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今週のアルバム寸評

どうも。

 

 

今週は2週分たまったので多いです。今週のアルバム寸評!

 

 

Skeleton Tree/Nick Cave&The Bad Seeds

 

 いろいろアルバムがあったはずなんですけど、僕の頭の中ではこれ以外、すんなりは入ってこなかったですね。それくらい、このニック・ケイヴの新作はあまりに圧倒過ぎました!!

 

 

 これは、ケイヴ自身の15歳だった息子さんが謎の転落死を遂げたのを受けて作られたアルバムなんですが、すさまじいレクイエムになっていますね。そういう事件があったので、当然のこと、重く緊迫感に溢れた作品にはなっているんですが、ただ単にダークなだけではなく、当然息子に込められている彼自身の愛の思いを、そういった直接的な単一の事情に収めずに、普遍的な次元に広げて「失っても消えることのない愛」を歌いきる姿が、もう涙腺を刺激せずにいられないというか。特にその名も「I Need You」という曲での涙を精一杯こらえているかのような絶唱は聞き物ですね。ケイヴってジョニー・キャッシュの影響を強く得ていて、寓話を語る中でひとつの心理を導き出す歌詞の手法をとるんですけど、今回はより直接的、パーソナルかつエモーショナルに食い込んできます。

 

 

 ただでさえケイヴは2005年の「アバター・ブルース」以降、毎作が傑作とされていて、僕も08年の「Dig Lazarus Dig」以降は毎作抑えててすごく好きだったタイミングだった上にこれだったかガツンときましたね。そうじゃなくても、QOTSAとか近作のアークティック・モンキーズみたいなドス黒いロックンロールの方向性に僕自身が惹かれていたのでそうした流れで漸近線的にも近づいていたのも大きいですね。今、全作聴き倒す勢いで聴いてますが、しばらくブームが続きそうです。

 

 

 評判もすさまじいですよ。Metacriticではビヨンセの「Lemonade」と並ぶ今年のアルバムの最高点となる92点。チャートでも、オーストラリア、アイルランド、ニュージーランド、ノルウェー、フィンランドで1位、イギリス、スウェーデン、イタリアで2位、ドイツ、オランダで3位。こういうの聞くと「そういう国に住みたいよね」と思わず考えてしまいます(笑)。

 

 

My Woman/Angel Olsen

 

 続いて、ケイヴの出た1週前の良いアルバムがこれでしたね。アメリカの、ロックンロールなエッジのある、フォーキーでもある女性シンガーソングライターのエンジェル・オルセン。これ、去年のコートニー・バーネットのアメリカからの回答の趣きありますね。彼女の場合、キャリア自体は長いので、むしろ世に出たのはこっちが先なんですけど。曲もわかりやすいし、冒頭の1曲だけでしたが、エレクトロの要素をちょこっと見せた変化球もあるし。この人の場合、以前のキャリアを全く追えてない状態だったので聴こうと思っていたのですが、その矢先にケイヴが出て吹っ飛んでしまいました(苦笑)。ただ、チャート・アクション的には、このアルバムでやっと全英40位、全米47位なので、これからの存在なのは間違いないと思います。

 

 

Schmilco/Wilco

 

 続いてウィルコの新作。前作はウェブで突然出たことで話題になり損ねた感もなきにしもあらずだったんですが、今回はそれから約1年で正規リリースとなります。今回はアコースティックで、スタジオワークもこりがちな人たちではあるんですが、思ったほど手が込んでいないストレートなアルバムですね。これはこれで味があっていいとは思いますが、いかんせん、ケイヴと同じ週になってしまったことで、聞き込みがあまり深く出来ていないところは否めません。同じくらいリスペクトされるべきアーティストですが、インパクト勝負ではちょっとかなわなかったところはあるのかなあ。

 

 

How To Be A Human Being/Glass Animals

 

 続いて、イギリスはオックスフォードのバンド、グラス・アニマルズの2枚目。これ、セールス的にも好調で、全英23位、全米20位と、足がかりをつかんだ感じになっていますね。成功の秘訣としては、このバンドが、エレクトロのみならず、昨今の北米の先鋭的なR&Bの要素を取り込んだからでしょう。ただ単にエレクトロな路線よりもよりモダンに聞こえます。その点では、全英トップ10に入ったものの2週しか100位に入れなかったバット・フォー・ラッシズやワイルド・ビースツよりも分があります。ただ、正直、「頭は賢そう」な印象があるんですが、アーティストとしての顔がほとんど見えて来ないキャラの薄さがなんか気になるんだよなあ。これはアルトJ以降のイギリスの文科系バンドの課題でもあるんですけどね。

 

 

Wild World/Bastille

 

 

 今週イギリスで1位になったバスティールのセカンド。この人たちはEDMをバンドに取り入れたことで、インディ・ファンからはものすごく叩かれている人たちですけど、ただ、これ、チャラいなりに、曲そのものは良く書けた、意外に良い作品だと僕は思いました。19曲という収録曲数は過剰ではありましたが、曲調もちゃんと計算してバラエティに富ませてあったし、前作とのインターバルもそれほど長くないのにそれだけの曲が量産出来るのは、曲の品はともかく、ソングライティングは出来る人たちなんだなという気はしました。アイドルの裏方の仕事とか来そうな感じがしましたね。少なくともインパクトに残る点では、最近のお行儀のよすぎる洒落たインディ・バンドよりある意味良いですけどね。これが一番に目立って欲しくはないものの、見習うポイントは残した気はしてます。

 

 

 

Glory/Britney Spears

 

 ブリトニー久々のアルバムでしたけど、これは失敗作でしたね。本格派狙って上品な作品作りを目指したのかもしれないけど、逆に誰でも作れるようなアルバムになって、彼女の作品である必然性が全く見えなかったんですよね。臭みを消してしまったがために、逆に誰の作品なのか全然わからない。ある種の軽薄さは逆に武器になるのにそれが使えなかった感じですね。あまりに退屈だったので、残り3曲残して聴くのをやめてしまいました。

 

 

 

 

author:沢田太陽, category:ストリーミング・レヴュー, 21:07
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今週のアルバム寸評

どうも。

 

 

今週はやります。ただ、現在、アイフォンが急に故障したので、来週はやるかどうかわかりません。9月は新作ラッシュなので、それまでにはなおって欲しいんですが。

 

 

では、今週のアルバム寸評、行きましょう。

 

 

Blond/Frank Ocean

 

 

 

 やっぱり今週はこれを語らないわけにはいかないですよね。フランク・オーシャンの「Blond」。彼のことは、ジェイZとカニエのアルバムに曲がフィーチャーされたときから気になった人(僕もそのクチです)が多く、前作のデビュー作「Channel Orange」でものすごく注目されましたよね。

 

 前作ほどの話題作のあとだと、「今回どうすんの?」というところもあったとは思いますけど、いやあ、全く持って文句ないですね。十分傑作だと思いますよ!

 

 

 なんか、聴感上、すごく面白いんですよね、彼の作品って。音数も少なく、ややもすればデモテープみたいにさえ聴こえる瞬間さえあるのに、そこを「世界一豪華なデモテープ」というか「文字通りの室内(というか個室)オーケストラみたい」というか、限られた音要素を多層的に響かせるのが本当にうまいですよね。これ、今、他に真似出来る人っているのかな。

 

 

 あと、メロディメイカーとしても本当に抜群ですね。彼の場合、曲に基づいているコード進行がすごく洒落てて「難しそうなの使ってるな」という印象があったんですけど、今回、曲の元ネタにトッド・ラングレン、スティーヴィー・ワンダー、エリオット・スミスがあるのを見て、「道理でそうなったわけだ」と思いましたからね。全部、コードのセンスで語られる見本みたいな人たちばかりだから(笑)。しかも、スティーヴィーのネタというのはカーペンターズの「(They Long To Be)Close To You」のカバーで、それもバート・バカラックの曲なわけだから、ここにもうひとつ「コードの匠」みたいなものがあるという。スティーヴィーに関しては、他の曲でも要素感じますけどね。

 

 

あと同時に、こういうセンスが通常のR&Bの枠を超えた普遍性につながっているのかな、とも思いました。その意味でも、ジャンルを超えて「美メロ」を求める人には最適な作品だと思います。

 

 

Home Of The Strange/Young The Giant

 

 

今週もう1枚聴いたのがこれでしたね。このバンド、フュールド・バイ・ラーメンのバンドですね。このレーベル、フォールアウト・ボーイ、パラモア、funと来て、今はトウェンティ・ワン・パイロッツで当ててますけど、もはやエモの範疇を超えた、アメリカ随一の「売れるロック」のレーベルになってますね。

 

 

 ここのレーベルのアーティストの打ち出し方は、初期のエモ・レーベルの頃とは全く違って、すごくオーヴァー・プロデュースなやり過ぎ感があって、どうにも好きになれないところはあるんですが、その中でこのバンドは、一番真っ当ないまどきのインディ・ロックバンドで、言われなきゃ所属レーベルはわかんないタイプですね。

 

 

 やってること自体は、そこまでおもしろいものじゃないですけど、曲と歌はしっかりしてるので割と好感持てますけどね。前が割と叙情派っぽくて、今作がいまどきなエレクトロなギター・ロックで特徴がないといってしまえばそうなんですけど、ただ、別段ヒップホップにせよEDMにせよ「クオリティが良いから売れる」わけでもなんでもないし、それは80、90年代のロックだってそうだったわけですから、こういう「そこそこにポップでわかりやすいもの」がシングルヒットでも出せばだいぶ違うんだけどなあ、とは思いますね。先々週紹介したブラッサムズでも同じこと考えましたけど。

 

 

 

 

 

 

author:沢田太陽, category:ストリーミング・レヴュー, 22:45
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今週のアルバム寸評

どうも。

 

 

今週も少なめで2枚。来週はこれやるか、微妙です。行きましょう。今週のアルバム寸評。

 

 

Blossoms/Blossoms

 

 

 全英チャートで初登場1位を獲得した新人バンド,ブラッサムズのデビュー作です。マンチェスター出身のバンドなんですが、サウンドの方は「オアシスmeetsペットショップ・ボーイズ」みたいな感じですね。良い意味で大衆的に開かれてはいるんですが、インディの視点で見てクールでは決してありません。その辺りで好みは分かれるだろうし嫌いな人は嫌いでしょう。ただ、インディ界隈のお高く止まり過ぎた感じが大衆性を失わせているのは僕も事実ではあると思うので、この路線、僕はアリだと思いますよ。The 1975が「エイティーズはバンドがカッコつけることとか考えない時代だった」と発言してエイティーズに接近してましたけど、同じような感じなのではないのかな。ただ、1975の方がもう少し曲作りはうまいですけどね。

 

 

Boy King/Wild Beasts

 

 2008年にデビューしたワイルド・ビースツも早いものでこれが5枚目のアルバム。毎度はずしはない人たちですが今回もストレートでシンプルなエレクトロ路線ですが、良いと思います。出来だけで言えばブロッサムズよりはそりゃ上です。だけど悲しいかな、華がないのと、素っ気ないので損してますね。大風呂敷広げる賭けみたいのがもう少しあっても良いのかなとは思いますね。

 

 

 

author:沢田太陽, category:ストリーミング・レヴュー, 22:47
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今週のアルバム寸評

どうも。

 

 

今週もあんまりありませんが、日曜恒例、アルバム寸評、行きましょう。

 

 

A Mulher Do Din Do Mundo/Elza Soares

 

 

今週も実はこれ、ブラジルのアルバムなんですけど、ピッチフォークでベスト・ニュー・ミュージックに選ばれてるのを見て知りました。これ、知らなかったんですけど、2015年のローリング・ストーン・ブラジルの年間ベスト・アルバムなんですね。大絶賛されてたみたいです。このエルザ・ソアレスという人は、御年80歳を超えるおばあさまです。そこらでよくライブも普通にやってますね。彼女は1960年代初頭から活動する黒人のサンバシンガーで、「ブラジリアン・ソウル・ミュージックのはしり」という人もいますけど、70年代の作品聴いても普通にサンバだったりもしたんですが、2000年代にヒップホップ系のプロデューサーと作ったアルバムが好評で、今回「エレクトロに挑戦」みたいに語られてもいるんですが、実際はそんなエレクトロな作品ではなく、むしろ90s後半のミッチェル・フルームのプロデュース作に感じが近いですね。アンビエントを活かした生演奏にエレクトロのエッジが乗ってる感じですね。音の締まりがカッコいいですね。

 

 ブラジルだと、カエターノ・ヴェローゾとか、ガル・コスタの2000年代を超えての作品にこうした実験傾向ありますね。いい流行りだとおもいます。これ、Apple Musicで聴けますよ。

 

 

For All We Know/NAO

 

 続いてはイギリスの黒人女性R&Bシンガーの新鋭、NAO。彼女は今年のはじめのBBCの「Sound Of」の投票で上位に来てて、そのときから期待されてましたね。エッジのあるドレイク以降な感じのR&Bに、細くキュートなソプラノ・ヴォイスが魅力でその良さが生きた作品だとおもいます。メディアでもこれ、大絶賛ですね。ただ、案外90sのアメリカの良い頃のR&Bのニュアンスが思った以上に強くて、期待していた斬新さはそれほどでもなかったかな。Metacriticで80点もらうほどの作品ではない気がしましたけどね、

 

 

 

 

 

 

 

 

author:沢田太陽, category:ストリーミング・レヴュー, 22:54
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今週のアルバム寸評

どうも。

 

 

今週、これ、やらないつもりだったんですけど、1枚だけ対象作品が見つかったので、やります。今週のアルバム寸評。

 

 

 

Rogerio/Supercombo

 

あまりにネタがなかったので、今週はブラジルのバンドです。ただ、最近の不振のブラジル・ロック界においてはかなり期待されてる存在です。スーペルコンボ。サウンドとしては、ストロークスとかフェニックスあたりに影響を受けたと思しき、世界基準で見ていまどきのインディ・バンドって感じです。メガネ男子ヴォーカルにベースが女の子ってとこもね。結構、数年前から人気があって、今年3月のロラパルーザ・サンパウロでもかなり客を集めていましたね。僕もその場で見てます。

 

 

 ロック系のFMでもよくかかるし、本人たちもそれを最近それを自覚してか、シーンで同じく注目されているファー・フロム・アラスかとかスカレーニとよくつるんでるんですが、彼らの多くや、ブラジル・ロック界のベテラン格とか、ブラジルじゃそこそこ知られているR&Bの女性シンガーなど数多くのゲストとのコラボという形で今回のアルバム作ってますね。「いまどきのインディ・バンドっぽい良さ」ってことでいえば、このひとつ前のアルバムの方が良かったんですが、「なんとか自分たちが中心になってシーンを盛り上げよう」という気持ちが伝わる分、好感の持てるアルバムになっています。ただ、エモ系のバンドの友達と組んだ曲が、はからずもアジカンそっくりになっちゃってる感じもあったりしますけど。

 

 

 ちなみにこのジャケ写、バンドとは何も関係ありません。ユニコーンの「服部」みたいな立ち位置のオジサンになってますが(笑)。

 

 

 まあ、リオ・オリンピック前なので、たまにはブラジルものも良いかと。これはアップル・ミュージックにも入っているので、興味ある方は聴けますよ。

 

 

 

author:沢田太陽, category:ストリーミング・レヴュー, 21:41
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今週のアルバム寸評

どうも。

 

 

今週のアルバム寸評なんですけど、これしかありません。これです!

 

 

 

Love&Hate/Michael Kiwanuka

 

イギリスの黒人シンガーソングライターのマイケル・キワヌカのセカンドなんですが最高です!これまでのソウルフルなアコースティックのソウルフルなフォークのイメージから一転、今作ではピンク・フロイドのデヴィッド・ギルモアばりのメランコリックで重たい泣きのエレキギターのソロが随所に鳴り響き、そこにレディオヘッドの最新作で聴かれたようなひねった感じのストリングスが重なり、さらにそこに曲によってフェラ・クティのようなアフリカン・ビートに、「What's Going On」の時代のマーヴィン・ゲイっぽいアレンジが加わったり。そこで現代社会を生きる黒人の息苦しさという、今日的なテーマを歌うわけですからね。すごいです。隙がありません。ビヨンセやレディオヘッドにも匹敵しうる、今年の傑作のひとつですね。こういうのが全英初登場1位と聞くと、なんかほっとしますね。エレキをガンガンに弾きまくる姿はプリンスが亡くなったすぐあとだけに胸が熱くなるものもありましたね。

 

 

 今週はリリース枯れだったので、これだけです。ちなみに来週はお休みの予定。彗星のごとく何者かが現れたらそのときはレヴューしますが。

 

 

 

author:沢田太陽, category:ストリーミング・レヴュー, 20:49
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