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沢田太陽の2017 年間ベスト・アルバムTop50  20-11位

どうも。

 

 

では、年間ベスト・アルバム、続けていきましょう。今度は

 

 

 

トップ10目前だった20位から11位を見てみましょう。こんな感じでした。

 


20.Who Built The Moon/Noel Gallagher's High Flying Bird

 

 

20位はノエル・ギャラガー。21位のリアムと兄弟で続きました。最初はそうしてなかったんですけど、リアムがグングン上がったことによって接近し、「じゃあ」と思ってノエルの順位を下げたらこうなりました。でも、連番でも、別グループになったとこも、この兄妹らしくていいでしょ(笑)。

 

 このアルバムは、僕はかなり「やったなあ、ノエル!」と快哉をあげましたね。なんか、ようやく、オアシスの呪縛から離れることができたというかね。リアムは、やっぱりあの声なので、どうしてもオアシスらしい曲の方がカッコいいし聴く側もそれの方がしっくりくるんですけど、ノエルはソングライターだけど、やっぱりシンガーでは元々無いので、オアシスみたいな曲を歌い続けても最終的な説得力ではリアムにはどうしてもかなわない。だったら、もともとはソングライターなんだから、もっと自由にやってもいいのにな・・と思っていたら、今回思い切ってそれをやった感じですね。

 

 なんとなく、「変わりたいのかな」とはオアシスの「Don't Believe The Truth」のときに思ったし、ソロになって以降、多彩な楽器やデジタル・リズムも取り入れたがっていたのはなんとなく感じてはいたんですけど、ようやく彼固有の「くせメロ」から距離を置いて、一人の個人として自由に作ったなと。「オアシスというよりニュー・オーダー」みたいな曲もあるし(笑)。あと、このアルバムでもう一点好きなのは、アルバムの曲順を意識した、収録曲のそれぞれの楽曲の位置と役目までしっかりと計算して作れているなと思ったとこですね。だからすごくトータルにまとまって聞こえるし、そこまで気を配る余裕があったところにアルバムの充実があったのかな、とも思います。

 

 ただなあ。今はノエルのこのアルバムにもそれなりの感慨があるので彼のを上にしてますが、もしかしたら1年くらいした時、リアムのアルバムの方が好きになっている可能性はなきにしもあらずです。

 

 

19.Capacity/Big Thief

 

 

19位はビッグ・シーフ。アメリカはブルックリンを拠点にした、女性ヴォーカル+野朗3人のバンドです。

 

 これは僕的に、2017年の、ちょっと隠し球的な気持ちのあるバンドですね。2枚目のアルバムなんですけど、知ったのは今年のサウス・バイ・サウスウェストの頃でしたね。ブライト・アイズを輩出したサドル・クリーク期待のバンドということで、ちょっと期待してこのアルバム、これが2枚目だったんですけど、聞いてみたら沁みましたね。

 

 この人たち、ヴォーカルのアドリアンヌ・レンカーの、内側に呟き、語りかけるように歌う、壊れやすそうに繊細な歌世界がまずカリスマ性あるし、そこだけを聞くのでも十分に行けるのですが、僕はそれにくわえて、後ろの3人の演奏とアレンジに才能を感じていて、それとアドリアンヌとの歌の絶妙な相性とコンビネーションがいいなと思っています。いわゆる、90sから2000年代以降のフォーキーなインディ/オルタナティヴ・ロックの系譜にある人たちなんですけど、それこそブライト・アイズやウィルコに通じるアメリカン・ルーツ・ミュージックの要素を吸収しながらも、同時に演奏のタイトさとリズム感覚を聞いていると、「イン・レインボウズ」以降のレディオヘッドの要素も感じたりするところは、まだ20代のバンドらしい新鮮さがあると思いましたね。

 

 最近、アメリカのインディで、優れた女性シンガーソングライター、ソロのロックシンガーというのは結構少なくないんですが、ソロで聞かせるものがしっかりありながらも、バンドのアンサンブルのスケールの大きさまでを感じさせてくれるバンドとなると、ちょっと他に思いつかないですからね。世が世なら、今の時点でもそこそこセールスも伴う形でウケてたはずなのに、そうじゃなくて残念ではあるんですが、すごく力のあるバンドなので、長く残って実力を証明してほしいです。

 

 

18.Go Farthar In Lightness/Gang Of Youths

 

 

18位は、これも僕的な隠し玉、その2ですね。ギャング・オブ・ユースです。

 

 彼らはオーストラリアのバンドで、まだ大きな国際展開をしてない段階なんですが、いやあ、すっごいいいですよ!そのサウンドは例えて言うなら、ザ・ナショナルがブルース・スプリングスティーンとかストロークスとかU2を大きなスケールでやったみたいな、そんなバンドです。本当です!ここのフロントマンのデヴィッド・ルオペペっていう人、とにかく声が美声です。「技術のあるジュリアン・カサブランカス」みたいな感じでね。それが、ちょっと文学的で、やや宗教的なニュアンスも感じられる歌を歌うわけだから、そりゃカリスマ性も出ますね。

 

 実際、このアルバムが9月に出た時、これが2枚目のアルバムで、デヴィッドも25歳と若いんですけど、ローリング・ストーン・オーストラリアの表紙をいきなち飾ってて、初登場で全豪1位。そして先月には、オーストラリア版のグラミー賞であるARIAアワードでアルバム・オブ・ジ・イヤーにも輝いています。もう、今やオーストラリアではカリスマでかの国のメディアでこのバンドなりデヴィッドの姿を見ることも結構増えてきてますね。あの国、ロック盛んですけど、「GOY出てきたから、もう、しばらくはロックは大丈夫だ」くらいな気分なんじゃないかな。

 

まだ、なかなか聞く機会もないバンドだと思うので、動画貼りましょう。このパンキッシュで前のめりなアンサンブル!スタジオ・ライブでここまでできてることにただならぬヤバさを感じているんですが、そこに「火が消えちまったら、どうすりゃいいんだい?」という、スプリングスティーン調のスピリチュアルな暗喩による訴えかけが今の世の中、なかなか新鮮です。それこそ、ボスとか、エディ・ヴェダーに注目してほしい存在ですけどね。

 

 

 

17.Concrete And Gold/Foo Fighters

 

 

17位はフー・ファイターズ。

 

僕はフー・ファイターズに関しては、1995年のファースト以来ずっと好きなバンドであり続けているんですけど、今回何がいいかというと、「あのフー・ファイターズが変わった!」という事実ですね。彼らは多少作品によってハードになったりポップになったりしてますけど、基本的には”デイヴ節”による爽快な70s半ばくらいののアメリカン・ハード・ロックンロールの継承者だと思ってたんですね。そこにちょっとパンク世代的な味付けがされた感じというかな。これがいい意味で金太郎飴的な普遍さがあっていいよな、と思って愛していました。

 

 ところがこのアルバム、初めて試すものが多くてビックリしましたね!ちょっとメタル的なハードさは前作、あるいは前々作でも顔は覗かせていましたけど、今回の驚きはビートルズ・エッセンスの大胆な取り入れ方ですね。だいたい、彼らの曲でこれまで美しい3声ハーモニーなんて聞いたことなかったですからね!あと、サイケ期以降のジョン・レノンに顕著だった半音ずつ上がるコードとか。あと、ギターね。これまで重低音聞かせてストロークでガーッと鳴らしてたタイプのリフだったのが、今回、ストロークの腕っ節じゃなくて、アンプの振動の方をビリビリ言わせる、それこそビートルズの60s後半からジョンのソロの初期みたいな音色になってて。スプーンがまさにそのギターの音なんですけど、なんか、そっちの方向に近づいたなと。シングルにもなった「Sky Is The Neighborhood」とかテイラー・ホーキンスの歌う「Sunday Rain」がまさにそんな感じで。

 

 これ、僕、思うにグレッグ・カースティンのマジックかな、と思いますね。彼、こないだ書いた、リアムのアルバムのプロデューサーでもあるんですけど、多分、この両アーティストの仕事、同時期にやってて、頭の中が完全に「68年のビートルズ」になっていたのではないかと(笑)。そして、このあたりの音の感触が好きなんじゃないかな。それが両者ともに、これまでのキャリアをさらに深みを与えるものになっていましたからね。おそらくフー・ファイターズ、ここで作った音を元に今後新しいフェーズに入るんじゃないかな。なお、カースティン、ベックの「Colors」もやってて、そっちを絶賛する向きも聞きますが、すごいことですよね。

 

 

16.Yesterday's Gone/Loyle Carner

 

 

 

16位はロイル・カーナー。ストームジーのところでも書いたように、今年も引きつづいてUK産ヒップホップは充実の1年でしたが、僕的にそのシーンで今年トップだったのはロイル・カーナーですね。

 

彼のことはリリースが1月だったのかな。その時は存在は知っていたけど聞き逃して、マーキュリー・プライズにノミネートされた時にジックリ聞いたんですけど、ビックリしましたね。すごくジャジーに洗練されたり、ハイハットがシャンシャンなってスネアのヒットがタイトなあの感じ。90s初頭のイースト・コーストのヒップホップを思い出しましたね。トライブ・コールド・クエストとかマーリー・マールとか。イギリスの場合、まさにその当時にアシッド・ジャズのブームとかあったから、リアルタイムでトライブやデ・ラ・ソウルもウケてたことは確かなんだけど、そこからこういう音がUK方面から本当に長いこと出てこなかったよなあ、と改めてしみじみ思いましたね。

 

 そうでありながら、いざロイルがラップをはじめると、なんかすごく洒脱なイギリス人になって、あの上品な感じのブリティッシュ・アクセントを、魅惑の低音ヴォイスでスマートに決めるのもなんかカッコ良くてですね。今のイギリスにはストームジーみたいないかにもグライムなハウスを取り入れた人から、Jハスみたいにトラップとかすごく今のアメリカの影響を感じさせる人までいろいろいて、層の厚さも感じさせます。

 

 あと彼は、コリアン系のイギリス人だったり、女性蔑視発言をした客をライブから追い出したりとか、キャラクター的にも気になるところが多いですね。今後、ちょっと楽しみにして見てみようかと思ってます。

 

 

15.Sleep Well Beast/The National

 

 

15位はザ・ナショナルです。

 

 今やすっかり、「セクシーな大人のインディ・ロック」の代表格になりつつありますね。僕が彼らのことを注目したのは2007年の「ボクサー」というアルバムでしたけど、あの当時は本当に「知る人ぞ知る」バンドだったのが、その後の2枚のアルバムでたちまち商業的にもビッグになり、もう、この最新作に関してはアメリカで2位、オーストラリアで2位、イギリスで1位を始めヨーロッパのほぼすべての国でトップ20入りという大出世ぶりです。僕が知った当時、マット・バーニンジャーはすでに30代の後半だったんですけど、今、40代後半。むしろ、その持っている魅力からしたら、「適齢期」に差し掛かったくらいかな。50、60代に向け、枯れていけば枯れていくほど音楽の説得力が上がる。シーンにおいて、極めて稀有な存在だと思います。

 

 今回のアルバムも、その根本的な世界観には変わりはないんですけど、同じフォーマットの中、曲の使い減りみたいのが全然感じられず、一曲一曲に力強さを感じますね。メロディや楽器のフレージングもさることながら、歌われる歌詞の語感が常に新鮮だから、というのもある気がしますが。さらにサウンドの方も「今やキングス・オブ・レオンとかインターポールでも、こんなにヴィヴィッドに響かせてくれなくなったな」と思える2000s型のポスト・パンク的なインディ・ロックを高水準に鳴らしてくれる一方で、人真似でない、彼らのセクシーなメランコリックさに合う形での非常にゆるやかな感じのエレクトロ・テイストをまぶす事が出来たりしているのも強みですね。

 

 僕の場合、あんまりにもアダルトすぎると、今年出たウォー・オン・ドラッグスみたいに引きつけ起こす場合(ゴメンナサイ、本当に起きました、苦笑。だってダイア・ストレイツみたいなんだもん)があるんですが、こういうロキシー・ミュージックとかニック・ケイヴみたいな渋くセクシーな深化なら歓迎です。

 

14.I See You/The XX

 

 

14位はThe XX。

 

このアルバムは1月の発売ということや、リリース後の中押し、ダメ押しがなかったために12月の現在からすると過小評価されているようにも見えますが、すごくいいアルバムです。実際、イギリス1位、アメリカ2位をはじめ全世界的にヒットして、いろんな国のフェスのヘッドライナー、あるいは準ヘッドライナーで来ましたからね。ブラジルのロラパルーザでも準トリで、もう、それはそれはものすごい人気と人の波でしたよ。

 

 そして、そのロラパルーザでも言えたことでしたけど、この人たち、表情明るくなりましたよね。特にオリー。昔は絶対笑わない、低い声でブツブツ言うだけだったのに、今回のライブで満面の笑みでよく喋ってね。ロミーも、相変わらずおとなしくはあるんですが、よく動くようになったし、気持ちがすごく前に出るようになってきましたね。この前に出たジェイミーXXのアルバムがすごくフロア向きのアッパーなテイストがあったんですが、それが彼らの昔からのメランコリックでダークな世界観とうまく絡むようになってきたし、これまで以上にセクシーに聞こえるアルバムになっていましたね。もちろん、「ダークなカリスマのままでいてほしい」タイプのリスナーも彼らにはすごく多いんですが、ジェイミーのダンス・グルーヴあってのバンドだし、オリーとロミーがリアルな感じで自己表現できるのであれば、僕はこの路線は全然ありだと思います。

 

 もう、次あたりは完全にヘッドライナー・クラスの彼らですが、さて、どんな作品になるかな。

 

13.Science Fiction/Brand New

 

 

13位はアメリカのエモ・バンドのブラン・ニュー。

 

 これは僕は目からウロコの、本当にビックリしたアルバムでしたね。彼らのことは2002年だか03年に、「アメリカで注目され始めた、本格的なインディ・エモ・バンド」みたいな触れ込みで聞いたのが最初で、それ以降は追っていなかったんですが、これが今年の8月に出た時からエラく評判が騒がしく、遂には全米1位にまでなったので「なんだろう」と思って聞いたら、ちょっとした衝撃でしたね。

 

 これ、もう、「エモ」だなんだ、そうした次元を通り越した、ちょっとサイコパスで非常にアクの強いアルバムでしたね。何せSEに、精神病棟の患者のインタビューが挟まって、その合間に出てくる曲がもう、暗いのなんの!なんか、「パンク・バンドがピンク・フロイドの境地に達した」みたいなというか、はたまた、曲の大半がアコースティックなんですが、アリス・イン・チェインズのアコースティック・アルバムに近い感触というかね。静寂なのに猟奇性が混ざってるあの感じですね。それが痛々しくも、耳をそらすこともできずに、気がついたら向き合って積極的に聞いてしまっている、説得力と切迫感のあるアルバムでしたね。僕が方々でエモ・ラップを批判するのは、こういう、心の闇を高い音楽性とともに訴えているものが実際にあるからです。

 

 ただ、フロントマンのジェシー・レイシーという人は本当に病んだ人らしく、先ごろ、10年くらい前にやったと疑われている、女の子のファンの前でわいせつなな行為をしたことを暴露されてしまっています。これもme tooハッシュタグの余波ですね。僕はそれを聞いて、実はトップ5も夢じゃないくらいに好きだったところをトップ10から外しました。ただ、まだ疑惑の段階で、そんなに知名度が高いとは思えない日本において、良い作品なのに紹介もしないのではちょっと大げさかなとも思い、不吉番号の13位に置くということで対処しました。そんなオチまでなくても良いのになあ。

 

 

12,Melodrama/Lorde

 

 

そしてLordeは12位でした!

 

自分でもビックリするくらい低い順位になってしまいましたね。てっきり自分の中ではトップ候補としても考えてさえいましたからね。。やっぱ、僕の場合は「Royals」がビルボードのチャートを急上昇してる時からのファンだし、彼女が新世代代表としてカート・コベインやらボウイのトリビュートを見事にこなした時も嬉しかったし、彼女にこそ時代を作って欲しいと思いましたから。

 

 このアルバムも、すごくその期待に答えたと思うんですよね。あえてマニアックな方向に逃げずに、メインストリームの方向性で勝負して、今時の20歳の女の子の人生模様を1枚のアルバムのコンセプトにして、「現代版ケイト・ブッシュ」のようなアレンジで聴かせる。お見事だと思うし、作品自体にケチをつけようとは思いません。

 

 ただ、それでも僕の中ではこれ、猛烈とリピートして聞いたのがリリース当初のみで、あとはそんなに聴かなくなったんですよねえ。今回の上位13枚くらいは実はガチンコに全作をフルで聴き直して、その末に順位を決めているんですが、その時点でトップ10から落ちたんですよね。理由はですね・・、僕の中のどこかにこれ、Lordeがこの作品を後年「若けのいたり」みたいに扱ってあまり振り返りたくないアルバムになるんじゃないかって気がどこかでするんですよね。確かにポップから逃げなかったのは勇敢で素晴らしいことだし、大いに称えたいところです。でも、ちょっとポップに作りすぎちゃってるかなあ。プラス、今回、トップ10には実は6組くらい女子がいるんですけど、彼女達の作品の方が愛着がわいたし、その中にはここ数年、熱烈なファン状態の人が2人いるんですけど、彼女達の最新作とどっちが完成度と品格があるか、と言ったらその答えがLordeじゃなかったんですよね。

 

「多分、次で作ってくるであろう、ちょっとポップ色抑えてくるだろう作品の方が僕は好きなんじゃないか」。なんかそんな気がしてしまうんですよね。多分、それは僕の好みだけの話で、一般的にはそうじゃないのかもしれませんが。

 

 

11.Damn/Kendrick Lamar

 

 

 そしてケンドリック・ラマーが11位でした。

 

 これ、前もこれだけチラッと話しましたけど、「主観を完全にゼロにして客観性だけで選べば、これが1位になってしかるべきアルバム」だと、今持っても思います。ぶっちゃけ、何もケチつけるとこはないんです。今の彼の変幻自在の驚くべきラップ・スタイル(曲によっては、よく舌と腹筋が持つなと思えるほど、物理的にあまりに無理な曲もあるし、笑)で、強い社会性と、皮肉と、ポジティヴなメッセージ性のあるリリックを自在に操られ、曲も硬軟取り混ぜてなんでもできたとか言ったら、そんなの無敵に決まってます(笑)。

 

 今回の場合はとりわけ彼のラッパーとしてのヴァーサタイルな面が最も発揮されたアルバムになりましたね。彼の金字塔的代表作である「good kid MAAD CITY」 は彼の出自、「To Pimp A Buttefly」は今日のブラック・コミュニティの姿と、ある程度テーマ性と統一性をもたせた作品でしたが、今回はあえてそうした統一的な主題から離れて、客観的なお題とともに抽象性のあるものを複数、それを前作のようなジャズ・テイストにこだわるでなしにトラップから歌からなんでもこなすので、自由なだけ、彼の力量を存分に発揮できてるような気もします。

 

 聞いてて、これ、エミネムで言うところの「エミネム・ショウ」を思い出すし、実際、そういうレヴューを書いてる人も幾つか例も見てますけどね。ただ、僕の場合は、そここそが気になったのです。僕の中で「エミネム・ショウ」というアルバムはいい作品ではあるんだけれど、「スリム・シェイディLP」とか「マーシャル・マザーズLP」ほどかけがえのないものとして聞けるか、と自問した場合、そうではない。やっぱり最初の2枚の限定したコンセプトの中で発揮した表現の方が今も愛おしいんですよね。僕はケンドリックの場合も、それと同じ理由で後年そこまで愛せなくなるんじゃないかな、と思い、それがトップ10から漏れる大きな理由にもなったわけです。まあ、Lordeにせよ、ケンドリックににせよ、「他で十分騒がれているし、今さら僕が追加で騒がなくてもいいよね?」という気持ちも正直ありました。でも、優れた作品であることに異論は全くないですけど。

 

author:沢田太陽, category:2017年間ベスト, 00:15
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最新全米チャート

SINGLES

1(3)Perfect/Ed Sheeran

2(1)Rockstar/Post Malone feat 21 Savages

3(2)Havana/Camila Cabello feat Young Thug

4(4)Gucci Gang/Lil Pump

5(5)Thunder/Imagine Dragons

6(6)Too Good At Goodbyes/Sam Smith

7(8)No Limit/G Eazy feat Cardi B and ASAP Rocky

8(11)Bad At Love/Halsey

9(7)Bodak Yellow(Money Moves)/Cardi B

10(9)What Lovers Do/Maroon 5 feat SZA

 

 

ALBUMS

1(-)Songs Of Experience/U2

2(-)From A Room Vol.2/Chris Stapleton

3(1)Reputation/Taylor Swift

4(5)Divide/Ed Sheeran

5(2)A Pentatonix Christmas/Pentatonix

6(21)Tell Me You Love Me/Demi Lovato

7(6)The Thrill Of It All/Sam Smith

8(9)Christmas/Michael Buble

9(-)War&Leisure/Miguel

10(4)The Anthology Part 1/Garth Brooks

author:沢田太陽, category:全米チャート, 03:38
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ゴールデン・グローブ2018 ノミネート(映画編)

どうも。

 

 

では、映画篇、行きましょう。

 

作品賞(ドラマ)

Dunkirk

The Shape Of Water

Call Me By Your Name

Three Billboards Outside Ebbing,Missouri

The Post

 

 

今回、最多ノミネートとなったのは、このギレルモ・デル・トロの「The Shape Of Water」で7部問です。これがいろんな前哨戦批評家映画賞の最多ノミネートになっています。

 

 ただ、これらの映画賞でなかなか作品賞を取れていないことで、今、ものすごく接戦になっていますね。

 

 

作品賞(コメディ)

The Disaster Artist

I,Tonya

Get Out

Lady Bird

The Greatest Showman

 

 

逆に今現在、絶好調なのは「ゲット・アウト」で、今のところ、一番、批評家映画賞の作品賞を受賞していますね。これ、「ホラー」というカテゴリーがないから、コメディに扱われてますけどね。でも、そんな映画じゃないんですけどね(笑)。

 

ただ

 

監督賞

クリストファー・ノーラン(Dunkirk)

ギレルモ・デル・トロ(The Shape Of Water)

スティーヴン・スピルバーグ(The Post)

リドリー・スコット(All The Money In The World)

マーティン・マクドナー(Three Billboards Outside Ebbing,Missouri)

 

 

 ここで、「ダンケルク」のクリストファー・ノーランや、スティーヴン・スピルバーグ。前述のデルトロなどのビッグネームが並んでいます。

 

「ダンケルク」も何を見てもノミネートはされているんですが、受賞はなし。実は僕、この映画はキツ位だろうと思っています。というのは、役者や脚本ではノミネートが見込めない上、技術部門でも「シェイプ・オブ・ウォーター」とことごとくぶつかるでしょ。しかも、役者や脚本でもノミネート確実な分、勢いで上回る気がしますね。

 

 

ここは、「Lady Bird」のグレタ・ガーウィッグ、「ゲット・アウト」のジョーダン・ピールはノミネートを逃しています。さて、これがどう出るか!GGの監督賞ノミネートを逃すと、案外オスカーにも響きますからね。両者ともに長編デビュー作で、ちょっと監督としての実力が見えないとこは否定できないです。あと、正直、「ゲット・アウト」は企画そのものが素晴らしいんですけど、監督の手腕での傑作なのかがどうか、今一つ見えないんですよね。

 

 

 そして、ケヴィン・スペイシーの差し替え問題で大ダメージを受けていたはずのリドリー・スコットの「All The Money In The World」が同情票も集めましたね。

 

 

主演男優賞(ドラマ)

トム・ハンクス(The Post)

ダニエル・デイ・ルイス(Phantom Thread)

ティモテ・シャルメ(Call Me By Your Name)

ゲイリー・オールドマン(Darkest Hour)

デンゼル・ワシントン(Roman J Israel Esq)

 

最初は「Call Me 〜」のゲイの美少年ティモテ君が強かったのですが、トム・ハンクス、ダニエル・デイ・ルイスの強豪が上がってきてますね。個人的にはダニエル・デイ・ルイス、気になります。

 

 

主演男優賞(コメディ)

ジェイムス・フランコ(The Disaster Artist)

アンゼル・エルゴート(Baby Driver)

スティーヴ・カレル(Battle Of The Sexes)

ヒュー・ジャックマン(The Greatest SHowman)

ダニエル・カルーヤ(Get Out)

 

 

 

アンゼル、まさか、ノミネート、区ましたね(笑)!

 

ここはジェイムス・フランコだな〜。歴代ベストの怪演と聞いています。楽しみだなあ。

 

 

主演女優賞(ドラマ)

ジェシカ・チャステイン(Mollys Game)

フランシス・マクドーマント(Three Billboards Outside Ebbing,Missouri)

サリー・ホーキンス(The Shape Of Water)

メリル・ストリープ(The Post)

ミッシェル・ウイリアムス(All The Money In The World)

 

ものすごく実力派が並んでますね、ここは!個人的には大好きなジェシカなんですけど、サリー・ホーキンスとフランシスの争いでしょうね、ここは。

 

 

主演女優賞(コメディ)

シアーシャ・ローナン(Lady Bird)

ヘレン・ミレン(The Leisure Seeker)

エマ・ストーン(Battle Of The Sexes)

ジュディ・デンチ(Victoria And Abdul)

マーゴット・ロビー(I,Tonya)

 

 

「ブルックリン」で受賞できなかった時からシアーシャはすごく応援したいんですけど、スケート界のお騒がせ女王、トーニャ・ハーディングの変人的日常を描いた「I,Tonya」のマーゴット・ロビーも期待したいですね。

 

助演男優賞

ウィレム・デフォー(Florida Project)

アーミー・ハマー(Call Me By Your Name)

リチャード・ジェンキンス(The Shape Of Water)

クリストファー・プラマー(All The Money In The World)

サム・ロックウェル(Three Billboards Outside Ebbing,Missouri)

 

 

 

ここがもう、ウィレム・デフォーが圧勝するデータがもう出ています。この「Florida Project」という映画自体が作品賞の有力候補なんですけど、GGではオミットされました。これが痛手とpなるか。

 

 

助演女優賞

メアリーJブライジ(Mudbound)

オクタヴィア・スペンサー(The Shape Of Water)

ホン・チャウ(Downsizing)

アリソン・ジャニー(I,Tonya)

ローリー・メトカルフ(Lady Bird)

 

 

アリソン・ジャニーとローリー・メトカルフの間で割れてますけど、音楽ファン的にはメアリーJブライジの女優ブレイクですね。本当に歌の上手い人なのでそちらでももう一度注目されて欲しいんですが、これはこれで嬉しいことです。

 

 

 

 

author:沢田太陽, category:アワード, 05:03
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ゴールデン・グローブ2018 ノミネート(TV番組編)

どうも。

 

 

ゴールデン・グローブ、発表されましたね。まずはテレビ部門から見てみましょう。

 

 

TV部門

 

作品賞(ドラマ)

Game Of Thrones

The Handmaids Tale

This Is Us

The Crown

The Stranger Things

 

 

「ゲーム・オブ・スローンズ」が1年お休みしている間に、エミーを圧勝した「HandmaidsTale」が出てきたり、NBCで「This Is Us」がヒットしたり、ネットフリックスでエルザベス女王の伝記の「The Crown」や社会現象にもなった「ストレンジャー・シングス」もでてきたり。ここは例年以上に豪華な気がしますね。

 

 

作品賞(コメディ)

Black-Ish

The Marvelous Mrs.Maisel

Master Of None

SMILF

Will&Grace

 

 

ここももはや「モダン・ファミリー」やら「VEEP」もなく、新しくなりましたね。きになるのは「The Marvelous Mrs.Maisel」ってこれ、始まったばかりですよね、アマゾンで。すごく気になっていたのです。これ「ギルモア・ガールズ」のクリエイターのエイミー・シャーマン・パラディーノが制作してる、1950年代が舞台の女性コメディなんですよね。これはなんかすごく興味あります。うちのワイフがすごく見たが理想。

 

 

作品賞(ミニ・ドラマ)

Big Little Lies

Fargo

Feud Bette And Joan

The Sinner

The Top Of The Lake

 

 

 

ミニ・シリーズは、今回のドラマ部問での最多ノミネートの「Little Big Lies」が入りましたね。エミーでも圧勝した、ニコール・キッドマン、リース・ウィザスプーン、シェイリーン・ウッドリー共演の話題のドラマです。これ、もうシーズン2も来年決定していて、そっちも楽しみですけどね。

 

 

主演男優(ドラマ)

スターリングKブラウン(This Is Us

ジェイソン・ベイトマン(Ozark

フレディ・ハイモア(The Good Doctor

ボブ・オデンカーク(Better Call Saul

リーヴ・シュナイダー(Ray Donvan

 

 

ドラマの主演男優できになるのは「This Is Us」のランドールことスターリングKブラウンですね。腹違いの兄弟の中では頭脳明晰で一番良い暮らしをしているのだけれど、心の中に抱えたものは一番複雑な彼は視聴者にすごく訴えかけてますね。きになる役者さんです。

 

 

主演女優(ドラマ)

ケイトリオーナ・バルフ(Outlander

クレア・フォイ(The Crown

マギー・ジレンホール(The Deuce

キャサリン・ラングフォード(13 Reasons Why

エリザベス・モス(The Handmaids Tale

 

 

ここはエリザベス・モスにクレア・フォイが大本命なとこですが、ここに大問題作「13 Reasons Why」で自殺しちゃった美少女、キャサリン・ラングフォードが入ってきました。この子、シーズン2以降に出れるのか謎なんですが、シーズン1はとにかく綺麗でしたよ。

 

 

主演男優(コメディ)

アンソニー・アンダーソン(Black-Ish

アジス・アンサーリ(Master Of None

ケヴィン・ベーコン(I Love Dick

ウィリアムHメイシー(Shameless

エリック・マコーマック(Will&Grace

 

 復活した「ウィル&グレース」、好調ですね。ウィルがノミネートされてます。

 

 

主演女優(コメディ)

パメラ・アドロン(Better Things

アリソン・ブリー(GLOW)

レイチェル・ブロスナハン(The Marvelous Mrs.Maisel

イッサ・レイ(Insecure

フランキー・ショウ(SMILF)

 

 

ここは「黒人版ガールズ」こと「Insecure」のイッサ・レイかな。デイヴ・フランコの嫁さんのアリソン・ブリーのネットフリックスの「GLOW」もいいんですけどね。

 

ただ、これまで聞いたことのない「SMILF」なども気にはなりますね。

 

 

 このドラマ武門ですけど、「Little Big Lies」と「Handmaids Tale」が中心でしょうかね。コメディはまだちょっと読めません。

 

 

 

author:沢田太陽, category:アワード, 01:42
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最新全米映画興行成績

どうも。

 

このあと、ゴールデン・グローブのノミネートもあるので手短に。全米映画興行成績です。

 

 

1(1)Coco

2(2)Justice League

3(3)Wonder

4(12)The Disaster Artist

5(4)Thor; Ragnarok

6(5)Daddy's Home 2

7(6)Murder On The Orient Express

8(9)The Star

9(8)Lady Bird

10(-)Just Getting Started

 

動きはありませんね。来週のスター・ウォーズでガタガタっと行くと思います。

 

4位ですが、これは本当に見たい!「The Disaster Artist」。これはジェイムス・フランコが、実在するダメ俳優の最悪の映画製作にまつわるダメ伝記です。いわば「エド・ウッド」のリアルな現代版です。

 

これ、評判はすごくよくてMetacriticで76点、Rottentomatoesで94点。フランコにはオスカーの主演男優賞ノミネートが、これ実際に期待されています。メチャクチャ見たいです(笑)。

 

 

 

author:沢田太陽, category:全米映画興行成績, 11:48
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沢田太陽の2017 年間ベスト・アルバムTop50  30-21位

どうも。

 

 

では引き続いて行きましょう。

 

 

 

こんな風になった、2017年の僕の年間ベスト・アルバムの30位から21位です。ここは一部デーマがありますが、それについてはおいおい触れて行きます。では30位から。

 

 

30.Harmony Of Difference/Kamashi Washington

 

 

30位はカマシ・ワシントン。

 

 カマシはこの一つ前のアルバムが話題になってましたね。僕のロック系の友人でも結構多くの人が聞いてて、「最近のジャズ、本当に一部の新しもの好きのロックファンに刺さってるんだなあ」と思った記憶があります。ただ、その時のアルバムがすごく長かったのと、僕が普段ジャズに手を出さない性分なのでチラッとしか聞いてなかったんですね。

 

 ところがこれを聞いた時に「うわっ、これは美しいわ!」と思ってハッとしましたね。僕、ジャズはマイルス、コルトレーン、オーネット・コールマンの代表作くらいしかちゃんと聞いてなかったりするんですけど、そんな僕が「ジャズ初心者にこういうアルバムがいいよ」と素直に思いましたからね。これ、ジャズの技能のこととかわかんなくても、とにかくメロディ・ラインが美しく、ホーンのアンサンブルが綺麗ですね。これだけで感覚的につかまれるんですが、それプラス、70s初期のソウル・ミュージック黄金期のようなリリカルなベースラインに、皮の響きのカツーンとした音がカッコいい複合的なスネアのリズム。そして懐かしく暖かい響きのあるハモンド・オルガン。パッと聴きは60sから70sのファンキー・ジャズみたいなんですけど、ヒップホップも通過した後追い世代なりの感覚がどこかに入っているから、トラディショナルな様式は守ってあるんだけど、どこかすごくコンテンポラリーなんですよね。そこがすごく新鮮かつ不思議です。

 

 今年、ジャズ畑の注目の一枚は世間一般にはサンダーキャットの「Drunk」のようなんですが、僕はあっちは正直、「アース・ウィンド&ファイア好きだった人が好きそう」な感じの70sのアーバンなAOR系フュージョンな感じがしてそこまでグッとこない(逆にAOR好きな人にはたまらなさそう)感じだったんですけど、今回のカマシの方がもっと大きな普遍性が個人的に感じられる分、僕の好みではありますね。

 

 

29.4eva Is A Mighty Long Time/Big KRIT

 

 

29位はBIG K.R.I.T.。

 

彼は今年の掘り出しものの一つでしたね。なんとなく名前を知っていた程度で聞いたことはこれ以前になかったんですが、これはもう、微笑ましいまでのアウトキャスト・フォロワーでしたね。ジョージア州アトランタといえば、今やもうトラップ系ヒップホップの最大の都なんですが、さしずめKRITは「おい、ちょっと待ってくれ。アウトキャストのことを忘れちゃ困るぜ」とばかりに、彼らが得意としたジミヘンばりのワウワウ・ギターに、ゴスペルやブルーズといったサウスにまつわる伝統音楽をぶち込むさまを聞いてると、「スタンコニーア」「スピーカーボックス/ザ・ラヴ・ビロウ」と言ったアウトキャストの傑作アルバムを彷彿させる瞬間があります。今のトラップもそれはそれでクリエイティヴなことをやってはいますが、この地が生んだ素晴らしいヒップホップの伝説を受け継ぐ存在というものは絶対いてしかるべきだと僕も思います。

 

 しかも今回これ、2枚組なんですよ。聴き倒すの結構大変なんですが、このヴォリュームも「スピーカーボックス/ザ・ラヴ・ビロウ」を継承するものだと思います。こういうのに逆に触発されて、引退状態のアンドレ3000が復活しないかなあとも思うんです けどね。

 

 あと、最近かなり人気の白人ラッパー、ポスト・マローンの一言多いツイートに「聞くべき何かを求めるなら最近のヒップホップは聞く必要がない」というのがあってかなりの騒動になってるんですが、反対派が「最近の聞くべきリリックを持ったラッパー」としてこぞってあげていたのがケンドリック・ラマー、Jコール、そしてビッグKRITだったことも追記しておきますね。

 

 

28.Spirit/Depeche Mode

 

 

28位はデペッシュ・モードの「Spirit」。

 

彼らのことはそれこそ中高生の時から知って聴いてはいましたけど、本当に息の長いグループになったものです。アリーナ級になってからも軽く30年近くの月日が経ちますが、未だにアルバムのリリース間隔が4年より長く間ことが一度もありません。まず、これがすごいことです。そして、ここ最近の作品を聴いてると、「電子音使った音楽なのに、年輪を重ねたことによる枯れた味わい」、そういうものが出せるようになってきて、また面白くなってきていました。そうしたことから、聞く前から「今回はなんかすごく良さそうだぞ」という気分がありました。

 

 そしたらドンピシャでしたね。今回のアルバムは、ドナルド・トランプをはじめとした、ポピュリズムの台頭に関しての彼らの強い怒りを表現したアルバムで、それがゆえに「DMがポリティカルなことを歌うなんて昔のポリシーに反している」みたいなネガティヴな批評も一部であったりはしたんですが、やはり、何らかの強いモチベーションが働いた時というのはメロディや歌声にもそれが反応されることが多いです。今回のこのアルバム、少なくとも2005年の「Playing The Angel」、僕もそうだし人によっては93年の全米No.1アルバム「Song Of Faith And Devotion」以来の傑作にあげる人も少なくない。それくらい、力強さと楽曲の説得力に溢れているし、前述した涸れた味わいも過去最高になっていますね。

 

 そしてこれ、世界でのセールスがすごいんですよ。英米はともに5位でそんなでもなかったんですが、ドイツ、フランス、イタリア、そしてポーランドを初めとした東ヨーロッパで軒並み1位。そしてこのアルバムのツアーで150万人以上の動員を記録していて、今年のツアーの興行収入でダントツの世界一なんですって。こういう事実はちゃんと逃さない方がいいですよ。

 

 

27.Broken Machine/Nothing But Thieves

 

 

27位はナッシング・バット・シーヴスのセカンド・アルバム。

 

 ここから10位台まで若い人たちが多くなりますが、彼らもその一つです。彼らは前作も全英トップ10ヒットで早くから人気だったんですけど、このセカンドで化けましたね。デビュー時はいかにもなMUSEフォロワーだったんですけど、このアルバムでダイナミックなハードな曲と、ちょっと変化球的な引きの曲との緩急のバランスが絶妙になりましたね。加えて、ここのシンガーのコナー・メイソン!彼のヴォーカルがとにかくハイ・レベルですね。最近の若手のロックシンガーで、ハイトーンの伸びとアタックの強さ、朗々とした声の響かせ方、これらの技術がここまで備わっている人、そうはいないですよ。実際、BBCのスタジオ・セッションで彼がジェフ・バックリーのカバーをしているのを聞いたことがあるんですが、あんな難易度F級のジェフ・バックリーを難なく歌いこなしてましたからね。あれ聞くと、ほとんどの人、ビビると思います。

 

 ただ、そこまで実力のあるバンドの割に、ちゃんとレビューしてるメディアが少ないこと!なんか裏があるのかもしれないですけどね。「作られたバンドだ」とか、「俗っぽくポップだ」「面白くない」とかなんとかいうので。でも、仮に彼らが「作られたバンド」で「ポップ」で「面白くないバンド」であったとしても、「だったら、すごく売れるバンドになればいいじゃん!」としか僕は思わないですけどね。少なくとも、こういうバンドが売れて一般にとってのロックの顔になってくれた方が、今現状、イマジン・ドラゴンズがそうした立ち位置にいるより断然健全だとすら思うんですけどね。コンテンポラリーな若いロックが本当に一般に聞かれなくなっている今だからこそ、こういう大衆性とパフォーマンスでの実力のあるバンドに育ってもらいたいですけどね。

 

 

26,Crack Up/Fleet Foxes

 

 

26位はフリート・フォクシーズ。

 

 彼らにとっては今作が6年ぶりのアルバムでしたが、クオリティ的にはさすがでしたね。彼らって、いわゆるフォーク・ロックとか60sのサイケデリアのリバイバリストみたいな見方もされがちですが、それはあのCSNYみたいなヴォーカル・ワークによるものだと思うのですが、それはあくまで組み合わせのパーツにすぎません。それを証明したのがこのアルバムですけど、いやはや、頭の中がすごいことになっていますね。表面的にはフォーク・ロックなんですけど、多くの曲で組曲形式になっているような複数の楽曲要素が組み合わさったものになっていて、それはさながら「フォークロック内プログレ」の様相も見せていますね。あるいは、「レディオヘッドがペット・サウンズをやったらこうなった」ともいうべきか。作っているものそのものは壮大な凄い作品だと思います。

 

 それにもかかわらず、僕の順位がそこまで高くない(実は直前までトップ20に入れてたのに外してます)のは、彼らの音楽シーンに対してのスタンスにどうも共感できないことですね。まだ、30歳いくかいかないかの若いバンドにもかかわらず、貴重な20代後半に仙人みたいに沈黙を決め込んで、6年も時間をかけてアルバムを作る・・なんてことは正直、僕は望んでないですね。40代のバンドじゃないんだから。せっかくロックを牽引できるくらいの素質があるんだから、積極的にアルバムを作って世代を牽引するくらいのバンドにならないと。いや、意識してそうなるんじゃなく、作品を積極的に出していくうちに自然とそんな風になっていくようにしないと。そういうとこも、USインディのこの世代が僕にはもどかしい理由の一つですね。せっかく今回もすごいものを作ったにもかかわらず、各媒体の年間ベストの順位も今ひとつ高くないのは、作品そのものよりも、思わず肩入れして応援したくなるような姿勢を見せてくれないからだと思いますね。次作はもっと早いペースで、人目に触れるのを恐れずにツアーなりなんなり、もっと目立ったことやってほしいですね。

 

 

25.Cigarettes After Sex/Cigarettes After Sex

 

 

 25位はシガレッツ・アフター・セックス。

 

 このバンドのこのアルバム、今年デビュー・アルバムを出したバンドの中でも、これはかなり秀逸だったと思います。この、いかにもセルジュ・ゲンズブールにでも耽溺していそうなナルシスティックなバンド名ですけど(笑)、思い切り名を体で表したような、あまりにそのまんますぎる、すごいか細い声で囁くように歌われる、セクシーでメランコリックなドリーム・ポップ。ジャケ写のこの4AD感も「ああ、わかってるね(笑)」という感じで。いかにもドゥルッティ・コラムとかコクトー・ツインズ、そしてジョイ・ディヴィジョンとか聞いてます、という感じの、黒の感じもいいですね。ここまでわかりやすいイメージ展開って、デビュー当時のThe XX以来じゃないかな。それでいて本人たちはアメリカ南部の出身で、フロントマンは生え際の後退したヒゲがボーボーの人、というギャップも良いんです(笑)。

 

 このアルバム、アメリカではチャートインせず、イギリスでも27位という成績だったんですが、国際的なウケがよく、ベルギーではトップ10入り、フランスやドイツでもトップ40前後まであがるヒットになっているんですね、これが。こういう売れ方する場合、国際的なアクトになる可能性が高いので、僕も注目しています。そして、実は彼ら、週明けにブラジルに来るんです!今度の水曜にライブをやるんですが、僕ももうチケットも買ってて見に行きます。これも結構、チケットの売り上げが良いみたいなんで、口コミで広がるタイプなんだと思いますね。

 

 

24.Culture/Migos

 

 

 24位はミーゴスの「カルチャー」。これも大ヒットしましたね。

 

 ここんとこ、ヒップホップで世代闘争みたいのがあって、上の世代が若い世代のマンブル・ラップとかエモ・ラップを批判する傾向にあります。それに関しては僕も概ねでは実は賛成していて(とりわけエモ・ラップは本当に苦手。リリックがドラッグと死を扱うというのでシリアス風に見せてるのを免罪符に音楽ひどくていいのかよ!)、ラップも基本的に満足にうまくない、派手な髪型とファッションばかりが目立つ。プロデューサーも一曲ごとに変える。フィーチャリング・ラッパーが多すぎで、その豪華感だけで売っている・・。ひところのインディからの突き上げでシーンが再活性したのが嘘みたいで僕もこういう現象にはガッカリです。

 

 とはいえ、アトランタのトラップ勢に関しては僕は肯定的です。あそこはトラップがブームになる前からラッパーもトラックメイカーも切磋琢磨してたとこだし、ラッパーならフューチャー、トラックメーカーならメトロ・ブーミンというアイコンが筆頭となる形でシーンができていってたわけだし。このミーゴスも、「マンブル(ブツブツ)」って言われるかもしれないけど、だけど、クウェイヴォ、オフセット、テイクオフの、独特のリズム感と語感のコール&リスポンスによるマイクリレーは実に鮮やかだし、トラックにしても、メトロを始め、ゼイトーヴェンとかのトップのトラックメイカーが選りすぐりの作品を彼らに集めている感じもするしね。

 

 この勢力に関してはフューチャーの2枚一気のアルバムも、リル・ウージ・ヴァートも、21サヴェージ、ヤング・サグも、アルバム、なかなか良かったんですけど、やっぱり「代表」となると、このアルバムだったかな。やはり、あのマイクリレー、あれはヒップホップ史に残るものがあります。あとは、悪貨に駆逐されないように踏ん張ってほしいものです。

 


23.Slowdive/Slowdive

 

 

23位はスロウダイヴ。

 

伝説のシューゲイザー・バンドの、実に22年ぶりの新作ということでまず話題になり、それがすごく良かったものだから、輪をかけて騒がれたアルバムですね。イギリスでも、過去最高のヒット、16位を記録し、「むしろこれから!」の印象をシーンに与えているのはすごいことだと思います。

 

 僕自身はですね、当初、このアルバムに気後れしてたんです。「もともと、シューゲイザーのファンではないからなあ」と。リアルタイムはおろか、後追いでもそれほど聞いてきてないし、名前のよく似たスワーヴドライヴァーは好きで聴いてたけど、この人たちはアルバム単位で抑えてなかったんでねえ。なので、今回のブームにも、「入っていいのかな」と遠慮してるとこがあったんです。なので、当初、ここまで上の順位にしてなかったんですね。

 

 ところが聞き返してみて、今回、なんでこれが話題になっているのかの理由が、そんな僕にもスンナリわかったんですよ!「ああ、これは”シューゲイザーがどうだ”とか、そういうの関係なしに、普遍的にいいアルバムだな」と。もちろんシューゲイザー特有の浮遊感溢れる轟音に、囁くようなセクシーで儚げな女性ヴォーカルというのも魅力です。でも、そうした表向きに目立つもの以外でも、例えばギターのリフのセンスが凄く良かったり、凄くスケールの大きな楽曲展開(ここ、特に重要ですね!)ができたり、一度聞いたらしっかり覚えることのできるメロディ・ラインがあったり。「なんだ、ギター・バンドとしてものすごく優れてるじゃないか!」と見直したんですね。ここまでの才能がありながら22年も封印してたとは。「タラ・レバ」は禁物とは言いますが、もし、しっかりとした活動をしていたならば、今頃もっとすごいカリスマになっていたのかもなあ、と思わせるものは確実にありましたね。

 

 これで、マイ・ブラディ・ヴァレンタインに接近するもう一つのこのジャンルのカリスマが出来たな。そう思わせる充実の傑作だと思いますね。

 

22.4 Your Eyez Only/J.Cole

 

 

22位はJコール。

 

このアルバムは正確には昨年の12月のアルバムなんですが、無視するには非常に惜しいアルバムなので、ピックアップしてみました。このJコール、日本からはあまりそうした意見を聞きませんが、アメリカのヒップホップ・ファンの間では「ケンドリック・ラマーの最大の対抗馬」として見られている人です。ヒップホップの熱心なファンであればあるほど、この2人の名前をよくあげます。

 

「なぜ、そうなのかな?」と思い、この1年、彼の旧譜も含めよく聴いたんですが、この人はですね、言うなれば「今のヒップホップ界最高のガチンコ・ラッパー」なんですね。彼はトラックを自分のクルーだけで作り、そのクルーで生演奏でライブ・ツアーも積極的にやります。さらに、アルバムにはゲストのフィーチャリングも一切しません。少なくとも、ここ2枚、そうしたアルバムを作っていますね。それで全米1位になったラッパー、20数年振りという記録まで作っています。こうしたところからも、彼の強いリアルなものへのこだわりを感じさせます。

 

 そして、このアルバムはコンセプト・アルバムです。話が物語になっていて、ドラッグ・ディーラーだった男が改心して家庭を持って真っ当に生きようとするも殺される。その男の小さな娘に当てた遺書」という設定で、ジャジーな生演奏主体のトラックに乗って、社会意識の強いポジティヴな人生のメッセージが発せられる、というものですね。ストーリーそのものはクリシェではあるんですが、いざ、彼が真摯なフロウを紡ぎだすと切実な切迫感があるというか。ケンドリックほど技巧の利くタイプのラッパーではありませんが、ラップも歌も無骨でストレートながらもハートにしっかり届けるタイプです。

 

近くケンドリックと久々の共演もするそうで話題になっていますが、注目されて欲しい人です。

 

 

21.As You Were/liam Gallagher

 

 

 そしてリアム・ギャラガーは21位でした!

 

 ただ、このアルバム、前もここに書きましたけど、すごく好きなんですよね。自分でも予想した以上に。なんかですね、利く回数が上がれば上がるほど染みてくるんですよね。そのくらい、曲がすごく丁寧に書けた作品で、リアムの声で歌われることにすごく説得力があるアルバムだと思います。

 

 これはリアムの声もさることながら、グレッグ・カースティンをはじめとしたソングライティング・チームの勝利だと思いますね。今回、リアムがソロになるということで、本来のリアムらしい「オアシスっぽい曲」というのはかなり念頭に置いて書かれたと思うんですけど、これ単に「リアムっぽい」というだけでなく、リアムの声がもともと似ていたジョン・レノン(鼻にかかったとこですね)の「ホワイト・アルバム」以降のメランコリックなメロディとソリッドなギターのニュアンスまでしっかり嗅ぎ取ってアレンジを作ってますね。だからただ単に「オアシスっぽい」というだけでなく、もっと普遍的な楽曲の良さが滲み出たものとなっていますね。このポイントは見逃さない方がいいと思いますね。

 

 このアルバムはイギリスで出た当初にバカ売れしてるんですが、トップ10に5週、最新の週でもチャートイン9週めで17位から18位にワンランク下がっただけという、かなりロングヒットしそうな兆候を見せています。いやあ、良いことです。ナッシング・バット・シーヴスのとこでも言いました(そう、これがテーマです!)けど、これ、「大衆に向けてのロックの理想」みたいな音になっています!こういう音が、イマジン・ドラゴンズに代わって(笑)、一般のキッズたちにアピールするくらいが、本当は一番良いんですけどね。こういう音を出す若いバンドが出てこないと。あと、ここからヒット曲も欲しいですね。「Wall Of Glass」「Bold」「China Town」「Universal Gleam」と、そうなるポテンシャル持った曲も多いのでね。

 

 

 

author:沢田太陽, category:2017年間ベスト, 00:30
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