど、その前のアルバムで良かった部分が消えて、ちょっとAORみたいになっちゃってるのが引っかかりはします。ただ、それでも、そこまで順位を下げなかったのは、このアルバムから全米トップ10のヒットになった「Late In The Evening」があるからですね。パーカッシヴのリズムにすごくストリート感があって、80年代以降の彼の作品のある種の原型みたいなものが感じられます。

 

 

13.Suprise(2006 US#US14 UK#4)

 

 13位は2006年の「Surprise」。

 

 これ、その名の通り、かなりビックリするアルバムです。ポール・サイモン史上、最もロックしてるアルバムだから。これ、制作にブライアン・イーノが絡んでいて、ギターにビル・フリーゼル、ドラムにスティーヴ・ガッドという錚々たるメンバーで作ったんですけど、サウンドはもう削れるところまで削ったシンプルな音作りで、ガッドのタイトな手数の多いリズムを主体とした、すごく鋭角的なロックをやってます。この時期のインディ・ロックの影響が何かしらあったのかもしれません。

 

 このアルバムは、1990年の「リズム・オブ・ザ・セインツ」以来のヒット、特に全英トップ10に返り咲くくらい、作風が話題になったアルバムです。ここから彼の、通算何度目かの全盛期が始まることにもなりました。

 

 

12.Sounds Of Silence(Simon&Garfunkle)(1966 US#21 UK#13)

 

12位は「サウンド・オブ・サイレンス」。映画「卒業」でのイメージが強い曲ですが、ヒットしたのは映画公開の前年の1月。此のアルバムは、そのヒットに合わせて急きょこしらえたアルバムで、これで解散状態だったふたりが戻るきっかけにもなりました。

 

 タイトル曲が、デビュー・アルバムに収められたヴァージョンのフォーク・ロック・アレンジで売れたように、ここでは、この当時流行りだったフォークロック調の曲が目立ちます。ただ、それをやるには後発組だったこともあってか、そんなに強いオリジナリティは感じません。ただ、上にも書いたように、ポールが「Songbook」であたためていた「アイ・アム・ア・ロック」「4月になれば彼女は」がここで完成しているように、彼のソングライターとしての本格的な目覚めが始まっているアルバムでもあります。

 

 

11.Hearts And Bones(1983 US#35 UK#34)

 

11位は「Hearts And Bones」。1983年のアルバムです。

 

このアルバムは、この2年前にサイモンとガーファンクルのリユニオン・ツアーが大成功し、誰もが再結成アルバムを期待した矢先に、それがかなわずに出たアルバムだったこと、これまでの彼の作品からガラッと変わって、シンセを主体としたエイティーズ・サウンドだったことから、出たばかりのときは非常に不評でした。中2でしたが、よく覚えてます。

 

 ただ、これ、今となっては、ポールの最もパーソナルなアルバムとして、再評価が高いんですね。そのもとになってるのは、最初の妻、ペギー・ハーパーとも別離と、この頃につきあいはじめた「レイア姫」ことキャリー・フィッシャーとのロマンスですね。そうしたこともあり、かなり感情の起伏の激しい一作になっていたりして、リリック読むと、この当時、彼がどんな精神状態だったのかが垣間見れて非常に興味深いものがあります。

 

 

では、明日はトップ10を。

 

 

 

author:沢田太陽, category:FromワーストTo ベスト, 11:16
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全オリジナル・アルバム+α From ワースト To ベスト (第17回)ダリル・ホール&ジョン・オーツ その2 10-1位

どうも。

 

では、昨日の続き、行きましょう。

 

 

 

ダリル・ホール&ジョン・オーツ、ホール&オーツの2回目、今回はトップ10です。どんな感じになっていますでしょうか。10位からいきます。

 

 

10.Daryl Hall&John Oates(1975 US#17 UK#56)

 

10位は1975年のセルフ・タイトル・アルバム。その上の写真の下段の真ん中のヤツですね。

 

 これは彼らにとって初のヒットとなったアルバムで、ダリルの長年のガールフレンド、サラ・アレンのことを歌った「サラ・スマイル」が全米4位まで上がるヒットとなって注目されます。

 

 このアルバムですが、RCAでの移籍第1弾で、ここで彼らは本格的に「白人ソウル・デュオ」として売り出されます。ストリングスがやたら多く入ってて、この当時のフィリー・ソウル的です。あと、全体のサウンドも、このころのフュージョンっぽい、アーバン・テイストで統一されてますね。

 

 ただ、なんかですね、「サラ・スマイル」以外の曲がスーッと入ってこないアルバムなんですよねえ、これ。統一感あるアルバムで曲の出来も悪くないんですけど、どちらかというとAORファン向けな内容なのが僕の好みじゃないのかな。キレイすぎるんですよね。もう少しひねくれないと、彼らっぽくありません(笑)。

 

 

9.Three Hearts In The Happy Ending Machine(1986 US#29 US #26)

 

 9位は1986年に出したダリルのソロですね。これが彼のソロでは商業的に最も売れました。全世界的なヒットになった「ドリームタイム」が入ってますからね。

 

 このアルバムなんですが、ホール&オーツ・ファンの人も、単にエイティーズが好きな人も、勢い「ホール&オーツ」のディスコグラフィに入れることが多いくらい、人気のあるアルバムです。実際の話、ソロとは言いつつも、これまでの80年代のホール&オーツと聴き比べて違和感ない曲調だったりもしますしね。実際、「ドリームタイム」だけでなく、「Foolih Pride」「Domeone Like You」は人気曲で、たまにライブでも披露されてますしね。

 

 このアルバムでは、あの当時、プロデューサーとしても売れっ子だったユーリズミックスのデイヴ・スチュワートがプロデュースに入っているんですが、さすがにうまいですね。彼の場合、シンセの単音の音処理もそうなんですけど、カッティング・ギターやギター・ストロークのキレも、ドラムの音の入れ方もバランスがいいんですよね。ホール&オーツはそこをセルフ・プロデュースでやっちゃうから80s後半にドラムの音が不必要にデカすぎてそれで風化しちゃってるところがあるんですけど、デイヴはさすがにそこのところはプロでバランスよく録音してるから、時間をおいて聞いても全然大丈夫ですね。

 

 あと、このころはダリルのヴォーカリストとしての脂が一番乗ってる時期ですね。70sまで高音が上ずってたところが声量が付いてきたことでブレなくなった。あと、この時期はファルセットで声枯れしなかったし(90s以降、そこは結構ツラいんです、泣)。ここでかなり気持ちよくソウルフルに歌えていることが、この次の「Ooh Yeah」にもつながってますね。

 

 

8.Along The Red Ledge(1978 US#27)

 

 続いて8位は1978年の邦題「赤い断層」というヤツですね。

 

 このアルバムではもっぱら、アイデンティティ探しをしています。何せ、その直前に白人版フィリー・ソウル路線で売れかかったのに、パンクっぽいアルバムを作ってしまってブチ壊してしまった直後でしたからね。そのお手伝いをこのアルバムでしているのが、のちにAORの帝王として知られることになるデヴィッド・フォスターです。

 

 僕はAORもデヴィッド・フォスターも恐れずに言ってしまうとかなり苦手だったりするんですが(笑)、ここでの彼は自分のカラーを押し付けず、割と彼らの作りたいようにやらせてますね。別に涙チョチョ切れ系のバラードがあるわけじゃなし。結構、ロックっぽい部分はロックっぽかったりもしますから。

 

 ただ、全体にサウンドのテーマは感じさせますね。冒頭の「It's A Laugh」に顕著なんですけど、60sのフィル・スペクターみたいなボワ〜としたエコーがかかっていて。この辺りはスペクターがプロデュースした元祖ホワイト・ソウル・デュオ、ライチャス・ブラザーズへのオマージュが感じられます。それの70s版をかなり意図的に狙ったんじゃないかな。

 

 この2つ前のアルバムのパターンだった、「A面ソウル、B面ロック」のコントラストも良いです。彼らのソウル・バラードでも屈指の出来の「Have I Been Away From You So Long」みたいな隠れ名曲もあり、さらに長年人気曲だった割に披露される機会が少なかった「It's A Laugh」も近年のライブのセットリストに戻ってきたりもしますからね。

 

 

7.X-Static(1979 US#33)

 

 その「赤い断層」に続くのがこれですね。邦題「モダン・ポップ」。これもデヴィッド・フォスターのプロデュースです。

 

 これは一部で「ディスコに走った」などとの評される作品で、それで評価を低くする人もいたりするんですが、そんなことはないですね。確かに「Portable Radio」とか「WhoSaid The World Was Fair」でディスコやってますけど、こういうアプローチをとったおかげで、彼らの曲がよりオーディエンスを掴みに行く貪欲な前向きさを保つに至ったな、と思います。

 

 あと、大人気曲、「Wait For Me」があるのもこのアルバムですね。この曲や「The Woman Comes And Goes」で使ったピアノの3連譜、これで、この手法が効果的にキャッチーなのがわかったのか、来るエイティーズでこれを武器に駆使するようにもなります。

 

 ここで、彼らはきっと何かをつかんだんでしょうね。これが本格ブレイクの「蒼写真」的な作品となります。そして、ここから、もう一つ足りなかった要素を加えてセルフ・プロデュースに移行することで、彼らは黄金期を築いていくわけです。

 

 

6.War Babies(1974 US#86)

 

 6位は「War Babies」。これはまだ売れる前の、まだアトランティック・レコーズにいた時代の最後のオリジナル・アルバムですね。

 

 実はこれの前の作品が批評的に絶賛されまして、すごく期待がかかったアルバムだったのですが、方向的に意外な方向に行ってしまったせいで肩透かしになりチャンスを逃してしまった作品です。レーベルとしては、「ホワイト・ソウル路線」を望んでいたのですが、彼らが選んだのは「パンク前夜のニューヨーク」で、その中心バンド、ニューヨーク・ドールズをプロデュースしていたトッド・ラングレンだったんですね。

 

 ここでホール&オーツはパンクロック的なエッジやシンセサイザーを使った、トッド自身もソロでやっていた「プレ・ニュー・ウェイヴ」みたいなものを求めてはいたのですが、トッドがプロデュース作で他のアーティストにも嫌われる理由となった「音源お持ち帰り」をやって、「まるでトッド本人」の音に化粧直しをしてしまったものだからダリルが怒ってしまった、というエピソードがあります。ダリルも長らく嫌いなアルバムだと言ってました。

 

 ただ、ホール&オーツとトッドは歌い方とかコードとか3連符とかで共通点があるため兼ねてからファン層が、僕のようにコアなとこでかぶってたんですが、2000年代に入ってまたかなり接近します。ダリルの番組「Daryl's House」でも僕が覚えている限りでも2回出演してセッションしてるし、一緒に全米ツアーもしてるし。そういうこともあり、「Is It A Star」が近年のライブでの定番として復活したり、番組でにプレイした「Beannie G And The Rose Tattoo」がライブの登場BGとして使われたりと、ホール&オーツ自身の中で再評価が進んだことで「カルト名盤化」してます。

 

 

5.H2O(1982 US#3 UK#24)

 

 ここからはもう、どれとっても名盤だと僕は思ってます。5位は全盛期を代表するアルバムの一つですね。「H2O」。

 

 もう、このころには飛ぶ鳥落とすデュオになっていたホール&オーツ。この前までは、「ニュー・ウェイヴ」がエッセンスとしてかなり強く入れられ、そこがイギリスでも比較的成功した一因になっていたような気もしますが、ここではむしろ、この当時にR&Bの界隈(当時はブラック・コンテンポラリーと言ってました)ではやってたエレクトロ・ファンクの要素が強まってますね。ロックっぽいホール&オーツが好きな人は、それがゆえに「嫌いだ」という人があの頃、多くもあったんですが、「でも、それ、ホール&オーツの理解を根本的に履き違えてるよ」とは僕も言いたくなります。

 

 本人たちにもその意識あったんじゃないかな。シングルになったのがモータウン・リバイバルをエイティーズふうにやった「マンイーター」と、リズムボックスを効果的に使ったソウル・バラードの「ワン・オン・ワン」でしたからね。このR&Bアプローチは僕の中でのR&Bの、ある種の栄養源にもなってますね。

 

 そうかと思ったら、ダリルが兼ねてからのプログレ好きを生かして、マイク・オールドフィールドの「ファミリーマン」を彼ら風にカバーもしたりする意外性もあったりね。で、今回はそうしたひねくれたアプローチも当たった。その意味でもクリエイティヴィティ的な勢いもありましたね。この好調さは、この次に出たベスト盤「Rockn Soul Part 1」のシングル「Say It Isnt So」まで引き継がれ、同じく収録曲だった「Adult Education」の大げさすぎるシングル・リミックスによって後退していきます(苦笑)。

 

 

4.Bigger Than Both Of Us(1976 US#13 UK#23)

 

 続いては、70sの彼らの最大のヒット・アルバム、「Bigger Than Both Of Us」。

 

 これは邦題「ロックンソウル」で、奇しくも、さっき触れた、83年に出たベスト盤の原題とも重なってしまう(それでベスト盤のタイトルが謎多き「フロム・A To ワン」)のですが、当時の日本の担当さんがそうつけたくなるのもわかるように、「A面ソウル、B面ロックンロール」なアルバムに仕上がっています。

 

 とりわけA面は最高ですね。ジョンがメインでダリルとの掛け合いが史上最高の曲の一つの「ソウル・トレイン」風

の「Back Together Again」に、初の全米1位を獲得したライトな「Rich Girl」、そしてディープでダークなダリル渾身の熱唱の大バラード「Do What You Want Be What You Are」.。この3曲は未だにライブ・フェイヴァリットとしても歌い続けられてますから、これ、一つの完成系ですね。

 

 で、ロックのサイドは、これといって飛び抜けた曲がなく、そのあたりは後年の課題にはなったんですが、A面とのコントラストを取るには良いものです。ただ、この当時、ホール&オーツが不満だったのは、これをプロデューサーがスタジオ・ミュージシャンで作ってしまったことだったんですね。自前のバックバンドで、もっとライブ感を出したかった彼らは、ここから次のアイデンティティを模索して3、4年くらい苦しむことにもなります。

 

 

3.Abandoned Lanchonette(1973 #33)

 

 3位は1970年代前半の名盤ですね。「Abandoned Lanchonette」。

 

 これはホール&オーツのみならず、「70sのアメリカン・ロックの名盤」にもしばし挙げられている作品です。確かに、これ、すごく面白いんです。パッと聴きは、70s初頭のシンガーソングライター・ブームを思わせるアコースティックな感じではあるんですが、曲が進むにしたがって、ストリングスとシンセサイザーを使った、黒人のソウル・ミュージックでも当時聞かなかったような、斬新なソウル・ミュージックをやってるんですよね。で、そうかと思ったら、最後の方では、「カントリー版のプログレ?」みたいな曲もあったり、今の耳にもかなりアヴァンギャルドな作品です。そして、その中の1曲、「She"s Gone」はソウル。グループのタヴァレスにカバーされて全米R&Bチャートの1位。10CCが「アイム・ノット・イン・ラヴ」でこの曲をパクった疑惑もありつつ、1976年に「サラ・スマイル」の後に3年遅れて全米7位のヒットになっていたりします。

 

 そういうこともあり、これはよく「ホール&オーツの最高傑作」にあげる人もいます。僕も、「作品完成度としてはそうかな」と思います。では、なぜ3位なのか。一つは「結局は後で再発見されたアルバムだから」ということ。そしてもう一つは「本当に当時のホール&オーツの実力でこれが作れたのか?」ということです。僕はこれ、むしろ、プロデューサーのアリフ・マーディンの力によるものの方が大きかったんじゃないかなと思うんですよね。彼のアレンジにむしろホール&オーツが押されている感じがして。そこで、この順位が妥当なのかな、と思います。

 

 

2.Voices(1980 US#17)

 

 そして2位は「Voices」。邦題「モダン・ヴォイス」。僕が最初に聞いたホール&オーツがこれで、日本独自のシングルだった「Hard To Be In Love With You 」が記念すべき最初の出会いです。

 

 ・・という、思い出話しを長くする必要もないくらい、これ、彼らにとっては分岐点となった、非常に大事なアルバムです。ここから彼らはセルフ・プロデュースになるんですが、ここで彼らはこれまで以上にパンク/ニュー・ウェイヴ色を強めていきます。シンセの使い方よりは、ここではむしろギターですね。すごくパンキッシュというか、パワーポップ的というか。すごく削ぎ落としたシンプルでエッジィなギターなんですよね。そこがすごく、70sから移り変わりの80s黎明のニュー・ウェイヴという感じがして、今でもかなり大好きです。

 

 そして、4年ぶりに全米1位に輝いたシングル「Kiss On My List」。ここでは、とりわけ日本で非常に大きな彼らの武器になるピアノの3連符。大きな切り札もできるわけです。

 

 さらに元祖・ブルーアイド・ソウル、ライチャス・ブラザーズの「ふられた気持ち」のカバーに、ポール・ヤングがのちにカバーして全米1位になった「Everytime You Go Away」の元曲ですね。こうしたところで、しっかりソウル・アピウローチもできています。

 

 ただ、現在、アメリカのポップ・カルチャーで「ホール&オーツ・クラシック」といえば、やっぱり「You Make My Dreams」です。

 

 

 これがいちばん有名ですが、「ウェディング・シンガー」やら、いろんな映画、ドラマに使われ続けています。

 

 すいません、1位の発表なんですが、外出しなくちゃいけません。1位、もちろんアレなんですが、しばしお待ちを!

 

 

1.Private Eyes(1981  US#5 UK#8)

 

 そして1位はやっぱり、これですね。「プライベート・アイズ」。

 

 代表曲の多さとキャリアの分岐点という意味では、2位にした前作の方がもしかしたらあるかもしれないし、正直、1位は迷いました。ただ、その前作をさらに前に進めたサウンドがあったこと、彼らの名刺代わりの名曲が2曲あり、その人気が高いこと。商業的に最も成功したアルバムであること、などを鑑みて、これを1位にしました。

 

 サウンド的には、前作で見せたニュー・ウェイヴの路線を、ギター面のみならず、シンセの多様でさらに進めて、それを彼らのその後の5年の前世の礎にしましたね。これは大きかったと思います。

 

 そして必殺の代表曲。一つはやっぱりタイトル曲。彼らの3連符路線の曲の中では、とりわけ日本でもダントツの人気がありますし、もちろん全米ナンバーワン曲としても有名。そしてもう一つ、これが大事。「アイ・キャント・ゴー・フォー・ザット」!この曲が、ビルボードの総合チャートのみならず、R&Bのチャートでも白人アーティストながら1位になったこと。これは彼らの持つソウル・フィーリングが人種の垣根を超えて通用したことの何よりの証明です。今、そういう白人アーティスト、少ないですからね。それゆえにこの曲はデラ・ソウルほか、いろんなアーティストの楽曲のサンプリング・ネタにもされていますからね。

 

 そして、やっぱり国際的にヒットしたことが大きいです。アメリカでアルバムがトップ5に入ったのみならず、イギリスでも受け入られた。ニュー・ウェイヴ大全盛のご時世で、そのサウンドに対応してイギリス人の興味を引きながら、同時に内包するソウル・フィーリングをも伝える。この後、イギリスからはソウルのエッセンスを持ったニュー・ウェイヴのアーティストがかなり出てきて、僕もそういうアーティストからも影響を受けているんですが、このアルバムのチャート実績から考えても、案外彼らが一役買っていたりするかもしれません。

 

 

 

 

 

author:沢田太陽, category:FromワーストTo ベスト, 12:50
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全オリジナル・アルバム+α From ワースト To ベスト (第17回)ダリル・ホール&ジョン・オーツ その1 21-11位

どうも。

 

 

では、予告通り、FromワーストToベストで今日は行きます。一昨日、思いがけないくらいに「なぜ最近の若いロックファンはR&Bが器用に聞けるのか」の話をしましたけれど、僕が個人的にR&B聞ける体質になっている理由となったアーティストを今回はやります。

 

彼らです!

 

 

はい!ダリル・ホール&ジョン・オーツ、ホール&オーツです!

 

若い洋楽ファンの人でも、名前は聞いたことあるんじゃないかな。彼らは80年代って言ったら、そりゃ、すごい人気でしたよ。アメリカでもたくさんナンバーワン曲あったし、日本でもかなりの人気でしたよ。洋楽誌の表紙にもよくなってたし、ラジオでもすごくかかってたし、来日公演あれば10公演近くやってましたからね。

 

 以前にもここで、僕が人生のある時期までホール&オーツが一番好きなアーティストだったことは、覚えている範囲で二回は書いているんですけど、でも、未だにそうなんですが、やたら意外がられますね(笑)。知人との会話で、覚えているだけで「マジで(笑)?」といって信じられなかったこともあったし、ライブに行けば「いやあ、意外ですね〜」とかも言われたことがある。やっぱ、90s以降のオルタナとかUKロック、インディ・ロックのイメージが強いんでしょうね、僕は。

 

 ただ、ホール&オーツに関しては人生でクイーンの次に好きになった洋楽アーティストで、小6の時からです。あのダリルの歌い方と、8部の3連譜のピアノが好きでして。中学の時、2回福岡公演にも行ってます。ということもあり、すごく思い入れが深いのです。

 

 今回、なぜ彼らを思い出したかというと、いろいろです。一昨日書いたことはだいぶ前から考えていて、「自分の場合、どうだったかなあ」と考えるとR&Bの入り口は間違いなくホール&オーツやユーリズミックス、インエクセスみたいなところだったなと思い返していたのと、こないだマドンナのFromワーストtoベストをやったでしょ。さらにアレサ・フラクリンが亡くなった時にアレサを知ったタイミングを思い出したりして、ちょうど80sの中ばを思い出していた。そうしたらやっぱりホール&オーツのフレーズがどうしても頭をよぎってしまった・・ということです。

 

 ということでホール&オーツですが、マドンナ同様、通常のオリジナル・アルバムだけでは物足らないのでプラスαで、ダリル・ホールのソロの分も足して、2回でお送りします。全部で21枚です。

 

 

 ではワーストから。

 

21.Beauty On A Backstreet(1977 US#30)

 

 ワーストは1977年発表の邦題「裏通りの魔女」ですね。これはホール&オーツのこのテの企画がある際、いつもワーストに入るアルバムです。

 

 ホール&オーツというのは音楽的に気難しい人たちでして、自分たちが「白人でソウル・ミュージックをやっている」という風にだけ捉えられたくない、という気持ちが強いんですね。この前のアルバムで、「現在のブルー・アイド・ソウル・デュオ」のイメージがつけられそうになったことに、とりわけダリルが反抗しまして、どこまで意識したか定かじゃないんですが、パンクロック的なアプローチで作ってます。このころ、ダリルはキング・クリムゾンのロバート・フリップともソロを作ってますしね。

 

 ただ、なんかヤケクソすぎるんですよね(笑)。極端。アナログA面がパンクかと思ったら、B面で思い出したようにソウルをやり、突然レッド・ツェッペリンの「カシミール」みたいなオリエンタルなことまでやってみたり。かなりストレス、溜まってたんじゃないかな。彼らはこれで、せっかくブレイクしかかっていたのに人気を落としてしまいます。

 

 

20.Whole Oats(1972)

 

 これがデビュー作ですね。タイトルは彼らの名前をもじったギャグで、ジャケ写には「たっぷり詰まったオーツ麦」の写真がダジャレのように使われてもいました。

 

 これなんですが、ソウル要素はほとんど見られず、むしろフォークです。60sのR&Bっぽい要素もないわけじゃなく、彼らがのちに得意とするピアノの3連譜の曲も、おそらくキャロル・キングあたりが意識にあったのか、やっていたりもするんですけど、世のシンガーソングライター・ブームに沿ったような「フォーク・デュオ」としてのアルバムです。

 

 中には「Fall In Philadelphia」みたいないい曲もあるんですけど、実力はほとんど発揮されていません。むしろ、持っているものを引っ込めているようにさえ聞こえます。

 

 ダリルって、とりわけ、自分が「ソウルの人」とだけ解釈されるのを嫌がる人なんですけど、それはホール&オーツのデビュー前にこういうことやってたからだと今にして思います。

 

 

 はい。昔は、ソウル・ヴォーカル・グループのヴォーカリストだったのです。この時代に「お前、白人なのに何やってるんだ」とからかわれたんじゃないかな。そういうことをのちに、今も続けている彼の音楽チャンネルでの番組でもほのめかしたりしてますからね。デビューの時から、「自分たちのアイデンティティ」に関しては複雑な人でした。

 

 

19.Soul Alone/Daryl Hall(1994 US#177 UK#55)

 

 これは1994年に発表した、ダリルのソロですね。1990年にホール&オーツは活動休止を宣言したので、本格的なソロの船出になる・・・はずだったアルバムです。僕も当初、すごく期待しました。

 

 ただなあ。これが蓋を開けたら、もうガッカリでしたね。「大人になる」という意味を履き違えたような、すごくマッタリとしたアダルト・コンテンポラリーでね。「ソロで本格的にR&Bを追求」というから、もっとコンテンポラリーな90sのR&Bやるのかと思ったら。メンツ的には、あの頃のロンドンのアシッド・ジャズの人脈とか関わっていたりもしたんですけど、なんかですね、これまでホール&オーツが意図的に避けてきた「シャレオツ」な感じというのを、やってしまった感じですね。ロックっぽい芯が全然なくなっちゃった。

 

唯一マーヴィン・ゲイのカルト・アルバム「離婚伝説」(1978)に入ってる曲のカバーをやったのは「渋いとこ、ついたね」って感じでニヤリだったんですけど、それだけかなあ。

 

 

18.Change Of Season(1990 US#60 UK#44)

 

 続いては1990年の「Change Of Season」。このアルバムでホール&オーツは長い活動休止に入ります。

 

 彼らはエイティーズの全盛の頃に、ちょっとサウンドで先を行こうとしすぎて、ある時期、ドッタンバッタンとかなりうるさいサウンドになったんですが、その反動か、90年代最初の年に出たこのアルバムではアコースティック路線にガラっと変わってます。シンセのところをハモンド・オルガン、エレキギターがアコースティックに変わっています。この路線は、ちょうど僕は大学2年だったんですけど、僕の友達の間ではすごく歓迎されましたね。ただ僕は大ファンを自認してたので非常に言いにくかったんですけど・・実は嫌いでした(笑)。

 

 というのはですね、さっきも言ったように、「大人になる」意味を履き違えてるというか、まったりしすぎなんですよ。保守的にしか聞こえない感じがして。あと、人気出すぎて疲れたのかもしれないけど、なんか隠居したみたいで、その姿勢も違和感あったんですよね。

 

 そして今回聴き直してみて、理由がもう一つあったのがわかりました。これ、レイドバックが不完全だったんです。せっかくサウンドがアコースティックになったのに、ドラムの音だけ、やたらうるさいんです(笑)。これがなあ〜、「でも、結局、エイティーズを拭い去れてないじゃん」と突っ込める感じになってしまったんですよね。そこのところが失敗でしたね。方向性は間違ってなかったのかもしれないけど、やり方を間違った感じはしますね。

 

 

17.Can't Stop Dreaming/Daryl Hall(1996 Japan Only, 2003 US)

 

 そして今度は96年のダリルのソロですね。

 

 90sに入って、とにかく調子の悪かったダリル・ホールなんですが、それをレコード会社が見かねてか、このアルバム、本国ではオクラいり扱いとなり、この当時、日本でのみのリリースでした。アメリカだと、2003年までリリースがなかったんですよね。

 

 そういうこともあり、僕も長いこと聴くのためらってたアルバムなんですが、R&B路線でも、アダルト・コンテンポラリー色はやや後退してます。さらに言うと「Cab Driver」という、のちのホール&オーツのライブでもたまに披露される曲が入っていたりもして、案外貴重な感じです。

 

 実はこの頃、ホール&オーツは実は再始動していて、全米ツアーやってました。僕もLAでライブ見てます。おそらくはダリルのソロでの行き詰まりと、ジョンが当時抱えていた借金苦の問題があったからだと思うんですけど、徐々にホール&オーツに戻る準備を整えていたのかな、とも思います。

 

 

16.Marigold Sky(1997 US#95)

 

 そして、これが97年に活動再開したホール&オーツのアルバムです。

 

 出た当初はもうすごくガッカリでしたね。あの当時、僕はオルタナとかブリットポップ、ヒップホップにビッグビートと聞いてて、そういう耳には、もう居場所がないように感じたアルバムで、すごく寂しかったことを覚えてます。

 

 ただ、今聞き返すと、彼らのキャリアの中では「復調」の始まりだった作品でもあったんだな、と思います。サウンドは、「Change Of Season」でのアKおースティック路線は引きずってはいるものの、ドラムの音はまともになったし(笑)、曲もロック的な前のめりさが戻ってきて。おそらく、この前の年にホール&オーツでツアーをやった影響があると思います。

 

 ただ、「忘れられてたアーティスト」の復帰作をメジャーで出す世知辛さみたいのも感じさせるアルバムです。なんか「頑張って全盛期っぽくやってみました」みたいな、代表曲「Say It Isnt So」を意識したような「Romeo Is Bleeding」とか、アダルト・コンテンポラリーのラジオ用にヒット狙って作らされたみたいな「A Promise Aint Enough」みたいな曲があったり。そういうとこは、今でも聞いててちょっと辛いかな。

 

 

15.Sacred Songs/Daryl Hall(1980 US#58)

 

 続いてはダリルの最初のソロ・アルバムですね。

 

 これは意外や意外、キング・クリムゾンのロバート・フリップのプロデュースで製作されたアルバムです。フリップといえば、これが作られた1977年に、デヴィッド・ボウイとの「ベルリン三部作」を作っていたんですけど、どの影響もあって、サウンドの質感が「ベルリン三部作」のソレに結構似てます。そういうこともあり、プログレ・ファン、古のブリティッシュ・ロック・ファンの間では「カルト名作」扱いされてるアルバムです。

 

 僕もそれは認めます。ただ、「ホール&オーツのディスコグラフィ」として考えた場合に、あまりに異質なんで、そこのところがなあ。フリップの作ったインストも入っているんですが、ぶっちゃけ、そういうのはいらなかったし(笑)。そうした違和感はレコード会社も感じていたのか、これ、一度はお蔵入りになって、3年後の1980年のリリースになったんですね。ただ、ホール&オーツの人気がかなり上がっていたこともあって、これ、そこそこヒットもしています。

 

 

14.Laughing Down Crying/Daryl Hall(2011 US#142)

 

 目下のところの最新音源ですね。ダリルのソロです。

 

 ここ10年くらいは、ダリルは自分の音楽番組「Live From Daryl's House」の切り盛りが中心なんですが、この番組は、若い人気のロック系のアーティストを中心に、たまに黒人アーティストや大ベテランもありの豪華メンツとの即興的なセッションを楽しむという、音楽ファン的にはすごく貴重で嬉しい番組です。僕もかなりたくさんのエピソードを見てます。

 

 このアルバムは、そのセッションを楽しむ感覚で作った、なかなか良質なアルバムです。ライブ感を活かして、音はかなり薄めにプロデュースされていまして、ダリルは基本的にアコースティック・ギターを持って軽快にロックするのがメインですが、中盤になると、より”らしい”ソウルフルな曲も増えてきて。

 

 これ、ちゃんとホール&オーツのアルバムとして作ったら、そこそこ良いものになった気がするんですけどねえ。そこのところがすごく惜しいです。

 

 すみません。ちょっと時間がなくなって外出しなくてはいけないんですが、続きもありますので後ほど。

 

 

13.Big Bam Boom(1984 US#5 UK#28)

 

 そして13位は「Big Bam Boom」。僕と世代の近い人は「ええええ」と思われるかもしれません。もっともヒットの記憶のあるアルバムの一つですからね。全盛期を象徴する一枚でもあるし。

 

 ただ、僕に言わさせてもらうと、このアルバムで彼らの快進撃が止まったと思っています。このアルバムは彼らが80sの初頭から築いてきた”ニュー・ウェイヴ・ソウル”が突き抜けて、ニューヨークのクラブ・カルチャーのノリを取り入れて作ったアルバムなんですけど、もう、テクノロジカルに先に行こう行こうとしすぎて、音が極度にオーヴァー・プロデュースになるんですよ。特にドラムのスネアの音の。「ズドーンッ」と、なんか暴力的な感じまでして。リアルタイムで中3でLPで買いましたけど、大好きだったのになんか違和感は感じて、あまり僕のターンテーブルには乗らなかったんですよね。だから当時から、LPをテープに落として、好きな曲だけ聴くようにしてました(笑)。

 

 あと、この当時、1年1作のハイペースで作ってて、なんとかペースを守ろうとしすぎたあまり、このアルバム、曲数が少ないんですよ。そこも物足りなかったなあ。実質8曲で、いい曲は全米1位の「アウト・オブ・タッチ」とか数曲でしたしね。オーヴァープロデュースのエイティーズ・サウンドは今、「バッド・エイティーズ」とも呼ばれてますけど、そこに陥った感じですね。

 

 

髪型もこうなっちゃってたしねえ〜。

 

12.Do It For Love(2002 US#77 UK#37)

 

 ホール&オーツのオリジナル作としては現状最後ですね。この後にカバー集とクリスマス・アルバムは出ていますけど。

 

 この前の年だったかな。VH1で「Behind The Music」っていうドキュメンタリーの題材に彼らがなって、それが結構ビターな内容だったんですけど、その時にダリルがこれのタイトル曲を弾き語りでやってて、その後にやった来日公演でもそれを披露して、「ああ、この曲にかけてるんだな」と思ったら、これが結構当たりましたね。アダルト・コンテンポラリーのチャートで1位になりましたからね。

 

 このアルバムですが、だいぶ曲がロックよりになって、全盛期の時みたいな軽快さが戻ってきました。路線は「Change Of Season」の時からのアコースティックと生ピアノが主体ではあるんですが、そこにゆるくエレクトロのリズム・トラックを加えることによって、いい意味での軽さも加えてコンテンポラリーになっているのも交換もてましたね。

 

 あと、最大の山場は親友トッド・ラングレンを迎えてのニュー・ラデカルズの「Someday We'll Know」のカバーですね。ニュー・ラディカルズって1999年に「You Get What You Give」の大ヒット出した時から「ホール&オーツじゃないか!」と僕は飛びついたものでしたが、本人たちもそれに気づいてトッドに「ちょうど俺らとキミの間みたいなことやってる若いのがいるからデュエットでカバーしない?」といって企画が実現しています。トッドとダリルの声が似てて区別が難しくはあるんですが(笑)、両者の古くからのファンとしては嬉しい瞬間でした。

 

 

11.Ooh Yeah(1988 US#24 UK#52)

 

 そしてトップ10にあともう一歩の11位は「Ooh Yeah」でした。

 

 このアルバムがこれまでほど売れなかったことで、ホール&オーツは落ち目の印象を持たれてしまいます。これがレーベル移籍の第1弾だったんですけど、先行シングルの「Everything Your Heart Desires」を全米3位のヒットになったんですけど、あとが続きませんでしたね。

 

 ただ、このアルバム、内容的にはいいんですよね。この前のアルバムまでみたいに、”ニュー・ウェイヴやはやりのクラブ・サウンド”を意識した作りではないんですけど、その分、80年代に入ってからだと一番ソウルフルに作ったアルバムです。本人たちもリリース前に「バック・トゥ・ルーツ」と言ってましたしね。

 

 これも「Big Bam Boom」以降にちょっと困ったことになっていた「ドラム問題」は解消されてなくて、スネアが「パシャーン」って言ってちょっとうるさいんですが、16ビート多めで曲がややゆったりしてるせいなのか、今聴いても安定して聞ける感じはありますね。歴代でも、ここまでソウルに徹した作品もそうはないです。

 

 

では、この後はトップ10を次の投稿でいきます。

 

 

author:沢田太陽, category:FromワーストTo ベスト, 11:16
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沢田太陽による、マドンナのシングルTop10

どうも。

 

では、今週のマドンナ・スペシャル・ウィーク、締めくくりは

 

 

僕が選んだ、マドンナのシングルTop10、これを行きたいと思います。もう、なんか、ジャケ写を見てるだけで懐かしさがこみ上げてきますけどね。

 

 

 これ、選ぶの結構大変でしたよ。10曲に絞るなんて酷な話で。なので先に20位から11位を発表しちゃいますね。

 

20.Justify My Love(Immaculate Collection)

19.Rain(Erotica)

18.Oh Father(Like A Prayer)

17.Music(Music)

16.Love Don't Live Here Anymore(Like A Virgin, Something To Remember)

15.Live To Tell(True Blue)

14.Don't Tell Me(Music)

13.Deeper And Deeper(Erotica)

12.Express Yourself(Like A Prayer)

11.Ray Of Light(Ray Of Light)

 

このあたりですね。自分で選んでみて、「だいたい、いつも、こんな感じだよね。かわんないなあ」と自分でも驚いてしまいました(笑)。11,12は気分によってはトップ10、入れる時もありますけどね。自分的にもちょっと惜しい気がしてます。

 

 

では、10位に行きましょう。

 

10.Give It To Me(2008 Hard Candy)

 

 

10位は「Give It To Me」。これはアルバムの「Hard Candy」のとこでも述べました。マドンナとの仕事をすることによって、ファレル・ウイリアムスが生き返った曲です。

 

 これ、すごくマドンナっぽいんですよね。ファレルにしてはエレクトロ要素多めで、かつ、70s後半のディスコ意識してるでしょ?これって明らかに「マドンナがどんな人か」を念頭に置いて作ったはずなんですよ。例えばこの感じが、アリアナ・グランデに提供する曲だったら出なかったでしょうからね。この辺のちょっとした発想から、売れっ子になりすぎてるうちに同じような曲ばっかり書くようになっていた彼に、新しい方向性を開くキッカケになったような気がしてます。

 

 また、2000's以降でトップ10に入れたのはこの曲だけですね。2000s以降のマドンナって、曲の粒は揃っててアルバムもいいんですけど、飛び抜けた曲がちょっと減ってる印象もありますからね。

 

9.Human Nature(1994 Bedtime Stories)

 

 

9位は「Human Nature」。アルバムのところでも書いたように、あまり好きな時期の曲ではないんですが、ただ、これはすごく試みとしてうまくいった曲だと思います。曲を書いたのは、この当時にTLCとかで当てていたダラス・オースティンなんですけど、彼のメロディは生かしつつも、アレンジの雰囲気がR&B調じゃなくて、この当時彼女がもう一つ凝っていたトリップホップっぽくなってる。こういう曲、この当時他にないし、いかにもこの当時のマドンナが歌って説得力のある感じになっています。

 

 これ、ライブでも今でもやる頻度の高い曲ですね。

 

 

8.Angel(1985 Like A Virgin)

 

 

8位は「Angel」。

 

この曲は4曲あった「Like A Virgin」からのシングルの中で最も地味な曲で、それはこの動画が、これまでの彼女のMVを単に再編集したものということでもわかる通り、特に強くプロモーションもされなかった(その割に全米トップ10は入ったけど)曲なんですけど、しかし、これが唯一の彼女のソングライティング名義による、このアルバムからのシングルなんですよね。

 

 でも、僕からしたら、この曲から、その後のマドンナの曲の奥底に流れる、マイナー調のクセ・メロが生まれたのでは、と踏んでいます。いわゆる、これ、典型的な「マドンナ節」なんですよね。この曲以前にこういうメロディの彼女の曲はないし、その後のアルバムから顕著に目立っていくので、やっぱり、彼女の中でなんとなくクセになってる節回しがこれなんだと思います。

 

 さらにこれ、アウトロのナイル・ロジャーズのカッティング・ギターも何気にカッコいいんですよ!この曲を知っていて、そうしたディテールを忘れれている人は是非聴き直して欲しいです。

 

7.Vogue(1990 I'm Breatheless)

 

 

7位は「Vogue」ですね。

 

この曲と、「Justify My Love」の頃のマドンナが、右肩上がりのカリスマ・オーラとしては一番すごかったんじゃないかな。無敵な感じがありましたね。特に、この曲かなあ、やっぱり。アルバムのとこでも言いましたけど、1930年代のカルチャーのレジェンドの名前を次々あげるところがやっぱシビれますね。そういう「良き伝統継承宣言」ってやっぱ知的レベル高い人じゃないと言えないしね。そういうことができる資質がやっぱ彼女にはあるんですよね。

 

 そして、このヴィデオ・クリップの監督がデヴィッド・フィンチャーですよ!まだ映画監督デビュー前の。そういう意味でもこれ、やっぱ、かなり貴重です。

 

 

6.Frozen(1998 Ray Of Light)

 

 

6位は「Frozen」。これも、本当にカッコいい一曲。

 

これは、当時もハッキリ覚えてますけど、「マドンナの新時代」を告げた一曲ですね。マドンナってビヨークに対してコンプレックス抱いてた人なんですけど、もう、そういうのを機にする必要もないくらいに、彼女なりのアーティスティックな路線をここから築き始めますね。ウィリアム・オービットによる緊迫感溢れるストリングスに、サビ前で壮大なスケールで入るバカデカいパーカッション。こと「貫禄」という意味では、これ、マドンナ史上屈指の一曲だと思います。

 

 

5.Lucky Star(1983 Madonna)

 

 

 

 

5位は「Lucky Star」。僕がマドンナを「アーティスト」として意識し始めた曲ですね。

 

彼女はこの前までに「Holiday」と「Boderline」というヒットがあったんですけど、この時点ではまだ彼女の将来までは確信できていませんでしたね。まだシンディ・ローパーの方が84年夏までの時点では圧倒的に「新世代の女性アーティスト」としての注目度で勝ってましたからね。それが、「あっ、もしかして、マドンナってすごいかも」と思ったのが、こないだ言った「Like A Virgin」の初公開と、その直後、その曲の前にデビュー作から追い打ちでシングル・カットをかけたこの曲ですね。この当時、「なんだ、こんないい曲、まだ残ってたんじゃん!」と思いましたもん。しかもこれ、曲書いたの彼女の単独名義なんですよね。その話も小耳に挟んだものだから、さらに「へえ〜」で。で、しかも、この映像センスとダンスのキレでしょ。「うわっ、これはカッコいいな」と思って、当時いっぱいあった洋楽のヴィデオ・クリップ流す番組で、これかかるとすごく嬉しかったものでしたね。

 

 そういうことがあったものだから、この曲の次に売れた「Like A Virgin」より圧倒的に思い入れがあったし、「Like〜」で多くの人が騒いだ時に、中3なりの意気がりで、「こっちはもっと前から知ってたんだぜ!」と無駄な優越感にも浸っていたものでした(笑)。

 

 

4.「Like A Prayer」(1989 Like A Prayer)

 

 

4位は「Like A Prayer」。これも、やっぱり、相当重要な曲ですよね。

 

この曲に関しては、出た当初よりも、時間を何年もかけて好きになった曲です。重要な局面でよくパフォーマンスで披露してたこともあったし、メッセージの強さと、ゴスペル・コーラスの力強さ、さらにこの人の曲で珍しく、短いながらもギター・ソロもあったりしてね。曲の持つエモーションの強さでは、これが一番なんじゃないかな。

 

 今回、アルバムをデビューから最新作までフルで聞き返しましたけど、「ああ、やっぱり、いい曲だなあ」と最も再認識したのが、「Frozen」とこれでしたね。

 

 

3.Beautiful Stranger(1999 Austin Powers The Spy Who Shagged Me)

 

 

ここから3曲ですが、自分でも驚きましたが、全てアルバム未収録の、映画の曲です。

 

まず3位は「Beautiful Stranger」。もう、この曲はですね、出た当時、何度もリピートしてハマりましたね。ちょうど「Ray Of Light」で「マドンナ、やっぱカッコいい!」ってなってた直後にこれがガツンときましたからね。

 

 この曲は、「オースティン・パワーズ」が60sのキャラクターだということで、もともとロックに強いウィリアム・オービットが60sのサイケ調にこれを作ったんですけど、これはケミカル・ブラザーズのノエル・ギャラガーとの一連の共演作に匹敵する、「エレクトロと60sサイケの融合の最高傑作」ですね。しかも、ケミカルの場合が、なんだかんだでビートルズの「リボルバー」という大ネタだったりするところが、こっちで思い出されたのは、トラフィックの「Paper Sun」という、マニアックなとこ、ついてきた点でも大好きです。

 

 だから、ウィリアム・オービットともう一作、作って欲しかったんだよなあ。

 

 

2.Into The Groove(1985 Desperately Seeking Suzan)

 

 

そして2位は「Into The Groove」。これも映画「スーザンを探して」の挿入曲です。

 

1985年というのは、前にも行ったように、マドンナにとって最大のヒット年で、7曲くらいヒットがあるんですけど、音楽的に重要なのは、やっぱりこの曲ですね。「Like A Virgin」に入ってる曲よりよりダンス・ミュージックに特化した一曲だし、子供心に「マドンナが本当にアピールしたい曲って、こういうのだよね、きっと」と思ってました。実際、この曲、人気あったしね。ラジオでも本当によく流れてました。やっぱり今聞いても、「Like A Virgin」とか「Material Girl」よりも曲の普遍性が強いんだよなあ。

 

 で、実際、この曲をフィーチャーする形で、87年には「You Can Dance」というリミックス集が出て、これもヒットしてますからね。さらに言えば、この曲のほぼ作り変えみたいな「Causing A Commotion」という曲もヒットしています。これも、典型的な「マドンナ・メロ」のパターンの一つです。

 

1.Crazy For You(1985 Vision Quest)

 

 

そして1位はこれです。「Crazy For You」!

 

これに関してはですね、なんで好きかというと、「マドンナ」の次元を超えて、大きな一曲になってるからですね。

 

 他の曲だと、「マドンナらしさ」を意識したものが入るんですけど、これは「マドンナ」本人を超えて、「エイティーズの」、並びに「この当時をリアルタイムで生きた人にとっての忘れられないラヴ・ソング」として君臨している側面があるからすごい曲だなと思うんですよね。

 

 僕自身の思い出とも密接に繋がってもいます。お恥ずかしい話、恋愛経験は決して豊富とは言えないんですけど、過去に「友人」の関係を超えた方々は全員この曲の大ファンでしたし(笑)、僕がたまに友人の結婚式の選曲を頼まれたりするときも、この曲はほとんど毎回選んでるはずです。だって、毎回、最初に頭に思い浮かぶの、これなんだもん(笑)。

 

 特に2分すぎの、2回目のBメロの転調のとこからがいいですね。そして2分40秒以降の「You feel it in my kiss, you feel it in my kiss because I'm crazy for you」ときて「Touch me once and you'll know it's true」のとこの「know!」のシャウトのところなんて今聞いてもゾクゾクしますもん(笑)!

 

ちょうどこの映画

 

 

 

これですね。これ、2004年のジェニファー・ガーナーとマーク・ラファロのロマンティック・コメディ「13 Going on 30」なんですけど、このカット割りがですね、まさに僕の言った、この曲の一番いいとこをわかった作りになってたんですよね。それがゆえに、すごく好きな映画になっていたりもします。

 

 

・・と、こんな感じですね。

 

今後のマドンナから、こういうトップ10企画に入る曲をまだ期待したいところです。

 

 

 

 

author:沢田太陽, category:FromワーストTo ベスト, 13:07
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