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全オリジナル・アルバム From ワースト To ベスト (第5回)ドレイク

どうも。

 

 

今日は前からやるつもりで伸びていた、この企画、いきましょう。これです!

 

 

 

 

はい。「From Worst To Best、第5回に用意していたのはドレイクだったんですよね。これまでの傾向とガラリと違うでしょ。ただ、僕にとってみれば、今、もっともちゃんと聴かなくてはいけないアーティストの一つだと思っているし、今、一番作品を出すペースの早い、量産能力にすごくたけたラッパー、そしてシンガーなので、そういうところも皆さんにわかってほしいな、という気持ちがあったのでやることに決めました。楽しんでいただけるとさいわいです。

 

 

 今回のドレイクですが、僕のブログの読者さんは基本的にロックファンの比率が高いと思うので、今日はわかりやすく、ジャケ写つきで解説出来たらと思います。では、早速10位、ワーストからいきましょう。

 

 

10.Room For Improvenennt(2006 Mixtape)

 

 まず10位ですが、これがドレイクにとっての実質上のインディでのデビュー作、というか、最初のミックステープになります。2006年。まだ20歳になるかならないかといった感じの、本当に若いときのドレイクですね。

 

 

 この当時は、まだカナダの朴訥としたシーンの新顔といった感じで、冒頭にご丁寧にも自己紹介するシーンなんてものもあったりします。なんかいろんな意味ですべてに初々しく、ときに未熟さも感じさせはしますが、地元トロントのクルーを使おうとする気持ちはこのときから既に強く、後にドレイクにとっては欠かせないプロデューサーのひとりとなるBoi 1 Da(ボーイ・ワンダ)はこの時点で既に参加していますね。ただ、まだ方向性が定まってはいない感じですね。スティーヴィー・ワンダーの「マイ・シェリー・アモール」をはじめ、ソフィスティケイトされた路線でいきたいのはなんとなく見えはするんですけどね。

 

 この頃は、まだ「カナダの青春ドラマ(デグラッシ)に出演する少年俳優」の方もイメージの方が、彼としてもまだ強かった作品のようです。

 

 

9.Comeback Season(2007 Mixtape)

 

 続いて、これも初期もミックステープですね、まだジャケ写からも、初々しい面影が見れます。

 

 まだ、この時期でもそんなに,後の大アーティストらしい感じはしないんですけど、どういうわけだかよくはわからなかったんですが、この中の一曲で、当時すでに一般的に売れかかっていたR&Bのシンガーソングライターのトレイ・ソングスとの共演が成功して「Replecament Girl」という曲が、マイナーヒットするんですね。これでアメリカのヒップホップ業界の中でドレイクに興味を示す人たちが現れて,その中のひとりに、当時飛ぶ取り落とす勢いだった、ニューオーリンズのラッパー、リル・ウェインがいたわけです。

 

 あと、「Replacement Girl」でトロント勢の重要なプロデューサーのひとりとなるT Minusが加わります。

 

 

 

8.Thank Me Later(2010 US#1UK#15)

 

 これがドレイクの実質上のデビュー・アルバムになります。リル・ウェインのレーベルのヤング・マネーからのデビューとなります。

 

 さっき,9位のところでいった話が縁となってのリル・ウェインの門下になったわけですけど、「では、これで一般的に知られるようになったのか」となると、これが話が少し違います。この話に関しては、もう少し上位のところですることにしましょう。

 

 

 これはさすがに、この当時、一番人気のあったラッパーのリル・ウェインのバックアップがあったわけです。もう、この時点で、アリシア・キーズだの、ジェイZだの、同じくヤング・マネーの修行中の身だったニッキー・ミナージュが参加していたりもします。

 

 このように、それなりに豪華なデビュー作です。僕がドレイクのことを知ったのは、このアルバムがレヴューされてすごくほめられていたのをピッチフォークで読んだときですね。それで全米でも1位にもなったし、そんな批評性も高いということで、もちろん悪いアルバムであるはずはありません。ただ、後のアルバムと比較して聴いた場合に、なんか、なまじ、「ゲストのお膳立て」みたいなところの方が曲そのものより目立っているところがあって、「ドレイク本人の代表曲」というのが、アルバムを通じてちょっとわかりにくいところがあるんですよね。なんか、今となっては微妙に印象が低いんです、このアルバム。

 

 ただ、リル・ウェインほどの有名なラッパーの傘下になったにもかかわらず、このアルバムの製作陣も、中核をなすのはBoi-1 Daに40といった地元トロントの若いトラックメイカーなんですよね。その「地元トロントのクルー」にこだわったことが、ドレイクのアーティストとしてのアイデンティティを強く構成して行くことになります。

 

 

 

7.Views(2016 US#1 UK#1)

 

 ドレイクが世界的なメガ・ヒット・アーティストになった、セールス的には記念すべきアルバムでしたね。イギリスでもこれではじめて1位になったし、アメリカでも、去年の6月くらいだったかと思うんですけど、しばらく1位でしたもんね。

 

 

 このアルバムですが、もう、事前の期待値が高まるだけ高まった末に出されたアルバムでした。「正規のアルバム名義」では3年ぶりのアルバムだったし、その間、この前の2015年には、彼にとって史上最高位の2位になり、ヨーロッパ圏で実質初のトップ10シングルとなった「Hotline Bling」のヒットもあった。そして、前作からの3年ものあいだ、番外的なアルバムも2枚でて、アルバム未収録のシングルも大量に出されていた。それだけに「次はどんなにすごいアルバムになるんだ」と期待が高まっていた訳です。

 

 

 ただ、ふたを開けてみたら、「Hotline〜」こそアルバムの最後に入ったものの、あとの事前シングルはほぼ全くアルバムには入らず、アルバムそのものは純然たる新曲ばかりで「え?」と肩すかしとなります。加えて、「地元トロント」をアルバム全体のテーマにこそしたものの、無理にそのコンセプトにこだわって作りすぎるあまり、なんか収録曲の自由が利かず、逆に型にはまっているようにも聴こえましたね。

 

 

 また、ドレイクって、どのアルバムも、アルバム内の曲順が、ハイライトが前半だけに偏ったりしないで、いずれの場所にもキラー・チューンが万遍なく入っているのもすごく強みだったりもするんですが、このアルバムはどういうわけだか、力のあるオイシイ曲が後の方に集中して偏ってる変な傾向もあって、そこもだいぶ減点でしたね。

 

 とは言え。全世界的に大ヒットした「One Dance」や人気曲の「Controlla」もあって、前述の「Hotline」もあって,大事な曲が入っている作品にはなってはいるし、「これでドレイクに興味をもった」という人を、非R&B/ヒップホップの音楽リスナーに多くつくった、マスへのアピールの強い作品なこともたしかです。

 

 

6.If You Are Reading This It's Too Late(2015 US#1 UK#3)

 

 ドレイクが今日にいたる、「多作家」のイメージを決定づけた作品ですね。

 

 2015年3月に突然、「ミックステープをitunesから出す」と、何の事前予告もなく発表され、世界中の音楽ファンの目がテンになった作品でした。

 

 ただ、彼ほど、もうエスタブリッシュされた知名度のあるアーティストが、「ミックステープを出すって、どういうこと?アルバムとどう違う訳よ」と、非常に謎でしたね。「アルバムだけ聴いてて、ミックステープを聴かないようだとヒップホップ・リスナーとして半人前」みたいな話は90sの頃から聞いたことはあったんですけど、そう言う、ある種、秘密めいた楽しみをこんなにおおっぴらに展開するのも、それもヒップホップの世界の中で、それはいいことなの??そんな風にも思ったものでした。

 

 ただ、今改めて聴くに、当時彼がこれを「ミックステープとして出したい」という気持ちもわからなくはないなと思っています。というのも、これ、これまでのドレイク作品の中において「アナザー・サイド・オブ・ドレイク」というか、毛色はたしかに違うアルバムなので。ぶっちゃけ、サウンドもリリックもすごく暗いんですよね。いうなれば、ラッパー、シンガーとして大成功を果たしたあと、ヒップホップの仲間内からのやっかみや中傷に苦悩する姿が赤裸裸に描かれています。

 

 

 その象徴的ともいえるのが「Energy」って曲ですけど、ここでは「まわりは敵だらけ。僕には分割払いのローンもこれだけ残っているのに」と、かなり悩みを具体的にしるし、命の心配までする感じでした。まあ、ヒップホップの場合、成功の裏で、ライバルとの争いに巻き込まれすぎると命が危ないこともたしかですからね。

 

 ただ、ドレイクって、これまでにすごく洗練された、女の子目線で優しいタイプのラッパーというイメージだったんですけど、「僕だってタフに戦えるぜ」とアピールできたのはプラスになったんじゃないかな。

 

 

5. What A Time To Be Alive(With Future)(US#1 UK#6)

 

 ドレイクの2015年の唐突の展開第2弾は、9月にリリースした、アトランタのラッパー、フューチャーとのコラボ・アルバムでしたね。

 

 このアルバムでドレイクがトライしたのは、ちょうどシーン的にホットになりはじめた”トラップ”でした。そこで実際に、トラップの都であるアトランタに乗り込んで、トラップ・キングのフューチャー、そしてトラップ最大のプロデューサーであるメトロ・ブーミンのプロデュースがほぼ大半という状況でアルバムを作りました。ドレイクのいつものスタッフは、1曲だけ40が作ったのがあっただけです。

 

 

 ここでも、6位のとこでも書いた、ドレイクがこれまで築き上げてきたイメージを突き動かし、そこに安住しない姿勢を示せたことがまず良いのと、かねてから定評のあったドレイクの「有能なアーティストや刺激的なサウンドを聞き分ける耳」のたしかさをしっかりアピールしたことになったのがすごく良いと思いますね。実際、たしかにフューチャー、この作品の前から売れてはいましたけど、やっぱり全世界的な注目度は今年に入って2枚のアルバムを2週連続で全米1位にしたときだし、メトロ・ブーミンにしたって、トラップ随一のヒットメイカーですけど、今、忙し過ぎて、彼がアルバム全体を取り仕切る作品なんて、そう多くは聞けませんからね。古くからのつきあいのフューチャーの近作でさえ、数曲しかやってませんからね。

 

 

 その意味でも、トラップ全体の中での位置づけとして見ても、これはすごく意味のある作品です。そういうアルバムに完全なアウェーとして参加して、ドレイク自身の事前知名度と共にトラップを広めたわけですからね。こういうとこはさすがだと思います。

 

 

 

4.More Life(2017 US#1 UK#2)

 

 現時点での最新作ですね。現在ヒット中です。

 

 このアルバム、ドレイクの言葉を借りるなら、アルバムじゃなくて「プレイリスト」なんだそうです。「ミックステープといったかと思ったら、今度はプレイリストかよ」というところにキザったさを感じない訳ではないのですが(笑)、まあ、これも差別化したい気持ちもわからないではありません。

 

 

 これは、「Views」での反省を活かしたか、アルバムそのもののコンセプトも特に考えずに、いろんなタイプの楽曲をまとめた、という感じですね。ただ、録音そのものの時期にバラつきがあるわけではさほどなく、2016年から17年と、短期間に録音したものをまとめていますね。ただでさえ22曲も集まったんだから、かなりコツコツとレコーディングしていたことがわかるんですが、これも「Views」の時同様に、シングルとしてストリーミング・リリースしながらアルバム未収録になった曲がかなりあります。こういうリリースの仕方って、デジタル・リスニング時代以前にはかなりコレクター泣かせの発表の仕方だと思うんですけど、ストリーミング時代のリリースの構造を一番理解してるのがドレイクなんじゃないかなと僕は思っています。

 

 

 で、アルバムの内容なんですが、「万国漫遊」って感じですね.地元トロントの仲間(Boi 1 Da、T Minus、40、Nineteen85)のものがあったかと思えば、トラップ勢(ミーゴスのクウェイヴォ、ヤング・サグスほか)との共演もあり、ギグス、サンファ、ジョージャ・スミス(今のドレイクのカノジョ説あり)といったロンドン勢、そして、近作で強めているカリブのビートあり。こういう、「先進的なところへのアンテナ」、もしくは「誰とでも友人になれる交渉力」に関して、ドレイクって優れてるなあと思わされますね。

 

 特にこのアルバムは「Fake Love」「Passion Fruit」「BLEM」といったヴォーカル楽曲がとりわけいいですね。

 

 

3.So Far Gone(Mixtape 後にEPでUS#6)

 

 そして、ドレイクのコア・ファンのあいだでかねてから人気が高いのが、この、そもそもの出世作ですね。

 

 これは彼の、デビュー・アルバムが出る前の、3枚目のミックステープなんですが、ここからドレイクの人生が激変することになります。ここから「Best I Ever Had」「Successful」の2曲が大ヒット、特に前者は全米2位まで上がっているんですが、この2曲でドレイクのラッパー、シンガーとしての存在がアメリカ内で全国区となります。

 

 そして、これ、ただ売れただけじゃなくて、ここからドレイクのアーティスト・アイデンティティが根本的に確立されます。それは、過去のどのラッパー以上に、そのリリックの向ける先に「女の子」の存在を感じさせるハートスロブ・ラッパーとしての彼ですね。「女の子はみんな、僕の歌を彼女たちに捧げたものだと思っているけど、それが違う。キミのためなんだ」と「Best I Ever Had」で歌いますが、こういうところなんかは、マーヴィン・ゲイ以降のR&Bの伝統が、これまでの手法があまりにも様式化しすぎてつまらなくなっていたところに、ヒップホップ側からの新風を吹き込んだ感じですね。あと、「金と車が欲しい。成功したい」とする「Successful」でも、そういう常套句的なヒップホップのリリックが、これまで聴いたことのないようなセクシーなトラックにのって歌われる。さすがにこれは新しかったですね。その当時に、こういうことに全然気がついてなかったんですけど(苦笑)。

 

 そして、この2曲の成功をもって、このミックステープは「抜粋」という形を取って、EPで再発され、ヤングマネーからリリース(というか、ミックステープの時点でリル・ウェインが絡んでいるので、制作には絡んでいたのではないかと)され、全米アルバム・チャートで6位まであがり、その後の礎を作った訳です。

 

 また、このミックステープから、ドレイクの作品には不可欠となる40がプロデューサーとして参加します。

 

 

 

 

2.Nothing Was The Same(2013 US#1 UK#2)

 

 1位候補の2枚、さんざん悩みました。一時はこっちを1位にしてたんですが、この2013年のアルバムを2位にします。

 

 

 1位のアルバムはこの前作なんですが、この2作に言えることは、トラックの洗練のされ方が実に見事なんですね。とりわけエレクトロ・サウンドの磨かれ方が見事で、このアルバムはその洒落方で言えば、後の彼の楽曲以上のレベルですね。なんか、コード進行がすごく美しいんですけど、曲によっては、なんか20世紀初頭の印象主義クラシックみたいな感じまで感じられるものがあります。

 

 

 代表曲の「Started From The Bottom」も、キャリアをはじめた当時のハードな日々を描いた、かなりヒップホップでは常套な曲なのに、ピアノのフレーズの活かした方とベースラインの凝り方が絶妙で、ありがちなタフ自慢には全くなってないし、シングルでヒットした「Hold On ,We're Going Home」は80年代後半のロックのバラードの全米トップヒットみたいなアレンジで興味深いんですが、とりわけ僕が好きなのは「Worst Behavior」という曲ですね。ここでのシンセの使い方が、Aメロの部分がニュー・オーダーみたいで。トラックの細部の凝り方で言えば、このアルバム、抜けてますね。人的なことでいえば、これまでのBoi 1 Da,T Minus,40に続く新たなトロント勢、Nineteen85が加わったのが大きいかと思われます。

 

 

 あと、このアルバムで、ドレイクはUKオーガニックR&Bの新世代シンガー、サンファと初共演しているのですが、サンファがデビュー・アルバムを出して話題を呼んだのが今年の初頭であることを考えると、3年以上、先駆けた起用と言うことになり、そういうとこでも鋭いセンスを見せたことにもなります。

 

 それでも1位にしなかったのは、代表曲の数と、全体に漲る完成度の高さで1位の作品が上かな、と思ったからでしょうね。

 

 

 

1.Take Care(2011 US#1 UK#5)

 

 で、1位にしたのは、やっぱりこれですね。この2011年発表の「Take Care」。

 

 

 やはり、これが今日に至るまで、一般的にドレイクの最大の代表アルバムになっていますね。それは、このアルバムが彼のアルバム中、ビルボードのアルバム・チャートの最長ロングラン・ヒットとなる200週を越えるチャートインとなってることでも明らかだし、それを裏付ける代表曲もやはり目立つんですよね。

 

 

 それはたとえば、アッパーなヒップホップ・チューンでいえば、後にボーナス・トラックになった先行シングルの「The Motto」やリル・ウェインとの共演ではベストなものとなった「HYFR」があるし、得意のラヴ・ソングでのヴォーカルものではニッキー・ミナージュとコンビを組んだ「Make Me Proud」、「やはりドレイクは現代版マーヴィンなのか」と思わせる、マーヴィン自身がタイトルに使われた,別れた恋人とよりを戻したい男のストーリーである「Marvin's Room」、そして、彼のトラックの持ち味である、洒落たシンセのコード感がいきた「Headlines」。実際にシングル・ヒットしたのだけでこれだけすでにありますからね。

 

 

 ただ、今作がすごく象徴的なのは、やっぱり以下の2曲があることですね。ひとつは「Crew Love」。ここで共演したのは、同じトロントが生んだもうひとりの時代の象徴、ザ・ウィーケンドですよ!リリース年はウィーケンドが最初のミックステープでいまだに最高傑作説のある「ハウス・オブ・バルーンズ」を世に出した年と同じですからね。これに時代の先読み感覚の優れ方が出てます。

 

 

 そしてタイトル曲で、ドレイク最大の共演者、リアーナとの、これはベスト・コラボなんじゃないかな。「Take Care」。彼女との共演は、この前の年にドレイクがリアーナの「What's My Name」で共演したのが最初ですけど、ここから結構この共演はシリーズ化していて、去年もリアーナの「Work」、ドレイクの「Views」でも「Too Good」と続いてますからね。

 

 

 いわば、「長い目で見ての代表曲」が一番多いのがこのアルバム、ということになるんじゃないかな。こういう曲の並べ方が、頭から最後まで、いい具合に万遍ないのも、アルバムの作りとして見事です。

 

 

・・といったところでしょうか。

 

 

 このシリーズ、もう次もすでにリスニングがはじまっています。5月に入ってすぐにやるのではないかと思っています。そのあたりに新作リリースのあるアーティストの作品なんでね。

 

 

 

 

 

 

author:沢田太陽, category:FromワーストTo ベスト, 13:44
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全オリジナル・アルバム From ワースト To ベスト (第4回)パール・ジャム

どうも。

 

 

早くも準備出来ました。予想以上に好評の企画、「FromワーストToベスト」。第4回のアーティストはこの人たちです。

 

 

 

 

今週7日にロックの殿堂に入るアーティストを代表してパール・ジャムをやります。ちょうどライバルだったニルヴァーナのカート・コベインやアリス・イン・チェインズのレイン・ステイリーの命日直後でもあり、ちょうどいいタイミングかとも思います。ちょうどやろうと思っていたところにタイミングよくリクエストもいただいてます。

 

 

では、早速やることにしましょう。パール・ジャムは計10枚のオリジナル・アルバムを出していますが、まず第10位から。

 

 

10. Riot Act(2002 US#5 UK#34)

 

ワーストに選んだのはこれです。2002年のアルバム「Riot Act」。パール・ジャムの作品ともなると、どの作品にも「いや、過小評価されているんだ」という擁護論はあがるものだし、このアルバムにもそれはいます。しかし、彼らの作品上、もっとも売れなかったこと以上に、「最もライブで演奏されなかったアルバム」であることの方が、彼らのような生粋のライブ・バンドとしては気になります。最新作を覗いて、彼らのライブで100回以上演奏された曲が2曲と、1番少ないんですよね、これ。

 

 

このアルバム、「エディ・ヴェダーが政治的主張をはじめたアルバム」として知られていますが、歌詞がそうでも、それを支える楽曲のアピールが弱いのがなあ。何回か聴いても曲が頭にスーッと入って来ないんですよね。加えて、音楽的に「どういうアルバムにしたいのか」のヴィジョンが今ひとつ見えないと言うか。構成上のメリハリももうひとつだしね。

 

 ただ、こういう最悪の時期だったにもかかわらず、このときに武道館でやったライブが最高だったんですよ!ちょうど「ブッシュリーガー」でときのブッシュ大統領のマスクをエディが足で踏みにじって、そのあとにクラッシュの「Know Your Right」のカバーして。そして客も空席が目立っていたのにそんなことおかまいなしに、規定で武道館の天井の照明がついてもプレイし続けたんですよね。この姿を見て、「どんなに悪い時期であろうと、僕はこのバンドは信じる」と思ったものでした。そうしたら、この後、案の定、彼らは復活しました。

 

 

9.Binaural(2000 US#2 UK#5)

 

 「Riot Act」の一つ前だけど、これも人気ないんだよなあ。このとき、空前のラップ・メタルの酔狂的なブームで、難しそうでまじめなパール・ジャムみたいなタイプが苦しくなっていた時期でしたが、彼ら自身もピリッとしなかったのもたしかです。

 

 このアルバムですが、彼ら、「バイノーラル録音」という、最新の臨場感溢れる録音法を試して、新しい時代を迎えようとします。PJのように、エレクトロにもサンプリングにも頼らず、アナログ楽器だけを使うことを信条としたバンド(そういう美学はレディオヘッドのファンには理解されないかもしれませんが)の場合、方向性を広げるためには、そういう録音方法というのはひとつの手だったのかもしれません。

 

 このバイノーラル録音というのは、簡単に言うならステレオ録音がきわめて発展したもので、いろんなとこからチャンネルが聴こえて来るんですね。これが実際に生演奏の場で聴くものに果てしなく近い聴こえ方をするのだそうです。僕は幸いにもこの当時、試聴会をソニーの本社に聴きに行って、実際にすごく良い音で聴かせてもらったときはかなり驚いたものです。

 

 ただ、これ、よっぽどいいデバイスで聴かないと、違いがわかんないんだよね(苦笑)。そこが失敗のものだったのかなあ。「違いがよくわからない」と言っていた人、当時多かったですものね。ちなみに今回聞き直してみたんですけど、ストリーミング・サービスをスマホのイヤホン越しに聴いてみたんですが、これの前作の方が音がよく聴こえました。

 

 今振り返ると、曲はそこまで悪くないんですけどね。ただ、「過小評価だ!」と騒ぎ立てたくなるほど良いわけでもなかったです。

 

 

8.No Code(1996 US#1 UK#3)

 

 PJの4枚目のアルバムですね。これも好きじゃないなあ。

 

 彼らはこの前の3つのアルバムまでは、少なくとも「アメリカで最も売れるロックバンド」だったし、その勢いをワールドワイドに拡大しようとしている時期でしたが、このアルバムでその勢いが止まってしまうんですね、これが。

 

 

 まあ、この頃、当のPJたちも、「時代の代弁者的立場を背負わされたくない」ともがいていた時期で、わざと売れなさそうな作風で作っていた時期でもあるんですが、これはちょっと強く出過ぎたというか。彼らの場合、サウンドの構成要素となっているのは「パンクの疾走感を持ったクラシック・ハードロック」「フォーキー」そして「混沌としたワールド・ミュージック風ビート」だったりするわけですが、ここでは曲によっては混沌としたドローンが強過ぎたり、そうかと思えば無闇に速いハードコア・パンクをやったり、共演したばかりのニール・ヤングのスタイルになりきってみたりと、ちょっと、1曲1曲のバランスに無理がある作りになっています。 

 

 

ここで熱が冷めた人が多く、僕も熱意が落ちたんですけど、必ずしも不可欠な道のりでもなかったように思いますね。

 

 

7.Lightning Bolt(2013  US#1 UK#2)

 

 目下のところの最新作ですね。

 

 この頃はちょうど、その前の2作がヒットして勢いを取り戻していた上に、デビュー前から彼らを追っていた映画監督キャメロン・クロウの監督による、結成20周年のドキュメンタリー映画「PJ20」も公開されて話題となっていた。英米をはじめ、世界のチャート・アクションが良いのもそのためです。

 

 

 これですが、過去2作で目立った作りになっていた「前半・パンキッシュなロックンロール、後半・バラード」という流れを踏襲した作りには(完全ではないですが)大体なっています。そうすることが成功パターンになっているためか、曲自体の揃い方は良く、真ん中までの時点では「後期の傑作、誕生か!?」の予感を強く漂わせます。

 

 

 ただ、後半に入ると、バラード、アコースティックの路線が今回いきおい強くなり過ぎてしまい、なんと後半、カントリーにまでなってしまうのですが、そのカントリーっぷりがなんか最近のナッシュヴィルに本当にいそうな「ブロ・カントリー」とも呼ばれる、ちょっとロックっぽいカントリー路線の男性シンガーみたくなりすぎちゃっているのが・・(笑)。前半に配置された「Sirens」なんかは胸に沁みる本当に良いバラードなんですけど、後半まで行くと、「そこまで枯れて欲しくないんだけどなあ(苦笑)」と思ってしまいます。

 

 あと、このアルバムは、2002年からツアーに参加し出した、ポニーテールのおじさんキーボードのブーム・キャスパーが不可欠なアルバム(最近、アー写にもうつりはじめている)になっていて、彼のピアノが良い味を出した作品にもなっていますが、「大人仕様ですね。

 

 

6,Backspacer(2009 US#1 UK#9)

 

 この前作で復活したパール・ジャムですが、ここでも好調を維持します。

 

 作りはその前のアルバムと同様なんですけど、今回のアルバムでは、プロデューサーとして、パール・ジャムには欠かせない存在だったブレンダン・オブライエンが4作ぶりにカムバックしています。ただ、音の撮り方自体は昔からは随分変わっていて、軽めでクリアな音色になっていますね。

 

 ここでも、前作で見られた「前半・パンキッシュなロックンロール、後半・バラード」な展開になっていますが、おそらくそうした作りにした方が良い曲が書きやすい状態なのかな。この2方向でそれぞれ良い曲が出来てますね。ロックンロールだとシングルにもなった「The Fixer」や「Got Some」、そして後半には、後期パール・ジャムにおいて最も美しい、さわやかなギター・コードながらも彼ららしい熱さをそこなわない誠実なラヴ・バラードの「Just Breathe」もあります。この3曲だけピックアップするのなら、もう少し上位でも良かったアルバムです。

 

 特にバラード系の曲にそれが顕著なんですけど、2007年にエディがサントラを担当したロード・ムーヴィー「イントゥ・ザ・ワイルド」での経験値も感じさせるアルバムですね。

 

 

5.Pearl Jam(The Avocado Album)(2006 US#2 UK#5)

 

 ここまでの時点で最もリリースのブランクが開いた作品で、約4年ぶりでしたね。その間、レコード会社も長年いたエピックから移籍しての作品となっています。

 

 これは今のところ、後期ではベストの作品になっていますね。後期の方向性を決めた一作と言いますかね。「前半・パンキッシュなロックンロール 後半・バラード」の路線ですが、それが一番端的に出たのがこのアルバムですね。前2作で音楽的方向性で迷い過ぎたからなのか、あんまりしのごの考えすぎずにスカッとわかりやすく作ってあるのが効果的でしたね。

 

 特にパンキッシュなアンセムがここでは光ってますね。「Life Wasted」「Comatose」そしてシングルにもなった「Worldwide Suicide」。特に「ワールドワイド〜」は、その数年前にアンチ・ブッシュ・キャンペーンを行なった経験が出たポリティカルで力強い1曲ですね。あと、「Severed Hand」も後期のライブの定番です。

 

 あと、ソングライティング的には、これまで以上にリード・ギタリストのマイク・マクレディ(よく誤解されてますが、リードは彼です)の貢献度がすごくここでは上がっていて、6曲が彼とエディの共作です。あと、前々作から参加の名ドラマー、サウンドガーデンのマット・キャメロンの、彼特有の軽く弾むドラミングがようやく生きた作品になりましたね。PJのサウンドが良い意味でここから軽やかになりますが、その理由のひとつが彼のリズムだと思っています。

 

 

4.Yield(1998 US#2 UK#7)

 

 ファンの中では人気の高いアルバムですね。通算5枚目。

 

 このアルバムは、その前の「No Code」のときに張りつめていたエディの眉間のしわが取れて、精神的に解放された方向性に向かったアルバムですね。聴いてて苦しさがなくなったとは良かったと思います。

 

 その象徴ともいえるのが、やっぱり「Given To Fly」ですね。この曲は、そういう解脱した心情と言うか、「これから新しい自分がはじまるんだ」という、いわば決意表明みたいな曲でしたからね。この曲の印象で本作が好きな人が多いのもまた事実ですね。

 

 このアルバムはデビュー時からのストーン・ゴッサード、ジェフ・アメンに加え、このときにメンバーだった元レッチリのドラマー、ジャック・アイアンズまでソンフライティング・クレジットに入っているのですが、僕の好みもあるのか、マイク・マクレディが関わった曲がいいですね。「Given To Fly」もそうだし、「Brain Of J」「Faithful」なんかも彼の曲です。人気曲「Do The Evolution」はストーンの曲ですが。

 

 ただ、このアルバム、リリックまでメンバーが書いているんですけど、そこはエディ、譲って欲しくなかったんですけどね。まあ、そうすることで彼の精神状況が解き放たれたのであれば良いです。そんなエディのリラックスした感覚はライブでの定番曲で自作曲の「Wishlist」にも出ています。解放感ということでいえば、この翌年の99年、60年代のフランク・ウィルソン&キャヴァリエールズのドリーミーなポップスのカバー「Last Kiss」のシングルが彼ら史上最大のシングル・ヒットを記録しましたね。

 

 

3.VS(1993 US#1 UK#2)

 

 やっぱりどうしてもトップ3は初期3枚にはなってしまうんですけど、3位はこのセカンド。当時、彼らの人気は社会現象で、発売週に当時の記録となる200万枚近くがアメリカで売れたことでもかなり話題になったものです。

 

 この当時の彼らって、「ロックの未来」を、特に上の世代(ベイビーブーマーですね)から託された印象が強く、そこのところがカート・コベインのファン的にアンチになりやすいポイントでもありました。僕は両方とも素直に好きだったクチなんですが、ただ、その当時からも思っていましたけど、そうした図式を生みやすいくらいに、「ちょっと安定感ありすぎなんだよな」とも思っていました。

 

 そういうこともあり、今回実は、このアルバムのランクをもう1、あるいは2ランク落とすことも検討していましたが、今回改めて聴き直してみたらとんでもない!これはかなり優秀な、完成度の非常に高いロック・アルバムです。楽曲ひとつひとつの充実感と、ちりばめられたバランスが絶妙ですね。とりわけ、エディがひとつひとつの楽曲に注ぎ込む生命力のエネルギーの高さ。これを聴くと、順位をさげることができなくなります。

 

 中でもこのアルバム、歌詞がいい。おそらく、彼らの全キャリアの中でも僕は本作がそのポイントでは一番好きかもしれません。知的障害をもった子供を持つ親の複雑な心境を歌った「Daughter」、中年女性の悲哀を描いた「Elderly Woman Behind The Counter In A Small Town」、政治運動家とその恋人のロマンスを歌った「Dissident」。こういう、「アメリカ社会の一風景」を描ける感覚ってブルース・スプリングスティーンが得意とするところですけど、エディのこうしたスケッチ力は特筆すべきところだと思うんですけどね。

 

 あと、後のそれらに比べるとまだハードロックっぽい感じがするんですけど、「Go 」「Animal」、そして「Rearview Mirror」!とりわけ「リアヴュー〜」の2コーラス目終わって、最後のヴォーカル・パートでのエディの「♩リーヴュー、ミーラーッ!!!」のシャウト!あれは90sのロックで最も好きなもののひとつだし、あれ聴いた瞬間、エアロスミスの「ドロー・ザ・ライン」が自分の中で完全に過去のものとなってしまったことを告白しておきます(笑)。

 

 

2.Vitalogy(1994 US#1 UK#4)

 

 2位はサード・アルバムのこれですね。やっぱり、音色のパンキッシュでケイオティックな感じでは、セカンドよりは好きですね。

 

 やっぱり、このアルバムは、その半年前に起こった、カート・コベインの自殺が大きいですね。「時代を背負うロックスター」の宿命を背負わされた立場としての重圧。これを残された側がどうとらえるか。それがこのアルバムを聴く上での大きなポイント。そのタイミングで、前作で聴かれた雄大な安定感をあえて崩して、世に挑発するような作品を作ってきたのには、当時の僕はしびれあがりましたね。

 

 とりわけ、「おまえのためにやってるんじゃない」と、音楽産業にまでたてついた心情を歌った「Not For You」や、「逃げ出したいけど、歩けもしない」と、時代のカリスマからの逃避願望とそれができないもどかしさを歌ったような「Corduroy」の2曲は、後の彼らのライブでも大定番となる重要な曲。あの時代の僕にとってのアンセムでもありました。

 

 そして、もうひとつのハイライトと言えば、やっぱり「Better Man」でしょう。この曲は、エディが幼いときに、彼の実父を失った母が当時つきあっていたひどい男性について書いた曲なんですけど、これもPJがデビューのときから扱っていた「X世代の幼き日の家庭の崩壊」を描いた路線のひとつの大きな完成型なんじゃないかな。これも、変動の激しいセットリストの中、ライブの終盤のクライマックスで必ず歌われる曲です。

 

この3つがライブであまりにも重要なので、人によってはこれが1位でも全然おかしくないアルバムです。ただ、本当に驚くべきものがたくさんリリースされた1994年(グリーン・デイの「ドゥーキー」にウィーザーの青ジャケ、オアシスのデビュー作にジェフ・バックリーの「グレーズ」に・・・)という黄金年の中においては、比較的あがって来にくい作品でもあるんですよね。より大衆的ではなく、パーソナルに訴える力が強いアルバムだからなのかな、と僕は思っていますけど。

 

 

1.Ten(1991 US#2 UK#18)

 

 そして1位はやっぱりこれですね!デビュー作の「Ten」です。

 

 全てはこれと「ネヴァーマインド」ではじまった、と言っても過言じゃないんですよね。あの当時、とにかく日本では、「どうしてウケるのかわからない」と執拗にいわれていたアルバムですけど、もし、あの当時に、ドキュメンタリー「PJ20」で描かれていたように、直にライブに触れる機会があれば、日本でも理解されていたんじゃないかな、とは今でも思います。とにかく「バブル打ち消し感」がものすごく強いんですよね、このアルバム。この当時のアメリカのロックって、ものすごく流行ってはいたけど、メタルのサウンド・アプローチはことごとく上塗り感の強いオーヴァー・プロデュースになっていたし、ヒット曲にはライター掲げてゆっくり左右にふるタイプのパワー・バラードに溢れてて。しかも歌われる歌詞が、バブルの時代らしいパーティっぽいものばっかだったでしょ。でも、アメリカの現実はそんなに明るいものじゃなく、もっと荒んだものだった、という事実を歌い、ヘラヘラせずに、きわめてシリアスで引き締まったロックンロールを、60年代の基本に戻ったかのような粗いプロデュースの音で演奏する。いわばこれ「ロックンロールの原点回帰」ってヤツで、「換骨奪胎」という四字熟語がすんなりハマるものなんですよね。

 

あの当時、日本でも、ブランキー・ジェット・シティが出て来てて、そういう観点から評価されていたものです。ちょうどバブルもバンドブームもあって浮かれてたときにアレでしたからね。なので、その感覚をアメリカにあてはめればそのまま理解されたものなのに、あの頃の洋楽ロックの批評の非常に悪いクセで、小手先の目新しさだけで評価しようとするところがあった。それが全てのグランジ理解の失敗の元でしたね。なんか、「テクノロジーや他ジャンルと混ぜさえすれば、新しいロックの表現が生まれるんじゃないか」という錯覚ね。この誤解は本当に日本の音楽界の致命傷だった、と25年たった今も僕は思いますね。

 

 このアルバムには、まず音では、そうした過去の「シリアスなロック」の意匠がしっかりと込められています。それはザ・フーにニール・ヤングにドアーズに、さらに初期のレッド・ツェッペリンのギターのリフに、クラッシュの持っていた真摯な挑発心。雑誌ローリング・ストーンがずっと好んで来た要素が盛りだくさんなんですよね。そういうこともあって、彼らは80s以降に「売れるロック」に物足りなさを覚えていた60s後半から70s初期の世代のロックファンからひときわ愛されもするんですが、それが「自分たちの世代のインディ感覚」を愛したいタイプの当時の若いインディ・オーディエンスの反感と嫉妬の対象になっていたところもありますね。

 

 曲も、このアルバムは本当に捨て曲がないですね。リリースされる前は、グリーン・リヴァー〜マザー・ラヴ・ボーンの2バンドでシアトルのアンダーフラウンドの最大の人気バンドのリズムの要を背負ってきながらもなかなか一般的に芽が出ていなかったストーンとジェフの2人、そして人知れずひとりでコツコツと曲をかきためていたエディ。この3人の、これまでふきだまっていた才能が爆発した感じですね。この時期はアルバムに入らなかった曲でも、たとえば「Yellow Leadbetter」(シングルB面)とか「State Of Love And Trust」(映画「シングルズ」の曲)みたいに、いまだにライブ定番の曲もあるくらいに、とにかく充実してましたね。特に、「ビターに重いミディアム・テンポ」という、今の「パンキッシュ」か「染みるバラード」のどちらかになってしまいがちなPJからは失われた、「そのどちらでもない中間点」みたいなところでの良い曲が目立つんですよね、このアルバム。ストーンとジェフがもう一回こういう曲書かないかな、と思うんですけどね。

 

 あと、エディの歌詞も、「VS」のとこでも書いたように、スプリングスティーン的な「ポートレート・オブ・USA」みたいな要素もあありながらも、ここではよりスティーヴン・キングあたりにも通じる狂気も感じられますね。たとえば、「Jeremy」は、先生やクラスメートの目の前で自殺した少年(実際に起こって社会問題化した事件です)についての話だし、「Once」と「Alive」は連続殺人犯になる男の歌ですからね。こういう話は、彼らが現象になった後に、アメリカのニュース系のメディアで僕も知った話なんですけど、この当時のパール・ジャムって「TIME」の表紙に選ばれるくらいに、アメリカでは社会的な存在でもあったものです、あと、もちろん、アウトサイダーへのアンセムということに結果的になった「Even Flow」も、深い愛の喪失感を歌った「Black」も、当時の満たされない思いの若い世代を引きつけたものでしたね。

 

 

・・という感じでしょうか。書いて来てつくづく思うんですけど、やっぱ、優れたバンドだよね。

 

 

 で、次回ですが、もう準備はじめてます。速ければ来週行けますが、これまた全く違う傾向です(笑)。

 

 

author:沢田太陽, category:FromワーストTo ベスト, 11:26
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全オリジナル・アルバム From ワースト To ベスト (第3回)デュラン・デュラン

どうも。

 

やっとロラパルーザのレポを書き終えてホッとしていますが、その勢いのあるうちに、今日はこの企画をやります。

 

 

 

 

去年のプリンス、先週のデペッシュ・モードでやってすごく好評だったので、これ、定番企画化しちゃいますね。全オリジナル・アルバム FromワーストToベスト。もう、ルール勝手に作ってですね(笑)、上の9分割に足るだけの数のアルバムを出したアーティストなら対象にしようと思っているのですが、今、ロラ直後でものすごくマイ・ブーム再燃ということで(笑)、3回目の今回はデュラン・デュランで行きます。

 

 いやあ、「デュランで良いのか!」との声もいただきそうですが(笑)、ここ数日で全アルバムに耳を通したので勢いのあるうちにと思いましてね。実はこの企画、去年にボウイやディランでもやろうとして、全部耳に通したとこまでは行ったんですが、ちょうど書こうとしたそのときにすごく忙しくなって書かないでいたらアルバムの印象が狂ってきたので、結局辞めちゃったんですね。なので、アルバムの印象の記憶が濃いものをやろうと思いまして。あと、こないだも書きましたけど、南米のロラパルーザでデュラン、すごくリスペクトを受けて大好評だったんですね!で、そのあともアイルランドのフェスにThe XXやトライブ・コールド・クエストとヘッドライナーで出演してチケットがすぐ売り切れたなんて話もあって。新作は英米でもトップ10に入りましたけど、かなり再評価、あがってきてるんですね。なので、ここはやはり、長年の大ファンとして、そういうとこもアピールしていかなきゃダメなのかな、とも思いまして。

 

 なのでデュランのオリジナル・アルバムと、もう1枚(それがなにかは、上の写真でわかる人にはわかる、笑)の計15枚の、僕自身によるカウントダウンになります。まずは15位から。

 

 

15.Liberty(1990 UK#8 US#46)

 

 ワーストに輝いたのは、1990年のアルバム「Liberty」。これはやっぱダメですね(苦笑)。ちょうど80sの終わりに人気が下降し出して、本人たち自身もどうしたら良いのかわからなくなってた時期の作品ですね。何がしたいのか、全然わかんないですもん。微妙にハウス入れてみたかと思ったら、厚めのギター鳴らしたりとかね。ジョン・テイラーが後に「どうやって作ったのか、全く記憶にない」と語っているのですが、要はドラッグでハイになっているときに勢いで作って自分たちでもビックリ、というパターンだったようです。このアルバムはなぜか運良くイギリスではトップ10に入ったんですけど、アメリカでは46位まで人気が落ちました。これがデュランが味わう、1回目の危機です。

 

 ただ、こんなアルバムでも1曲だけ嘘みたいにキレの良い「Serious」って曲があるんですけど、これは彼らの定番ベスト盤である「Greatest」で聴くことが出来ます。

 

 

14.Red Carpet Massacre(2007 UK#44 US#36) 

 

 これは、オリジナル・ラインナップで再始動をはじめた2枚目のアルバムですね。このときの話はちょっと悲惨でした。

 

 このアルバムはレコード会社から「ティンバランドのプロデュースでアルバムを作ろう」と勧められてやってみたら、ティンバランドは自分の弟子にこのアルバムをプロデュースさせ、かつ、彼らは生楽器をどうやって録音するかわかってなさそうでバツが悪そうに見えた、と後にサイモン・ル・ボンが語ってますけどね。

 

 これ、録音はですね、やっぱり弟子とはいえティンバランドの息のかかった人物だったので、エレクトロ・ファンク風の音はすごくいいんですよ。ただ、そのエレクトロのビートは、どこかこう事前にプリ・セットされたみたいな音で、今も昔も基本はバンドのデュランらしい生身の感覚が全くゼロなんですね。だから聴いていて、「カッコよくは聴こえるけど、どこか生気がなく気持ち悪い」作品になってしまいました。この失敗で彼らはメジャーとの契約を失い、3度目の危機を迎えました。

 

13.Thank You(1995 UK#12 US#19)

 

 この一つ前のアルバムが久々に大ヒットしたこともあり、勢いで自信持って作ったはずの、95年発表のカバー・アルバム。ただ、これがフタをあけてみると、イギリスの雑誌Qから「史上最悪のアルバム」と酷評されてしまい、それが今日に至るまで伝説となってしまいます。

 

 まあ、おそらく、その理由は、その10年一昔前まではアイドルとして知られたバンドが、やれ、スライ&ザ・ファミリー・ストーンだ、ルー・リードだ、レッド・ツェッペリンだ、ボブ・ディランだとカバーしたのが「お前らの分際で何事か!」な評価だったと思うんですけどね。ただ、それでも、グランドマスター・フラッシュの「ホワイト・ラインズ」のカバーはヒットしていまだにライブの定番曲になってるし、ルー・リードの「パーフェクト・デイ」のカバーはルー自身がすごく好きだと語ってもいますしね。

 

 ただ、僕自身がそこまで評価しないのは、これ、意味不明なまでにハードロック・ギターが炸裂したアルバムなんですよね(笑)。あとにも先にも、こんな作り、彼ら一作もないんですよ。元々がそういうバンドでもないのに、カバーになるとなんでこんなことに?そうした、不透明な方向性ゆえに好きじゃないですね。弾いてたのウォーレンだったけど、どうしたんだろう。

 

 

12.Astronaut(2004 UK#3 US#17)

 

 これはオリジナル・ラインナップでの再始動第1弾アルバムでした。当時ものすごく、「リバイバル・ブームに乗っての華麗なカムバック」を期待してたのですが、そうならずにひどく落胆したものです。

 

 ただですね、嫌な予感はその前年も来日公演からあったんですよね。戻って来たのは良いものの、農家から戻ったロジャーのドラムはおぼつかなく、アンディはやたらとここぞでハードロック・ギターを弾きまくろうとしたがる。なんか見てて複雑だったんですよね。

 

 そして、フタをあけて登場したこのアルバムも非常に中途半端な作品でしたね。微妙に「80sリバイバル」を意識、もしかしたらしているのかな、みたいな曲が少しあるだけで、でも、かといって、「今の自分たちはこうなんだ!」と強い主張も感じない。どっちつかずの中途半端なアルバムになりましたね。当時、せっかく、キラーズとかシザー・シスターズみたいな、80sシンセ・ポップ・リバイバルみたいな大きな波があったのに。全英では3位と復活したんですが、全米は17位止まりでしたね。

 

 

 ただ、オリジナル再結成を強く押し進めた張本人としての責任感からなのか、サイモンのヴォーカルはすごく良くなってたし、「(Reach Up For The)Sunrise」「Nice」と、捨てがたい曲はありましたね。

 

 

11.Notorious(1986 UK#15 US#12)

 

 これは世間一般より、僕の評価が低い作品だと思います。たしかにタイトル曲は当時大ヒット(全米2位)したんですけどね。

 

 この時期はサイモン、ニック、ジョンの3人体制でしたけど、なんかジョンの意見が強かったんじゃないかな、と思えるアルバムですね。すごくブラック・ミュージック寄りで、ホーン・セクションもバリバリで。この頃のファッションがスーツにもなってたし、すごくカフェバーっぽいUKソウル寄りのアプローチだったんですよね。プロデューサーもナイル・ロジャース(ダフト・パンクの「ゲット・ラッキー」で有名な彼です)だったし。

 

 ただなあ〜。このスタイル、正直、デュランには微妙だったんですよね。一番合ってないのはサイモンでしたね。このアルバムで彼、なんか終始、これまでに出したことのないような高いキーで歌わされてるんですけど、この頃のサイモン、高音のコントロールがすごく悪くてですね、聴いてて非常にツラかったんです(苦笑)。後にも先にも、ここまで黒っぽい要素の時代はないですね。

 

 

10.Meddazaland(1997 US#58)

 

 カバー・アルバムのあと、ジョン・テイラーが脱退した後に出された作品です。

 

 デュランって、その昔はジョン・テイラーがバンドの顔のイメージが非常に強かったもので、その彼を失うというネガティヴな印象が暗い影を落とし、レコード会社にも押されず、イギリスでは発売され見送られ、アメリカでやっと58位という内容ですね。

 

 しかしですね、このアルバム、実は内容、悪くないんです!ここでのデュランって、すごくブリットポップのバンドみたいなこと、やってます。ちょうどこの頃、エラスティカとかパルプみたいな、アナログ・シンセ使って80s初頭みたいな雰囲気出そうとしていたバンドも少なくなかったんですが、それに近いことやってたんですね。そこんとこ、ニック・ローズはトレンド、抑えてたようですね。

 

 

9.Big Thing(1988 UK#15 US#24)

 

 80年代前半のような人気はなくなりつつも、でも、まだ「I Dont Want Your Love」みたいな全米トップ10シングル・ヒットは出せるよと証明した88年作。

 

 前作のときのようなカフェ・バー・ソウルっぽい、妙に大人っぽく洒落たテイストはなく、もっとファンキーでハジけたテイストのアルバムですね。彼らのブラック・ミュージックの路線では、前作よりもこっちの方が合ってると思います。

 

 これもジョンの好みが出たタイプの作品だとは思うんですけど、このあと、ジョンが急速にデュランに対して興味を失って行き、アルバムの貢献度がガクンと落ちるんですよね。それで一回脱退して戻って来る訳なんですけど、それ以降も、表には立たなくなりましたからね。でも、申し訳ないけど、そうしてくれた方がデュランにはプラスというか、より”デュランらしい”ものが作れる気が、今から振り返ってもしてます。このアルバムでも一番好きなのは「All She Wants Is」っていう、ちょっとデペッシュ・モードみたいなダークなシンセ・ポップ。やっぱ、ニックのシンセが活躍しないと、デュランっぽくはどうしてもならないんです!

 

 

8.Pop Trash(2000 UK#53 US#135)

 

 ジョンが抜けた体制での2枚目。古巣のEMIでの契約を失い、一応メジャー・レーベルなものの配給の強くないハリウッド・レコーズでリリースした結果、商業的にはかなり苦しいものでした。ここが第2のバンドの危機ですね。

 

 ただ、前作同様、作風は悪いどころか、前作よりさらに良くなってるんです。前作でのブリットポップ路線は、ビートルズっぽいメロウな曲から、ストリングスを配したラウンジ・ポップ系の曲、さらにはファットボーイ・スリムみたいなビッグビートも聴いているのかな、と思えるようなアレンジも光っていましたね。

 

 ただ、どんなに充実して良いものを作っても、注目されないことに堪え兼ねてしまったのか、サイモンはジョン、ロジャー、アンディを呼び戻し、これまで不遇機を支えて来たギタリスト、ウォーレンを切ってしまいます。「ギタリストとしての腕も立ち、ソングライティングもこなせるウォーレンを切ったのは却って損だったのでは」とは、その後に、メタルっぽいフレーズなんかを無理していれようとしたがる復帰後のアンディを見て思ったものでした。

 

 ただ、オリジナル再結成も思いつかずに今も活動を続けていたら、「良い味のベテラン」にこそなったかもしれませんが、今日のような大きな復活があったか、と問われると難しいとこですね。

 

 

7. So Red The Rose/Arcadia(1985 UK#30 US#23)

 

 はい。デュラン以外で番外的にランクインしたのは、このアルバムでした。これは85年当時、ジョンとアンディのロバート・パーマーとのハードロック・ダンス・プロジェクト、パワー・ステーションが大成功(全米トップ10シングルが2枚)したのに対抗した、残ったサイモン、ニック、ロジャーの3人が作ったバンドです。

 

 ただ、こっちは売れなかったですね。「エレクション・デイ」って曲が少しヒットしたくらいで、アルバムも売れませんでしたからね。しかし、高校1年だった当時の僕にしてみれば「こっちの方が圧倒的にいいじゃん!」と大好きになったのがアーケイディアでしたね。だって、このプロジェクト、これまでのデュランのサウンドの要素を、ただ単純に濃くしただけに過ぎないんだもん(笑)。ストリングスを交えたりしてゴシックにセクシーな風にはなりましたけど、そのサビで裏返るサイモンの声も、妖艶なシンセを奏でるニックも、「ああ、ここがデュラン・サウンドの中心なんだな」と思えるようになりましたね。

 

 そして、この10年後、デュランはそのときの2人、ニックとサイモンのプロジェクトとなり、最低2枚は、このアーケイディア体制(そしてウォーレン)で作ることにもなりました。僕が本作をデュランの作品として含めたのはそれが理由です。作ってる人が人なだけに、結果的にデュラン名義の作品よりデュランっぽくさえなってしまったというね。

 

 さらに、このアルバムでもそうでしたけど、不遇の時代の2枚も含め、ニックとサイモンのケミストリー上では、ブラック・ミュージック的なサウンドって一切生まれてないんですよね。やっぱり、あれはジョン経由のものだったのかなと。

 

 あと、コケたプロジェクトの割に再評価は高くて、2000年代の終わりくらいにデジタル・リマスターでちゃんと再発されもしましたね。

 

 

6.Paper Gods(2015 UK#5 US#10)

 

 目下のところの最新作で、鮮やかな復活を印象づけたアルバムです。イギリスで5位、アメリカで10位ですからね。

 

 僕としては、この一つ前の方がアルバムとしては好きです。あっちのアルバムの方がよりデュランっぽいし、実際に曲も、あっちの方がよく書けていたと今も思います。

 

 ただ、結果論なんですけど、前作で「らしさ」を取り戻した後に、ただの懐古主義に陥らず、前作で再確認したアイデンティティをもとに、つんのめりながらもEDMに挑戦もすることで、さらにサウンドを進めて行く。この方法論の方が、たしかにより有効ではあるのかな。

 

 嬉しいことには、今回、ナイル・ロジャースと組んで、黒人女性シンガーのジャネール・モネエと共演したりした「Pressure Off」みたいな楽曲がありながらも、「ノトーリアス」のときみたいに、それまでのデュランのカラーを一切損なうような形でのトライではもうないし、「Last Night In The City」なんてチャラいEDMではあるんだけど、デュランらしい、クセの強いマイナー調メロディなのもすごくらしいなと。このまま「らしさ」がしっかりコントロールしたままで進化出来たらすごく良いですよね。

 

 

5.Seven And The Ragged Tiger(1983 UK#1 US#8)

 

 「Union Of The Snake」「New Moon On Monday」「The Reflex」と、3曲の英米共にトップ10入りの大ヒット・シングル3枚を擁した、自信最大のヒット期での作品。中学2、3年生だった僕はLPでこれ持ってて、何度もくり返して聴いたものです。勢いのある時期の作品なので、もちろん悪いはずがありません。聴いていると、自分の中学時代の甘い思い出がフィードバックされていきます。はじめて行った彼らのライブも、このときのツアーだったりしますからね。

 

 ただ、今、冷静に聞き返すと、意外と穴も少なくなかったアルバムなんですよね。構成上、今ひとつなところがあると言うか。たとえばアナログでいうA面はシングル・ヒットした冒頭の2曲以外が弱いとか、B面も2曲目が弱い上にすぐにインストに行ってラストのバラードに入るので、全体的にちょっとスカスカに聴こえるんですよね。もうちょっと、曲数増やした方が良いタイプだったのかもしれません。あと、前2作に比べるとロック的なエッジがなさすぎかな。

 

 そして、何があったかはわかりかねますが、オリジナル再結成後、大ヒット作だったにも関わらず、彼らはここからの曲を積極的にはプレイしようとしませんね。

 

 

4.Duran Duran(The Wedding Album)(1993 UK#4 US#7)

 

 90年代の前半に放った起死回生の傑作ですね。これはかなり好きなアルバムです。今聞き返しても、大ヒットして、いまだにライブのセットリストから絶対にはずれることのない「Ordinary World」「Come Undone」の2曲は、歴代でも出色の出来だと思います。

 

 ヒットした当時は「アダルト路線、バラード路線に行って成功した」なんて言われ方もしていましたが、アルバムの内容をちゃんと聴くと、そういう安易な作りでもありません。いうなれば、「バック・トゥ・ベイシックス」な感じですね。それは、サウンドが80s前半に戻った、というわけではなく、彼ら本来の「同時代のクラブ・サウンドを意識する」「デュランらしいメロディの曲を書く」というのが実践出来たアルバムですね。特に功を奏したのが、グラウンド・ビートの導入ですね。これは「Come Undone」とか「Love Voodoo」といった曲で使われてますけど、ベースの強いレゲエ・テイストのリズムは、デュラン得意のマイナー調の妖艶なメロディ・ラインにすごく良く似合います。方向性が何も見えなくなっていたワースト作「Liberty」からよくここまで立て直しができたものだと思います。

 

 そこに加えて、どういうわけで実現したのかいまだによくわからない、ブラジルのMPBの大御所、ミルトン・ナシメントを迎えたグルーヴィー・フォーク・チューン「Breath After Breath」が入っていたりするなど、これまでになかった意外なポイントも垣間見せたりもして。あと、「Come Undone」でのリフも自身が考案しているように、前作で正式メンバーになったウォーレンのソングライティングでの貢献も目立ちはじめた作品でもありました。

 

 

3.All You Need Is Now(2011 UK#11 US#29)

 

 デュランが本当の意味で現在につながる復活をしたのはこのアルバムですね。これはもう、出たときから本当に嬉しい作品でした。オリジナル再結成という、話題性の切り札を切っても当の本人たちがピリッとしなかったのはすごく歯がゆかったりもしたんですが、それが再集結で10年近い月日が経って、ようやく戻って来たのは奇跡的でさえありましたね。

 

 きっかけは、このアルバムをプロデュースしたマーク・ロンソンから「デュラン・デュランに聴こえる曲を書いて欲しい」という注文を受けてハッとしたようなんですね。彼ら曰く「そこをむしろ一番避けようとしていたところがあった」とか言って。前も言ったように、結構、あらゆる時期にいろんなこと試してるでしょ?本人たち的には音楽の流れに着いて行っている自負があったし、懐メロで食って行く意識はなかったと思うんです。

 

 ただ、彼らが80s前半で鳴らした音というのが、今やしっかりポップ・ミュージックの世界においてリスペクトされる対象にしっかりなった後ですからね。そこに立ち戻ることは、決して後ろ向きでもないし、むしろ「本家」である彼らにこそ人々がやってほしいと願うものにもなっていた。そのタイミングで、その答をしっかり出したアルバムでしたね。

 

 一番の強みはやはり、80s初頭のニックらしい、流麗でちょっとひねくれたアナログ・シンセのフレーズが戻って来たことです。これでこそ、デュランというものです。そして、そこに呼応するようにかぶさるジョンのスラップ・ベース。このコンビネーションはやっぱり彼らだけにしかできないことです。この感覚が活きたタイトル曲、「Girl Panic」「Safe」といった曲は本当に良いですね。

 

 さらに、その黄金期のサウンドに対し、サイモンの声が劣化することなく、昔と同じトーンと響きで聴けたのも良かった。彼、シンガーとしてはうまくないと言われ続けていて、実際、90sの頃は伸び悩みも感じられたんですが、再結成後、一番成長したのは彼です。再結成を押し進めた責任感からか、プロ意識が強くなって、歌も、ライブでのショーマンシップも上がりましたからね。彼のこのプロフェッショナルな意識がなかったら、今回のようなサウンドに立ち返ったとしてもダメだったと思います。

 

 そして、前作で予想通り再脱退したアンディの代わりにサポート・ギタリストで入ったドミニク・ブラウンが才人だったのも良かったです。彼、ソングライティングでも貢献しているんですよね。正式メンバーにしてあげてもいいのにね。

 

 ひとつだけ惜しむらくは、彼らのカムバックの原動力になった作品だけに、今のライブで最低でも1曲はやってほしいですね。「Paper Gods」でも悪くはないですが。

 

 

2.Duran Duran(1981 UK#3 US#10)

 

 そして、デビュー・アルバムが2位ですね。これも傑作です。

 

 2000年代前半に「ポストパンク・リバイバル」なるものがあって、デュランもリスペクトされる対象のひとつになりましたが、そのとき、ポストパンクっぽいのはむしろこっちのアルバムでしたね。デュランというと、一般的にはシンセポップのイメージが強いんですけど、ここでの彼らはファンキーなベースラインというのも既に武器だったし、そして何より、アンディがちょっとエッジの立ったギター・リフを弾いてたんですよね。なので、この1st、今から振り返って聞くと案外ロックっぽいんですよね。その意味で、その次や2作後での世界ブレイクの時よりも評価する声というのも実際にあります。

 

 たしかにポストパンクのひな形的な「グラビアの美少女」は今聞いてもカッコいいんですけど、ただ、まだサイモンのヴォーカルに表情がないのと、楽曲全体に堅さがあって大衆に開かれた感じはしないかな。デビュー曲の「プラネット・アース」で芽生えはじめていた屈託のないポップ性が本格的に開花するのは、やはりこれの1作後でしたね。

 

 

1.Rio(1982 UK#2 US#6)

 

 やっぱりデュランと言えば、どうしてもこれです!永遠の代表作ですね。

 

 ここで彼らは「シンセポップ;ポストパンク=8;2」くらいのバランスの、良い案配な彼ららしいシグネチャー・サウンドを手に入れますね。加えて、彼らに影響を与えたジャパンやロキシー・ミュージックが持っていた妖艶なポップ・エッセンスを、その良さを殺さないで大衆化させることにも成功しました。メロディメイカーとしての芽生えが見事です。ファンキーで軽快な「リオ」、パンキッシュなエッジもある「ハングリー・ライク・ザ・ウルフ」、そしてシンセポップ・バラードの決定版の「セイヴ・ア・プレイヤー」に「ショーファー」。バランスも完璧です。

 

 そしてこのアルバムは音楽だけじゃない。ジャケ写のアートワークは、80s初頭のイメージを現すときの実例のひとつにもなっているほどだし、さらにスリランカで撮影した一連のミュージック・ヴィデオ!これがあの当時の勃興期のMTVが求めていたイメージとしっかり重なったことで、彼らはあの当時の時代の寵児にもなってしまうわけです。映像でポップ・ミュージックを楽しむ時代の格好のアイドルとなったわけです。

 

 アーティストのいわゆる最高傑作って、マイケル・ジャクソンのスリラーとかもそうなんだけど、音楽以外の時代的な要素も加わって、それらがケミストリーを起こしたものにどうしてもなるんですよね。それが連鎖反応的にパタパタと起こったのがこのアルバムだったし、ぶっちゃけ、これが故に彼らが忘れられない存在になっていることも事実です。

 

 

 ・・でも、長年のファンながら、中学のときの自分にとってのアイドルが、3回も忘れられる危機があったのにそれらを乗り越えて、いまだに大きい会場で新作のためのツアーをやれて、さらにはフェスの何万人もいるデカい会場を沸かすことのできるバンドになるなんてことは、これっぽっちも考えたこと、なかったですけどねえ。

 

 

 ・・といった感じです。この企画、第4回目を早ければ来週にもやります!予定のアーティストは、ガラッと変わりますよ。

 

 

author:沢田太陽, category:FromワーストTo ベスト, 11:30
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デペッシュ・モード 全オリジナル・アルバム From ワースト To ベスト マイ・カウントダウン

JUGEMテーマ:洋楽好き♪

 

どうも。

 

今日はこういう企画をやりましょう。

 

 

 

先週の金曜日、シンセ・ポップの大御所中の大御所、デペッシュ・モードが最新作「スピリット」を発表しました。も〜う、これがすごく好きで毎日聴いています。

 

デペッシュというと、僕が中学生のときからいる人たちで、かなり初期から見て来ているので、今のベテランとしてのしっかりとした貫禄ある姿を見るのも感慨深いものがあるんですけど、今日はですね、ズバリ

 

 

 

彼らのこれまでの全14作のオリジナル・スタジオ・アルバム、これいに僕が14位から1位までのランクをつけてみることにします。これ、去年、プリンスで同じ企画をやったんですけどね。それの2回目です。

 

ちなみに、デペッシュ・モードというのはすごい人たちでしてですね。ひとつすごい記録を持っています。それは

 

 

デビュー・アルバムから現在まで、オリジナル。スタジオ・アルバムは全て全英トップ10入り!

 

 

枚数にして前作までで13枚。今作も中間発表の時点では2位の予想だったので、確実に14枚目のトップ10には入ると思われます。

 

 

この記録、なかなかないんですよ。いろんな人気アーティストでも、全部全英アルバム・トップ10はなかなかいません。まだ若い人ならチャンスのある人いますけど、そういう人たちだって90sのアーティストでさえまだ10枚超えてませんからね。デペッシュ以上にすごい記録の持ち主はせいぜいローリング・ストーンズくらいで、同世代でモリッシー(ザ・スミスとソロをあわせて14枚全部トップ10入り!)がいるだけです。ちょっと意外な感じしません?クイーンでもアイアン・メイデンでもレディオヘッドでも、この記録は作れていませんからね。オアシス、ブラー、コールドプレイがせいぜい半分です。

 

 

では、カウントダウン形式で14位から行きましょう。

 

 

14.A Broken Frame(1982 UK#8)

 

 まず最下位は1982年発表のセカンド・アルバムですね。これには根拠があります。このアルバムは前作でリーダーシップを握っていたヴィンス・クラークが脱退して、マーティン・ゴアがはじめて主導権握った作品なんですね。ただ、いかんせん、この頃のマーティン、まだシンセのリフのセンスがどうしようなく悪い。加えて、デビューのときにかなり下手だったデイヴ・ガーンもまだまだシンガーとして弱い。これこそが現在にまでつながる本当の意味でのDMのスタート・ラインです。ただ、それでも、前作の余波があったとはいえ、全英8位のヒットは立派なんですけどね。

 

 ただ、この1982年という年はデュラン・デュランの大ブレイク年です。エレポップならヒューマン・リーグやソフト・セルが世界的にも大ヒットを飛ばしてました.この頃からDMも一応日本のメディアで紹介されてはいましたけれど、やっぱ、当時だとグラビアはあってもモノクロで1ページとかそんな感じで,やっぱ扱いは地味だったんですよね。で、曲はまだ今みたいなダークな感じじゃなく、一応はじけられる要素もあったんで一応アイドル扱いもされてましたが、それが彼らの本格的評価を遅らせる理由にもなってましたね。

 

 

13.,Exciter(2001 UK#9)

 

 このアルバムで、英米圏だと人気下降しちゃうんですよね。それまでトップ争いしてたんですけどね。

 

 ただ無理もないですね。これはちょっと聴くのしんどいアルバムです。マーティンらしいセクシーなメロディはすっかり影を潜めて、あんまり似合ってないアンビエントとか、この頃少し流行ってたフォークトロニカの方向に行ってるんですけどね。それであんまりにも売れそうにない予感を本人たちも感じたか、申し訳なさそうに「I Feel Loved」みたいな従来の路線の曲が唐突に混ざったりもして。

 

 DMって、彼らほどの大物ではありながらも、アルバムのリリース間隔が5年以上開いたことが今まで一度もないんですね。僕が彼らを再評価するに到った理由もそこではあるのですが、ただ、もしかしたら、このアルバムは一回飛ばしても良かったかもなあ。思うにこの頃、メンバーが倦怠期でDMの創作に向かってなかったんじゃないのかな。この直後にマーティンとデイヴがソロ作を出すのも納得です。

 

 

12.Sound Of The Universe(2009UK#2)

 

 このひとつ前のアルバムが割と好評だったこともあって期待されてますね。チャート実績上は良い作品なんですが、「全盛期の感じを取り戻してみた」までは良かったものの、そのあとにどうしたいのかが見えないまま終わってしまった感じですね。

 

 このアルバムがいけないのは、良い・悪い以前に、「印象に残らない」ということですね。先行シングルのタイトルからして「Wrong」ですが、なにかがおかしかったか。

 

 

11.Ultra(1997 UK#1)

 

 このアルバムは、バンド内で起こったドラマがあるゆえに愛している人が結構多いアルバムではあります。サウンド・メイキングに貢献していたアラン・ワイルダーが脱退。そしてデイヴの自殺未遂。そんな、暗黒を乗り越えて作っただけあって、「世に出るだけでも良かった」という人もいるのも事実です。

 

 ただなあ。僕、アルバムの客観的な内容で好きじゃないんですよね、これ。ちょっと曲によってはバンド・サウンドに行き過ぎだし、ストリングスによる壮大なバラードまであったりして。ちょっとサウンド的にアイデンティティ・クライシスのはじまりだったりしたのかなあ、と改めて聞き直しても思ったんですけどね。

 

 あと、「暗い」のは毎度のことですが、これは聴いてて精神的に重た過ぎ。ゆえに当時からちょっと敬遠してました。

 

 

10.Delta Machine(2013 UK#2)

 

 一作前の、これも一般的な印象は地味ですけど、これの一部に好感を持っていたことが、今回の新作への僕の期待値の高さにつながっていたことも事実です。

 

 というのも、先行シングルの「Heaven」をはじめ、彼ら、枯れたテイストを表現する楽曲ってすごく良いんですよね。そこでこうも思ったわけです。「シンセ主体のエレクトロのアーティストで”枯れる”表現した人って他にいる?」。ここのポイントがすごく面白いと思ったんですよね。もしかして、このまま彼らが老成する方向性に進んで行ったりしたら、かなり唯一無二の存在になれるのではないか、と。

 

 その意味では、このアルバムはあと一歩だったんですよね。枯れた味わいで統一すればすごく良かったところを、中途半端に楽曲バラエティに富んでて方向性が絞れていない。「ここをガッチリ固定すればかなり良いアルバムなのになあ」と思ったものでした。

 

 

9.Construction Time Again(1983 UK#6)

 

 DMが今の路線にグッと近づいたサード・アルバムですね。マーティンの曲がダークでセクシーな路線となり、アランがプロデュース補助的な立場で入ったことにより、楽曲にガッシリとした骨格が出て来ましたね。

 

 まだ一部楽曲に青臭さがあるのでこの順位ですけどね。ちょうど、ここからのヒット曲「Everything Counts」がいみじくも過渡期の姿を端的にとらえてますけどね。

 

 ただ、このアルバムで、当時アリソン・モイエとのエレポップ・デュオ、ヤズーをやっていたヴィンス・クラークには並びつつあったのかなあ、とは改めて聞き直して思ったことでした。ただ、この時期でもまだデュランやティアーズ・フォー・フィアーズ、シンプル・マインズとライバルはたくさんいた時代ではありましたけどね。

 

 

8.Speak&Spell(1981 UK#10)

 

 これがデビュー作ですね。何度も言ってるように、このときはヴィンス・クラークのバンドです。さすがにマーティンのセカンドのときよりこのときのヴィンスの方が、シンセの扱いにも、ソングライティング的にも圧倒的に上ですね、シンセ・ポップ・クラシックとなった「Just Can't Get Enough」を筆頭に「New Life」「Dreaming Of Me」とエレポップの上質な曲は並んでいます。

 

 ただ、これ、たとえば比較対象がOMDとかゲイリー・ニューマンで良いならこれで十分ではあるんですけど、やっぱり、その後のDMの世界観とはあまりに違いすぎる。なので、ディスコグラフィに混ぜるのも本来は軽く違和感があるんですけどね。ファンの中でも人によってはキャリアにカウントしてない人も珍しくはないですからね。

 

 

7.Playing The Angel(2005 UK#6)

 

 新作が出るまではこれがアラン脱退後では一番好きでしたね。

 

 2000年代前半のソロ活動を終えてリフレッシュしたからなのか、「もう一度、デペッシュ・モードらしいことを」ってな感じで、黄金期のフィーリングを感じさせる曲が目立ちもします。シングルにもなった「Precious」「Suffer Well」に関しては僕も当時「やっぱ良い曲書くよなあ、DM」と思って、ちょうどキラーズのデビュー作をガンガン聴いてた最中に割り込んで聴いていたものです。

 

 

 このアルバムですが、後のアルバムでのチャートやツアー規模を考えると、ファンを取り戻すことには成功したアルバムだと思います。ただ、黄金期ほど世間一般での注目を浴びなかったのは、このアルバムが後半やや失速するからなのでしょうか、トータルではなく、一瞬のひらめきだけの観点で見ればもっと高い位置につけてもおかしくない作品です。

 

 

 

6.Some Great Reward(1984 UK#5)

 

 もう、ここからが今につながるDMですね。歌詞のテーマもSMを主題にした「Master&Servant」なんかも入りはじめて、退廃美の方向にも流れはじめてね。このアルバムのときに、エレクトロ・ミュージックの故郷であるドイツで録音したことも大きかったかな。

 

 あと、このアルバムから1985年に「People Are People」のヒットが出て、アメリカのシングル・マーケットで初のトップ20入りも果たしたんですよね。ちょうど85年というと、MTVにかわいがられたグッド・ルッキングなイギリスのニュー・ウェイヴ・アーティストに陰りが見え始めて、本格的なアーティストのクオリティが求められはじめていたとき。彼らがその絶好の位置にこのアルバムでさしかかったのは言うまでもありません。

 

 ここから彼らはアメリカ進出の足がかりをつかみますが、この作品でドイツや北欧での人気も決定づけたりもしています。

 

 

5.Spirit(2017)

 

 はい。この新作はズバリ、いきなりこの位置です!実際、音楽メディアもレヴューによっては、このくらいの高評価なとことも結構ありますが、僕も大賛成ですね。

 

 根拠は以下の通りです。まずひとつめが「成熟」ですね。「デルタ・マシーン」のとこでも書いた、「エレクトロのまま枯れたらカッコいいんだけどなあ」ということを、今回彼ら、こちらが望む通りにしっかり枯れています。曲によってはもう完全にブルースなノリも見受けられますね。彼らならニック・ケイヴが今到達してるようなドス黒い渋さに電子音のまま到達できると思っていましたが、その通りになりましたね。

 

 あと、その成熟に基準を合わせた、首尾一貫とした「統一性」。ここも大事です。この軸がしっかりしたからこそ、迷わない表現が出来ているようなものです。

 

 そして、彼らが今回のアルバムにかける「熱さ」。ここも、過去にしばらくなかったものですね。今回の作品では「Where's The Revolution」に顕著なように、世の右傾化やポピュリズムに警鐘を鳴らす、これまでの彼らにないほどポリティカルな作品になっているんですね。どうやらデイヴが、彼の娘が昨年のアメリカ大統領選でヒラリーがトランプに負けたのにひどくショックを受ける姿を見て触発されたのが大きかったようですが、こういう「歌うための理由」がハッキリしたときって、そうした高いモチベーションが垣間見れるものなんですよね。

 

 彼らくらいのベテランになると、「もう最盛期は過ぎたし、今頃ほめるところも」みたいな感じにもなりがちなんですけど、僕は今回のアルバムを単なる「過去のスター」の作品として受け流すと、多くの批評家たちがデヴィッド・ボウイが「hours」「Heathen」「Reality」が出た当初の過ちをくり返すことになるんじゃないかと思ってます。これらって、ボウイの復活を十分示しうる作品だったのに、そういう批評の盛り上がりには国際的にならなかった。なのに間隔あけて「The Next Day」で復活したら、方向性が大して大きく変わったわけでもないのに、手のひらを返されたように大絶賛になってね。なんかそれに近いことが彼らにも将来起こりそうな気がしてます。

 

 

4.Songs Of Faith And Devotion(1993UK#1)

 

 彼らがセールス的にもっとも売れてたときの作品ですね。

 

時代はオルタナティヴ・ロック全盛時でしたが、その波も上手く行かしていましたね。この作品にはナイン・インチ・ネールズや、後にPJハーヴィーやスマッシング・パンプキンズも手がけることになるフラッドが参加してますからね。それゆえに「I Feel You」「Walking In My SHoes」みたいな、エレクトロをヘヴィなロック・フォーマットにあてはめるのもうまくいきましたね。前作が彼ら史上一番成功したアルバムだったわけですけど、そこからさらにガンガン攻めたわけです。

 

 当時、オルタナ青年だった僕はひたすら興奮しましたけどね。フラッドで正直、もう一作作って欲しかったのですが、この直後にアランが脱退し、デイヴが自殺未遂。サウンドよりも彼らの実生活の方がヘヴィなものになってしまいました。

 

 

3.Music For The Masses(1987 UK#10)

 

 これが当時イギリスで10位までしか上がっていなかったことの方が不思議ですね。僕の記憶だと、これがアメリカでアルバム最高30位台だったものの、ロングヒットしたことでアメリカでのカリスマ化の足がかり(同じ頃、キュアーも「Kiss Me Kiss Me Kiss Me」で同様のポジションにつきます)を作ったし、ファンの基盤として今も非常に大きなイタリアやフランスでの人気も決定的なものにします。

 

 

 このアルバムは、フォーマット的にはそのひとつ前のアルバムを継承したものですけど、とにかく「Never Let Me Down Again」「Behind The Wheel」「Strange Loveと名刺代わりの代表曲がこれだけあると、それだけでもう代表作ですけどね。彼らが最も良い曲を書いていた時期の作品だと思いますね。

 

 

2.Black Celebration(1986 UK#4)

 

 デペッシュ・モードが彼ら自身のアイデンティティを完全に確立したアルバムですね。

 

 「黒の祝祭」と銘打たれているように、このアルバムから彼らは本格的にゴスの代表的なアーティストになります。そして、これまでチープな印象が否めなかったシンセ・ポップの表現を曲調とサウンド・プロダクションで、よりダークでスケール感のあるものへと発展させます。

 

 さらに「Some Great Reward」のとこでも書きましたが、この1986年という年は、MTVのニュー・ウェイヴのアイドルが完全に死んだ年で、シリアスな本格指向のアーティストだけがその後のUKロックのシーンで残っていくわけにもなったんですけど、そこでザ・スミス、キュアー、ニュー・オーダーと並んでDMはいわば「四天王」的な存在で台頭することにもなるわけです。

 

 この頃になるとマーティンのソングライティングがかなり洗練されてきてますね。自らヴォーカルをとった「A Question Of Lust」でのセクシーさなんかその最たる例ですが、彼らがその後得意技にしていくサビの後半からアウトロのカウンター・メロディの余韻のカッコよさもここで確立された気がしますね。「Stripped」の後半の展開とか今聴いてもゾクッとするし、こういうパターンが「Enjoy The SIlence」とか「Walking In My Shoes」あたりにもつながって行ったかなと。

 

 

1.Violator(1990 UK#2)  

 

1位はやっぱりこれしかないですよね。

 

 これが彼らにとっての初の全米トップ10入りアルバムです。そして「Personal Jesus」「Enjoy The Silence」「Policy Of Truth」と、全米トップ40シングルが3曲も出て。特に「Enjoy The Silence」がトップ10入ったことは、当時UKロック派の人にとってはかなり大きなニュースでした。

 

 これは「Black Celebration」からのモードを「MUSIc For The Masses」を挟んで、1、2、3!と一気に駆け上がって完成させた感がありますね。言うなれば、三部作(というわけでもなかったんでしょうけど)の最後の部分が劇的なフィナーレで出来上がったみたいなカタルシスがあるというかね。

 

 そして、このアルバムが特筆すべきところは、シンセ・ポップでありながらも、既にブルースにも相通じる肉感的な汗の部分を体得していることですね。その代表としてやはり「Personal Jesus」でのスライド・ギターはあげないといけませんけどね。「ああいう方法論はありなんだ」とは当時からビックリしましたね。あの当時、ヘヴィ・メタルのブームの頃、「ブルーズ回帰」なんてやってるバンドもありましたけど、それが電子音でも音楽でも可能なのかと。さらにここから、マーティン・ゴアがシンセ以外にもいろんな楽器弾くようになって、サウンド的にも拡張した。その意味でも大きいかな。

 

 あと「Personal Jesus」って、後にジョニー・キャッシュが「American Recordings」の中でカバーしてそれで再び有名にもなりましたけど、そういうことが実際に可能だったように、この頃から彼らはすでに「枯れる方向性」をすでに確保していたわけです。「でも、それが完全に活かせたアルバムってまだ作ってないよなあ」と思っていたところにできたのが、今回の「Spirit」だったわけです。

 

 

・・と、こんな感じでしょうかね。

 

 

 で、実はこれを書いてる最中に、デペッシュ・モードの来年3月のサンパウロ公演が発表されてビックリしてます!日時は3月27日で、僕がデヴィッド・ギルモアのライブを見たのと同じ、アリアンツ・パルケっていうサッカー・スタジアムなんですけどね。彼ら、これが24年ぶりの南米ツアーらしいんですけど、それくらい今回やる気なのかな。日本にも1990年以来行っていないので、なんとか来日も実現すると良いですけど。日本での不在が、不当な過小評価にもつながっていると思うのでね。

 

 

 

author:沢田太陽, category:FromワーストTo ベスト, 08:18
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プリンスの全オリジナル・アルバム全採点 From Worst To Best(3)10位〜1位

どうも。

 

では

 

 

ここ最近やっている、プリンスの全アルバムのFrom Worst To Best。いよいよトップ10に突入しました。行きましょう。まず10位はこちら。

 

 

10.Musicology(2004)

 

 10位は「ミュージコロジー」が入りました。90年代後半以降の作品では唯一のトップ10入りとなりました。このアルバムは、この当時、ディアンジェロとかアウトキャストあたりを中心に起こってた「プリンス再評価」の波を活かしたうまい作品でしたね。事実、曲中に80sの代表曲のフレーズがちりばめられたりしましたからね。作風自体は、この次のアルバムほどにはエイティーズ回帰を意識はしていませんでしたが、その前に傾倒していたジャズ・ファンク色を抑え、ポップなバラエティに富まそうとした努力はわかります。曲がすべて5分以下になったわかりやすさが何より一番ベストです。

 

 

番外:The Hits/The B-Sides

 

 ここで番外、行っておきましょう。今回は「オリジナル・アルバム」が対象なので、ベスト盤は含まれていませんが、この93年リリースのベスト盤は重要です。このときに収められた「Peach」をはじめとした新曲もそうなんですけど、一番の聴きどころはシングルのB面集ですね。特に83〜85年のシングルB面は重要曲のオンパレード。「How Come You Don't Call Me Anymore」「Erotic City」「God」「She's Always In My Hair」あたりはライブの定番曲としてよく演奏もされていましたからね。なので、通常のアルバムと同等に本来なら扱っておかしくない作品です。

 

 

9.Dirty Mind(1980)

 

 これは海外のオールタイムならもっと上位に来るアルバムですね。僕自身もすごく好きなアルバムですが、あえてこの順位です。僕がプリンスで一番好きな時期って、シンセサイザーを多用してニュー・ウェイヴに接近した時期、つまりエイティーズの前半なんですが、それがはじまったのがこのサードからなんですね。その意味で重要視する向きが多いようです。僕もそうだと思います。ただ、楽曲そのものの練りは子のアルバム以降の方が良い気がするんですよね。まだ、悪い意味でチープな感じが残ってる印象があるというか。曲そのもののクオリティでは、これ以降のアルバムの方が僕はあると思います。

 

 

8.Prince(1979)

 

  これは初ヒット「I Wanna Be Your Lover」の入ったアルバムですね。このアルバムはまだ初々しいんですけど、僕がこれを高く評価したいのが、これが彼のキャリアの最初に指向したアーバン・ポップ路線の早くも完成系だと思うから。この路線に飽き足らなくなったからこそのニュー・ウェイヴ接近だったような気がするので。あと、楽曲の完成度も高くて初期の代表曲が多いんですよね。「I Wanna〜」をはじめチャカ・カーンのヒットで後に有名になった「I Feel 4 U」もあるし、「Why You Treat Me So Bad」「Sexy Dancer」そして、後のギターヒーローの到来を予見させた「Bambi」まで。ソングライターとして既に相当優秀です。

 

 

7.Diamonds&Pearls(1991)

 

 90年代では、このアルバムだけがトップ10にランクインです。誰かがうまいこと言ってたんですけど、このアルバムは「プリンスにとってのレッツ・ダンス」。つまり、音楽的な刺激はないけど、サービス満点の極上のポップ・アルバムということですけど、まさにその通りだと思います。グイグイ攻めるようにファンキーな「Gett Off」からセクシーな「Daiamonds&Pearls」に名バラード「Insatiable」、日本でのレコーディングで知られるクールな「Money Don't Matter 2nite 」、そして、プリンスとTレックスの接点を強く感じさせる全米1位ソングの「Cream」まで。バラエティの富ませ方に関しては、歴代でも1番かもしれません。ただ、刺激がないんですが。

 

 

6.Parade(1986)

 

 このアルバムはとりわけ日本での人気が高いですね。リリース当初の某先生の絶賛の賜物だと思います。たしかに、プリンスがトレードマークになっていたエイティーズ前半のニュー・ウェイヴ・ファンキー路線から離れ、より多様な音楽性で普遍性に向かって行った頃だったから絶賛しやすかったことはたしかです。ただ、ひとつのアルバムとして見た場合、前半部の曲の細切れが、なんか名作としてのグレードと醍醐味に今の耳からしたら欠けるかなと、僕個人の感覚では思いますね。「Kiss」と名バラード「Sometimes It Snows In April」はどう聴いても名曲ですが。

 

 

5.Around The World In A Day(1985)

 

 当時、バリバリのロック少年だった15歳の僕が「プリンスってカッコいい!」と思った最初のアルバムがコレでしたね。そういう事実もあり、個人的な思い入れが強いです。これ、彼が、とりわけ1967年のいサマー・オブ・ラヴ的な雰囲気を醸すのが好きだった頃の作品だったので、とりわけロックファンのウケが良いんですよね。僕もある時期までは一番好きだったし、「ラズベリー・ベレエ」や「ポップ・ライフ」もシングルで好きな曲の上位です。ただ、プリンスのキャリア全体を総括した場合、「でも、これ、プリンス本来の流れからしたら異色作だよね、やっぱ」と思うと、そこまで上位には持って行きにくい作品のような気もして。やっぱ、その意味でもエイティーズ前半の方が「プリンスらしい」んだよね。

 

 

4.1999(1982)

 

 これももうマストというか。表題曲の存在があるだけで、もう自動的に上位ですね。プリンスがはじめてファルセットじゃない地声で歌って、シンセもデジタルで立体的になってから、「ダーティ・マインド」以降のニュー・ウェイヴ路線が猥雑なだけじゃなくなって、多くの人々に本格的評価を迫るような感じに実際なりましたからね。本人もよほどその存在証明をしたかったからなのか、当時としては異例の2枚組のアルバムだったんですが、ただ、力が入り過ぎて、曲が必要以上に長過ぎですね、これ。前半のヒット曲連発パートが終わったあとのアナログB面とC面の1曲目がとにかく長くて、ここを聴き通すのが結構ツライ!80年代までは、「1999」の方が実験的なアプローチをしてるから「パープル・レイン」よりエラいみたいなことを言う人も実際にいたものですが、「それは絶対に違う!」と「パープル・レイン」のところで言うことにしましょう。

 

 

3.Controversy(1981)

 

 ということもあり、僕個人的には「1999」より、その前のこの「戦慄の貴公子」の方が好みです。たしかにスケール感は「1999」の方が上なんですけど、猥雑なエッジの強さがある上に、少ない楽曲数ながらも「Controversy」「Sexuality」「Let's Work」、プリンス流グラムロックの萌芽でもあった「Jack U Off」、そしてプリンスのエロティック・バラードのひとつの大きな象徴でもある「Do Me Baby」まで。「Do Me Baby」での悶えシャウトの鬼気迫り方は、その後、たくさん生まれるこの系の曲と比べても本気度が濃厚に感じられてたまりません。ブレイク期前のアルバムなので損をしていますが、もっと評価されていい作品です。

 

 

2.Sign O The Times(1987)

 

 これもどう考えても名盤ですね。プリンスが、彼の初期の全盛を支えたニュー・ウェイヴ・ファンク路線を封印し、その後に見せた音楽的成長で得た要素をもとに、多様なサウンド・アプローチと、器用なソングライティングで作った一大パノラマですね。表題曲や「ドロシー・パーカー」「If I Was Your Girlfriend」のクールなファンク路線はその後も美味く真似出来た人出て来てないと思うし、「U Got The Look」「I Would Never Take The Place Of Your Man」みたいなサイケ趣味期をくぐりぬけて生まれたロックンロールも、つなぎ曲ながらメロディックな名曲の「Starfish&Coffee」「Strange Relationship」そしてプリンス・バラードの傑作のひとつの「Adore」。曲の大量の攻勢があり、同時にバランスで飽きさせない意味では、これが一番ですね。僕が長い作品は好みのタイプなら、これを1位にしたでしょうね。

 

 

1.Purple Rain(1984)

 

 やっぱ、プリンスだと、どうしてもコレなんだよねえ〜。もちろん、「これが一番売れた代表作」というのもあるんだけど、このアルバム、それ以上の意味があると思うから。まず、このアルバムは、エイティーズ初頭からのニュー・ウェイヴ・ファンク路線の完成系のアルバムなんですよね。それは、この後の彼のキャリア展開からも明らかですけど。あと、そうでありながらも、このアルバムから、彼のその後のアレンジの妙味になってくる変則コードによるストリングスやコーラスのアレンジとか、中東風サウンドとかが芽生えて来るんですよね。この路線は、「1999」がどんなに長大な作風で迫ろうが表現できていませんでしたからね。短くコンパクトにまとめた中で、聴きやすい形でしっかり多様性を表現できているところが素晴らしいです。加えてこれ、「ロック・アルバムとしてのカタルシス」まであるでしょ。プリンスにとって、それが最後のタイトル曲の延々と続くギター・ソロ以上に表現出来た瞬間って、キャリア通しても結局生まれてないし、それゆえに、この曲が、彼最大のヒット・シングルだったわけでもないのに、死後にもっとも代名詞的に聴かれた曲にもなったわけで。その意味でこれ、「プリンスのおいしい要素」が最も凝縮して詰まってるんですよね。

 

 

 

・・という感じでしょうか。やってみて、個人的に楽しかったです。今、もう、この企画の第2弾を進めてまして、毎日、あるアーティストを毎日聴いてるところでもあります。

 

 

author:沢田太陽, category:FromワーストTo ベスト, 13:02
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プリンスの全オリジナル・アルバム全採点 From Worst To Best(2)20位〜11位

どうも。

 

では、一昨日の続き行きましょう。

 

 

 

 

 ストリーミング・サービス「TIDAL」で全アルバムを聴き通した記念にやってる、プリンスのアルバムの「From Worst To Best」。今回は1位まで行きたいところでしたが、ちょっと疲れがたまっていまして、11位までをカウントダウンします。まずは20位から行きましょう。

 

 

20.The Slaughterhouse(2004)

 

 20位は、2004年にアルバム「ミュージコロジー」が発売されたタイミングでネットのみで配信された2つのアルバムのうちのひとつですね。この2つのアルバムというのが、すごくファンキーでわかりやすいポップで良いアルバムなんですよ。正直、ジャズ・ファンクなんてやらなくて、こっちを流通の良いレコード会社で出せば良かったじゃんと思うんですけどね。これは、その2つのアルバムの曲が弱い方ですね。本当は出てるかもしれなかったアルバムの余り曲な感じもあります。

 

 

19.Hit N Run Phase 1(2015)

 

 これもほとんど遺作に近いですね。28位ぶ選んだフェイズ2が生前最後のアルバムですけど、フェイズ2が未発表曲を主体に選曲したのに対し、こっちは本ちゃん感が強いですからね。このアルバムでプリンスは、3rdeyegirlのメンバーのダンナさんを、プリンスの人生にとって初のプロデューサーとしてつける、ということをしています。そのジョシュア・ウェルトンのプロデューサーとしての資質が良いかどうかは今もよくわからない(実績はない人なんで)のですが、ただ、今までかたくなに自分以外の判断の入り込む余地を作らなかったプリンスが客観意見に耳を傾けるようになって、作品の風通しがよくなってきたことはたしかです。そうじゃないとEDMの要素入れたり、「Fallinlove2niite」みたいな、イケイケ、フーフーのベッタベタなディスコなんてやらなかったでしょうからね。この後の進化が見たかったとこなんですけどねえ・・。

 

 

18.Emancipation(1996)

 

 出た当時、「聴きとおすの大変だあ〜」と頭を抱えた3枚組。今回、タイダルで聴くまで、3枚一気に聞いたことなかったですもの。で、改めて聴くと、これ、案外、聴きやすくはあったんですよね(苦笑)。特に1枚目。これ、この当時流行っていたRケリーみたいなスロー・ジャムのプリンスなりの回答ですね。この頃、マイテとラヴラヴでもあったし。そのムードは2枚目まで続いて、ここで切ってたら、久々の傑作になったと思うんですけど、3枚目のアップテンポの盤がなんか統一感乱して微妙なんだよねえ〜。このあと、3年、実質上のオリジナル・アルバム出さないで、出したと思ったらひどい駄盤だったことを考えるに、あの3枚目をひとつのアルバムとして後に発表してればなあ。いくら、その3枚目のラストにタイトル曲があると言っても。

 

 

17.Gold Experience(1994)

 

 これは良くも悪くも「毒消し」アルバムですね。この前の「Come」があまりに暗いアルバムだったから、ちょうど「The Most Beautiful Girl In The World」のポップなシングル・ヒットもあったんで、それにあわせて娯楽性の強いポップ作を作って来ましたね。プリンスがこういうことするの珍しくなくて、たとえば「Lovesexy」も「Black Album」が暗過ぎたのを嫌って、明るい気分で作り直したアルバムでしたからね。ただ、ソングライティングの調子のいい時期じゃなかったこともあって、ポップ作でも「ダイアモンズ&パールズ」みたいなセクシーさやゴージャス感が無いんだよな。作風の割に、意外にプリンスがギターをガンガンに弾きまくってるアルバムで、そこが一番良いんですけどね。

 

 

16.Art Official Age(2014)

 

 プリンスの晩年なら、これが一番良いですね。当初、そこまでピンと来なかったんですけど、これ、聞き込めば聞き込むほど、味が出て来ますよ。このアルバムのまず最初に強調すべき部分は、1990年代初頭以来、プリンスがやっと新しい音楽要素を入れたことです。はじめの方の曲でEDMの要素を入れてます。おそらく、この少し前の作品からふたたびシンセを弾いてたりしてるうちに、興味を持ったんじゃないかな。EDMは好きじゃないけど、あんなに頑に新しい音楽要素を入れて来ず、それがスランプの根本原因にもなていたプリンスが心を開きはじめた瞬間だと思います。あと「Breakfast Can Wait」「This Could Be Us」あたりは、生前最後の名曲群ですね。

 

15.Lovesexy(1988)

 

 あの、素っ裸のジャケ写の衝撃性ゆえに、一般人気の出なかったアルバムです(笑)。曲そのものは名作「サイン・オブ・ザ・タイムス」のすぐあとの時期なので脂は乗ってはいるんですが、いかんせん、「ブラック・アルバム」のお蔵入りの後に急にこしらえて作ったものだから、間に合わせ感が強過ぎて、妙に「小品」的なまとまりかたをしているのが気になります。また、アルバム全体を「トラック1」にした奇行(笑)ゆえに、CDで聴いてて、聴きにくいったらありゃしませんでした。ジャズやヒップホップの要素の出し方も、この時期だとまだ中途半端でもありますしね。

 

 

14.Crystal Ball(1997)

 

3枚組「エマンシペーション」を発表した後、しばしのブランクに入ったプリンスが97年に発表した話題の3枚組がこれです。これ、目玉はなんといっても、レヴォルーションのメンバーとの最後の作品になる予定だった「ドリーム・ファクトリー」の曲が入っていることですね。このアルバムがポシャって「サイン・オブ・ザ・タイムス」にもなるわけですが、さすがに一時はそれと顔を並べた楽曲だけあって、レベル高いですね。「ドリーム〜」の完成版、今だったらもう出して欲しいなあ。それを願っているプリンス・ファンは世界でも多いはず。あと、90s楽曲の未発表曲も、アルバムに直前まで入る予定だった楽曲が多いため、こちらもレベルが高いものが多かったですね。

 

 

13.The Chocolate Invasion(2004)

 

 これは僕自身にとっての「最大の過小評価作」枠ですね。これは、20位のとこでも言いましたけど、「ミュージコロジー」の発売時に同時にネット上のみでリリースされたアルバムです。ただ、この頃のプリンスがいかに調子悪かったかというと、彼がこんな良いアルバムをボツにしてしまったことです。このアルバム、実は2000年に「High」というタイトルでレコーディングしていたアルバムで、先行シングルも世に出て、アルバムの収録曲も発表されていたのに直前で流れているんですよね。なんで、これ、ボツにするかなあ。彼がその前の数年ですっかり忘れてしまっていた、小気味よい、ポップでアップビートなファンクさえメインとしたすごく良い意味でわかりやすい作品だったんですけどね。

 

 

12.3121(2006)

 

 プリンスが17年ぶりに全米1位に返り咲いたアルバムですね。この当時に起こっていた、プリンス再評価の波を活かした感じの美味い作品だったと思います。この作品で、80年代後半から封印していた、それまでのトレードマークだったシンセサイザーも復活させていますしね。「Black Sweat」に顕著なように、80sの全盛時にあった猥雑なファンキーさも戻って来ているし。このあとも、この感じで作ってくれたらうれしかったんですけど、考え過ぎて長く続きませんでした(笑)。

 

 

11.Love Symbol(1992)

 

 記号が難し過ぎて、書けないヤツですね(笑)。このアルバム、前作の「ダイアモンズ&パールズ」で獲得した、「ジャズとヒップホップをモノにしたプリンス&ザ・ニュー・パワー・ジェネレーション」のイメージをさらに高めるべく、スケールの大きなアルバムを作ろうとしています。たしかに前半部での勢いは前作を上回ってるんです。しかし、いかんせん、曲が長過ぎ&曲が多過ぎで、後半になってバテが来ます。このダレがなかったら、トップ10考えたんですけどねえ。また、曲の数が多い割に、代表曲が少ないところも減点対象になりました。ただ、この当時、好きでよく聴いた作品ではあるんですけどね。

 

 

 すみません。今日、ちょっと疲れがあったので、いったんここで区切ってあらためてトップ10の発表をさせてください。

 

 

 

author:沢田太陽, category:FromワーストTo ベスト, 11:20
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