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全オフィシャル・アルバム From ワースト To ベスト (第10回)グレイトフル・デッド その2 10−1位

どうも。

 

 

 

では、From ワースト To ベスト、グレイトフル・デッドのその2、トップ10行きましょう。10位はこれです。

 

 

10.Anthem Of The Sun(1968 US#87)

 

 10位は1968年発表のセカンド・アルバムですね。これは、なんとなく世間が持ってるデッドのイメージをある程度体現したアルバムなんじゃないかと思います。思いっきり60sのサイケでジャズっぽくって、長尺の演奏がある感じで・・。と、ある意味そうだと僕も思います。

 

 ただ、僕が今の耳で聴いて思うに、この当時の彼らのライブを現すのに、このスタジオ盤でもまだ足りてないんじゃないかな、と思いましたね。意欲はあるけど、追いつききっていないようなもどかしさがあるというか。曲は「The Other One」や「Born Cross Eyed」とか、良いのあるんですけど、せめてこのアルバムにシングルで出た「Dark Star」の長いヴァージョンが入っていたらなあ。この当時の技術の制約が悔やまれるとこです。その分、ライブで表現しようの気持ちが強くなったところもあると思います。

 

 

9.Wake Of The Flood(1973 US#18)

 

 これが初代キーボードのピッグペンが亡くなって、レーベルをワーナーを離れて自主レーベルで出した最初のアルバムですね。ここからしばらくキーボードがキース・ゴッドショーと言う人になって、彼の奥さんのドナがバック・ヴォーカルとして参加するんですけど、この加入でいきなり違うバンドみたいになるんですよ。この当時のカーティス・メイフィールドみたいなソウルとか、レゲエとかにトライしてね。これまでのヒッピーでサイケだったりレイドバックしたイメージから、ガラッと洗練されます。中でも「Eyes Of The World」って曲に至っては、なんか渋谷系みたいです(笑)。これ、この当時のファン、戸惑ったんじゃないかなと思うんですけど、僕はすごく歓迎な変化ですね。

 

あと、こういう路線になると、名手ジェリー・ガルシアのギター・テクニックが冴えますね。彼の中のジャズの素養も引き出されるというか。

 

 

8.Terrapin Station(1977 US#28)

 

 自主レーベルでのリリースをやめて、アリスタに移籍した第1弾ですね。このとき、アリスタってCBSの総裁だったクライヴ・デイヴィスが作ってたんですけど、デッドの他にもキンクスやルー・リードもこの頃に移籍してるんですよね。そう考えると、アーティストの狙いはすごくカッコいいんですけどね。このアルバムですが、「洗練されたデッド」というキース・ゴッドショー加入以後の路線は継ぎつつも、すごく骨太でファンキーになってて、この感じだと、ちょっと離れていたデッドヘッズも戻るんじゃないかなと思えるほど、ソフィスティケイトされつつも硬派な感じがあります。

 

 このアルバム、ヴォーカル面でいうとボブ・ウィアーが全部やってて、1曲はドナ・ゴッドショーが全部ヴォーカルという点でもすごく異色です。B面の組曲はジェリーですけどね。このあたりの手腕は、当時売れっ子プロデューサーだったキース・オルセンの手腕かな。

 

 

7.Working Man's Dead(1970 US#28)

 

 デッドのレイドバック路線の最初のアルバムでもあり、いわゆる「歌もの」のデッドのアルバムの中でも人気の作品ですね。

 

 デッドって、元々がグリーングラス(カントリーのルーツみたいなもの)のバンドだったので、このとき流行りはじめたカントリー・ロックの対応は難しいことではなく、その奥深さを見せてますね。あと、クロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤングばりのヴォーカル・ハーモニーも全然負けてません。「Uncle John's Band」をはじめ、名人級のフォーク、カントリーが聴けますが、よく聴くとリズムが案外骨太でR&Bっぽかったりするのもミソです。

 

 

6.Europe 72(1972 US#24)

 

 これはロック史にも残る名作ライヴ盤です。なので、本当はもっと高くしようかとも思いましたが、あえてこの順位で。

 

 なぜかというと、この1972年のヨーロッパ・ツアー、実は全音源録音されてて、それが全部配信で聴けるんですよね。なので、そっちを聴いた方が、72年にリリースされたこれよりも圧倒的に良いんですよねえ。というのも、このときに出たヴァージョン、ハイライトの抜粋で、曲間が全部フェイドアウトしてるんですよ。なので、ライヴ会場にいるみたいな臨場感が今ひとつ伝わらないというか。

 

 それよりは、ネットで評判調べて、このヨーロッパ・ツアーのベストのものを聴いた方が良いと思います。よく評判を聴くのは、ツアー最終日のロンドン公演の人気が高くて、あとはフランクフルト、パリあたりも人気が高いですね。

 

 

5.The Grateful Dead(1967 US#73)

 

 今から50年前の1967年3月にリリースされたデビュー作です。いわゆる名盤選にそこまでの頻度で載る作品ではないんですが、僕はこれ、ものすごく良いアルバムだと思いますよ。バンドのポテンシャルの高さをこの時点ですごく感じます。おそらく、人によって評価がさほど高くないのは、彼らがこの時点でガレージ・ロックのバンドみたいに聞こえるからじゃないかと思うんですが、大のガレージ・ロック好きの僕にはそれだからこそ好きだし(笑)、そこに先ほども言ったようにブルーグラスからの影響も感じさせるし、ソウル・ミュージックの雰囲気もあるし、さらにはこの当時の他のガレージのバンドにはなかったフリー・フォームのジャズっぽさを早くも垣間見せるときもあって。特にオルガンがこのアルバム、大活躍するんですけど、これを弾いてるのがピッグペンですね。この当時はジェリーのギターよりもむしろ良いくらいです。これはもっと評価されていいんじゃないかな。

 

 

4.Grateful Dead(Skull&Roses)(1971 US#25)

 

 これも定番のライヴ盤です。世間一般の評価ではこの次の「Europe 72」の方が高い気もするんですけど、僕が15年ほど前にデッドにハマった際は、こっちのアルバムの方をよく聴いてましたね。

 

 なんて言うんだろう。こっちの方がアルバムの起承転結があって、ひとつのライブをそのまま聴いてるような感じがするんですよね。こっちも曲間はフェイドアウトなんですけど、いろいろくっつけてあるわりには全体があたかも順番でもあるかのように聞こえるしね。あと、「Bertha」をはじめここだけで聴ける新曲もいいし、定番化するボブ・ウィアーのソロ・アルバム「Ace」からの「Playing In The Band」もいいし、マール・ハガードをはじめとしたカントリーのカバーも、そしてそしてデッドお得意の18分の長尺ジャムも。もっと評価高くても良いんですけどね、これ。

 

 

3.Aoxomoxoa(1969 US#73)

 

 

いわゆる「サイケの時代のデッド」のスタジオ盤だと、間違いなくこれが最高傑作ですね。

 

 この一つ前の「Anthem Of The Sun」ほどフリー・フォームを利かせてないんですけど、この当時のスタジオ盤で制約で表現出来そうにないことをあえてやるよりは、長くて5〜6分の尺で出来る楽曲で、「少し長くジャムりもするけど、根本的な楽曲がいい」というタイプの曲で名曲を多く生んでいるのがいいです。「St.Stephens」「Doin'That Rag」、そして「China Cat Sun Flower」に「Cosmic Charlie」。デッドにとっては不可欠な曲ばかりです。歌メロのコード感でも、すごくデッドらしい感覚を感じやすいアルバムだと思います。

 

 

2.American Beauty(1970 US#30)

 

 

 デッドのスタジオ盤での最高傑作に一般的にあげられますけど、僕もそれは同意しますね。

 

 これは1970年に2枚発表された、デッドのアーシーなレイドバック路線のアルバムの2枚目ではあるんですけど、やっぱ先の「Worklng Man's Dead」よりはこっちの方が上ですね。ライブやベスト盤の定番にもなる「Sugar Magnolia」「Truckin」「Ripple」「Friend Of The Devil」そして「Box Of Rain」と5曲もあるわけですけど、カントリーっぽさは、とりわけ「Ripple」に顕著なように前作よりも濃くなっているにも関わらず、その一方で「Box Of Rain」みたいな、その後のソフィスティケイト路線を先駆けたみたいな曲もあって、しかもそれが違和感なく収まっているのもいいんですよね。特に「Box Of Rain」は今の耳で聴いても新鮮なんじゃないかな。

 

 

1.Live/Dead(1969 US#64)

 

 

 1位はやっぱりこれですね!1969年の名作ライヴ盤、「Live/Dead」。

 

 まず、なにがいいかって、「これを聴いてからこそのデッド!」と思える長尺演奏がのきなみ目立つことですね。「Dark Star」で23分、「Turn On Your Love Light」で15分、「Death Dont Have No Mercy」で10分。そして、ギターのフィードバックだけで8分ですよ!これ以降のオフィシャルのライブ盤って、曲を聴かせることにも力を入れてるのもわかるんですけど、ここまでそのジャム部分を醍醐味もって聴かせたアルバムはないですからね。

 

 加えて、それがこの当時のデッドのみならず、「60年代という時代」そのものを象徴しているのもいいですね。この時代の、ロックそのものがどんどんフリー・フォームになって拡張して行く様子。これをドキュメンタリーのように捉えた生々しさもあります。60年代、サイケ、サンフランシスコ。これを巧みに象徴している本作がナンバーワンでよいと思います。

 

 

・・といった感じでしょうか。

 

 

次回ですが、早ければ来週にもやりますが、今回とはガラッと違いますよ。

 

 

author:沢田太陽, category:FromワーストTo ベスト, 14:31
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全オフィシャル・アルバム From ワースト To ベスト (第10回)グレイトフル・デッド その1 22〜11位

どうも。

 

 

今日はFromワーストToベスト、行きます。

 

前回のビートルズが「サージェント・ペパーズ」の50周年にちなんだものだったんですが、あのアルバムが現象となった1967年の夏は「サマー・オブ・ラヴ」と呼ばれ、音楽やアートはサイケデリック・カルチャーの影響で飛躍的な芸術的進歩を遂げ、遂には当時の世相にも物申して「世の中がロックで変えられるんだ」といった時代の空気感まで生んだ季節でした。

 

 

 きょう16日はその象徴的なイベント、サンフランシスコ郊外で行なわれた「モンタレー・ポップ・フェスティバル」から50年なんですね。そこで伝説のジミヘン、ザ・フー、オーティス・レディング、ジャニス・ジョプリンなどの歴史的名パフォーマンスも生まれたわけなんですけど、今回はそのモンタレーの出演者でもあり、サンフランシスコでのフラワー・ムーヴメントの頃のシーンの代表格だったこの人たち行きましょう。

 

 

 

 

はい。グレイトフル・デッドですね。

 

デッドって、そのサイケデリックなイメージとか、フリー・フォームのライブとか、デッドヘッズとか、クマさんのイメージでレジェンド化はしていますが、「代表作がよくわからない」と言う典型的なアーティストじゃないかなと思うんですね。僕も以前はそういうイメージ持ってたんですけど、幸いなことに僕にとってのデッドの先生みたいな人が何人かいたおかげで90年代の終わりから2000年越えたくらいまでに結構凝ってた時期がありまして。今回はそのことを思い出して、ちょっとやってみようかと思います。

 

なお、デッドですが、「ライブ盤聴かなきゃはじまらない」タイプのバンドでもありますので、今回はルールを少し変えて、バンド側がオフィシャル・リリースとしてカウントしている22枚のアルバム、ライブ盤を9枚含みますが、これらをランク付けしてみました。

 

では、行きましょう。早速22位から。

 

 

22.Dylan&The Dead(1989 US#37)

 

 ワースト・アルバムはボブ・ディランとの1987年のライブ盤ですね。「ディランとデッドの共演」というとレジェンド同士ですごそうですが、なんてことはない。これ、デッドがただ、ディランのバックバンドつとめただけってことだけですよ。しかも、デッドらしいプレイが特に聴かれるわけじゃなし。デッド側に取ってオイシい側面がほとんどありません。実際、デッド・ファンの中でもこれ、不人気ですね。

 

 

21.Go To Heaven(1980 US#23)

 

 ワースト2位は1980年のスタジオ・アルバムですね。このアルバムは、2代目キーボード・プレイヤーのキース・ゴッドショーという人(その直後に死亡)とその人の奥さんでバック・ヴォーカルをやっていたドナ・ゴッドシャーが抜け、3代目キーボードのブレント・ミッドランドという人が入ってのアルバムでしたが、結局何がしたいのかよくわからないままに終わってしまった感じですね。本人たちはなんとかバンドを立て直そうと、このアルバムの後にツアーはしっかりやったんですけど、このアルバムからの曲がとにかく印象に残らないです。悪い意味で「普通」のアルバムです。

 

 

20.Built To Last(1989 US#27)

 

 これがデッドのスタジオ録音での最後のアルバムですね。この一つ前のアルバムがデッド史上最大のヒット作になっているんですが、勢い落としちゃいましたね。なんか,先述した3代目キーボードのブレント・ミッドランドのポップ趣味が強くなり過ぎて悪い意味でのチープなエイティーズ・サウンドになっちゃってるんですよね、これ。特に最初の方でそれがキツくて、それで聴くの萎えますね。ただ、中盤から出てくるバンドのNo.2、ボブ・ウィアのソウルフルな歌いっぷりのさえるブルージーな曲の出来がよく、そこから引っ張るんですけどね、これ。ただ、結果的にこれがスタジオでの遺作になる中心人物ジェリー・ガルシアにとっては、なんかあまりキレの良さを感じないアルバムになってますね。

 

 

19.Steal Your Face(1976 US#56)

 

 1976年発表の2枚組のライブ盤ですね。実はこのアルバムだけ、ストリームのサーヴィスやってません。これは、デッドが一時期やってた自主レーベルでの作品でもあったので、CD化に際しても聴きにくい作品でもありました。これ、1974年の、彼らが活動休止を宣言した際の「しばしのさよなら」の公演(そしてすぐに撤回、笑)のライブなんですが、今ひとつ演奏に覇気が感じられないというか、「調子良くなかったのかな、やっぱ」と思わせる作品ですね。この当時彼らは、ライブの経費がkさむことと、初代キーボードの”ピッグペン”ことロン・マッカーナンが亡くなったショックを引きずっていた頃でもあったんですけどね。

 

 

18.History Of The Grateful Dead Vol.1(1973 US#60)

 

 これは1973年、彼らが最初に所属したレーベル、ワーナー・ブラザーズでの最後のアルバムです。ベスト盤みたいなタイトルですけど、これ、ライヴ盤です(笑)。そんなに悪いアルバムではないんですけど、ただ、その前に出たライブ・アルバムのヴォリュームがドッシリだったこともあって、11曲収録でもなんか短く聞こえちゃうし、カバー曲があまりに多すぎるのも(普段からライブでは多いですけど、それでもね)ちょっと「そこまで偏らなくても」とは思うんですよね。

 

 ただ、それよりも、「これ、レーベルとの契約消化のために無理矢理こしらえたでしょ?」というのが見える感じが順位を下げる最大の要因になってるかと思います。

 

 

17.Dead Set(1981 US#29)

 

 これはデッドが1981年に出した2枚のライブ・アルバムの一作ですね。会場の一つになったサンフランシスコのウォーフィールドは僕も1回行ったことあります。これは、その前に出たライブ盤と基本同じライブのものの中で、通常のロックでのフォーマットの演奏を収めたものです。ただ、普通のヴォーカル曲が多過ぎて、彼ららしい醍醐味であるロング・ジャムの類いが聴かれないんですよね。なんか普通のライブに終わってしまってます。せっかく、収録曲そのものは多かったんですけどね。

 

 

16.From The Mars Hotel(1974 US#16)

 

 このアルバムは、デッドの自主レーベルからの第2弾アルバムであると同時に、キース&ドナ・ゴッドショー夫婦を迎えての2作目でもあります。実はこの一作前でかなりドラスティックな冒険をやってたりするんですけど、このアルバムはそこまで冒険的なことはやらずにアーシーでややファンキーなテイストに収めてます。ただ、その泥臭さの中にちょっと洗練された妙味があり、聴いててなんか、この当時のリトル・フィートを思い出すんですけどね。・・と思っていたら、後年、その印象が正しいと思えることが起こります。

 

 

15.In The Dark(1987 US#6)

 

 これは商業的に最も成功した、1987年のアルバムですね。この中からはシングルになった「Touch Of Grey」も全米トップ10ヒットになっています。僕もこれはリアルタイムでよく覚えてます。僕の中で過去の歴史になっていたバンドが急にヒットを出したので驚いたのと、ジェリー・ガルシアのモジャモジャの白髪が年齢(当時45歳)よりも随分年上に見えて、必要以上に古い世代のバンドに映ったものでした。

 

 このアルバムですが、これまでのデッドにない軽快なポップ感のあるアルバムですね。それを人は「エイティーズ」と呼ぶのかもしれませんが、そこまでオーヴァー・プロデュースの作品でもないところが嫌みになりません。曲もコンパクトでわかりやすい曲が多く、70sっぽい土臭さが少なくなった分、あの当時のリスナーに聴きやすかったのかな、という印象があります。特にセルアウトな印象も与えてなく、むしろファンの間では好意的に受け止められてます。

 

 ただなあ。今の耳で聞いちゃうと、逆に、特に強調すべき特徴もそんなにないアルバムなんだよな、これ。通して聴いてみて、そこまで強い印象に残らなかったんですよね。これ、スタジオにして7年ぶり、ライブ盤からでも6年ぶりと、当時のファンの渇望感を刺激するものがあったのと、時代にあったサウンドになったことで需要にハマったのかな、などとも思いますけどね。

 

 

14.Reckoning(1981 US#43)

 

 1981年に出た2枚のライヴ盤の最初のヤツですね。こっちはアコースティック・セットの楽曲を集めた作品です。

 

 その前にかなり洗練された方向性に行っていたデッドからすれば、かなり落ち着いたシンプルな内容のライブなんですが、このときに70s初頭のカントリー、フォーク路線の曲、またはそれに近いタイプの楽曲を多くやってるんですよね。もしかして録音された1980年という時期から考えたら「古くさいことを」と思われたりしたかもしれないのですが、デッドの時期でも楽曲が最も脂が乗っていてファンも多いモードの曲調ですからね。そういうのって、特に後から追って聴くと耳によく聞こえますよね。今回、これの順位が高くなったのはそうした理由です。

 

 

13.Blues For Allah(1975 US#12)

 

 先述の、1974年のゴタゴタによる活動休止を撤回して作ったアルバムですね。そのスッキリシたバンド側の気分が伝わったのか、全米アルバム・チャートで最高位12位と、この当時での彼らの自己最高を記録したアルバムにもなりました。

 

 この2つ前にガラッとイメージの変わるアルバムを作って、1つ前でやや戻したんですけど、今度はまたガラッとオシャレな方向に行ってますね、これ。1曲目の「Help On The Way」はカーティス・メイフィールドとかスティーリー・ダン思い出すアーバン・ソウルな曲だし、代表曲にもなった「Franklin"s Tower」もルー・リードの「ワイルドサイドを歩け」を意識した曲でしたしね。そう考えると、これ、なかなか強力なアルバムです。

 

 ただ、間にインストが入ったり、組曲になったりという展開が、僕はあんまり好きじゃないんですよね。そこが先にあげた2曲ほどのインパクトがないというかね。それでこの順位になったんですけどね。

 

 

12.Shakedown Street(1978 US#41)

 

 ワーナー〜自主レーベルと来て、最後まで在籍することとなるアリスタに移籍後2作目ですね。先に「リトル・フィートの感覚が」ということを書いたんですが、このアルバム、プロデュースが、そのリトル・フィートのフロントマン、ローウェル・ジョージです。彼は1979年に亡くなっているので、晩年の仕事、ということにもなります。

 

 やっぱり、「ファンキーで洗練されて」ということで言うなら僕は先の「Mars Hotel」よりもこっちの方が好きですね。ただ、僕がこのアルバムに印象がいいのは、ここからシングルになった「Fire On The Mountain」という曲がすごく好きだからですね。なんていうんだろう。AORにちょっとソウルとレゲエをほのかに入れた感じがすごくクールというか。彼ら得意のファルセットのハーモニーが最も生きた曲のひとつでもあるし。この曲に代表されるように、70年代の、特にキース・ゴッドショーがキーボード弾いてた時代のデッドはオシャレなんです。

 

 

11.Without A Net(1990 US#43)

 

 毎回11位は基本、「過小評価アルバム」枠なんですが、今回僕が選んだのは、オフィシャル・アルバムとしてはラストになる、1990年リリースのこのライブ盤ですね。

 

 これ、何がいいかって、デッドのライブの臨場感がダイレクトに伝わってくることなんですね。オフィシャルのデッドのアルバムって、曲間の歓声をフェイドアウトしてつなげたものが多く、実はそれでちょっと萎えるところもあるんですが、このアルバムに関しては編集がすごくうまくてですね、フェイドアウトしないで上手く続けてるから、ひとつのまとまったライブ聴いてるような気になるんですよ。ちょうどCDの時代になったこともあって、ある程度まとまった時間、連続して聴けるようになったことで、そういう聴かせ方ができるようになったのかな。アナログの時代だと、盤面に時間的制約がありましたからね。それが証拠に曲の長さ的にも10分台の曲が5曲もあってね。それも「ああ、デッド聴いてる」と言う気持ちにならせる理由にもなります。

 

 あと、「90年代にさしかかる頃になっても、ライブバンドとしてのデッドってやっぱりさすがだな。これだとさすがにレジェンドになるわな」と思わせる貫禄のライブをこの時期にやっていたことが伝わるのも良いです。たしかに、晩年のイメージが悪かったりしたらそれこそ過去の遺物になって、伝説にまではならなかったでしょうからね。ジェリー・ガルシアの存命中に機会があれば見たかったなと思わせるパワーがこの盤にはありますね。

 

 ちなみに3代目キーボードのブレント・ミッドランドも、このライブ盤が出る2ヶ月前に急逝してます。歴代の3人とも亡くなってるとはなあ。

 

author:沢田太陽, category:FromワーストTo ベスト, 09:58
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全オリジナル・アルバム From ワースト To ベスト (第9回)ビートルズ

どうも。

 

 

今日はFromワーストToベストの第9回をやりますが、もう、いきなり最大のものやります。これです!

 

 

 

 

はい!ビートルズ!もう、いきなりやります。

 

 

もう少し、節目のときでも良いかなとも思いましたけど、ちょうど「いわゆる最高傑作」と呼ばれるところの「サージェント・ペパーズ」のニュー・ミックス盤が出たばかりだし、「9」というのはビートルズにゆかりのあるナンバーだし、ちょうどいいかなとも思いまして。そのかわり、今年はもう、ストーンズとかツェッペリンとかディランはやりませんけどね。

 

 

では、本国イギリスでのオリジナル・アルバムの13枚に僕がどういうランクをつけたか、見て行きましょう。

 

 

 

13.Yellow Sabmarine(1969)

 

 13位は「イエロー・サブマリン」のサントラです。

 

 これは「やはり」というか、同様の企画があった際、必ずワーストに選ばれがちなんですが、それは僕も同じでしたね。やっぱり、半分がジョージ・マーティン作のインストというのが「ビートルズの作品」として見たときに番外っぽくどうしても見えてしまうこと。そして、ビートルズの側の曲が、これまたどうしても、これまでのあまり曲に聞こえてしまう。その辺の弱さがこのアルバムはどうしても出てしまうんですよね。

 

 

12.Let It Be(1970)

 

 はい。厳しいの、わかってます。これが好きな人が多いのもよく知っています。ただなあ〜。いくらビートルズだといっても、録音状態が不備な曲ではさすがに「原曲の良さ」だけでカバーするのも限界があると言うかね。「ゲット・バック・セッション」の録音状況がせめてもう少し良ければ,もう少しランクをあげたと思うんですけど、なんかガンダムで言うところの「ジオング感」が強いと言うかね。完成して世に出されても、「未完成作品」の印象が僕にはやっぱりぬぐえないです。

 

 それと、やっぱ、フィル・スペクターの手による「ロング&ワインディング・ロード」は、今回のこの企画のために改めてキャリアの最初から聴き続けた課程において、最後に突然やって来る強い違和感として、どうしても残っちゃうんですよね。

 

 

11.Help!(1965)

 

 これも低いかな、とは自分でも思います。大事な曲は入ってるアルバムなんですよ。タイトル曲をはじめ、「涙の乗車券」に「イエスタデイ」。ただなあ。ビートルズにとって非常に短命に終わった「フォーク・ロック」のモードが目立つ作品ではあるんですけど、ディランを意識した「悲しみはぶっとばせ」以外のフォーク、カントリー系のチューンの印象があまり強くないというか、ビートルズに似合っているとは正直思わないんですよね。特にアナログのB面は最後の2曲以外は正直弱い。しかも、ほとんどオリジナルなのに。その辺りがなんか不満なんですよね。

 

 

10.With The Beatles(1963)

 

 このセカンド・アルバムは、こういう企画をやった際、割と下位に来やすいですね。それはやはり、キャリア初期の、空前のアイドル時にシングル・ヒットを連発していたというのに、このアルバムにはそのことを示すシングル・ヒットが全然入っていないから。時期でいうと「シー・ラヴズ・ユー」とか「抱きしめたい」の時期だったんですけどね。まず、その時点でかなり惜しいです。

 

 ただ、それでも、僕がこのアルバムをそこまで下に下げなかったのは、ビートルズのルーツの感覚がこの前作以上にわかりやすくなっているから。チャック・ベリーの「ロール・オーヴァー・ベートーベン」が入っているだけでなく、モータウンからのカバー曲が3曲もある。1963年当時の白人アーティストで、モータウンの曲をアルバムで3曲もカバーした人たちっていないんじゃないかな。まだ、スプリームスの大ブームの前でもあるし。そういうとこに、すごく彼らの鋭いセンスを感じるんですよね。

 

 

9.Beatles For Sale(1964)

 

 これ、一般的にはビートルズのアルバムの中で指折りの不人気作です。その理由の多くは、このアルバムの制作エピソードにありますね。この当時、世界的なビートルマニアの最中で多忙を極めていた頃で、レコード会社も「先にアルバムの発売予定を決めて、それに合わせて、あたかもノルマでもあるかのように作る」みたいな感じで、仕方なく、収録の半分近くをカバーで埋めざるを得なくなったんですよね。

 

 ただ、僕としては、そんな、ややもすると「やっつけ」な感じのアルバムであるにもかかわらず、その割に楽曲レベルがきわめて高いので、意外と好きなアルバムなんですよね。それはたとえば、独自シングル・カットだった「エイト・デイズ・ア・ウィーク」が全米1位に輝いたのをはじめ、青春ソングの名曲ですね、「ノー・リプライ」、「アイム・ア・ルーザー」「アイル・フォロー・ザ・サン」と、やたら曲が良いんですよね。加えてカバーのセンスもここだと、チャック・ベリーの「ロックンロール・ミュージック」とか、リトル・リチャードのマナーに則っての「カンサス・シティ」とか、すっごくロックンロールでカッコいい。作られた背景とか動機がどうであれ、結果がすごく良いアルバムだと思います。

 

 

8.Please Please Me(1963)

 

 記念すべきファースト・アルバムですね。ビートルズの第一歩というだけでなく、ロックンロール、ロックバンド、イギリスのロック文化にとっても第一歩の作品です。やっぱり、下には下げれないですよね。ただ、とはいえ、この時期だとアルバムの半分がカバー曲だし、いささか黎明期ゆえに、ソングライティングの幅も限られてるから、これより良いものがどうしてもさらに上に来ちゃいますけどね。

 

 それから、このアルバムだけだと、まだ「ビートルズの何がすごいのか」ということを、シングル・ヒットした曲ほどには雄弁に物語ってはいないですね。僕の持論だと、シングル曲のレベルが「ラヴ・ミー・ドゥ」だったり、ここで披露しているシュレルズのカバーみたいなドリーミーみたいな感じから、一気に「プリーズ・プリーズ・ミー」の次元に駆け上った、そこに最初のマジックがあるなと感じていて、このアルバムはそうした飛躍の対比みたいなものが見えて面白いなと、今回聞き返してみて思いました。ただ、「アイ・ソー・ハー・スタンディング・ゼア」「ツイスト&シャウト」的なものがあともう数曲あったらな、とは思うんですけどね。

 

 

7.Rubber Soul(1965)

 

 ここから先は、他のアーティストだったら余裕で1位のレベルですね。ちょっと次元が違いすぎる。ただ、そこをあえて言いたいこと、言いますね(笑)。

 

 

 7位は「ラバー・ソウル」です。このアルバムの何がすごいかというのは、ファーストから出た順に聞いて行けば一発でわかります。やっぱ、レコーディングのグレードが飛躍的にここであがっているんですよね。なんか急に音が圧くなっているうえに、楽曲構造そのものも3コードのロックンロールの域を超えた曲に発展してね。これ、当時リアルタイムで聴いた人はビックリしたろうなと思います。

 

 ただ、その後の耳で聴いた場合、このアルバム、メロウで感傷的な楽曲に代表曲が多いものだから、そうした時代背景のことを知らない人には「ポップスのアルバム」みたいな感じに聞こえてしまわないかな、ということですね。「イン・マイ・ライフ」「ひとりぼっちのあいつ」「ミッシェル」ってあたりが、もちろんすごくいいんだけど、良くも悪くもすごく今の耳にはお行儀が良すぎるというかね。「いいんだけど、これじゃブッ飛べない」というのが、僕が10代後半ではじめてこのアルバムを聴いたときの率直な感想でもありました。

 

 

6.Sgt.Pepper’s Lonely Hearts Club Band(1967)

 

 はい!言いたいことはよくわかってます。空気読めなくてスミマセン(苦笑)。

 

 いや〜、もちろん、50周年ですし、出たばかりのニュー・ミックスの出来も文句なしに素晴らしかったわけですけど、このアルバムが僕の中で特別だったことって、残念ながらないんですよね〜。

 

 もちろん、このあルバムが「1967年夏」という、特別な磁場にあったがゆえにひときわ輝いたのであろうということは僕も認めるし、当時に10代とかであれば、僕の意見も変わっていたかもしれません。だけどなあ〜。僕、どうしても、「シングル・カットを行なわない、アルバムのみで完結したコンセプト作」という概念の特別さというのが、今ひとつ理解できないんですよ。僕にとってみれば、「アルバム」というものには必ずシングル、もしくはリード・トラックというものが存在してほしいし、これが出て50年経っても「シングル・カットを行なわなかった名作」なんてものの方が数が圧倒的に少ないですよ。その意味で、このアルバムが今後のアルバム制作に直接的な影響を与えたとは思えないんですね。

 

 あと、これ、必ずしもビートルズの中で曲の出来が素晴らしいアルバムではない。個人的にポールの楽曲のレベルはすごくここでは高いと思うんですけど、ジョンのがなあ〜。1967年にジョンはキャリアを代表する曲を何曲も作ったのに、それがここだと「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」がそこに加わるくらい(ごめんなさい。「ルーシー」、そんなに好きじゃないです)で、「Being For The Benefit Of Mr.Kite」とか「Good Morning Good Morning」は正直弱いかな、と。せめて「ストロベリー・フィールズ・フォーエヴァー」をシングルじゃなくて、ここに入れてくれたらなあ。もちろん、ポールの「ペニー・レイン」込みで。

 

 あと、「音楽的実験性」という点に関しても、楽曲単位だと、この前後の作品ほどではない気がします。

 

 

5.Magical Mystery Tour(1967)

 

 というわけで、僕は同じ1967年の作品でも、こちらの方が好きです!

 

 それはやっぱり、ジョンの3曲、「ストロベリー・フィールズ・フォーエヴァー」「愛こそはすべて」、そして「アイ・アム・ザ・ウォルラス」!1967年のジョン・レノンを代表する曲が3曲揃って入っている。その時点で、やっぱ、こっちの方が僕には魅力あるんだよなあ。

 

 加えて。ポールも「ハロー・グッバイ」に「フール・オン・ザ・ヒル」「ペニー・レイン」でしょ?素晴らしいじゃないですか!それだけで満足です。

 

  もしこれが仮に、「シングル3枚を足した、映画のサントラ」みたいな、いかにも「寄せ集めてみました」という簡易な作りでなく、映画ももう少しまじめに作ってさえいたら、確実にもっとレジェンダリーな評価になっていたはずです。でも、僕は断然こっちですね。

 

 

4.A Hard Day's Night(1964)

 

  そして4位は、初期のスタイルではやっぱりこれが一番上に来ますね。「ハード・デイズ・ナイト」です。

 

 キンクスの回でも同じような行動をしましたが、僕はですね、「まだアルバムの時代ではなかった」として、初期のブリティッシュ・ビートのスタイルを世界中の10代に浸透させた功績が大きなものであるにもかかわらず、除外しようとするようとする動きが本当に嫌いです。そんなことを言っていたら、その当時の作品のアルバムでの評価が不当なものにしかならなくなるじゃないですか。大体、初期のビートルズが存在していなかったら、世界中でバンド文化そのものが出来ていなかったのにもかかわらず、ね。なんかその事実を無視するのも嫌なので、最低限1作品は初期作品を上位にしたいのですが、ビートルズなら間違いなくコレですね。

 

 このアルバムがまず画期的なのは、この当時、1964年当時の時点で、全曲オリジナルということですけど、僕にとってはこの件の方が快挙ですね.そして、この3枚目のアルバムにして、ようやくシングル曲でのパワーと華が,アルバム収録曲全体で反映出来るようになった。そこも大きいですね。そして、映画の方でもそのことはしっかり堪能できますが、彼らが時代を象徴するスーパー・アイドルだったこと。この事実もまぎれなく表現されています。

 

 本当はトップ3に入れることさえ頭にあったんですけど、上3枚はそれでもあまりに外せない作品ばかりでしたね。

 

 

3.The Beatles(The White Album)(1968)

 

 2位と3位はものすごく悩んだし、僕の中ではまだ逆にしたい気持ちもあったりするのですが、今回のところは「ホワイト・アルバム」を3位で行かさせてください。

 

 ビートルズというバンドがすごいのは、ロック史上において、バンド内個人主義が確立していることですが、4人が全員ソングライティングをやってヴォーカルも取った、あたかも4人のソロ作が同時に並立するかのような作品を1枚にした意味でこれ、画期的だと思います。そんな作品、50年近く経った今でも他に聴いたことないですからね。しかもこれ、4人がそれぞれ自分の作りたいように作った作品であるにもかかわらず、揃えてみると不思議な統一感があるというかね。

 

 各々見て行くと、このアルバムはジョン、ポール、共にかなり振り切ってると思います。ジョンには「ディア・プルーデンス」「グラス・オニオン「ハッピネス・イズ・ア・ウォーム・ガン」「セクシー・セイディ」といった、ある時期から顕著だったけだるい系統の曲での名曲が目立つし、ポールにも「ヘルター・スケルター」「バック・イン・ジUSSR」みたいなロックンロールがあったかと思えば「ブラックバード」「ロッキー・ラックーン」といったアコースティックでの名曲もあったり。この2人がライバル状態で一番沸点の高いとこでぶつかりあったの、やっぱりこのアルバムかな。

 

 数少ない難をあえてひとつだけいうなら、ジョージ・ハリスンの「ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス」以外の収録曲が弱いことかな。「サヴォイ・トラッフル」とか「ピギーズ」って、ファンしか知らない曲だと思うしね。

 

 

2.Abbey Road(1969)

 

 そして、僅差で2位は「アビー・ロード」ですね。

 

 「アビー・ロード」はどこが好きかというと、「ホワイト〜」から続く、「4人の個人主義」の形態は維持しつつも、それでも「同時に4人が一緒に揃って、バンドとして一緒に揃って作った作品でもある」ということですね。こっちの方は、「ソロ作の持ち寄り」色は「ホワイト〜」よりは薄いですから。

 

 そして、「4人が揃って、良い曲を自分で書いて自ら歌った」という意味でも、これが一番かな。率先したポールは「オー・ダーリン」「マッックスウェルズ・シルヴァー・ハンマー」に加え後述の偉業があるし、ジョンも、気持ちは離れつつある状態でも「カム・トゥゲザー」「アイ・ウォント・ユー」「ビコーズ」は作り得たわけだし。そして、今回はジョージが「サムシング」に「ヒア・カムス・ザ・サン」と、ビートルズのキャリア史上に残る名曲を第3メンバーにして最後に作りあげたことでも感慨深いかな。リンゴの「オクトパス・ガーデン」も2作の自作曲の中ではこれが1番です。

 

 でも、やっぱり1番の聴かせどころは、B面途中からの「You Never Give Your Money」(もしくは「Golden Slumber」)から「The End」に至る、ポールがまとめあげた、ビートルズが最後に力を合わせて完成させたロック・オペラですね。これに関しては、ポールが75歳になる今も元気でステージで表現し続けているうちに価値が上がって来ているようにさえ思います。この印象の良さで2位になったのかもしれないです。

 

 

1.Revolver(1966)

 

 そして1位は、やっぱ、どうしてもこれになっちゃうんだよな。「リボルバー」です。これがいわゆる、「ビートルズのグループ内個人主義」が芽生えた作品であり、かつ、一番実験的で刺激的な作品だと思いますね。

 

 

 このアルバムはまずジョンですね。サイケデリックな飛び方で言うと、当時、一番のポップスターでありつつ、アンダーグラウンドも含めて当時一番刺激的でもあったという。「トゥモロウ・ネヴァー・ノウズ」と「アイム・オンリー・スリーピング」を最初に聞いたのは10代終わり頃だったと思うんですけど、「ビートルズって、こんな曲も書いていたんだ!」と、いわゆるテープの逆回転というヤツを聴いて衝撃を受けたものでした。あと、ポールは,一方でストリングス、一方でホーン・セクションをロック式に導入するという、「スタジオ技術よりは多彩な楽器類」な彼なりの進化を果たしている上に、「フォー・ノー・ワン」のような、後にいろんな人たちからも参考にされた「ピアノ・ポップにおけるビートルズ、もしくはポール」の手本みたいなものも作ってるし。

 

 

 そしてジョージはここではじめてインド路線(シタール自体は一つ前にも入れてはいましたが)の曲にトライしてビートルズの個性に異色なものを取り込むことに成功したのと、あと、やっぱ、このアルバムだとやたらとファズでビリビリいってるギターですね。そして、本来「オチ」になる部分のはずのリンゴのヴォーカルの曲、もちろん「イエロー・サブマリン」ですが、それまでがサイケデリックに飛びまくってるのが、このアルバム、すごいとこです。後、ジョージ同様、彼のドラマーとしてのプレイも、すごく手数が増えてグルーヴィーになってます。スタジオ技術の進化があったとは言え、ジョージとリンゴの、楽器プレイヤーとして特筆して見るものがあるのも、このアルバムの見逃せないとこだと思います。

 

・・と、考えると、こっちの方がやっぱ僕には「サージェント〜」より音楽的なパイオニアになってるとこも強いと思うし、ビートルズの内部個人主義の発揮も出来ていると思うし、曲ひとつひとつのレベルも高いと思うんですけどね。いくら当時、アメリカ盤が3曲さっぴかれてリリースされたという、60年代らしいマイナス・イメージの過去があったとは言えね。

 

 

 ・・といった、とこでしょうか。まあ、ビートルズくらいまでになると、リスナーひとりひとりにいろんな意見があると思うので、あくまでも「一意見」として、そんなに深くとらえないで欲しいんですけどね。

 

 

 次回ですが、今回も「サージェント・ペパーズ」にも象徴される「サマー・オブ・ラヴ50周年」も意識してのビートルズでもあったんですけど、次も「サマー・オブ・ラヴ」なチョイスだと言っておきましょう。

author:沢田太陽, category:FromワーストTo ベスト, 10:16
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全オリジナル・アルバム From ワースト To ベスト (第8回)ブロンディ/デボラ・ハリー

どうも。

 

 

クリス・コーネルの追悼で伸びましたが、本当はこれをやるつもりでした。From ワーストToベスト。今回のお題はこれです!

 

 

 

 

ニュー・アルバムが全英4位と大健闘のニューヨーク・パンク〜ニュー・ウェイヴの元祖的バンド、ブロンディです。中でも、フィーメール・ロック・アイコンとして絶大な影響力を誇るデボラ・ハリーのソロもカウントに入れます。

 

 

 おそらく、ブロンディでこの企画をやる人、日本で僕くらいなんじゃないかな(笑)。なんでやろうと思ったかというと、ここまで女性アーティストを扱ったことがなくて、僕自身、ポリティカル・コレクトネスは割と気にする方ではあったので「誰でやろうかな」と思ったんですけど、そのときにちょうどブロンディの新作のリリースがあったので、僕も好きな人たちなんで「じゃあ、行こうかな」と思った訳です。

 

 

 ただ、欧米圏では影響力、絶大ですよ。日本だと、キャロル・キングとかジョニ・ミッチェルとかカーリー・サイモンみたいな70s前半の西海岸のシンガーソングライターみたいな人が影響力ありますけど、欧米圏ではもっぱら70s後半のポップスターか、パンク/ニュー・ウェイヴ・アイコンがものすごく強いですね。実際、西海岸系だとジョニと、かなり遅れてリンダ・ロンシュタットしかロックの殿堂入りした人がいないところを、70s後半組だとフリートウッド・マックにハート、ドナ・サマー、ABBA、パンク〜ニュー・ウェイヴでこのブロンディとパティ・スミス、プリテンダーズ、ジョーン・ジェットと、殿堂入り、わんさかいますからね。そういう流れの中でデボラ・ハリーの影響力というのは非常に強いものなのです。

 

 

 そんな感じで、ブロンディで11枚、ソロで5枚の計16枚をカウントダウンで行きましょう。

 

 

16.Debravasion/Deborah Harry(1993 UK#24)

 

 最下位は1993年に出た、デボラ4枚目のソロ作ですね。イギリスではなんとか20位台のヒットになっていますが、正直、弱いアルバムですね。なんか、ていの良いダンスポップ・アルバムで、その中にいつもあった彼女らしいロックなエッジが全然感じられないんだもん。このアルバム、ブロンディのギタリストでダンナさんのクリス・スタインがかなりの部分で曲も書いているんですが、ここらで行き詰まりを感じちゃったのか、しばしの沈黙のあと、5年後にブロンディ再結成に動く訳です。

 

 

15.The Hunter/Blondie(1982 UK#9,US#33)

 

 一度目の解散を迎えることになったアルバムですね。この前のアルバムで、ヒップホップにエレ・ポップもレゲエもみんなやっちゃえ!みたいな感じになったところから、今度はトロピカル・ポップの要素も入りました。ただ、この前のアルバムより、本来のバンドっぽさは戻っては来たんだけど、逆に曲の印象が非常に弱いアルバムになってしまいましたね。リリース後にはデボラ姐さん失踪事件などもありました。ゴタゴタで集中できてなかったかもしれません。

 

 

14.Def,Dumb&Blonde/Deborah Harry(1989 UK#12,US#123)

 

 デボラさんのソロ第3作目です。ブロンディのときから一貫している「ギター・ロック&エレクトロ」な要素はキープこそしているんですが、典型的なエイティーズの後期のオーバー・プロデュース気味のサウンドが今聴くとちょっと古過ぎてキツいですね。シングルは5枚も切られた意欲作ではあって、そこそこはヒットしたんですけどね。

 

 

13.Panic Of Girls/Blondie(2011 UK#73)

 

 2011年に出たブロンディのこのアルバムは、なんか意気込みが小さいアルバムです。この頃、「聴いてくれるファンだけでいいや」と本人たちが思ったか、当初、配信オンリーで出された作品だったんですよね。そこがなんか残念かな、と。

 

 アルバムそのものは、ブロンディらしいニュー・ウェイヴ・ポップロックな趣きではあるんですが、この前のアルバムでバンドを抜けてしまった、キーボードのジミー・デストリのソングライターとしての不在が大きいこと、それから、必要以上にレゲエの曲が多いアルバムです。

 

 

12.Blondie 4(0)Ever/Ghosts Of Download/Blondie(2014 UK#16, US#109)

 

 2014年に発表したこのアルバムは、1枚が70年代の代表曲を中心としたセルフ・カバー・ベストで、もう1枚が純粋な新作という変則的なアルバムでしたね。セルフ・カバー・ベストは、ただ単に70代を目前に控えても声が全く衰えを見せないデボラさんお健在ぶりをただ示したかっただけの、基本なにも変わらないリメイクです(笑)。

 

 もうひとつの「Ghosts Of Download」は基本前作の「Panic Of Girs」を踏襲していますが、若いアーティストとのコラボが多めなとこでも若さはアピールしていますが、これもなぜかレゲエが多いんだよな。なんか需要を測り間違えてるような印象もありましたね。

 

 ただ、このアルバムを引っさげてのツアーでは、「Ghosts〜」からn新曲、かなり多めにやってるんですけどね。

 

 

11.Necessary Evil/Deborah Harry(2007 UK#86)

 

 現時点で最後のデボラさんのソロ作です。この頃、ブロンディでジミー・デストリが脱退したこともあって、「最後のツアー」と銘打ったワールド・ツアーもやってて、僕も渋谷でライブ見てますけど、そのあとに出たソロ作ですね。

 

 

 基本的にある時期からのデボラ姐さんはやりたい音楽の軸がほとんど動かない人なので、これもデボラさんらしいエレクトロでパンキッシュなサウンドではあるんですが、「だったら、ブロンディでいいんじゃない?」となっちゃったんだろうね、きっと。

 

 

10.The Curse Of Blondie/Blondie(2003 UK#36 US#160)

 

 

 商業的に非常に高い結果で終えた前作に続く、ブロンディ再結成2枚目のアルバムです。ヒットしアルバムとは言いがたいものではありましたけど、先行シングルになった「Good Boys」はちょっとしたエレクトロ・アンセムに当時なりました。

 

 

 ちょうど、この頃に、たとえばゴールドフラップとかレディトロンとか、ピーチズなどのインディのロウファイなエレクトロ女性アーティストが多く出はじめているんですけど、そんな彼女たちにはでボラ姐さんがパイオニアであることを示す良いアルバムだったかもしれません。

 

 

9.Autoamerican/Blondie(1980 UK#3, US#7)

 

 ヒットメイカーとしては、この頃が最高ですね。なにせ、「夢見るナンバーワン」「ラプチャー」の2曲の全米ナンバーワン2曲に加え、このアルバムにはオリジナルでは入らなかったものの、映画「アメリカン・ジゴロ」の挿入曲でもあった、全米で6週1位の「コール・ミー」も、後のデラックス・エディションには入っているわけですからね。

 

 それだけの代表曲が揃っている訳だから、悪いアルバムの訳が無い・・となるところだったんですが、あれだけのヒット曲が並んだアルバムでありながらも、ブロンディのアルバムの中では人気の高くないアルバムです。というのもブロンディ、このアルバムでいろんなことをやろうとし過ぎて、ブロンディ本来のバンド・サウンドが失われてるんですよね。

 

 曲調も、「夢見る〜」で顕著なレゲエに、はじめてラップの入った曲で全米シングル・チャートを制した「ラプチャー」と、音楽的進歩と拡大が伺えるんですけど、同時にストリングスのバラードやら、スタンダード・ジャズっぽい曲もやっていて、とりわけ、バンド・サウンドからの逸脱がかなり大きいですね。ヒットした代表曲の存在さえなければ、もう少し順位下がってたと思います。

 

 

8.Koo Koo/Deborah Harry(1981 UK#6,US#25)

 

 これがデボラさん初のソロ作ですが、実は僕がブロンディ関係のアルバムをリアルタイムで最初に聴いたのがこのアルバムでしたね。

 

 

 というか、この頃のデボラさんはフィーメール・ポップ・アイコンとして世間からの注目がマックスのときでしたからね。なにせ、3曲立て続けでのブロンディでの全米ナンバーワン・ヒットの直後でしたから。そこで満を持してのソロ・デビューということで期待も高く、シングルにもなった「Backfired」も当時、日本のラジオでよく耳にした物です。

 

 このソロ・デビュー作、この当時、なんかやたら評判悪かったんだよね。その理由となったのが、ジャケ写でしたね。そこには、鉄の串刺し3本貫いたデボラの顔のどアップだったのですが、これが「気持ち悪い」と、かなりの不評だったことに足を引っ張られました。

 

 ただ、このアルバム、今冷静に聴くと、内容良いんですよね。路線としては、「オートアメリカン」で培ったヒップホップのファンキー路線が目立つんですけど、これ、プロデューサー、ナイル・ロジャース&バーナード・エドワーズですよ!この2人と言えばディスコ・グループのシックでしたけど、とりわけナイルがこの2年後に、デヴィッド・ボウイの「レッツ・ダンス」を大成功させたのをきっかけに大物プロデューサーとなり、以降、デュラン・デュランたマドンナを手がけて成功したことから、「時代の先を行き過ぎた」との再評価もあるアルバムです。

 

 

7.Pollinator/Blondie(2017 UK#4, US#63)

 

 そして、最新作「ポリネイター」はこの位置です。デボラさん、このアルバムで遂に70代突入です。

 

 

 今回のアルバムは、ここのところのアルバムで目立っていたレゲエをいったんやめて、ブロンディが後続のインディ・ロック・アーティストからの再評価が強いアーティストであることを証明したかのような作風となっています。

 

 

 それもそのはず、このアルバムでは、夫クリス・スタインとデボラの共作がわずか1曲に留まるなど、自前供給が遂に利かなくなった作品であり、そこは寂しいんですが、本作に参加したラインナップは実に豪華です。なにせ、ブラッド・オレンジやチャーリーXCXの曲があったり、他にもTVオン・ザ・レディオのデイヴ・シーテック、元ザ・スミスのジョニー・マー、そして遂にはSiaとストロークスのギタリスト、ニック・ヴァレンシが作った新曲の一部を聴くことができます。その意味ですごく今っぽいアルバムです。

 

 

 彼女たちの歴史をあまり知らない、これからブロンディに興味を持つ人がいたら、このアルバムから入ったらいいんじゃないかな。そういいきれるだけの、久々の自信作なんじゃないかな。

 

 

6.Rockbird/Deborah Harry(1986 UK#31,US#97)

 

 

 ブロンディ解散後、ソロで再始動したデボラさんでしたが、ソロ通算2枚目のこれがソロでの最高傑作ですね。最高位だとそんなに高く見えないですが、このアルバム、ソロで最高ヒットとなった「French Kissin'In The USA」(UK8位)があるほか、全英トップ50に入ったシングルが3曲あるアルバムですからね。次の「Def,Dumb&Blonde」がイギリスで売れたのも、本作のヒットの影響故です。

 

 このアルバム、なにが良いかというと、ほとんどの曲で、Jガイルズ・バンドのニュー・ウェイヴ化を進めたキーボーディストのセス・ジャストマンとの共作なんですね。そういうこともあって、これまでのブロンディの持っていたエレ・ポップ・テイストに、60sのソウル・ミュージックのエッセンスが加わっているんですよね。そういう作風は、デボラさんの全キャリアを見てもこれだけで、その意味でかなり面白い一作になっていますね。

 

 ただ、不思議なのは、当時「French Kissin」聴いたときは、もっとヨーロビートに近いようなダンスポップのイメージがあったんですけど、今聴きかえすとエイティーズ後半っぽいってだけで、案外バンドっぽいアレンジだったんだなと、今にして思いますね。

 

 

5.Plastic Letters/Blondie(1978 UK#10, US#71)

 

 1978年の初頭に出されたセカンド・アルバムですね。邦題は「囁きのブロンディ」。このアルバムは、前作に引き続いて、はじめての一般的なヒット曲「デニスに夢中」をはじめとした、ドリーミーな60s前半のアメリカン・ポップスをパンクのフィルターで紹介した作品になっていますが、デストリのモダンなアナログ・シンセ使いで、その後のエレ・ポップ路線を予見させているところなんかが今聴くと興味深いですね。

 

 ニュー・ウェイヴって、人によってややもすると、頭でっかちに難しいものに解釈しがちな向きもあるのですが、それを商業的ヒットの可能性を見出したシーンにおいて黎明期の作品としても注目すべきものだと思います。

 

 

4.No Exit/Blondie(1999 UK#3, US#18)

 

 

 1999年に発表された、17年ぶりに再結成されたブロンディのアルバムですね。当初、そこまで期待されていたわけではなかったのですが、フタをあけてみたら「マリア」が全英ナンバーワンになったのをはじめ、ヨーロッパ中で大ヒット。日本でもあの頃、頻繁によく耳にしたもので、多くの人を驚かせていたものです。

 

 

 これだけブランクがあってもソングライティングのうまさが錆び付いていなかったことを証明したアルバムでしたけれども、サウンド的にも「パンク」「エレポップ」「60s」「レゲエ」のブロンディらしさを改めて表現しつつ、さらにそこにフォークやサイケなど、これまでのブロンディが表現していなかった領域にまでトライしたかなり前向きな意欲作で、ヒットしたのもうなづけます。このとき、もうデボラさん、50越えてたんですが、声や容姿に衰えを感じさせなかった点もお見事です。

 

 

3.Blondie/Blondie(1976 UK#75)

 

 

 1976年12月発表のデビュー作です。パンク・ムーヴメントにおいて、初期に出たアルバムのひとつですね。これとパティ・スミス、ラモーンズのファーストあたりが貴重なソレですね。ロンドン・パンク系のアルバムは、翌77年から出はじめますから。

 

 このアルバムは、同じライブハウス、CBGBでお互いしのぎを削ったラモーンズ同様、60s前半の古き良きアメリカン・ライフを70s半ばの視点で表現したものになっていますね。ラモーンズがブリティッシュ・ビートを荒削りなスピードでイノヴェートしてるのに対して、ブロンディはロネッツをはじめとしたガール・グループ・サウンドをモダン・アップデイトさせています。もっともデボラさんは、この当時のシーンでも年長から数えた方が早い31歳。実際のところ、ガール・グループのブームのときにはそれこそハイティーンだったわけですが、「あの頃にアイドルになれなかった女の子が、30になってリヴェンジした」ような痛快さもこのアルバムにはありますね。さらに言えば、ファッション的にはガール・グループのアイドルより全然ファッション的にもカッコよく、かつ普遍的なものになってもいます。

 

 人によっては「ブロンディの前史」、別の見方をする人によれば「ここまでがパンクで、後はポップにセルアウトした」みたいなことを言う人もいますが、後年ほどの華こそありませんが、これはこれでしっかり完成された美学があります。曲も「X Offender」「Rip Her To Shreds」みたいな重要曲がすでにありますからね。

 

 

2.Eat To The Beat/Blondie(1979 UK#1 US#17)

 

 

 

 これもブロンディにとっての最重要作のひとつですね。「銀河のアトミック」「ドリーミング」。いずれもブロンディを語る際に絶対外すことの出来ない、全米ナンバーワンになった曲以外で彼女たちを理解したいよりコアなファンにとって不可欠な重要曲が入ったアルバムです。

 

 これも、その一つ前で完成された、彼女たちなりのポップかつエッジのあるパンクロックに、「アトミック」に顕著なエレポップ路線を完成させ、さらにもうひとつの武器となるレゲエを、このときにはじめて「Die Young Still Pretty」で表現もしています。後の「オートアメリカン」以前に、この時点でブロンディのサウンドは完成されたのかな、とも思います。ソングライティング的にもデボラ、スタイン、デストリの鉄壁の3人のケミストリーが発揮されていますね。

 

 加えて、このジャケ写に象徴されるように、アート・ワーク、ファッション・センス的にも、ここらが一番カッコいいですね。

 

 

1.Parallel Lines/Blondie(1978 UK#1,US#6)

 

 

 1位は、それはやっぱり、これしかないでしょう!彼女たち、そもそものブレイクのキッカケとなった、1978年秋発表のサード・アルバム。このアルバムは、特に2000年代以降ですね、「パンク/ニュー・ウェイヴ名盤」もしくは「ロック名盤選」に必ず選ばれるアルバムになっているので、ご存知の方も多いでしょう。邦題「恋の平行線」。

 

 このアルバムは、一般的には初の全米ナンバーワンになった「ハート・オブ・グラス」で知られています。この1曲が与えたインパクトは大きいですね。クールな女の子が、エレクトロを歌うとすごくハマる。そうした、まさに今現在までにつながるポップの方程式を証明した曲こそこれですね。この曲がなかったらマドンナだって存在しない(マドンナはデボラに影響を受けたことを公言しています)し、ユーリズミックスも、ガービッジも、ビヨークも、グウェン・ステファーニもカイリー・ミノーグも、レディ・ガガも、ラ・ルーも、CHVRCHESも、果たして存在していたかどうか、なんて言うと大袈裟かな(笑)。

 

 あと、それだけじゃありません。これ、ブロンディ史上最高にパンキッシュなアルバムです。特に「ワン・ウェイ・オア・アナザー」は2000年代に入ってすごく再評価された曲で、僕のやってたHard To Explainのクラブでもよくかかってたし、ワン・ダイレクションにまでカバーされましたからね。あと、「ハンギング・オン・ア・テレフォン」も同様ですね。

 

 それプラス、初期からのドリーミーな60s路線も継承されていて、「サンディ・ガール」のヒットも生んでいますからね。やはり、このアルバムと次の「Eat To The Beat」にこそブロンディらしさは凝縮されていて、それを忘れずに表現し続けようとするから、デボラさんが70超えても健在で女王のままでいられるのかな、と思いますけどね。あと、デボラさんのヴォーカルの粋なパンチも、このアルバムで一気に高まって、レジェンダリーなものになっています。

 

 

 

・・といった感じでしょうか。

 

 

 次回は、約1週間後にやります。もう、思いっきりベタすぎて誰でも知ってる、ちょっと緊張するものをやります(笑)。

 

 

 

author:沢田太陽, category:FromワーストTo ベスト, 12:56
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全オリジナル・アルバム From ワースト To ベスト (第7回)ザ・キンクス その2 10位〜1位

どうも。

 

 

では、昨日の続き、行きましょう。

 

 

 

From ワーストTo ベスト、第7回のザ・キンクスです。今日はいよいよトップ10の発表です。

 

 

早速、10位から行きましょう。

 

 

10.Lola Vs Powerman Moneygoround Part One(1970 US#35)

 

 10位は、キンクスのパイ・レコード時代の後期の代表作ですね。「ローラ対パワーマン マネーゴーラウンド第1回戦」。どうしても、この邦題で覚えてしまっています。

 

 このアルバムは、タイトルにもあるように「ローラ」の、初期ブリティッシュ・ビート期以来となる久々の世界的ヒット(全英2位、全米9位)に押される形でアルバムも注目されたんですけど、アルバムを通して言えることは、70年代にさしかかるとレイ・デイヴィスのアメリカ本格進出の野望が強くなっていて、ここで聴かれるのも南部を意識したアーシーなサウンドが目立って来ています。そういうサウンドでありながら、イギリスの音楽業界を皮肉ったコンセプト・アルバムというのも面白いし、「ローラ」はおそらくロック史上最初のトランスヴェスタイトについての歌ったヒット曲(ヒットはしてないけどヴェルヴェット・アンダーグラウンドにもあったかな?ゲイ・テーマはあるけど)とも言われていて、そこも注目すべき点ですね。

 

 

9.Low Budget(1979 US#11) 

 

 パンク・ムーヴメントやヴァン・ヘイレンのカバーによる「再発見」の効果を活かして作った、アリスタ・レコード期では最大となるロックンロール・アルバムですね。徹頭徹尾、ほとんどがアップテンポのロックンロールで、「パンクのゴッドファーザーらしいこと、やってくれよ」と願うファンの期待にようやく応えたアルバムとなりましたね。

 

 実際、このときの全米ツアーはかなりウケていて、その模様は「ワン・フォー・ザ・ロード」という、キンクスを代表するライブ・アルバムにもなって、これも全米で12位まで上がる大ヒットになりました。これゆえに、この時期を「アリーナ・ロック・キンクス」と呼ぶ人も少なくないほどです。

 

 全編、パンキッシュでスピーディなロックンロールが目立つアルバムではありますが、タイトル曲にも見られるように、アメリカン・ロック期を通過していないと表現出来ないブルージーなロックンロールが目立っているところがやはり老獪なベテランゆえのことになっていて、その意味でも興味深い1作です。

 

 

8.Something Else By The Kinks(1967 UK#35,US#153)

 

 1967年、世がサイケ期の頃に発表したアルバムで、人気の高い作品ですね。

 

 たしかに名曲多いんです。エンドを飾る、イギリス観光にもピッタリな名バラード「ウォータールー・サンセット」をはじめ、冒頭はザ・ジャムもカバーした「デヴィッド・ワッツ」、そして、このアルバムで頭角を現したレイ・デイヴィスの弟デイヴによる「デス・オブ・ア・クラウン」。デイヴはこのアルバムで3曲で貢献していますが、このときがやっぱ一番冴えてたかな。

 

 これ、キンクスにとっての、ビートルズで言うとことの「ラバー・ソウル」みたいなアルバムですね。いわゆる、得意の3コードのロックンロールというフォーマットから脱皮して、より凝ったアレンジで曲調の幅を広げる時期と言うか。キンクスの場合、スタジオ機材を駆使したエフェクトはこの当時の他のアーティストほどには使ってはいないんですけど、そのかわり、ハープシコードをはじめとした楽器類の使い方でそれを表現してますね。クレジット見ると、ハープシコードを弾いてるのはレイ本人で、彼が他にハープやマラカス、チューバまでを担当していますね。

 

 

7.Give The People What They Want(1981 US#15)

 

 アリスタ期の“復活キンクス”の中のアルバムの中では、これが一番ですね。前作「Low Budget」でのパンク路線を基本的に継承している上に、ここではときおりソフトめな曲で変化をつけ、単調に陥っていないところが良いです。初期のキンクスのアルバムにあった良い部分を、80年代初頭の空気に合わせて蘇らせたような良さがあります。

 

 中でも、自身の代表曲「オール・デイ・アンド・オール・オブ・ザ・ナイト」を、今で言うセルフ・サンプリングして新たに作ったロックンロール・ナンバーの「デストロイヤー」と、軽快さは残しながらもさわやかな「ベター・デイズ」の2曲がひときわ光りますね。

 

 ちなみに、僕がキンクスの存在を知ったのもこのアルバムでした。音は聴いてなかったんですけど、ちょうどこのアルバムの日本でのリリースの際にツアーで来日したんですけど、このときにレイがつきあって、このアルバムにも参加しているクリッシー・ハインドのプリテンダーズも一緒に来日してるんですよね。まさにこのアルバムが、プリテンダーズの持つストレートな軽快さと、胸キュンなメロウさを表現したアルバムでもあるので、相乗効果になったのかな。そして、来日公演後に2人は結婚もしますが、すぐに離婚もしてしまったところが、またレイのトホホたるゆえんでもあります。

 

 

6.Maswell Hillbillies(1971 US#100)

 

 これもいろんなところで名盤とされている作品ですね。キンクスが拠点をアメリカに移しRCAに移籍しての第1弾です。

 

 このアルバムでキンクスは本格的にアメリカの南部サウンドに接近しています。ただ、レイドバックした雰囲気も感じさせつつも、肉感的な力強さも同時にあるんですよね。このあたりの感覚は、ザ・バンドの良さをしっかりわかってる感じがするなと思って、聴いてて感心しましたね。この当時、ほかにもイギリスから南部サウンドに接近したものが少なくなかったんですけど、僕の中ではこれとストーンズの「メインストリートのならずもの」が双璧ですね。レイ・デイヴィスって、「きわめてイギリスの庶民っぽい」という言われ方をされる人ですけど、もともとはアメリカの音楽やカルチャーにすごく造詣の深い人で、その良さが出ていると思います。

 

 60年代のキンキー・ビートとはまた違う、ロックンロールの別の側面でのカッコ良さを聴かせている作品なので、実はもう少し上位も考えていたんですけど、ちょうどいい手の打ち方があったのでそれに準じました。

 

 

5.Arthur(Or The Decline Or Fall Of The British Empire)(1969 US#105)

 

 これもキンクスを語る際に外せない作品ですね。「アーサー、もしくは大英帝国の衰退並びに滅亡」。これも、ややこしい邦題ゆえに覚えたタイトルでもあります。

 

 これはキンクスの数あるコンセプト・アルバムのうち、筆頭クラスに大切なものですよね。やっぱ、「イギリス人らしさ」をテーマに据えさせるとレイは強いと言うか。いざ、話を組み立てさせたら、安っぽく終わることも少なくない彼なんですが(笑)、これに関しては、大英帝国黄金期から世界大戦、そして現在と、歴史軸もすっかりしてますしね。第2次大戦後に多く、現地で多くのアーティストも生んでいる英国人のオーストラリア移住の話なんかも「ああ、こういう感じで起こってたのね」と思えたりもして。

 

 もちろんシアトリカルではあるのだけれど、そこで彼ら持ち前のロックンロールが崩れることなく「ヴィクトリア」や「シャングリラ」といった見事なロックンロール・チューンがあるのも良いです。

 

 

4.Everybody's In Show-Biz(1972 US#70)

 

 これも「この世はすべてショー・ビジネス」のタイトルの方がしっくり来ますね。RCA移籍の第2弾で、彼らにとって初の2枚組です。

 

 これが僕、というか多くのキンクス・ファンに必要な理由。その1は「セルロイドの英雄」の存在ですね。レイが子供の頃から描いている、ショウビジネスやアメリカへの憧憬を、この時点でも既に十分美しきノスタルジアに包まれていたグレタ・ガルボなどの1920〜30年代のハリウッド・スターの話を物語ることで語るこの曲はレイのリリックの中でも最高傑作のうちのひとつですね。ライブでも欠かせない定番になっています。

 

 そしてふたつめは、やっぱりディスク2のライヴ盤ですね。すっごく骨太でシャープなライブでの彼らの真骨頂が出たものなんですけど、その中核をなしてる楽曲こそ「Maswell Hillbilies」からの曲なんですよね。こっちでのアレンジの方が良いんです。だから、こっちの方をあえて上位に選んだんですよね。

 

 

3.Face To Face(1966 UK#12 US#135) 

 

 

 ここからはジャケ写つきで行きましょう。僕はシングル・ヒットをイギリス国内で連発させていた60年代半ばのキンクスに目がないのですが、これはその後半の時期に出された重要なアルバムです。

 

 シングルとしては、ちょうど直情的なキンキー・ビートから一歩踏み出して、「A Well Respected Man」とか「Dedicated Follower Of Fashion」とか、ディランに代表されるフォークロックからの影響が感じられる曲が出はじめて、それによってレイのアイロニーたっぷりの詩人ぶりが開花しはじめた時期です。

 

 そんなときに出されたこのアルバムは、「ロック史上最初のコンセプト。アルバム」とも言われている作品ですね。まあ、コンセプトといっても大掛かりな物では決してないんですが、それでも、「ロックスターとしての喧噪」が最初で描かれ、「田舎でのスロー・ライフに憧れる」というくだりは、後のキンクスのキャリアで何度もくり返し出てくるものであり、ここにひとつの大きなアイデンティティの形成が見て取れます。そして、その話のオチが、シングルで全英1位にもなった超名曲「サニー・アフタヌーン」で、「日光浴の日差しまで税金で持って行かれる」と、優雅な暮らしだって世知辛い、というとこまで含めて完璧です。

 

 ここからがキンクスらしくなってくるのに、ここから人気が落ちてしまうのも、またキンクスらしいとこです(笑)。

 

 

2.The Kink Kontoroversy(1965 UK#9 US#95)

 

 

 2位に選んだのは1965年発表のこのサード・アルバムです。

 

 よくこういう企画だと、いわゆる1967年以前の作品って、「いわゆるアルバムの時代の前で、シングルの寄せ集め的な時期だった」として上位に選ばれない傾向があるんですけど、僕はそれに真っ向から反対です。たとえ、アルバムが優先されていなかった時期でも、収録曲が普遍的に物語る力もちゃんとあるわけで、僕はそういうのを無視したくはありません。このことは今後、60年代から活躍するアーティストを語る際にもしっかり適用していくつもりです。

 

 このアルバムは、「ユー・リアリー・ガット・ミー」からのキンキー・ビートがひとつのピークを迎えたときの作品ですね。「Everybody's Gonna Be Happy」「Set Me Free」「See My Friend」と、このアルバムには入らなかったけれど傑作シングルが連発されていた時期のレコーディング作だし、加えて本作にも入っている「Till The End Of The Day」こそ、キンキー・ビートの最高傑作だと僕は思ってます。

 

 それ以外にも、キンクスのアイロニーがキンキー・ビートと一体となった「Where Have All The Good Times Gone」や、スリーピー・ジョン・エステスのブルース・カバーながらも、そのパンキッシュなアレンジで、後にエアロスミスが子のヴァージョンを元にしてカバーした「ミルク・カウ・ブルース」など聴き所満載です。パンクやガレージを愛する人たちにこそ、50年経っても色褪せないプリミティヴなロックンロールを聴いて欲しいものです。

 

 

1.The Kinks Are Village Green Preservation Society(1968)

 

 

 そして1位に選んだのはこれです。「ヴィレッジ・グリーン・プリザヴェーション・ソサイエティ」。

 

 これを1位にしたのは、これほどキンクスらしさが1枚に凝縮された作品はないから。サイケデリック大全盛の時期に「田舎が最高だ!」と叫び、結局,その後、ヒッピー的な多くのアーティストが結果的に追随するというひねくれぶりと先進ぶり。また、そうであれいながらも、ややレイドバックした感じも垣間見せつつも、キンクスらしい豪快なロックンロールは失われていないところといい、コンセプト・メイカーとしてのレイの手腕といい。ここにはみんなひとつになって入っています。

 

 特にミック・エイヴォリーのふりかぶりと手数の多くなったドラムと、シャープなアコギのギター・リフがカッコいいんですよね。「Do You Remember Walter」や「Picture Book」「Johnny Thunder」といった前半部はソレで持って行くし、後半になれば「Starstruck」「Village Green」みたいなメロで聴かせる曲が光ってくる。惜しむらくは、この時期にシングルでリリースされた名バラード「デイズ」を入れてくれれば言うことなかったんですけど、仮にそれがなかったにしても本作はアルバムとして完璧です。

 

 ただ、そんな、キャリア史上最高のアルバム(僕がそういってるだけじゃなく、多くの人がそう指摘している)にもかかわらず、これがチャートインさえされていなかったところがキンクスらしいし、その作品をベースにして壮大な続編的ロックオペラ作ったら、ファンにさえ不評の大失敗作になってしまった、というとこのオチまでキンクスらしいです(笑)。僕が「プリザヴェーション」をワーストに選んだのも、ベストのこの作品との対をなしたいと思ったからでした。

 

 

 ・・といった感じですね。

 

 次回ですが、今度は24枚もアルバムはない、1回で終わるもの行きます。すでに準備出来てるので、来週行けますよ。

 

author:沢田太陽, category:FromワーストTo ベスト, 10:52
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全オリジナル・アルバム From ワースト To ベスト (第7回)ザ・キンクス その1 24位〜11位

どうも。

 

 

今日はFrom ワースト To ベスト、行きましょう。なんか、早いペースでいろいろ聴けて自分でも驚いているんですが、早くも7回目。今日のお題はこれです!

 

 

 

 

この企画、初の60年代からのアーティストですね。その記念すべき最初のアーティストはザ・キンクスです。キンクスといえば、つい先日、リーダーのレイ・デイヴィスがサーの称号を得たり、彼の久々の最新ソロ・アルバムがイギリスで15位という、一体何10年ぶりなんだろうという成功を70代にして記録している最中です。そんな再評価モードにある中、「最も過小評価されたロックバンド」と言われ続けて来た彼らの計24枚のアルバムに順位をつけてみました。

 

 

 いや〜、これは長いことやってみたかった企画ですね。僕みたいな職の人間にとって、ビートルズ、ストーンズ、ディラン、ツェッペリンあたりは「全部聴いてて当たり前」みたいなところがあったりするし、日常でもよく耳にするし、名盤選でも若いうちから聴き続けてきたものであるんですけど、キンクスとなると、かなり意識的に注意して聴かないと覚えない物ですからね。僕もフリーのジャーナリストになりたてくらいのときに「キンクスのディスコグラフィを全作レヴューできるくらいが理想」みたいなこと考えたことあったくらいですからね。なので思い入れはあります。

 

では、今回は24位から11位まで。まずは24位から。

 

 

24.Preservation Act 2(1974 US#114)

 

 最下位は、キンクスのロック・オペラ路線の混迷期として語られがちな「プリザベーション」の第2幕です。ただ、これ、一方で「駄盤」、一方で「カルト名作」と言われてもいますが、「名作」という評価はあまりに盲目的なので信用しなくていいです(笑)。僕は愛情を込めて「大いなる大失敗作」として「名誉の最下位」にしましたね。

 

 

 作品の善し悪しで言えば・・良くないですよ(笑)!だって、コンセプトがあんまりにも漫画ちっくで、70年代に入ってレイが入れ込んでいたアメリカ南部接近路線も明らかにレイの飽きが感じられる曲調(大編成が似合わないくらいハードなんだもん)が感じ取れるし。女性コーラスの声のセンスなんてかなり悪趣味です。そしてこれが一番タチ悪いんですけど、2枚組で曲多過ぎだし。さすがにどんな好きなアーティストでも、自己満足の、しかも、曲の印象そのものが強く残らない作品を、2枚組で聴かされたらさすがにツラいですよね。「いや、そこを受け入れてこそのファンだ」という意見はあるのかもしれませんが、僕はそこまで着いて行こうとは思いません(笑)。

 

 でもね、これを全作と2部作、計3枚組のヴォリュームにまでして作り上げようとした、その心意気はいとおしいです。なので、これ、僕は「最低1回は聴くべき作品」だと思っています。これ、ロック好きな人ならやってみてほしいです。2回目以上は一切保証しませんが(笑)。

 

 

23.Think Visual(1986)

 

 「プリザヴェーション」は最下位にしたけど愛着はあるアルバムなんですが、「個人的に本当に嫌い」という意味で実はワーストはこのアルバムです。

 

 これは1986年、キンクスが遅ればせながらもアメリカ再進出に成功していた、アリスタ・レコードとの契約が終わったあと、MCAに移籍して発表した最初のアルバムなんですけど、ここからはチャートにかすらないバンドになったんですよね。ただ、このアルバム、キンクスらしからぬ「ザ・エイティーズ」な大仰なプロデュースが目立つ、すごくガッカリな作品です。加えて、ジャケ写のセンスがひどいんだ、このアルバム!「え〜、なんでこんなの作っちゃったの??」って感じのアルバムです。これと、この次のアルバムだけ、ストリーミング・サービスに入ってないんですけど、オススメはあまりしません。

 

22.Preservation Act 1(US#177)

 

 その「プリザベーション」の第1幕にあたるのがこれです。こっちは1枚組なので、疲れないので順位が上です(笑)。なんでも、この第1幕を作っている最中に、没入し過ぎて他のことが目に入らなくなったレイに愛想を尽かした奥さんが小さな娘を抱えて出て行ったという、なんかいかにもレイらしいトホホな話も裏エピソードにある作品です。人生で賭けたものは大きかったんですが、結果が良かったとは正直思えないですね。

 

 

21.Soap Opera(US#51)

 

 「プリザベーション」のあとに発表した、これもロックオペラ路線。ただ、これは、「架空の村の戦争物語」という、なんだかなあなストーリーから一転、今度は、妻もいるサラリーマンの男が、自分がロックスターだという妄想に陥る、という現実的な現代劇。これは1974年にイギリスの第2の局、ITVで放送された「スターメイカー」というミニ・ドラマが元になってて、レイ自身が主演もつとめていました。ただ、このドラマっていうのが、観覧が可能なテレビ局のスタジオでこじんまりとしたセットを組んで演じているもので、超格安でスケール小さいんですよね。まあ、その安っぽさがキンクスっぽさではあるんですけどね。サウンド的には「プリザベーション」の延長ですけど、「もう、ホーンも女性ヴォーカルもいらなくなるね」という曲調にさらに傾いて行きます。

 

 

20.Percy(1971)

 

 これは1971年、キンクスが60年代の黄金期を過ごした、イギリスのパイ・レコードの最後のアルバムなんですが、「パーシー」というイギリスのコメディ映画のサントラです。インストが多めでヴォーカル曲もすごく尺が短いんですけど、ただ、「ローラVSパワーマン」の直後の雰囲気はあるし、やっぱ古き良きパイを惜しみたい意味もあって、そこまで順位を下げたくもない作品ではあります。

 

 

19.Phobia(1993)

 

 現時点でキンクスとしてのラスト・アルバムです。キンクスは最後の2枚はかなりギターはハードなサウンドになっていたりするのですが、このアルバムに関しては時期がちょうどグランジの時期でしたね。どこまで意識してるかは知りませんが。キンクスの場合、元が「ユー・リアリー・ガット・ミー」のバンドだったりするから、そういう路線はすごく歓迎なんですけど、ただ、このアルバム、1曲あたりの尺が長過ぎです。5、6分の曲がザラで、それが17曲もあるという。ある意味でCD時代の悪いとこが出た作品かな。ただ、レイとしては表現したいことが多かったのかな。アルバムのテーマが、「嫌悪感(フォビア)が社会を悪くしているのではないか」という重いテーマでもありましたしね。

 

 そして、このアルバムを伴ってのツアーの際、僕は彼らのライブを渋谷公会堂で体験しています。このときのライブがすごくエネルギッシュで爽快だったから、まさか、このあとに彼らのライブが見れなくなるとは夢にも思ってなかったんですけどね。

 

 

18.Sleepwalker(1977 US#21)

 

 アメリカ再進出をかけた、アリスタ・レコードへの移籍第1弾ですね。このアルバムから、直前までいたRCAでのロックオペラ路線はやめて、コンセプトなしのロックンロール路線になっていて、アリスタの後押しもあって、在籍期間中はアメリカでかなりの成功も実際に収めていますね。このアルバムも、第1弾にして最高位21位という、かなりのヒットになっていますからね。

 

 ただ、「キンクスで1977年」というから、ややもすると「”パンクの元祖”がパンク・ムーヴメントを利用した」かのように思われがちでもあるんですが、このアルバムの発表は1977年の初頭。この時期だと、まだパンクでアルバムが出てるアーティストっていないんですよね。クラッシュやジャムでさえ数ヶ月後ですから。

 

 そういうこともあって、このアルバム、「ロック」には原則的に戻ってはいるんですけど、「どういうロックをやっていきたいのか」が曖昧模糊として見えにくいアルバムなんですよね。なんか、ブルース・スプリングスティーンみたいな曲調の方がむしろ目立つし。キンクスがパンクや、ヴァン・ヘイレンによる「ユー・リアリー・ガット・ミー」のハードロックのカヴァー・ヴァージョンをもって「パンクやメタルの元祖」として自身を売り込みに走るのはもう少し後になります。

 

 

17.UK Jive(1989)

 

 キンクスの最後から2番目のアルバムですね。「シンク・ヴィジュアル」とこのアルバムがストリーミングで聴けません。

 

 このアルバムですが、前作でのオーヴァー・プロデュースが是正された、ソリッドなロックンロール・アルバムになっていますね。この当時だと、イギリスだとマッドチェスターとかシューゲイザーみたいな、サイケデリックなモードが大流行りな時期で、こういうソリッドでストレートなロックンロールをやっている人があまりいなかったものですが、不思議なことに、この4年くらい後から、UKロックバンドのトラディショナルなロック回帰路線がはじまりブリットポップにつながって行ったりするから不思議です。そういう意味で、やっぱ無意識のうちのカンの良さはあるんですよね、キンクスって。このアルバムは、ブリットポップにはやや重くはあるんですけどね。

 

 

16.Misfits(1978 US#40)

 

 アリスタ移籍後の2枚目のアルバムですね。このくらいから、パンク・ムーヴメントに気がつきはじめたか、シングルのB面でも「プリンス・オブ・ザ・パンクス」という曲を作ったのもこの時期ですけど、よりストレートな3コード・ロックンロールの方に足が向きはじめた、といった感じのアルバムですね。そこまでロックンロールロックンロールはしてないアルバムですけどね。

 

 ただ、そうでありながら、このアルバムの最大の聴かせどころは全米シングル・チャートで30位まであがったバラード「ロックンロール・ファンタジー」の存在ですね。これはこのアルバムのレコーディング中に脱退した2人のメンバーにあてたものであり、レイとデイヴのデイヴィス兄弟の分裂の危機にも触れた曲でもあるんですが、「ロックの幻想の中に生きないで、真人間に戻りたい」という、ちょっとその後のレイの人生を考えるに「こんなことを思っていた時期もあったんだな」と思える曲です。ただ、それだけこの人というのは、すごく庶民的な感情を常に持ち合わせていた人でもあるのかな、と思わされますけどね。

 

 

15.Kinda Kinks(1965 UK#3,US#60 )

 

 1965年の初頭に出た、キンクスのセカンド・アルバムです。これは、「ユー・リアリー・ガット・ミー」「オール・デイ・アンド・オール・オブ・ザ・ナイト」のビッグヒットの次を受けたシングル  「タイアード・オブ・ウェイティング・フォー・ユー」とほぼ同時にリリースされたアルバムですね。この3曲が立て続けてヒットしていたときの彼らはブリティッシュ・インヴェージョンの中でも、ストーンズやアニマルズと並んで、「ビートルズにつぐヒットメイカー」の評価を受けてたときで、遅れてデビューし後に比較の対象となるザ・フーよりも全然勢いがあった頃です。

 

 僕はキンクスのパイ時代の60年代のシングルは無類に好きなんですけど、ただ、いい時期に発売されたわりには、このアルバム、ちょっとメロウな曲が多いですよね。やっぱり欲を言えば、「ユー・リアリー〜」みたいな曲をファンとしてはたくさん聴きたいじゃないですか。なのでちょっと順位が抑えめです。

 

 

14.State Of Confusion(1983 US#12)

 

 これは僕に近い世代が思い入れのあるキンクスのアルバムです。というのは、ここからの「カム・ダンシング」という、ちょっとスカというかカリプソというか、ちょっとカリブのビートを入れた陽気な曲が、アリスタ時代のキンクスでの最大のシングル・ヒットになって全米6位まで上がるヒットになりましたから。僕と同世代の人の中には「キンクスといえばカム・ダンシング」という人も少なくありません。その効果もあり、次のバラード「Don't Forget To Dance」も全米29位のヒットになっています。

 

 ただ、これ、アルバム全体として見た場合、この前後の時期のキンクスではちょっと落ちるんだよな、というのが僕の率直な感情です。このアルバムは、パンキッシュなロックンロールと、シングル曲に象徴されるソフトなポップナンバーとの幅で聴かせるタイプのアルバムなんですが、ポップな曲がちょっとオーヴァー・プロデュースなんですよね。シングルになった曲はまだいいんだけど、それ以外の曲でエイティーズの悪いとこが感じられるというか。この直前までの上昇気流がシングル・ヒットとして結実したのはめでたいことなんですけど、それがここで止まってしまうことにもなります。

 

 

13.Schoolboys In Disgrace(1975 US#45)

 

 これがそのRCAの最後のアルバム、ロックオペラ路線の最後のアルバムです。ただ、コンセプトはあるとは言え、もうホーンや女性ヴォーカルはほとんど用がなくなり、アリスタ期につながるロックンロール・アルバムにもうこの時点でなってますね。まだパンクが起こっていた時期ではないんですけど、レイの中でなんとなく虫が知らせたということなのかな。中でも「The Hard Way」はライブの定番にもなる、パンクを先駆けた傑作チューンですね。

 

 ただ、これ、悲しいことジャケ写のセンスが悪いんですよね(苦笑)。AC/DCのアンガスみたいなカッコした少年が叩かれた尻を出してる漫画なんですけど。これ、書いたの、Tレックスのミッキー・フィンだったりするんですけど、しばしば、「ワースト・ジャケ写」の常連作になってますね。

 

 

12.Word Of Mouth(1984 US#57)

 

 アリスタ時代のキンクスの最後のアルバムですね。前作が「カム・ダンシング」の大ヒットが出た作品だったのに、それを受けてのこのアルバムはランクが下がってしまいました。

 

 ただ、「内容が悪かったから」ではなく、単にレーベルからプッシュされなかっただけだったような気がします。実際、このアルバムを聴いてみると、前作でややポップかつオーヴァー・プロデュースになりつつあった部分を修正して、その数作前までにあったような豪快なロックンロール路線に転じています。特に「Do It Again」は、これ以降のキンクスのライブの定番曲にもなります。

 

 あと、しばらく歌ってなかったレイの犬猿の中の弟デイヴが、80年代はじめに出したソロ作の成功の影響もあってか、このアルバムから、ストーンズにおけるキース・リチャーズ枠みたいな感じで、常時歌いはじめるようにもなります。それから、悲しい話題としては、デイヴィス兄弟以外のオリジナル・メンバーだったドラムのミック・エイヴォリーがこのアルバムを最後に脱退してしまいます。

 

 

11.The Kinks(1964 UK#3,UK#29)

 

 記念すべきデビュー作で、全てのロックンロールの原点とでもいうべき「ユー・リアリー・ガット・ミー」が入っていることで価値が永遠に高いアルバムです。

 

 気持ちとしてはトップ10に入れたかったんですけど、ただ、このアルバム、オリジナル曲が少なく、カバー中心なのが残念なんですよねえ。「ユー・リアリー〜」の元ネタになったロックンロールの起源の代表曲、キングスメンの「ルイ・ルイ」のカバーがあったりするんですけど、キンクスの考案したキンキー・ビートの方が勝っているので、そこもあんまり魅力的に響かないと言うか。せめて「オール・デイ・アンド・オール・オブ・ザ・ナイト」が収録されていたらもう少し違った気がする(後にCDのボーナス・トラックで収録)んですけどね。60年代という時代は、特にイギリスでですけど、シングル曲をアルバムに入れない習慣があって、それゆえに損してるアルバムが多いんですよね。

 

 

番外編;レイ・デイヴィス・ソロ

 

 90年代半ばからソロになったレイは、それ以降、セルフ・カバーの3枚も含め、6枚(キンクス時代にも1枚)ソロを出しています。デイヴとの確執でキンクスとして活動出来なくなったオリジナル曲の3枚もランクの対象にしようかなとも思いましたが、デイヴを尊重して今回はやめておきました。ただ、その3枚のソロ、「Other People's Lives」(2006)、「Working Man's Cafe」(2007)、そして「Americana」(2017)はいずれも力作で、仮にランクをつけたらトップ10には入らなかったものの、12位くらいの位置にはつけれたような気がしてます。

 

 

 

author:沢田太陽, category:FromワーストTo ベスト, 10:18
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