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「キミはアメリカのロック系ラジオで今流行ってる曲を聞いたことがあるか?」(3)そろそろ「オルタナティヴ(一味違う)な女性」が救う時代に

どうも。

 

 

では、こないだからやってる連載、「キミはアメリカのロック系ラジオで今流行ってる曲を聞いたことがあるか?」のラスト、行きましょう。

 

前回では、せっかく増えてきてるのになんかかける曲がイマイチなアメリカのロック系のラジオが、「こう言う曲かけたら少しは良くなるのでは?」という提言をしてきて、「でも、本当にこれから一番大切だと思うもの」を残して終わりましたが、その答えを言います。

 

それはズバリ

 

女性アーティスト!

 

もう、これしかありません。

 

 

ここはですね、アメリカのロック系のラジオ局の昔からの泣き所です。とにかくですね、もう、昔から、女性アーティストの曲がかからないんですよ。90sに一瞬、アラニス・モリセットとかノー・ダウト、ガービッジのでてきた頃にかかってたくらいで、そこから後は本当にかかんないですね。これ、サンパウロのラジオでもほとんど同じような感じです。今だってかかるの、フローレンス&ザ・マシーンとアラバマ・シェイクスだけですからね。

 

で、彼女らなんかがかかんない、あるいはかけるの躊躇するんですよ。

 

 

 

もうね。「なんで〜!!!」って感じなんですよね。ラナの曲をかけないんですよ。

 

だって、ファン層が普段どういう音楽聴いてる人が多い人かって、その印象だけで「ありか、なしか」ってハッキリ分かるタイプのアーティストじゃないですか。それがケイティ・ペリーとかアリアナ・グランデ、デミ・ロバートと混ぜて自然な感じなのか、セイント・ヴィンセントとかフローレンスとかと混ぜて自然な感じなのか。その区別がつかないところが、アメリカのロック系ラジオの感性の非常に鈍いとこなんです。こういうとこ、もう、イライラしますね。

 

 

 

Lordeも判断が微妙なとこ、ありますね。

 

この曲なんか、アメリカのラジオ局がここ10年で流行らせた最大のヒット曲だったりするんですが、「じゃあ、彼女が今のアメリカのロック系ラジオの中心か」と言われたら、そんなこと、ありません。とりわけテイラー・スウィフトと関わるようになってから躊躇する傾向があるんですが、じゃあ、「音楽が俗になったか」と言ったら決してそんなことはないわけで。ファン層にテイラー経由のポップな層が加わったというのはあるとは思うんですが、

 

だとしたら

 

「オルタナティヴな女性アーティスト」を好む層を惹きつけるような感じにすればいいと思います。

 

ここでいう「オルタナティヴ」とというのは、「90sのオルタナティヴ・ロックをやる」という意味ではありません。他人に一方的にプロデュースされるでなしに、自分の意思が主体でほとんどの曲を自分で書くタイプのアーティスト、みたいな意味ですね。ただ単に「ギター持って歌ってる」っていうだけじゃなしにね。

 

 だって、ポップの局にしたって、ラナとかLordeとかって、決してかけやすいタイプではないし、彼女たちだって、「ポップ」と括られるのには違和感はメチャクチャありまくりだと思うんですよね。このテのアーティストがいやすい場所を提供すること、これも非常に大切なことです。

 

僕の言ってることを象徴する写真がまさにこれですね。

 

 

 

これ、ラナ・デル・レイのインスタにあった写真なんですが、すごいですよ。マリーナ&・ダイアモンズのマリーナとFKAトウィッグスとフローレンスとラナが一緒に写った写真。ラナって、実は人付き合いすごく上手い人で、インスタ見るとかなりいろんな人と写真撮ってますけど、この写真はすごく仲間意識強い人と写った写真ですよね。特に彼女、マリーナとはかなり親友みたいで、2人だけの写真もかなりあります。

 

その線で行くと

 

 

ケイシーもですよね。彼女のこのブログでの登場頻度、このところすごく高い気もするんですけど(笑)、彼女の今作の曲も、カントリーのステーションでは非常にかけにくいタイプです。今回のでかなりインディのファンついたはずだし、彼女のイメージ変える意味でも、ロック局に開放してほしいですね。

 

 

あと、彼女たちもだなあ。

 

 

このRobynだったり、クリスティーン&ザ・クイーンズみたいな、本当にカッコいいエレクトロの女性アーティストですね。CHVRCHESはロック系のラジオ局は割とよくかかってるアーティストなんですが、だとしたら彼女たちだってアリだし、センスの良さではむしろ上ですよ。「ソロ」か「グループ」の別で偏見で曲をかけない、というのもかなり変な話です。EDMにすり寄った媚びたロック系の曲かけるより、よっぽど健全だというものです。

 

 もう、このRobyn、クリスティーン、ともに期待した以上のこの新曲の出来で、僕も今から楽しみにしてるんですから。

 

 

 あと、それから、もちろん、「ギター女子」、ガールズ・バンドの存在も忘れちゃいけません。

 

 

 

この辺りは言うまでもありません。「女がギター持つのがカッコいい!」と思わせる文句なしのアイコンです。彼女たちの曲、かかってるといえばかかっているんですけど、もう少し「これからは女がギターを持つ時代!」くらいの煽りでかけていいレベルだと思います。

 

 

実際の話、ギブソンの破産申告などでギター産業、大打撃みたいなんですけど、売り上げ自体は決して下がっていないんですって。その理由は、女性の購買層が増えているからなんだそうです。それはこういう記事からも明らかです。

 

https://inews.co.uk/news/taylor-swift-female-guitar-sale-phallic/

 

http://www.lamag.com/culturefiles/electric-guitar-women/

 

 

こういうことからも、ロックも女性アーティストにフォーカスを当てる必要が出てきています。

 

そして、そうしていかないと、せっかくインディで出てきている彼女たちみたいな存在が浮かび上がってきません。

 

 

 

 

僕がこの辺りを押してる話は、3ヶ月おきのトップ10アルバムでも、5月に書いた「今のインディの主要レーベルの押しものは実は女の子ばかりだ」という話でも何度もしてる話なんですが、これも、ロック系のラジオ局が男女差別やめない限り、解消はされません。

 

 ここにあげたものだけじゃないですよ。ヤーヤーヤーズだって、パラモアだって、ウルフ・アリスだってかけてほしいし、ジュリアン・ベイカー、PVRIS、ビッグ・シーフ、サンフラワー・ビーンなどなど、曲かけてほしい女性アーティストはいくらだっていますよ。最近では、女性アーティストがロックもので増えてきてるので、「フェスに女性アーティスト出演の一定の割り当てを」と求める運動なども起こっています。もう、ロックにおける女性のプレイヤー側の割合が増えてきているのは事実で、もう無視はできないところまで来ています。

 

 

 そんな感じですけど、シメは今度の週の週末に新作がリリースされる彼女の曲でシメましょう。彼女もかなりギター持つ姿がカッコいい人です。注目されないかなあ。

 

 

 

 

 

author:沢田太陽, category:評論, 19:57
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「キミはアメリカのロック系ラジオで今流行ってる曲を聞いたことがあるか?」(2)こういうの、かけてみてはいかがでしょう?

どうも。

 

 

では、昨日の続きで、「キミはアメリカのロック系ラジオで今流行ってる曲を聞いたことがあるか?」、これの第2弾を行きましょう。

 

 

今日は、昨日の話を受けて、「こういう曲もかけてみたら、もっとアメリカのロック系ラジオ曲の幅も広がるんじゃない?」というのの提案をしてみたいと思います。

 

 

ザックリ言って5つ。一つは大きいので次回に取るので、4つのタイプ、これを挙げてみたいと思います。

 

 

 崋造魯▲ぅ疋襦廚蔽砲燭

 

まずは、今、イギリスで出てきている、「アーティスト風に見せてるけど、人気のベース、どう見てもアイドル風なんだけど・・」のタイプのアーティストですね。この辺りです。

 

 

 

このあたりは今、イギリスのティーンの女の子、もしくはお姉様方に人気の、「インディじゃないけど、でも、コテコテのアイドルってわけでもない男性アーティスト」の人たちですね。「エド・シーランの台頭後に出来た層」、と言えるかな。特にジョージ・エズラとイヤーズ&イヤーズ、今、本当にかの国では人気がありますからね。

 

イギリスだと、この辺りをロックに含めちゃうのは「おい、ちょっとやめてくれ」みたいな空気はもうあるかとは思います。ただ、アメリカが新しい「若いコに受けるアイコン」を探しているのであれば、彼らを使うのも一つの手だとは思います。ただし、「すごく短期的に」ではありますが。

 

 実際、サンパウロのロック系のラジオだと、前作ではあるんですが、ジョージ・エズラもジェイムス・ベイもかかってましたよ。イヤーズ&イヤーズも、「ロラパルーザで見たいアーティスト」のアンケートでも必ず上がる名前だし。なので、「ユーザー・ベース」でも需要はあるような気もしているので、取り入れてみてもいいと僕は思いますよ。

 

 実際、ソングライティング的にも彼ら、ロックからんでますしね。ジョージ・エズラのその曲、すっごくダサいんですけど(笑)、でも曲作ってるの、アスリートって言って、2000sの前半にUKロックで結構人気あったバンドの人ですからね。ジェイムス・ベイは、今年出たセカンドはポール・エプワースのプロデュース。そのおかげでちょっと垢抜けてますね。イヤーズ&イヤーズはこないだ出た新作、あれ、かなり評判いいんです。僕もシングルになった2曲は好きですね。彼ら、というかオリーの場合、もうちょっと頑張らないと、「でも、その曲、インシンク末期からソロになりたてのジャスティンだよね」の域を出なくなる危険性もなくはないんですが、周囲にいる人たちも含めてエッジィに見せる努力をしてたらいいクロスオーバーにはなるような気がしています。

 

ただ、

 

 

ここまで手を広げる必要はないかなあ、とも思いますけどね。彼らの場合、最初から打ち出しが「アイドル」だったですからね。

 

 

 

▲薀Ε鼻Ε蹈奪、クラシック・ロック系リヴァイヴァル

 

 続いててはですね、これは普通に「なぜもっとやらないの?」と思うタイプのものですね。ラウド・ロック、あるいは70s〜80sのハードロック・リバイバル。この辺りですね。

 

 

この辺りは普通にかかってアリだと思いますけどね。

 

グレタ・ヴァン・フリートに関しては、もう時間の問題ですよね。昨日も言ったアメリカのALT系のラジオ局のサイト、どこでも彼らの話題してるんで。上の曲も結構、ロック・チャートの上位に行って、アルバムもかなり売れると思います。あっ、なんか前、僕が言った発言を曲解して「アデルくらい売れる」と僕が言ったと思っていらっしゃる方がいるようなんですが、違います。「リスナー層が似てる」という意味なだけで、「売れる枚数が同じ」だとか、そういうことは言ってません。

 

 あと、ゴーストも前も言ったようにアルバムはアメリカ、イギリス、オーストラリア、ドイツ、フランス、イタリア、スウェーデンでトップ10入りするくらいのすごい人気だし、ヘイルストームも英米でアルバムがトップ10です。それで「ロック系のラジオ局で曲がかからない」というの元来、変な話ですよね。

 

 今、アメリカって、10〜20年くらい前に流行ったニュー・メタルとかオールドスクールなヘヴィ・メタルはのれん分けがされていて、「アクティヴ・ロック」という名称のラジオ局専門でかかっていていて、その影響があるのかどうかわからないんですけど、例えばファイヴ・フィンガー・デス・パンチだったりシャインダウンといったバンドもアルバム、英米トップ10くらいの人気があったりします。ただ、アクティヴ・ロックのラジオ局って今、数もすごく限られているし、ロック系のチャートの集計にもほとんど影響力持たないから、僕はこの際、ALTの曲に吸収してもいいと思うんですけどね。メタル系のリスナーの場合、昔から「激しい音以外は聞きたくない」みたいな意固地な性格があるため、そこがややこしくなってしまうとこではあるんですけど、今のロック内での需要のバランスの範囲内であるならば、取り入れてもいいと僕は思いますけどね。で、また影響力を持つようなタイミングが来れば、その時にまた細分化すればいいわけで。今のロック界に「細分化の体力」があるとは、僕は思っていません。

 

 そうじゃなくても、上の動画の3つのバンドくらいは、そこまで音がハードってわけでもないから、その意味でも普通にアリかなあ、と思うんですけどね。わざわざ、「アクティヴ・ロック」に分ける必要ないと思います。だいたい、ヒップホップにジャンル分けしたラジオ局とか雑誌メディアなんて、そんなのないですからね。それ考えると、ロックって、長い歴史の中で人のタイプ的に本当にいろんな人を惹きつけてきたんだなあ、とは思いますけどね。

 

 

1冓動奮阿旅颪ら才能を発掘する

 

あと、ストリーミングを通じて音楽情報がインターナショナルになってるんだから、英米以外の国の才能の発掘を積極的にすべきですね。ポップの世界では実際、K-Popが出てきてるわけだし、コロンビアのレゲトンなんかもあるわけですからね。ロックだって対抗すればいいと思います。

 

例えば、僕はこれを激押ししますけどね。

 

 

オーストラリアの若きカリスマですね。ギャング・オブ・ユース。彼らは僕の去年の年間ベストの20位以内に入れたバンドなんですけど、最高ですね。彼らが本国以外に、英米で巨大なバンドにならなかったらロック界の損失ですね。それくらいスケールの大きな才能だと思ってます。サウンド的にも、アメリカだから押すべきバンドだと思います。

 

 

あと、このジール&アーダーとかも、今、紹介するタイミングはすごくいいと思います。彼らはスイスとかドイツではもうすでにかなりの人気があるみたいですけど、「ブラック・メタルとゴスペルの融合」といった、かなりオリジナリティあるサウンドを展開しています。曲も、リスナー層を選ばない広さがありますしね。

 

これは、僕のお友達のライター、エディターの人が紹介してくれたんですけど、すごくいいですね。なんかのタイミングがあれば、世界的に広がりそうな気がしてます。フロントマンが黒人というところも、ポリコレが進んだ現在の世の中的に大事なとこだとも思うんで。さっきのギャング・オブ・ユースのフロントマン、彼もサモア系の人だったりします。

 

 

いい泙い舛鼻◆屮瓮献磧爾鳩戚鵝廚眤膸

 

 あとですね、「もう今さら」と思われていた「メジャー・デビュー」、これもいまいちど、大事になってきてる気がします。

 

 というのもですね、これはお恥ずかしい話ではあるんですが、アメリカ人って、「本当はインディ、嫌いなんじゃないか」って思えるとこ、あるので(苦笑)。

 

 

 本当に昔から、アメリカのラジオ局って、インディ・レーベルのバンド、かけるの嫌がるんですよ。僕がHTEやってる時に苦労したのもそこです。あの時期にアメリカでヒットしたインディ・ロックってキラーズでしたけど、あれはユニバーサルが押したから可能だったわけで、あの時期、他にかかってたインディものだって、モデスト・マウスとかデス・キャブ・フォー・キューティだって、あれはメジャーにレーベル移籍したから可能だった話です。

 

 これが例えば、2008年以降くらいのピッチフォークが押したタイプのアーティストだと、ラジオ、全然かけてくれませんからね。ボン・イヴェールとかフリート・フォクシーズとか。ああいう、サブポップとかマージのアーティスト、マタドールのアーティストとかだと、なんかラジオ・オンエア、すごく冷たいんですよ。2010年代にヒット出した、例えばマムフォード&サンズとかフォスター・ザ・ピープルとか。あれも大手のメジャーがついてラジオがたくさん曲かけましたからね。そういうとこのフラストレーションはずっとありましたね。

 

 もちろん、「ラジオ側がインディ・レーベルに振り向く」ということが一番いいんですけど、それが叶わないなら、アーティストの側がメジャーに行く。これも一つの手です。

 

と、思ってたら、それを彼らが実行するようですね。

 

 

ヴァンパイア・ウィークエンドですね。ソニーに移籍するようです。

 

いいことだと思います。彼らも、これまで作品の評判はいいのに、ラジオで満足に曲をかけられなかったバンドですからね。この移籍はすごく意味があると思います。タイミングもバッチリです。

 

 メンバーも変わって、ライブの評判も今回、いいようですね。もう、こないだも言いましたけど、僕は彼らのライブは正直苦手でした。僕以上にブラジルのメディアも、2014年にサード出してきた時のロラパルーザのライブ、もう、ケッチョンケッチョンに叩いてましたからね。だいたい、アルバム2枚連続して全米1位なのに夕方のスロットしか任されなかったところに「何をかいわんや」だったわけですけど、エズラの中で何らかの意識改革みたいのがあったのかなあ。確かに、このライブの様子、今までとは何か違う感じはしますね。

 

 特にmyspaceの時代に、インディ・バンドが「もうネットでの話題で人もCD買ってくれるし、それでいいんだ」みたいな状態になってたんですけど、Spotifyの時代って、逆に多くの人が話題にしてくれるものの共有が強い時代で、そこでインディは一気に逆風に立たされてしまいました。だから、今一度、「頑張って目立つ方向」に行かないと、なかなかキツい。そんな時代の、「インディの突破口」みたいな存在も、やっぱり必要だとは思いますからね。

 

 

で。本当はイあるんですけど、ここはとびきり長い、そして一番重要なことです。「全英チャート」の後に続きます。

 

 

author:沢田太陽, category:評論, 19:35
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「キミはアメリカのロック系ラジオで今流行ってる曲を聞いたことがあるか?」(1)まず、この中の何曲知ってる?

どうも。

 

では、昨日もちょっと前振りしましたが、今日はロック系の評論、久しぶりに行きます。今日のテーマは

 

 

アメリカのロック系ラジオ局

 

 

これについて、おそらく3回に分けて話そうかと思っています。

 

 

「ロックのラジオ局」というテーマでは、実は今年の2月15日にも同じような記事を書いているし、去年の4月にもアメリカでのロックの落ち込みに関して書いていたりはするのですが、今回もその応用です。「またか」と思われることも言及するかもしれませんが、大事だと思うからこそリピートしておきます。

 

 

いろいろ話したいことはありますが、まずは今、アメリカのロック系のラジオ・チャートで流行ってる曲、10曲をまず聞いてみてください。これはルボードの「Alternative Songs」というチャートなんですが、もう、この25年くらいですかね。これがアメリカのロックでの実質上のヒット・チャートになります。1位から順に行きます。

 

 

 

 

というのが、ここ最近のアメリカにおけるロックのはやりの10曲らしいのですが、僕の第一印象は

 

 

なんだ、こりゃ?

 

そういう感じですね。

 

 

ぶっちゃけ、今、僕のブログを読んでいるタイプの人だと、ロックの情報をビルボードの経由で得る人というのはほとんどいないような気がします。やっぱ、特に日本だと古くからの活字メディアだったりウェブの音楽サイトとかからでしょ?僕もやっぱ、批評系のサイトからの情報が主、英米の両方見ますけど、気持ちイギリスが多いかな、って感じなんですけど、

 

そういう生活してて、「今のロックで10曲選べ」と言われたら、こんな選曲にはまずしません。

 

 まず、「大衆性を意識して選べ」と言われたら、僕だったらアークティック・モンキーズの「Four Out Of Five」だったり、フローレンス&ザ・マシーンの「Hunger」とかかけますね。あとThe 1975も新曲が2曲あるわけだし。もうちょっと大人目線を意識するのが許されるならファーザー・ジョン・ミスティとかも。おそらく、そっちの方が、アメリカのアルバム・チャートでの人気を考えても妥当だと思うんですね。トップ10には入るアーティストだから。

 

 そこへ行くと、この週のアメリカのラジオのトップ10で大衆人気があると言えるのって、まあウィーザーはあるし、昨日も言ったようにネットでの話題があったから売れてるんですけど、他にはトウェンティワン・パイロッツ、パニック・アット・ザ・ディスコ、イマジン・ドラゴンズくらいのものですね。この辺りだとアルバムも売れるアーティストですからね。特にパニックに関しては、前作からなんかすごく売れるようになってますね。

 

 後の曲は、正直、「なんでかな?」と思うチョイスばっかりですね。これ、10位圏外見ても同様で、そういうのと、さっき言ったアークティックとかフローレンスの曲がそこいらの順位なんですよね。解せないです(笑)。

 

 フォスター・ザ・ピープルに関しても、僕は好きではあるんですが、今回のアルバムの曲かけるんだったら、「じゃあなぜ先輩のMGMTの今回のアルバムからはかけないの?あっちの方がはるかに内容良いのに」と思っちゃいますからね。

 

 

 「そんなの無視すりゃいいじゃん」って、そう思われるかもしれません。でもね。それが、そういうわけにもいかないんですよ。なぜなら。

 

 

 今、アメリカでロックのラジオ局、また、増えてきてるから!

 

 実は、「アメリカでロックのラジオ局が減った」こと、そのものが、2000年代後半からここ10年のアメリカでのロック不況の最大の理由だったんですね。2008年くらいだったかな。アメリカでそれまですごく人気だったラウド・ロックの人気がガタ落ちして、そういうのを専門にかけていた局がバタバタ潰れて、それがスポーツ・ラジオとかになったりしたんですね。その影響で、ニューヨークなんて10年以上、「ロックの最近の曲をかけるラジオ局がなくなってた」。そんな状況さえあったんです。

 

 

それが

 

 

特にここ1年くらいですね。アメリカの、少なくとも大都市圏で、この「ALT」のロゴの入ったチェーンのラジオ局が一斉にでき始めたんですね。これませトップ40系の局だったり、カントリーの局だったりところを潰して、こういう局が今だいぶ出来てきています。

 

その影響もあって、今週

 

ビルボードの総合シングルチャートに、上のトップ10から4曲がトップ100に入ってます!

 

 

順位は全部低いんですけど。これ、結構快挙なんですよ。2000年代の前半以来くらいじゃないかな。もう、ロックのチャートで流行っても、総合のシングル・チャートに入るのなんてせいぜい1曲か2曲の時代が続いてましたからね。これはこの、ロック局の増加が間違いなく影響してきていると思います。

 

 入ったのは、今、唯一のヒットメイカーのイマジン・ドラゴンズを始め、ウィーザーとLovely The Band、そしてフォスターですね。

 

 最近まで知らなかったんですが、フォスターのその曲は総合シングルチャートでは42位まで上がっていて、実はかなりのヒットになっていたんですね。そういう情報ってなかなか入んないと思うんですけど。フォスターは僕としては、今、本当ならイマジン・ドラゴンズの代わりに彼らが流行ってくれていたら、今のこういうラジオでかかる曲のテイストがもう少し良くなってたんじゃないかなあ、と思って悔しいんですけどね。

 

 ただなあ〜

 

広がっているのはいいけど、流行らせたいタイプのロック、それで本当にいいのか??

 

 だって、局が現状のロックの傾向、把握してるとは思えないんだもん。「毎週、新作のチェックとかしてる?」「フェスとか見に行ってる?」という感じで。なんか見ていて

 

 

「イマジン・ドラゴンズの二匹目のドジョウ狙い」がミエミエなんだもん。

 

 

イマジン・ドラゴンズっていうのは、インディ経験が全くない、最初からメジャーなポップ・シーン狙いで出てきたバンドです。EDMとかヒップホップに目配せしてるから、それで最近のアメリカン・キッズがアクセスしやすい、というのは確かにあるとは思います。

 

ただ、

 

そういうポップの他ジャンルに媚びた感じで、ロックを引っ張っていけるの?

 

という思いは僕にはありますね。

 

ただ、僕のアイディアが正しいかどうかの自信もないんですよ。もしかしたら、僕が「こっちの方がいいんでは」と言ってあげたようなものだと「キッズ受けしない」のかもしれないし、もしかしたら、ロックを大衆的なマス人気に戻すためには、EDMとかヒップホップの流行りの曲に似たテイストのある方が、「シーンの商業的な回復」を考える意味ではビジネス的には正しいのかもしれません。

 

 

でもなあ。あの最近の「歌ものEDM」にありがちな、深すぎてうるさいエコーとか、編集点みたいなストップとか、それまでの曲の流れとは全く関係ない「ブオーン」みたいな唐突のエレクトロ・フレーズの繰り返し見たいのが出てくると、萎えますけどね。そこの8位とか10位に入ってるのがその類に近いですけどね。

 

 あとですね、仮にヒップホップに近付こうとしたところで、今のままなら、ビルボードのR&B/ヒップホップ・チャートのトップ10の曲にはかなわないですよ。トラップなんかは似た曲多すぎて問題になるものもあるんですけど、今のR&B/ヒップホップのシングルの上位に入るような曲っていい曲は確かに多いですからね。今週のチャートならドレイクとかカーディの曲はやっぱいいし、前作あfれだけ嫌いだったポスト・マローンも今作の曲はそこまで悪くなかったりしますからね。そういうのに比べると、現状でロック・チャートで売れてる上の10曲のような感じだと、全然負けてると思いますね。

 

 とはいえ、35年以上、ずっとロック応援してる立場からしてみたら、「復活しそうなタイミング」というのがあるのなら、やっぱり応援しないわけにはいかないんですよ、これが(笑)。だから、どんな風に復活するのかは見ものではあります。

 

 その手がかりで気になってるのは、上のLovely The Bandっていうバンドですね。これがその、ポスト・フォスター、ポスト・イマジン・ドラゴンズみたいな感じの「ああ、こういうのアメリカで流行らせたいんだろうなあ」と思える典型的な曲ですから。これが今、総合シングル・チャートで69位まで上がってきています。毎週5〜10ランクずつ上がってきてます。そこまで好きな曲でもないんですが、ちょっと気にして見てみようかなとは思ってます。

 

 まあ、いずれにせよ、人気が回復するなら、ヒップホップとまでは言わないまでも、人気が落ちてきているカントリーくらいは抜いてほしいなあ、くらいな気持ちではまずいますけどね(笑)。

 

 

 明日と、多分もう一回は「もっと、こういう曲、かけてみたら?」という、僕なりの提言をしてみようと思います。

author:沢田太陽, category:評論, 18:52
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ストリーミングの時代になっても、6、7曲のアルバムは流行らないと思う

どうも。

 

先週末は

 

 

 

カニエ・ウェストのこれが出たんですよね。

 

最近の変な言動の割にはそんなに悪いアルバムではなかったです。ただ、前作から感じてた「ゲストの才能依存」な感じは否めないものでもありましたけどね。

 

でも、それより気になったのが

 

収録曲の少なさ!

 

わずか7曲で20分強ですからね。なんか、聞いててすぐ終わって物足りないんですよ。

 

 

これ、カニエがこの前のアルバム、すっごく曲が多くて長かったからその反動だと思うんですけど、でもねえ、これだとかえって物足りないんですよ。プログレくらいの曲の長さだと、これでも60分くらい行く可能性があるからいいんだろうけど、20分ちょいでアルバムというのもねえ。

 

 

 

カニエがプロデュースして、その1週前に出たプッシャTのアルバムは同じ7曲でも内容は良かったんですけどね。このジャケ写、ホイットニー・ヒューストンの晩年のドラッグまみれのバスルームというジャケ写のセンスは最低なんですけど、トラックとリリックはすごくキレがありました。

 

 

だけどなあ、これにしたって、「せっかく調子いいんだったら、もう少し聞きたいよなあ」とは思うんですよ。確かに、最盛期を過ぎたベテランのアルバムとかなら、「覚えても数曲」「ライブでもせいぜい1、2曲」みたいなパターンがあるからそれでもいいのかもしれないですけど、そうでもあないアーティストにそういうことやられると物足りなさしか残らないです。

 

それ以外でも

 

 

このウィーケンドのEPもつまんなかったしね。前作は20曲くらいで曲は多すぎたかもしれないけど、その中でいい曲はあったし、作品としてのスケール感もあったから良かったのにね。

 

あと、だいぶ前になりますけど

 

 

レディオヘッドのこのアルバムも、7曲収録でしたけど、彼らのディスコグラフィの中で評価低いでしょ。やっぱ、食い足りないからなんですよ。

 

あと

 

 

ナイン・インチ・ネールズもある時期からこう言うEPばかりだしてますけど、なんか「アルバムのための予行演習」に見えちゃって、ファンの本気度がどうしても落ちちゃうんですよ。いや、ファンじゃなかったとしたら、なおさらですよね。

 

 

 結局のところ、アルバムの長さっていうのは

 

 

 人が「音楽を集中して聴きたい」と思える時間の体内感覚で自然に決まったものだと思うんですよね。

 

 

 これって僕は「普遍」だと思っていて。例えば映画にしても「90〜100分以内」だと「ちょっとそれ短いな」と思うでしょ。逆に「135〜140分以上」だったら長いと感じる。それが自然の感覚だと思うんです。

 

 

 そういう「人間の生理」にあえて反することはしない方がいいと思うのが僕の持論ですね。それはテクノロジーがストリーミングの時代になろうが変わらないと思います。

 

 

 

author:沢田太陽, category:評論, 20:55
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エンタメ界の三刀流、ドナルド・グローヴァー(チャイルディッシュ・ガンビーノ)、10年の軌跡

どうも。

 

では、今日はこの人の特集、行きましょう。

 

 

 

もう、世界で話題沸騰ですね。ドナルド・グローヴァー。彼の、この10年の軌跡を振り返ってみたいと思います。

 

 

よくよく考えてみるに、彼ほど、当ブログにふさわしい人、いませんね。だって、音楽もやって、映画も、テレビドラマも、みんなやって成功してるわけでしょ?ここまで器用にそれをやり遂げた人、僕のこれまでのエンタメ・ファンの人生の中でもいませんよ。本当にすごいことだと思います。

 

では、その彼の軌跡を、約10年前から遡ってみましょう。

 

 

ドナルドは1983年9月生まれです。生まれはカリフィオルニアで、育ちはジョージア州です。かなり成績は優秀だったらしく、大学は名門ニューヨーク大学(NYU)です。専攻は演劇科だったみたいですね。そこで彼は脚本と、音楽活動を当時から並行してやっていたようです。

 

で、大学を卒業のタイミングで、自分のデモ脚本を「シンプソンズ」に当てはめて書いたものを送ったら、それが認められて、NBCで脚本家デビューすることになり、それがそのうち

 

 

ティナ・フェイのエミー賞受賞の傑作コメディ「30 Rock」での端役の出演につながります。「30 Rock」、この当時見てたんですけど、全く記憶にないんですよね。それくらい小さな役だった、というわけですが、2009年、彼にとっての最初のブレイクスルーが訪れます。

 

 

それが、このコメディ「Community」ですね。これはこの当時、すごく地味ながら熱心な固定ファンがいたコメディですね。これはコミュニティ・カレッジに通う、人種も、年齢もバラバラな人たちが繰り広げるドタバタ・コメディで、主要キャストがみんなしてかなり大げさな演技してナンセンスなギャグ繰り広げてましたね。 これは僕がちょうどブラジルに渡って行ったときにブラジルでも放送されていたので、ちょくちょく見てました。彼はそこで

 

 

 

トロイ・バーンズってキャラクターをやってました。いつも声裏返してエモーショナルにしゃべる役でしたけど、止まらなくそれをやるんで、見てて吹き出したこと、何度かありました(笑)。この「Community」

 

 

毎年のように打ち切りの噂がある中で、ファンの嘆願などもあって6シーズン続きました。これ、今のデイヴ・フランコの嫁さんのアリソン・ブリーとか、ネットフリックスの「Love」で主演してたジリアン・ジェイコブスとか、「ハングオーバー」でおなじみの中国系のケン・チョンとか出てましたね。ケン・チョンなんて、「中国人のスペイン語教師セニョール・チャン」っていうワケのわかんない設定でしたけど(笑)。これ、日本でも確かhuluで見られるはずです。僕のとこではアマゾン。プライムで見れるので、ひょっとしたら権利、動いてるかもしれませんが、オモロイです。

 

で、この番組が始まってしばらくして、音楽の方面から「チャイルディッシュ・ガンビーノっていう面白いラッパーが出たよ」という話を聞きます。それが

 

 

これだったわけですけど、見てみて「なんだ、コミュニティのアイツじゃないか!」と思ったんですね。で、曲名がこれ、セス・Rオーゲンとかジェイムス・フランコとか産んだ伝説の青春コメディだったものだから、「やっぱ、そっち関係か」などと、よく聞きもしないで当時は思ったものでした。

 

ただ、

 

 

このデビュー作の「Camp」、ビルボードのアルバム・チャートでトップ10目前くらいのヒットになってるんですよね。「Community」はアメリカじゃ有名なコメディだったので、「あの人がラッパーもやるんだ」という興味はこのあたりから持たれてたのかな。

 

 そうしていくうちに、2013年くらいから、彼はちょくちょく他のドラマや映画にも顔を出すようになります。

 

 

HBOの「ガールズ」では、レナ・ダナムの短期間のカレ氏役も演じてましたね。

 

そして、この後に

 

 

この曲を含めた

 

 

「Because The Internet」というセカンド・アルバムがビルボードでトップ10入りして、2014年にロングヒットします。僕的には「いいけど、薄味のドレイクみたいだな」と思ったんですが、ちょうどチャンス・ザ・ラッパーとかがインディで注目された時期とも重なって、かなりいい印象をラッパーとしても持たれ始めましたね。

 

 そして2015年くらいから、彼の快進撃が始まりまして

 

 

チャニング・テイタムの「マジック・マイク2」だとかにチョイ役で出た後に

 

 

役者として、これで当てるんですよ。リドリー・スコット監督の「オデッセー」。ここでの「天才コンピューター・ギーク」の役は、オスカーの作品賞にノミネートされたこの作品の中でもキーとなる役でしたが、ここでも映画界的にも注目され始めましたね。

 

 

 

そして、この間、「Kauai」EPというEPを出したんですが、ここでの「Sober」が注目されます。ここから彼はヴォーカルの比重を上げていくんですが、「歌を歌わせても実はかなりうまい」ということが、ここでわかりました。

 

 

そして!

 

 

 

 

自ら脚本と主演を兼ねたドラマ「アチランタ」がFXで放送され、これが大好評で大ヒットになります。これは、大学をドロップアウトして郷里のアトランタに戻ってきたドナルド扮するアーンが、いとこのギャングスタ・ラッパーやら、元ヨメや娘らの間で翻弄されるトホホで勝つ笑える日常を描いた作品です。これは「ネットフリックス」で今ならシーズン1は見れるはず(日本はどう?)ですが、彼はこれで

 

 

 

ゴールデン・グローブでもエミーでも、作品賞と主演男優賞を受賞する快挙を達成します!

 

このくらいからですね。彼が神がかって来たの。そして、そこに加えて

 

 

チャイルディッシュ・ガンビーノとしてのサード・アルバム「Awaken My Love」も大ヒットします。これはなんと、全編オールド・ファンクのヴォーカル・アルバムでして、彼の多彩さを証明するものになったんですが

 

 

ここからのシングル、プリンスのバラードを思い切り意識した「Redbone」が、大ヒットしオスカーにもノミネートされた人種問題ホラー映画「ゲット・アウト」に使われたことも手伝って、全米トップ10入りの大ヒットになります。この曲、僕はアウトロのギター・ソロが凄く好きですね。局長はオザケンの「今夜はブギーバッグ」っぽく、そこも好きです。

 

 

彼はこの作品でも、今度はなんと、今年のグラミー賞の最優秀アルバムにノミネートされます。そんな風に、ものすごい勢いだった矢先の

 

 

 

5月5日の「サタディ・ナイト・ライブ」であり

 

 

「This Is America」だったわけです!

 

 

 こういう風にして、テレビドラマ、映画、音楽を縦横無尽に動く超才人が放った、アメリカ社会の人種や暴力の問題に深くメスを入れたヴィデオだったからこそ、大きな話題となったのです。ここまで言ってきたような軌跡が仮になかったのならば、ここまで大きな話題にはなっていなかったでしょう。

 

 

 なぜ、ドナルドがこのような奇跡的な活動をすることができるのか。それはひとえに、彼の才能によるところも大きいわけですが、そこに加えて

 

 

友人との共同作業が大きいですね。音楽だと、このロン毛のスウェーデン系アメリカ人、ルードヴィッヒ・ゴランソンです。チャイルディッシュ・ガンビーノの作品は全て彼との共作です。ルートビッヒは「Community」の音楽を始め、今やテレビ界のサントラで引っ張りだこの人です。

 

 

 

そして、映像方面ではヒロ・ムライです。彼、日本生まれの日本人ですよ!9歳でLAに越したらしいですけど、彼はミュージック・ヴィデオの世界でもかなりの売れっ子で、彼の作品だけでも特集の価値があるくらい、すごいリストなんですけど、彼が「アトランタ」の映像関係も監督し、さらにあの「This Is America」ですよ!彼の今後も楽しみです。

 

 

 そして、もう来週末ですけど、

 

 

スター・ウォーズのスピンオフ「Solo」でのランド役ですよ!一説ではもう、ランド主演のさらなるスピンオフの噂まで出ています。

 

 

で、9月からチャイルディッシュ・ガンビーノとしての全米ツアーで、年末にはアルバムの噂があります。もう、来年にかけてはなんか彼一色になりそうな、そんな勢いですね。

 

author:沢田太陽, category:評論, 18:07
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アークティック・モンキーズの新作炎上騒ぎに見る、欧米でのロックに対する渇望感

どうも。

 

では、今回も、この話題、行きましょう。

 

 

アークティック・モンキーズの新作「Tranquillity base Hotel&Casino」をめぐる、ファンの騒ぎですね。日本だと僕はどういう反響なのか知らないんですが、欧米圏では、レヴューやってるサイトのフェイスブックの書き込み、どこ見ても大炎上です。困ったことに、アークティックのオフィシャルの書き込みにもそれが流れててね。「おいおい、落ちつけよ」という感じです。

 

 

だいたい、僕が理解できないのは、いくら今回、彼らが変わったとはいえ、それが決して予測不可能な変わり方ではなかったことなんですね。だって、ラスト・シャドウ・パペッツ聴いてたら、60sのムーディな雰囲気をアレックスが好んでいるのはわかるし、ピアノだって彼はニック・ケイヴのファンでもあるんだからこれも分かる。ヒップホップのダークでヘヴィなビートが好きなのは、セカンド・アルバムの時から明らかだし、彼本人が公言しています。

 

そして、どんなアルバムが今回作りたかったのかというヒントも、ご丁寧に分かりやすく出してるんですよ。アルバムの5曲めと7局めには思い切りビーチボーイズの「ペット・サウンズ」を意識したアレンジをやってるし、9曲めに至ってはビートルズの「マジカル・ミステリー・ツアー」の最後のフレーズ、思い切り歌ってますしね。60sのサイケ期のようなトータル・アルバム作りたかったのはそこからも伺えるんですよ。

 

だから、しっかり、アルバム制作の焦点は定められているし、確信を持って作ったはずなんですよ。それなのに、いわゆるジャーナリストまでもが「ラウンジ趣味の変なアルバム」とかってレヴューしたりね。「おいおい。LSPとか、ちゃんと聞いてるか?」「楽曲構成そのものだったらHumbugの方が変なアルバムなんだけど、あれより曲が難しいか?」って突っ込みたくなるんですけどね。

 

 

 それに「ロックをやめてしまった」だの「初期のリリックにあったエモーションが失われ、今や成金趣味に陥った」とか不満を垂れる人が多いんですけど、別にギター弾くのを完全にやめて全編エレクトロになったわけでも、アフロ・ビートを導入したわけでもないのにね。あと、30も過ぎて、工業都市の退屈な日常を生きてナイトクラブから追い払われる生活描く方が変でしょう?成長とか、センス・オブ・ユーモアとかわからないのかね、と思いますね。

 

 

 もう僕的なことでいうと、まだ年間ベストはどのあたりに入れるかはまだ先すぎてわからないんですが、3ヶ月おきにやっているトップ10には、もう宣言します。必ず入れますよ。彼らのキャリアの中でも、「AM」や「Favorite Worst Nightmare」ほど好きかはわからないんですが、僕はデビュー作、好きですけど、そこまで入れ混んだ作品でのもないので、それと同じくらいかそれ以上か。残りの2枚よりは確実に好きですね。

 

 

 ただ、一点だけ、僕がアークティックが今回のアルバムを出すにあたり、一つだけ計算違いだったのは

 

リリースするタイミング

 

これが良くなかったのかなあ、とは思います。

 

それは僕がこないだ「ポップ・ミュージック雑感」で書いた、グレタ・ヴァン・フリートが密かにアメリカで売れている、という話に通じるものです。ここに詳しく書いてますけど、実はギター・ドリヴンな”ロックらしいロック”というのは潜在的に渇望されている音楽で、ロイヤル・ブラッドもキャレオもフェスでライブやればすごく人気がある、という話を書きました。

 

 

 どうやらアークティックも、その一つとしてカウントされていたフシがあるんですよね。イギリスでもアメリカでも「AM」がかなり長いこと売れた背景にもそれがあると思いますしね。実際、クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジのジョッシュ・ホーミとはサーDお・アルバム以降、懇意だったイメージもありますしね。

 

 加えて、そのアルバムから5年経っていたこと。ここ最近、そういうギターによるロックが売れてなくて、エレクトロとの折中したようなものがやたら目立っていたこと、フェスのロックバンドの出演領域が削られていたこと、往年のロッカーが次々と世を去ること、ギター・ブランドのギブソンが破産申告したことなど、ロックでいいニュースが入ってこない。そういうこともあって、

 

 

欧米のロック・ファン、かなりイライラがたまってるんだと思うんですね。

 

 

それがああいう形での炎上での爆発になった、ということなんでしょうね。もし、アークティックがハードなロック・アルバムをこのタイミングで出していたら、かなりのヒットになってたと思います。それこそ「ロックファンの数少ない頼みの綱」みたいな感じでね。

 

 

僕としては、アークティックはそうしないでよかったと思います。そんな打算に走らず、作りたいときに作りたいアルバムを作ることでバンドとして「死に体」にならないようにするのが、彼らみたいなフロントランナーのバンドには必要な姿勢なんでね。だから、今回のアルバムはこれでいいし、ファンももう少し理解と歩み寄りが必要だと思うし、もう少し時が経てば落ち着いてものが見えるような気もしてるんですけどね。

 

 

それにしても、こないだの「スター・ウォーズ」もそうなんだけど、このネットの世の中って、自分の中で吟味しきれないタイミングで「ワーッ!!」って簡単に炎上するの、なんとかならないのか、とも思いますけどね。

 

それから

 

 

 

ロック聞いてて、こういう「驚きの展開」ができにくくなるのは、それはそれですごく悲しいですけどね。アークティックの今回の方向性って、この2曲と比べてみても唐突な感じはしないし、通常の路線から別段「不似合い」な感じもないんですけどね。

 

まあ、でも、

 

 

 

イギリスでは2位から20位の売上を合計した数よりも売れてるそうです!

 

 

そこが救いだし、時間かけて噛み砕いて聴いて欲しいんですけどね。

 

author:沢田太陽, category:評論, 20:10
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